テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
今回はもしも衛宮士郎にコウジュが召喚されていたらというifです。
パパッと思いついたのがこんな感じだったので飛び飛びな上に短いですが、よろしければどうぞ!
物が散乱する蔵、その中で息を荒げながら今の自分に起こっていることを認められない少年が居た。
自分が何故この状況に至ったかが彼にはわからない。教えてくれる人間も居ない。
少年は現状を理解しようと記憶を浚うも答えはやはり出ない。
学校での記憶が曖昧なまま自らの家へと帰ってきたはいいが、そこへ再びの襲撃者。
朱い槍を持つその男は、理解できない言葉を言いながら少年を追い詰めるように槍を振るった。
そしてその男から命からがら少年が逃げてきたのがこの蔵だった。
「ひょっとすれば坊主が7人目だったのかもな」
入ってきた入口、鍵を閉めたはずなのに、いや、閉まっているのに当然とばかりにその扉の内側に居る槍を思った男。先程から少年を殺そうと迫る男だ。
男は無造作に槍を構えている。
しかし、だからと言って彼を殺すことを止めた訳ではないだろう。
ただ、男にとって少年は構える必要が無いと言うだけ。
「じゃあな。運が悪かったと思って諦めてくれや」
男が槍を軽く振るう。ただそれだけで驚異的な速度。
だが、少年にはそれがとてもゆっくりとしたものに見えた。
これが俗に言う走馬灯か…。
そう少年が思う間にも槍の穂先少年へと突き進む。
思い出されていく過去。誓った言葉。しかしそれらを無価値だと断ずるが如く目の前に差し迫る槍。
許せるか? 否だ。
許容できるか? 断じて否だ。
少年は遠き過去に誓った。自らの命の恩人であり家族となったあの男に。
なればこそここで死んでいる場合では無いではないか。
だから、少年は拒絶した。願った。
そしてその願いはここに成就する。
「っるあぁぁぁぁ!!!」
「っな!?」
少年の心臓を2度も貫こうとしたその穂先、それが少年へと届く前に蔵は閃光に包まれ、その光の中で産まれた存在が槍を弾き、更には操主たる男を弾き飛ばした。
「こんばんは士郎君。サーヴァントブレイバー寄る辺に従い参上だ」
息を飲んだ。
月明かりが入り込むだけの蔵の中で、ブレイバーと名乗った存在が少年にはあまりにも印象的だった。
白銀の髪にルビーを思わせる瞳。白と黒だけで彩られた服ではあるがそれでもその表情が溢れる快活さ。幼女と言っても良い幼さであるのにどこか感じられる存在感。その全てが、今居る蔵には不釣り合いなほどの幻想を少年の目に焼き付ける。
「君…は……」
「あー、悪いね。どうやらそれどころじゃないようだ。説明は後でな」
何とか口にした疑問に、少女は待ったをかけた。
先程まで少年を優しく見ていた眼は、苦笑しながら蔵の外を見ている。槍の男が吹き飛んでいった方だ。
そして言い切るや否や、いつの間にか手にしていたS字を描く両端に刃が付いた武器を肩に掛けるようにして外へと飛び出ていく。
「いったい何が…」
今起こっている非現実さについ呆けてしまう少年。
そうこうする内に外からは金属同士がぶつかる甲高い音が響き始める。それは少し前に校庭で聞いた戦闘音にも似ていた。
そこまで思ったところで、あの少女が男に勝てるとはどうしても思えず、助けに行かなければと我に返り立ち上がった。
しかしそこで少年はふと気づく。
「あの娘、何で俺の名前を…」
・
・
・
「変わった武器を持ってるが嬢ちゃん、一体どこの英雄だ?」
「異世界の…って言ったら信じる?」
「さぁ、どうだろうな!!」
槍を持つ男、ランサーは吹き飛ばされたにもかかわらずダメージの一つも感じさせない姿で佇んでいた。それに相対するのは今まさに呼び出された少女、ブレイバー。
ブレイバーの姿を見て、ランサーはまた変わったサーヴァントが呼ばれたものだと興味本位で問うてみた。
その答えが異世界の英雄だという。
普通ならば一笑に付すべき戯言だが今行われているのは聖杯戦争と言う現実離れした殺し合い。ならばありえないことではない。
そしてその答えは刃を交じり合えばわかることだろう。
そこまで考えたランサーは自らの槍を繰り出す。
初歩的な突きだ。
「いきなりはひどいなぁっと!」
「そう言いながら躱すじゃねぇか!」
