テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

お待たせいたしました。

前話で入れるつもりだったネタを入れ忘れていることに今朝気付いて若干朝から落ち込んだりしてましたが、なんとか書き終わりました。

ではではどうぞ!


『stage43:おわかりいただけただろうか?』

 

 

 

 

 ふぇっくし!!

 壁に耳あり障子にメアリーだぜ士郎に麻婆よ。

 

 あ、どもども、コウジュです。

 現在の俺は既に教会の地下室の中に居たりします。

 うん、そうだよ。目の前で戦闘始まってるよ。

 出ていかないのかって?

 やだなーもう。

 出るタイミング逃しちゃったんだよ。出るに出れないみたいな。

 いや、出たいんだよ?

 そりゃぁもう肉を前にした犬並みにすぐに出ていきたいさ。

 けどね、現在進行形でとある問題に直面していて出て行けないのです。

 というか足がヘタレて動けないというか、あまりの驚きに頭の中が驚きの白さになっちまってるわけですよ。

 で結局何が言いたいのかって?

 何と言えば良いのか…。

 俺の周りにな、居るんだよ。いっぱい。

 何がってそりゃあ――――

 

『ねぇねぇお姉さん、誰に向かって言ってるの?』

 

『独り言とか不気味だよねー?』

 

『ねー』

 

 てめえらにだけは言われたくない。

 えっとだな、つまり直面というか目の前に居るというか、今まさに俺の周りにはたくさんの半透明で浮いてる子達がいっぱい居たりするわけですよ。

 幽霊ってホントに居るんだねー…。

 あ、胸元に鎖とかついてなくて少し安心したのは秘密だぜ。

 

 ってちょっと待とうか!

 何でナチュラルに幽霊が居るの…?

 世界観違い過ぎやしませんかね!?

 いや冷静に考えたら同じ系列の月姫とかには似たようなやつが居るんだっけ?

 というかそもそもサーヴァントも幽霊みたいなものか。

 でもなんでそれが普通にこの教会に居るの?

 

 最初はさ、ずっと来れなかったからここにある死体の状態を確認しに来たんだ。

 本来なら早くに来るべきだったんだろうけど、色々と踏ん切りがつかなくてね。

 正直今すぐにでもここを離れたい。

 獣でもあるこの身体はこの場所を今もまさに忌避している。

 臭いとか気配とかがあまりにも俺の感覚を犯すのだ。

 中身が元一般人の俺ではSAN値がゴリゴリ削れて行きますよ。ええ。

 なんとか正気を保てているのも幾度かの戦闘を乗り切り、血というものに少しは慣れたからであろう。ほぼ自分の血だが。

 

 さておき、それでなんとか気配遮断(名状しがたい例のヒモ装備)して侵入してみた結果が幽霊たちとの邂逅なわけです。

 どうしてこうなったし。

 次々と浮かび上がる疑問を処理するのに必死で、部屋の中で戦闘が開始されているのに集中できない。

 

『ねぇねぇ痴女さん?』

 

「っ! …痴女ちゃうわっ」

 

 思わず叫びそうになるがスネーク中なので声を押さえて静かに訴える。

 気配遮断しているはずなのに普通に話しかけてくるこの子達もうやだ。色んな意味で。

 

 とりあえず、改めて周りに浮かぶ子達を見る。

 後ろが透けて見える以外は比較的普通の小学生から中学生の子たちだ。

 男の子も女の子も、その容姿や性別に至るまで子どもという所以外には共通点は無い。

 その彼ら彼女らが、士郎達が入った扉の外から覗いている俺を囲う様に浮かんでいる訳だが、どこから出てきたのだろうか?

 いや幽霊だから壁とか関係ないのか?

 けど問題はそこじゃない。

 この場所に居る幽霊、ということはつまり部屋の中にある死体に関連する可能性があるということだ。

 ゾクリ、と背中に氷を入れられたように寒気が走る。

 俺、ゾンビとか攻撃できそうなものは割かし大丈夫なんだけど、幽霊って駄目なんだ。

 映画位ならまだしも、生で見ることになるとは思わなかった。

 比較的冷静でいることが出来ているのはこの幽霊の子たちの姿が透けている以外は映画などの様な怖気を催す物ではないからだ。

 

『痴女のお姉ちゃん、聞こえてるんでしょう?』

 

「だからちゃうねんっ」

 

 さっきから痴女痴女煩いよ!