突きに対してブレイバーが取った行動は単純に、身を横に流し避けること。
その動きを見てランサーは、突いた体勢から横に槍を薙ぐ。
だがそれもブレイバーは身体を後ろに倒すように避け、それどころか上下逆さまになったところで片手を地につけもう片方に持った武器を振るいランサーへと反撃する。
ランサーは慌てずにその足元に振り割れた刃を槍で防ぎ、体勢の崩れている少女に向かって蹴りを放つ。
しかし少女は、放たれた蹴りに対して反応できなかったのか避けもせずに喰らい、飛ばされる。
先程とは逆に飛ばされた少女、しかし彼女は、身体が地に付く前にくるりと身を翻して着地した。
「今のは割と本気で蹴ったんだがな。障壁か?」
「さぁさぁなんでしょう。けど、教えられないんだなこれが」
「はっ、それもそうか」
自分でもわからないから教えられないんだよなんて言葉を少女が内心で呟いているとも知らず、ランサーは先程までと違う構えを取った。
「悪いな嬢ちゃん。うちのマスターは臆病でな、一当てしたら帰ってこいだとよ。その障壁がどこまでかは分からんが、試させてもらうぜ」
ランサーの穂先に集まる魔力、それはあまりにも濃密な死の気配だ。
それを感じ取ったブレイバーは冷や汗を流す。
今から目の前の槍を以て放たれるものを知っているのだ。そしてそれが容易く自身の命を奪い取ってあまりあることも。
しかし、だからと言ってそのまま死ぬという選択肢をブレイバーは取る訳にはいかない。
ブレイバーは徐に懐からあるものを取り出した。携帯電話だ。
それをランサーに向ける。
ランサーはその行動に訝しみながらも、与えられた知識からそれが携帯電話と解し、行動せずに必殺の一撃の準備をする。
次の瞬間、カシャリと光と共に携帯電話が瞬く。
その行動にさらにランサーが内心で訝しんでいると、目の前の少女が口を開いた。
「クー・フーリン、アイルランドの光の御子。そしてその手に持つゲイ・ボルグから放たれる必殺の一撃は因果の逆転を起こし、避けることも叶わない」
「っ!?」
「そう睨まないでほしいな。勝手に写メを取ったのは謝るけどさ」
「そうじゃねぇ。何故知って……いや、その携帯電話か」
「さぁ、どうだろうね」
飄々と笑う目の前の少女。その姿にランサーは殺気を強める。
いま目の前のサーヴァントが言った情報はすべて真実だ。そしてこの聖杯戦争において自らの情報と言うのは宝物にも似た重要なもの。
文明の利器で何が出来ると放置した結果がこれだ。
「もう一度問う。嬢ちゃん、お前は何だ?」
「サーヴァントブレイバー。所謂イレギュラーってやつらしい」
「そうかい。ではブレイバー、知った以上はここで死んでもらおう!!!」
ランサーが持つ紅い槍、そこに凝縮された殺意が放たれる。
携帯電話をしまい込んだブレイバーがそれに対峙する。
「
「ルゥカ!!!」
ランサーから放たれた魔槍。その軌道に合わせるように、ブレイバーがルゥカと呼んだ武器を振るう。
だが、魔槍が行うは因果の逆転。武器をで防ぐ程度で避けれるはずもない。
その結果、ブレイバーが防ぐために振るったルゥカの軌道を訳もなくすり抜け、魔槍は少女の心臓を貫く。
そして貫いて余りあるその槍の威力は、いつの間にか出てきていた
舞い上がる土煙。
それを見てランサーはチッと後味の悪そうに舌打ちをして背を向けた。
だが――、
「おい、確かに俺は心臓を貫いたはずなんだがな?」
瓦礫となった壁の中から一瞬漏れた光、同時に、ガラガラと崩れる音。
「あははー、勿論一回死んだとも」
ランサーが振り向くと、そう言いがらブレイバーが瓦礫の中から出てくる。
パタパタと埃を払いながら出てくるその姿に傷など跡形もない。その姿はどこからどう見ても心臓を貫かれた者のものではない。
「ち、やり辛いぜ。さっきから嬢ちゃん相手には身体も動きづらいし、他にも何かしてるだろ」
「あー、それは俺にはどうしようもないかな。まぁでも、一回殺されたくらいじゃ俺は倒せないのは確実かな」
「ああ良いぜ。とことんまでやり合おうか」
ランサーが再び槍を構える。それに合わせてブレイバーも再びルゥカを呼び出し構える。
辺りに満ち溢れる殺意。一触即発と言う言葉が相応しいだろう。
少し離れた所に居る士郎も息を飲む。
現在の状況を何とか理解しようとすると共に、何とか打開しようとするもそれが思いつかず、さらに言えばその場の雰囲気にのまれて動けない状況だ。
深夜なのもあってか、音は無い。人の気配もない。
ただ、空を流れる雲がゆっくりと動くのみ。
しかし唐突にその重苦しい空気は霧散した。
意外なことにそれを為したのはランサだ―。
「ったく、これからが良いとこだってのによ。悪いが帰還命令が出たんでな、帰らせてもらう」
「そいつは助かる。御帰りはあちら」
「くく、そう邪険にしなくてもいいじゃねぇか。またなイレギュラーの嬢ちゃん」
そう言い残し飛び去るランサー。
それを見、姿が見えなくなったところで地へと崩れるように座り込むブレイバー。
慌てて士郎が駆け寄った。
「だ、大丈夫か!?」
しかしそんな士郎にブレイバーは手をひらひらと返すのみ。
後ろから近づいたために後ろ姿しか見えないが、その所作は軽いもので確かに大丈夫そうだ。
とはいえあの槍を喰らい、槍の男曰く心臓を貫かれたはずの少女。日ごろから御人好しと言われる士郎には放って置く選択肢はない。
だから士郎はそのまま近づきブレイバーの正面に向かう。
「泣いてるのか?」
「な、泣いてへんわ! 緊張解れて汗が出ただけや!!」
士郎は、これなら大丈夫そうだと何故か確信した。
◆◆◆
「もう帰るの? 御持て成しもまだなのに」
「これは、やっばいなぁ…」
雪の妖精を思わせる
だが、自分が逃げるわけにはいかないとブレイバーは覚悟を決める。
なにせこの場に居るのは敵コンビと自身とマスターだけ。そして大英雄を相手取れるのは自身だけ。
速度を優先し、手を組んでいる凜・アーチャーペアを置いて先にこの城へと来たのはブレイバー自身だ。
だから、答えは決まっている。
「士郎、速く逃げてくれ。上手く行けば凛ちゃん達がこっちへ向かってるだろう」
「な、コウジュ!? そんなこと出来るわけが――」
「行けっつってんだ馬鹿マスター!! お前助けに来たのに二人共死んだらどうすんだ!」
いつもは飄々としている
ライダーコンビを下した時も余力があるように見えていたのにバーサーカーを相手にこの様子だ。おそらく勝率が低いのだろう。
でも、それならば尚更この少女を捨て置く訳にはいかない。
それをしてしまえば、少年は衛宮士郎ではなくなってしまうのだから。
そう思い、士郎は自らのサーヴァントに声を掛けようとするが、遮られることになる。
「悪いな士郎、この大英雄相手にはここら一帯を吹っ飛ばすつもりでやらなきゃ勝てないんだ。だから早く逃げてくれ」
士郎は逃げることにした。
・
・
・
「お兄ちゃんを逃がしても無駄よ。あなたを倒してすぐに追いかけるもの」
「ははー、そんなに弟君が気になるかい?」
「…っ。あなた、何を知っているの?」
「ほんと、何だろうね。昔は何の役にも立たなかった知識ってところかね。けど、君が士郎に会いたかったってのは知ってるかな」
「何でも知った風に言うのね。正直、煩わしいわ」
「何でもは知らないさ、知ってることだけってやつでね。でもだからこそ、この時を待っていた」
「ふふ、この状況を作ったのはあなたの思惑とでも言う訳? その思い上がったまま死になさい!! 今すぐに殺しなさいバーサーカー!!」
「■■■■■■■■■■■■■―――――!!!!」
「やっぱ怖ぇなぁ。でもまぁやろうか先輩。盛大に死に会おうじゃねぇか!! あんたは十三回、俺は心が折れない限りだ!!!」
◆◆◆
「ありがとう士郎…。お前のおかげで俺は救われたぜ」
初めての邂逅から数週間が過ぎ、前聖杯戦争からの生き残りであったギルガメッシュを打倒した士郎とブレイバー。
そんな二人は、静寂に包まれた柳洞寺の山間で日が明けるのを待っていた。
「けど、コウジュはもうすぐ…」
「まぁしゃーないさ。俺は聖杯戦争の為に呼ばれた。そして聖杯戦争は終わったんだ。別れは必然ってやつさ。桜ちゃんを救えた。アーチャーは答えを得た。キャスターとの契約も果たした。イリヤも何とかなりそうだ。これでもう思い残すことはねぇさ」
「けど俺は!」
涙を堪える様に言う士郎に、
「言ったろ。その気持ちは俺に向けるべきじゃねぇって。ほらあれだ、吊り橋効果。お前さんを思ってる人は他に居るし、俺はその気持ちを受け取る資格が無い」
「資格がどうとか関係ないだろう! 俺はがむしゃらに頑張ったコウジュだから!」