 誰が好き好んでこんな姿するか!

 って待て、この子達何で恥女とかって言葉知ってるんだ?

 

『まぁ僕たち生きてたらそれなりの年齢だからね~』

 

『精神年齢上がるのは当然でしょ。条件そろえれば外に行けるから知識も入ってくるし』

 

 さいですか…。

 ナチュラルに心の声を読まれた気がするが、もうなんか突っ込むの疲れた…。

 

「っていうかさ、この服装は特殊な効果があって、隠れるために必要な効果があるから我慢して着てんの。おk?」

 

『っていう設定なんですね分かります』

 

「違ぇーよ!?」

 

 これでも一応全部小声で話してるが、いまにも声を荒げてしまいそうだ。

 ほんとやだこの子達。もう帰りたい。

 ただまぁ、セイバーも金ぴかも気配察知は苦手な部類なのか、俺が隠密になれてきたのもあるからか小声位なら出しても今のところばれていない。

 そのおかげで少しずつ会話が出来ているのだが、ツッコミばかりさせられて話が進まない。

 うん、特に意味は無いけど帰ったらみんなに謝ろう。他意は無い。

 

「って待て、条件をそろえればここから出れる?」

 

『そだよ?』

 

「え、マジで?」

 

『うん、だってここ来るもの拒まずで防御的なものがガバガバだし』

 

 神父仕事しろ。 

 いやそれをしてないからこの子達はこんなことになっているのか。

 でもだからってそれだけでこんな状況になるものか?

 

 俺が驚いたことからも分かるようにこの子達は原作に出てこない。

 なのに目の前に居る。

 

『あ、言っておくけど、この姿はわざとこうしてるだけであって、実際はこうだから』

 

 ドロンと、目の前に居る少年は悪戯を思いついたような笑顔でそう言いながら身体の輪郭を崩した。そう、それはもうドロンと。

 

 ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!

 

 叫びそうになった自分の口を無理やり押さえ、頭の中で絶叫する。

 咄嗟に自分の声を防ぐことが出来た自らの瞬発力に感謝した。

 なにせさっきまで会話していた幽霊君が半分ゾンビになったのだから。

 透けている以外は普通の顔だったのに、今では透けている上に顔の輪郭が崩れ目玉は流れ出て骨も所々見えてしまっている。

 知らなかった。幽霊はゾンビにジョブチェンジできるのか。

 いや、両方死んでるから似たような物?

 待て、そうじゃないぞ俺。

 

『あ、ごめんお姉さん。泣くとは思わなかった』

 

「これ、あれやから、汗やから、びっくりして出た汗的な何かやから…」

 

 必死に誰に向かっての言い訳なのか自分でもわからないものを言う自らに余計悲しくなる。

 涙もろいこの身体をどうにかしてください。

 とりえあず、いつまでも視界をぼやけさせている訳にもいかないので袖で拭う。

 そこへ、ドンっと腹まで響く轟音が届いた。続けて2発3発と続いていく。

 慌てて部屋の中を再び覗き見る。

 中では、士郎が干将莫邪を、セイバーがエクスカリバーを持ち、ギルガメッシュの王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を弾きながら防戦している所だった。

 

 混ざりたいなー。

 最近獣の本能なのか、元々そういう気質でもあったのか闘いを見てるとホントにうずうずする。

 痛いのは嫌だけど、闘うのってなんかワクワクするよね!

 でも我慢だ。

 士郎には出来る限りギルガメッシュの武器を見ておいてもらいたい。

 それに、実戦を経験して経験値を積んでもらいたい。

 どうしても訓練だと殺意を帯びた攻撃というものを体感できないからね。

 実戦が一番の糧になるのはどの業界でも同じだろう。ソースは俺。

  

『ねぇねぇお姉さんあの人たち仲間?』

 

「ん? そうだけど何だ?」

 

『いやー、あの金色の人倒してくれないかなーなんて思ってね。横でNDKしたい。聞こえはしないだろうけど』

 

「…ぅえ?」

 

 言っている意味が一瞬理解できず、少し間の抜けた返答をしてしまう。

 NDK…、『ねぇどんな気持ち?』を言いたいってことだよね?

 何なのさっきからこの子、黒いし、子どもが知ってて良い知識じゃない様な気がするんだけど…。

 

『あ、それ私もー』

 

『俺も俺もー』

 

 周りの子も!?

 

『つーかよー、あいつマジうざいんだけど。人の事毎回毎回喰っといてマズイって文句言うんだぜ? 美味いって言われたいわけじゃねぇけどよー』

 

 ふてくされた様に言う先程までとは別の幽霊少年は、チッと舌打ちしながら近くの壁を蹴った。

 すり抜けてるからシュールな光景でしかないけど。 

 

「やっぱりあいつの事嫌い?」

 

『『『『当然』』』』

 

 俺と会話してた子たち以外も、後ろで当たり前だなと首を縦に振る。

 まぁ、ソーデスヨネー。

 

「あ、じゃあ言峰は?」

 

『『『『死ねばいいのに…』』』』

 

 またしても後ろの子たちも頷く。

 辛辣でだねぇ。

 でもそれも当然か。それだけの事をしてきたんだからな。

 むしろ魂とはいえ、歪んでないのがスゴイのではないだろうか。

 ここの穢れた空気の中にずっと居る事もあるし魂が歪んでてもおかしくないと思う。

 でもこの子達は笑えている。

 けして良い感情を発露している訳ではないが、それでも冗談混じりに言える程度には確固とした自分を持って居る。

 強いな、この子達。

 

「他の人とかも恨みそうになった事は無いのか?」

 

『あるに決まってるじゃん』

 

 え? そこは無いよっていう感動のシーンじゃ…。

 

『最初は意味も分からず身体が死んでるのに魂を縛り付けられてずっと食べられ続けたわけだし恨むなとかまず無理っしょ』

 

『だよねー。他の人に聞いても何で私達だけがみたいなー?』

 

『でもね、いつからか考え方が変わったんだよ』

 

「考え方?」

 

『うんうん、あの二人は私たちみたいなのに頼らないと生きていけないんだねーとか、養ってあげてるんだーとか、とりあえず可愛そうな人だなーとかね。そう思い始めたら何て言うか呪いみたいな恨みは消えたかな。他の人に対して恨みをぶつけるのもお門違いだし? まぁそんなのとは関係なしに鬱陶しいとかは思うけどあの二人』

 

「うわー…」

 

 死んだ目と優しい目を混ぜたような微妙な表情をしながら言う子達。

 言峰ェ…。ギルガメェ…。

 何だかもう俺もそんな目でしかあいつらの事見れない。

 

『そう思ったら身体が楽になってさ、それからはそこそこな幽霊ライフ?を送ってるかなー』

 

『学校もタダで行けるしねー』

 

 おばけにゃ学校も試験も何にも無いんじゃなかったのか?

 

『あーでもレポート書けないのはつらいなぁ。良い研究課題みつけたのにさぁ…。マジでノー〇ル賞ものだと思うんだよねー』

 

 研究課題って…お前さんひょっとして大学課程も見に行ってんの!?

 ってか、ノー〇ル賞って…。

 下手すると普通に俺より賢い?

 

『俺は見たいアニメ見るのに誰かの家に行って後ろから見るしかないのが辛いなー…っつかパソコンでイヤホン着けて見んなよな、音声無しじゃつまんないじゃん。まぁギャルゲーは文字を読めるからまだ良いけどさ』

 

『あ、私もそれ思う。生中継とか音声有りでみたい。後コメントしたい』

 

 後ろからとか恐ぇよ!!

 ホント何してんだよお前ら!!

 ってかギャルゲーに関してはほんとやめたげて!?

 

『あ、そういえば最近青タイツのお兄さん見なくなったよねー?』

 

『あーあの人面白かったのにねー。実体化して色々教えてたらリアルにジョ〇ョ立ち似合う人になってたもんねー。なにあのやってみたシリーズ』

 

 犯人はお前らかー!!!?

 ってか実体化!?