「でもやっぱ駄目なのさ。俺は自分自身に整理をつけきれていないし、士郎の事は好きだけどちょっと違うんだ」
苦笑しながらそう言うブレイバーに士郎は思わず奥歯をギリッと噛む。
何故この子には言葉が届かないのだろうか、何故悲しそうにしながらも温かい目を俺に向けるのだろうか。
いつも士郎はそう思ってきた。
初めての邂逅、その時はただ単にきれいだと思っただけだった。そこからは各サーヴァント達との血みどろの戦いだった。命を奪ったことに涙している姿を見た時は何故か意図せず抱き付いてしまった。でも改めて思うと最初から、心奪われていたのだろう。
身に合わない力を持った優しい小さな英雄は、只管にがむしゃらに頑張ってきた。
そしていつしか、士郎は自分の気持ちを自覚した。
だが時は残酷だ。
ブレイバーの身体は次第に薄れ始めていく。
それを見て士郎はブレイバーに抱き付いた。
「うわっぷ、何するんだよ!?」
「俺は好きだった。それだけは覚えててくれ」
「…ったく、あんたも変なのに惚れたなぁ馬鹿マスター。うん、絶対覚えてるさ。けど約束は守れよ」
「分かった。自分も一緒に救える正義の味方になってみせるさ」
「うん、なら良い」
ブレイバーが士郎の身体を優しく押し遣る。
そして笑みを浮かべた。優しい笑みだ。いつも彼女がする様なふざけるような笑みではなく、優しい、優しい笑みだ。
「じゃ、さよならだ。本当はもうちょっと心残りがあるけど、仕方ないしな」
「今本音を言うのかよ。いつもコウジュはずるいなぁ…」
「ふふん、普段位ふざけないとやってらんねぇのさ。頑張れよ、士郎」
「ああ、それじゃあなコウジュ」
テテテテーテーテッテッテテー♪
「って、あれ消えない。しかもメール…?」
「ど、どうした!?」
「いやなんかおかしくてって………っはぁああああああああああ!!!??」
「なんだ!?」
「あぁ、いや、なんか、聖杯戦争に勝った士郎君にご褒美ってことで暫く俺の残存決定だとか……」
「メールでそんなことまで教えてくれるのか、聖杯ってすごいんだな…。でも、そっか、残存か」
「っておい、何で嬉しそうなんだよ」
「な、何でも無い…ぞ?」
「何でも無いならその笑みを止めろ馬鹿マスター!!!!」
○サーヴァント:ブレイバー(コウジュ)
この後10年の間現世に留まり、衛宮士郎と共に世界各地でいくつもの事件に遭遇。その時味方につけた力ある者達と共に、ブレイバー消滅後に再び再召喚しコウジュを受肉させることに成功する。
その後どうなったかは、本人達のみ知るところである。
いかがだったでしょうか?
裏設定?的なものを言うと、イリヤに召喚された時とは違い練習期間が無かったためぶっつけ本番でランサー戦。その後も戦いながら成長するしかないというハードモード設定。
無理矢理龍脈にパスを繋げるなんて馬鹿もやってないので、魔力の自然回復速度は速いもののキャパはそれほどでもないのでそれほど大規模な破壊は行えません。後半で徐々に能力の使い方を覚えるものの、暴発の危険性があるとい諸刃の剣。バーサーカー先輩相手の時も書いてませんが自ら爆弾になる勢いで死にながら殺し続けるという妄想。
そして、それでも突き進むコウジュに、正義の味方志望の士郎君が思いを寄せる…かも?って程度の話です。
要望に合ったので士郎君がコウジュを好きになるという体で書いたのですが、理由は自分に似た『誰かを救いたい』という願いを持つが根本が違うという姿が気になっていくという感じで書いてみました。
こ、こんなのでよろしいでしょうか…?
こんなの士郎じゃない!なんて言葉も出るとは思うのですが、ここは一つifのお話と言うことでお許しください。
そして話は変わるのですが、皆様にお読みいただき評価なども頂いたことで暫くの間日間ランキングに乗ることが出来ました!
ランキングに乗ることを目標に書いている訳では無いとはいえ、やはり心から嬉しいもので、ランキングを見ながらニヤニヤしてしまいました。
改めまして、当SSを読んで頂きありがとうございます!
今後とも楽しんで頂けるよう精進したいと思います。
それでは、少しの休息を頂いた後、次シリーズを書かせて頂こうと思います。いつになるかは分かりませんが、それほど遠くない内に書きたいとは思うのでよろしくお願いします!