 何この高性能幽霊達!!

 

「って今更だけどなんでそんな実体化とか出来るのさ。それも青タイツにばれないレベルで」

 

 ランサーってキャスターのクラスにも慣れる程に魔術に対する造詣も深いはずだ。

 そのランサーが幽霊だと気づかないレベルでの高度な実体化を何故元々は一般人だったであろうこの子たちが出来るのだろうか?

 

『いや、たぶんアレは気づいてたね。その上で相手をしてくれてた』

 

『だね。告白したら来世でなって言われたし。温かい目で見られたし。エタロリの需要があるなんて嘘だったんだ!』

 

 それは嘘でいいよ。俺が困る。

 

『けどもう少し早くから実体化できるようになってたらなぁ』

 

『ねー』

 

「うん? 昔から出来てたわけではないのか?」

 

『まあね。アレはえっと、数週間前くらいだったかな。何かがこの町に来て、それ以来この町に不思議パワー的なものが多くなったんだよ。

 魔力だっけ?

 2,3日前から居なくなったんだけどね。

 その前にも一回数分ほど消えてたし、山奥の電波並に不安定な存在なんじゃないかな?

 今はもう山の方に吸われるだけでこの間程充実してないから実体化できないんだよね』

 

 それを聞いて俺は冷や汗をかいていた。

 なにそれタイミング的になんか身に覚えがあるんですが。

 いやいや、でも流石に俺の身体に発生してたものが垂れ流されてて、しかもそれが幽霊を具現化できるほどのものだとかいうご都合主義ある訳無いし気のせいですよね。

 幻想を現実に出来る云々かんぬんとか、そういえばキャスターの話では産みだしてるもしくはどこからか持って来ているとかって話だったけど、使ってない分がどうなっているかは気にしていなかったけな。

 普通にゲーム感覚でゲージマックスならそこで止まってるかなんかで気にしてなかったし。

 うん、よし。気にしないようにしよう。

 俺が気付かなかったことにすれば完全犯罪?になるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

『ところでさ…』

 

「なんだ?」

 

 俺が自分の中でQED的な自己完結をしていると、幽霊の少年が扉の中を指さしながら声を掛けてきた。

 

『あの人たちピンチだよ?』

 

「え?」

 

 視線を士郎達の方に向けると、2人が鎖(多分天の鎖(エルキドゥ)だと思う)に捕まっていて、今まさに浮遊する武器群に貫かれようとしていた。

 

 ちょ、え? えええ!?

 審判タイム!!!

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 くそっ!!

 いくら場の空気に飲まれなくなったとはいえ、ギルガメッシュが弱くなったわけではないのが痛い。

 コウジュがギルガメッシュの事を慢心王って言ってたけど、悔しいかな慢心してようがこいつは強い。

 コウジュに貰った大剣を出して盾にしつつ何とか凌いでいるが、それは向こうが遊んでいるからにすぎないだろう。

 今のところ何とか出来ていてもスタミナや魔力がいつか尽きてしまう。

 セイバーはまだ余裕がありそうだが、それもまたしかり。

 あいつがこのままずっと宝具の雨だけで攻撃してくる訳が無い。

 そうなればどうなるか、想像に難くない。

 なんとか活路を開かないと!!

 

 そう思ったのがフラグだったのか、ギルガメッシュは一度宝具の雨を止めた。

 そして腕を組み、尊大な態度でこちらを見る。

 

「このままいつまで凌げるか見ているのも面白そうだが、時間が押していてな。これで終いだ。天の鎖よ!!」

 

 黄金の鎖が空間を割くように現れ、俺とセイバーを絡め取る。

 

「これで―――」

 

 ギルガメッシュが剣を2本中に浮かべ、それを―――

 

「―――終わりだ」

 

 ―――射出した。

 

 くそ!! まったく動けない。

 そこで思い出したコウジュに貰った切り札。

 これって、手に持ってなくても宣言すれば出せるか!?

 

 ポケットに入れっぱなしになっているとっておきに一縷の望みをかけ、宣言しようとする。

 

「真力『えk「やらせねぇよ!!」コウジュ!?」

 

 俺たちの前に飛び込んでくる影、コウジュは手に持つ剣で俺に向かってきていた剣をすべて消し去った。

 

「貴様…」

 

「やーやーまたあったじゃんよーギルガメェ」

 

 どこから出てきたのかコウジュは悠然と俺たちとギルガメッシュの間に立つ。

 そこで目に着くコウジュが両手に持つ剣。

 両方とも見た事が無い。

 右手に持つ、赤と黒のどこか生態的なもので構成されている剣は鍔の部分が黒く光を発している。

 左に持つ剣は前に見せて貰った刃の部分が紫色に怪しい光沢を放っており、刀身に蛇腹状のつなぎ目が見える。

 特訓の賜物か、剣の類をみると自然と解析するようになっていたから目に着いた。

 だが解析できない。

 いや、理解したくない。

 俺の中の何かが全力で拒否している。

 出来るのは分析までだった。

 自然と俺はそれから目を離し、コウジュ自体を見るようにした。

 何故だか、これ以上見ていると飲み込まれそうな感覚に陥ったのだ。

 

「あ、士郎。これは解析しない方が良いよ」

 

 思い出したように、こちらを見ずに俺に忠告してくるコウジュ。

 できれば先に言って欲しかった。

 というか、コウジュさんは一体どこから?

 やけに良いタイミングだったような……。

 いや、コウジュだしなぁ……。

 この言葉だけで全て納得できてしまう俺は悪くない筈だ。

 

「我が名はギルガメッシュだ!! 無礼にもほどがあるぞ貴様!!」

 

「はいワロスワロス」

 

 よっぽど嫌いなのか、あくまでも小馬鹿にしたような態度でギルガメッシュと対峙するコウジュ。

 

「許さん!!」

 

 ギルガメッシュがその態度に腹を立て、再び宝具の雨がこちらへ放つ。

 それに対しコウジュは、今度は左の手に持つ剣を大きく振るった。

 

「邪鞭ウロボロス!! 全てを飲み込め!! ヴィヴィ・デッザ!!!」

 

 ウロボロスと呼ばれた剣はコウジュが振るう事で伸びる。

 俗に言う蛇腹剣だったようで、コウジュが言うには光波鞭と呼ばれるそれは文字通り鞭のようにしなりながらコウジュの周囲を飛び回り、射出された宝具をことごとく触れるだけで飲み込むように消していく。

 

「我の宝具が!? きっさまぁぁぁぁ!!!」

 

「これで終わりだと思うな!!」

 

 コウジュは言いながらもまだ舞うようにウロボロスを振るう。

 次第にコウジュの前に魔法陣の様なものが描かれ、傍目にもその中心に力が集約されていくのが分かる。

 蛇腹剣の軌跡で武器を弾きながら陣を書いたようだ。

 それが次第に輝きを放っていく。

 

「でぇぇりゃぁぁぁぁ!!!」

 

 魔法陣に集まる力がはち切れんばかりになった時、最後にコウジュは唐竹割りに大きく上から振り下ろす。

 魔法陣を割るように振るわれたウロボロスは魔法陣に集まる力と共に伸び、斬撃として宝具を飲み込みつつギルガメッシュに迫る。

 

「ぬおおぉぉぉぉっ!?」

 

 ギルガメッシュは宝具を打ち出すのをやめて、全力で横に跳んで避ける。

 

「ぷはっぬおぉぉだってっ」

 

 笑いながらコウジュはこちらを向き、今度は右手の剣を俺とセイバーを捕える鎖に振るう。

 

「滅ぼせ魔剣レーバテイン」

 

 その言葉の通りに剣が触れた部分の鎖は消えるのではなく滅びる。

 助けてくれるのは嬉しいがもう少し離れた部分でやって欲しい。

 ホントに申し訳ないが正直怖いです。

 もう名前からして破滅をもたらす災厄の剣だし…、この鎖を切っちゃう位だし…。

 

 解放された俺とセイバーは再び構えて対峙する。

 

 

「もう許さんぞ貴様…」

 

 先程までの事が無かった事のように憮然とした態度でこちらを睨みつけるギルガメッシュ。

 

「許さん許さんうっさいっての。さて、セイバーに士郎、ここは俺に任せて行け」

 

「コウジュ?」

 

「どうしてですか?」

 

 セイバーも疑問に思ったのか質問する。

 

「ここは俺1人で十分抑えられるさね。セイバー達はいったん外で回復した後、言峰を追ってくれ」

 

 それを聞いてハッとする。

 そうだ、あいつは聖杯の出し方を知っているようだった。

 放っておく訳にははいかない!!

 

 

「分かったコウジュ!! ここは任せた!!」

 

 コウジュだけに任せていくというのは正直気が引けるが仕方が無い。

 俺とセイバーはすぐそこの階段を上っていく。

 

「行かせはせん!!」

 

「やらせるかよっ!!!」

 

 後ろで再び戦い始める音が聞こえる。

 だが、コウジュを信じ、振り向かずに一気に駆け昇る。

 

 任せたぞコウジュ!!

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「はははははははっ!!! どうした!!? 先程までの勢いはどこへ行ったぁ!!?」

 

「どうだろうねぇ…」

 

 宝具が降り続ける。

 剣も、槍も、斧も…。

 ありとあらゆる宝具が俺に向かって降り続ける。

 俺を貫かんとして。

 俺を殺さんとして。

 だが俺はそれを何でも無いように見せながら時に破壊し、時に飲み込ませていく。

 

「先程からその言い草っ!! 雑種の分際で無礼であろうがぁぁ!!!」

 

 降り注ぐ宝具の勢いが増す。

 だけど俺は、あえてその全てを更に早く武器を振るうことで消し去っていく。

 なにせギルガメッシュの後ろには幽霊の子たちの身体がある。

 下手に弾きでもすればどうなるか分かったものじゃない。

 先程当人たちと話したことを置いておいても、あの子たちの身体をこれ以上どうにかされるのは気に食わない。

 その本人たちは扉の外から俺にエールを送ってくれてるけどね。

 

「ふん、忌々しい宝具だ」

 

 さておき、これ以上はさすがに周囲の被害が馬鹿にならないしそろそろ終わりにしたい。

 そろそろ士郎達はここから離れただろ。

 まだやらなければならないこともあるし、終わりにしようか。

 あーでもなー、マジでやると絶対協会そのものが潰れるし、どうしたものか。

 

「天の鎖っ!!」

 

 むむ?

 あれさっき壊さなかったけ?

 ああ、やっぱり魔剣を扱いきれてなかったのかね?

 正直触れた物を壊すって能力怖くて使いきれねぇんだよな。

 壊しちゃいけないもんまで壊しそうだし。

 その所為か無意識で壊しきれてなかったのかね? ヘタレ言うなし。

 あと、この剣うるさい。

 壊せ壊せと語り掛けてくるのでほんとうるさい。

 この剣の概念として“闇を根源とする魂が宿っており、使い方を誤ると全てをその身に取り込まれてしまう”ってのが確かにあったけどさ。

 こんな感じになるとはね。

 とにかくうるさすぎて集中できないので早く使うのを止めたい。

 

 それはさておいて、これは丁度良いな。

 痛いのは嫌だけど、これで俺がやられれば一応の決着がつく。

 さぁ!! 遠慮なくやりたまえ金ぴか君!!

 どう考えてもドMなセリフみたいだが、俺はドMじゃないのであしからず。

 空間から現れる無数の鎖が俺の身体をぐるぐると縛り付け、締め付けられていく。

 

 ぐるぐるぐるぐる――――、

 

 

 

 ――――ってしつこい!!

 どんだけ包むんだよ!!

 俺の身体で出てる部分が顔だけじゃねぇか!!

 って口もか!?

 窒息して死ぬわ!!

 結局デカい帽子以外は全て包まれ、蓑虫のようにされながらも空中に縛り付けられる。

 当然俺は身じろぎ一つできない状況だ。

 

「これでとどめだぁっ!! 我に逆らった事、地獄でなげけぇっ!!!」

 

「ムー、ムー!」

 

 見習いでも神性に対する拘束力は十二分に発揮しているのか全く動ける気がしない。

 それを見てなのか嬉しげに声を荒げながらギルガメッシュが話す。

 

「今更遅いわ!! 貫け我が宝具よ!!」

 

 その声と共に、幾つもの風を切る音を俺の耳が拾う。

 そして刹那の後、俺の身体にいくつもの衝撃が走り、激痛が体中を支配する。

 

「ふははははははは!!!! 他愛無い!! 所詮は雑種か!!!」

 

 俺の身体は貫くに貫かれ、穴が開いていない場所などない位に穴だらけだ。

ほんと痛ぇ…。

 けど、最初に比べて何でかマシだ。

 慣れたのかな?

 それとも脳内物質とかの問題か?

 なんにせよ、こういう時は便利だ。

 以前に比べ、そんな事を考える余裕がある。

 そして、貫かれた俺の身体は、既に回復しようとしている。

 さすがは不老不死。

 

「ついでだ!!もっていけぇい!!」

 

 追加で、新たに禍々しい気配が生まれる。

 それが3つ。

 うん、予想はしてたけどこれ多分やばいやつ。

 

「ハハハハハハハハ!!! それらは不死殺しだ! これで貴様も終わりだっ!!」

 

 やっぱり不死殺し。

 なんだかんだで俺の存在は不安材料なんだな。きっちり殺しにかかりやがった。

 でも、ギルガメは俺の不死が俺自身のモノからだけのモノだと思ってるみたいだから助かった。

 もし、慢心していないやたら察しの良い王様モードのギルガメだったらどうしようかと思ったぜ。

 まぁ実際俺の身体は蘇生がストップし、血液は流れるまま足元に血溜まりをつくっている。

 意識は何とかあるが、この身体は明らかに死に体だ。

 指先一つ既に動かせない。

 それ以前に感覚が一つもない。

 当然か。

 今、俺の身体は確実に死に向かっている。

 それにしても、型月世界って不死存在が居る分、不死殺しも充実してるからもしかしてと思ったがやはり持ってたか。

 でも俺は不死殺しだけじゃぁ殺せない。

 いや実質的には一回死ぬんだけどね?

 ほんと、生存チート万歳だわ。

 おかげでこれに頼り過ぎて自分の命を軽く投げ出しすぎている気がする。

 ゲームでもそうだったが、生存系の能力に頼っているとプレイヤースキルが落ちるからどうにかしないといけないな。

 

「ふん。所詮幕引きはこんなものか。さて、我も聖杯の元へ行くとするか」

 

 ギルガメッシュが俺に刺さっている宝具や、天の鎖を消して、歩いていく。

 言葉通り聖杯の元、柳洞寺の出現ポイントへ向かうのだろう。

 一方、支えを失った俺の身体が床へと放り出される。

 ぐしゃっと、俺の身体が倒れたからであろう音が耳に届く。

 とりあえずはこれで、原作通りにやつらを最終決戦場へと向かわせることが出来たかね?

 ランサーの位置が俺だけど、それは仕方ない。

 ここを壊さずに金ぴかだけを蹴散らす術を現在の俺は持っていないからな。

 これが一番穏便だよな。

 

「…っ」

 

 あー、やべ、もう無理。

 意識が跳ぶわ。

 ハッキリ死ぬ感覚があるのはそういや、初め…て…だっけ……。

 

 あー…床、冷てぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

『あ、起きたー?』

 

「ここ…は…あーそっか」

 

 バッと身体を起こし、周囲を確認する。

 辺りを見、静かなことに胸をなでおろす。

 気分的にはほんとは休みなのに目覚まし時計が鳴らずに目が覚めたせいで遅刻したかと一瞬焦るがよく考えれば休みじゃないかと安心する心境だ。

 うん、自分で行ってて意味が解らん。

 どうやらまだ頭の覚醒が追いついていないらしい。

 でも、誤魔化すためにワザとやられたことは思い出した。

 

『はー、無視かよ。まぁ百歩譲って無視は良いとしても、こういう起き方したら“知らない天井だ”は鉄板だろjk』

 

「何言いだしてんの!? ってあれ?」

 

 起きぬけに耳に入ったよくわからん助言に、ついツッコミを入れてしまう。

 

「って、おお?」

 

 聞こえた声に思わず反射的にツッコんでしまう。

 同時に、一気に頭が覚醒した。

 その頭で考える。

 今俺に話しかけたのは誰だ?

 そう思い、声のした後方を向いた。

 そこには俺を囲うようにして幽霊の子達が居た。

 というか予想外に近いとこに居た。

 

『起きた?』

 

「うん、まあね。どれ位経った?」

 

『う~んと三日位?』

 

「マジで!?」

 

『嘘だっ!!!』

 

「嘘なのかよ!!? ってか、使い方違ぇよ!!!」

 

 もう何この子達怖い。

 幽霊だからとかそんなものが些細な事に感じる位に怖い。

 何がっていうと……あ、そうだ、俺がツッコミに回るしかないって言えば分かるかね?

 

 ……自分で言ってて悲しくなってしまったぜ。

 

『ちなみに現在はそんなに経ってないよ。まぁ身体が治ってからがそこそこ意識を失ってたみたいだね』

 

「そっか…」

 

 スケープドールの御陰か身体はすぐ治ってたのか。

 でも意識が回復しなかったのはなんでだろう?

 今までは意識を失う暇すらなかったのに。

 もしや不死殺しの影響かな?

 あそこまで殺しつくされるのは初めてだったし。

 その初めてのは何の感慨も浮かばないけどさ。

 まぁ、不幸中の幸いはキャスターに予めバックアップに入ってもらってるから不測の事態が起きてもある程度対処できるように計画してある所か。

 

『ねぇねぇ、ほんとに大丈夫?』

 

「まぁな。やることやるまでは弱音を吐いてられないさ」

 

 言うだけのことは結構してるかもだけど、休憩するのはもう少し先だ。

 

『やること?』

 

 俺が苦笑交じりに言うと、幽霊の少年が首を傾げながらそう聞いてくる。

 やりに来た事…。

 

「…あのな。皆に話があるんだ」

 

 俺は、ここに来た最後の目的を果たすために幽霊の子たちを見渡しながら言う。

 本来なら色んな手順を踏んでから聞こうかと思ったんだが、ある意味こうして話せたのは都合が良い。

 

『やべぇぞ皆逃げろ!! O☆HA☆NA☆SHIされるぞ!!!』

 

「するかぁぁぁぁ!!!!!」

 

 ホントにブレねぇなこの子達!!!

 復活したてで精神的に疲れてるからそろそろ勘弁してつかぁさい!!

 

『嘘だよ嘘。なんか辛気臭い顔をしてたからついね』

 

「む…いや、だけど、大事な話だ」

 

『え~、まぁしかたないわねぇ』

 

 先程までと変わらず、笑みを絶やさずにこちらを全員で見てくれる。

 けど、しっかりと聞く態勢になって、俺の言葉を待ってくれる。

 俺が先程までとは違って真剣な話をしようとしているのを分かってくれたようだ。

 そんな彼ら彼女らを、改めて見回す。

 そして、俺は意を決し口を開く。

 

 

 

「あのな? 生き返りたくはないか?」

 

 




いかがだったでしょうか?

今回も色々とネタをふんだんに使いまくっていい加減にしろと思われてないか戦々恐々です。
まぁそうそう治らないと思いますがね(笑)

ちなみに、冒頭の方にあったク○エちゃんのはやたらと頭に残ってたので思わず使ってしまいました。
元ネタのCMをテレビで初めて見た時…と言うか聞いた時は思わず吹き出しました。
あれは確かにお茶の間で聞くには色々恥ずかしいw
いやでもあの声でレリースしちゃうアニメは結構はまってたんですがねw

さておき、今回はGWとはいえ思ったより時間が取れず結局いつも通りの時間に…。
むしろ普段よりやることが多い気がします。
あ、新アルチは今回関係ないですよ? ほんとですよ?
でもとりあえず、個人的にはこのGW中に一段落させたいところ!
それからアルチがんばる!

ではでは、次回近いうちにまたご覧いただけるようがんばりたいと思います!
それでは!


P.S.
お気に入り2000件突破ありがとうございます!
地雷だらけなこんなものでも皆様の御暇つぶしになっているのなら幸いであります。
今後も楽しんで頂けるよう頑張りたいと思います!

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