テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回は銀座事件後のお話です。
これでやっと門を潜れます。


『stage4:そうだ、異世界へ行こう!』

 

 

 

 

 銀座事件。

 それは突如東京都中央区銀座にあらわれた門を起点として起こった事件の名である。

 

 地図には無い門の向こう側。その地より訪れた数多くの異形や兵士たちは銀座において数多の被害者を出した。

 被害者の数は数千に上り、死者に関しては百人近くとも言われている。

 ゲート関連の報道は連日行われ、現場に居た一般人の撮影によるものや店頭カメラ等で取られた映像はその悲惨さを全国に知らしめた。

 映し出された映像は様々だ。

 豚顔の異形が剣を持って人に斬り掛かるもの。大きな怪物が丸太のような棍棒で車や建造物を破壊するもの。騎士が持っていた槍で人を突き殺すもの。

 放送される際はモザイクなどの加工がされているとはいえ、その壮絶な状況はテレビを通して垣間見えた。

 しかし、その映像の中で時折不可思議なものが映るのだ。

 氷塊の中に閉じ込められた異形の数々。時折痙攣しながら地面に倒れている騎士。何故か息も絶え絶えな多くの存在。そしてその間を駆け抜ける影。

 その答えはSNS等の規制が比較的後手に回る情報共有システムに慣れ親しんだ者や、ネットにおける某掲示板を見ている者などが知っていた。 

 幼女、いや正確には幼女っぽい何かだ。

 携帯電話や画質が落ちる店頭カメラではあまり画質がよろしく無い為、小さな影としか見て取れない。また、時折立ち止まるも基本的に素早く動くその人影は低画質のカメラでは追いきれない。

 それでも世には無駄なことに力を入れる存在(シンシ)が居るため、銀髪の幼女っぽいという所までは特定されてしまう。何故か報道では流されない情報だが、ネット社会における利点であり弊害か、その情報はすぐさま全国を駆け巡った。

 そしてその幼女が何かをすると敵が倒れて行くのだ。

 時には体を震わせながら地に倒れ、時には凍り付いて氷像となる。緑と白に彩られた杖っぽいものを振った瞬間に血を流して倒れている被害者が立ち上がった映像もあれば、逆に精気を吸い取られたかのように突然地に沈む異形の姿もあった。

 あまりの意味不明さに当初は悪戯かよく出来た加工映像だとされ流されていたが、すぐさまそれが本物であるとされた。

 実際に救われた何人かが証言したのだ。そして感謝の意を告げたいという言葉がいくつも出てきた。

 それが何者によるものなのか、一部を除き、その正体は未だに明かされていない。

 

 そんな幼女とは逆に、報道においてその名が何度も上がった者も居る。

 伊丹(いたみ)耀司(ようじ)、自衛隊三等陸尉。その活躍により二等陸尉となった男だ。

 東京銀座において、逃げ惑う人々を咄嗟に皇居へと誘導して立てこもり、警察や陛下の助力もあってだが数多くの人を救った“二重橋の英雄”。

 彼の姿に関してははっきりと報道もされていた。

 見た目だけで言えば、30代前半の普通な男性だ。特に身長が高い訳でも無く、筋骨隆々という訳でも無い。

 だがそんな彼の閃きによって救われた人は数千人にも上る。

 そんな彼は今、銀座事件から数日の時を経て、特地と名付けられた異世界へと派遣されることとなった。

 

 特地出陣式、それを以て自衛隊は門の向こう側へと向かうことになる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「はぁ……」

 

『なんだよ先輩、行きたくないのかい?』

 

「ったりまえだ。最近ついてないよほんと」

 

『はは、俺がついてるって』

 

「憑いてるの間違いだろ」

 

『違いない。…っと』

 

「伊丹二等陸尉質問か!?」

 

「何でもありません!!」

 

『大変だねぇ。ほんと』

 

 誰の所為だと怒鳴りたいがそれもままならず、もやもやしたものを抱えながら改めて姿勢を正す。

 今はゲート内部へと向かう部隊の一員として並んでいる所だ。

 

 そして先程から頭の中に響く声、これはすぐ近くに隠れている後輩のものだ。ありきたりな名前だが念話というものらしい。

 ただ、これには欠陥がある。向こうからの一方通行でしかなくこちらは肉声なのだ。

 あの銀座騒動の中で使われたやつだが未だに慣れないし、微妙に使えない。直接言ってやったら涙目になってたのが印象深い。

 まぁそんなわけで小声で返していた(どうやっているのか後輩は聞こえるらしい)のだが上司に見つかってしまった。というか隣の人間すら気づいてない位の小声なのに何故バレたんだ。

 

 それにしても、はぁ…、どうしてこうなってしまったんだろうか。

 

 ことの始まりはあの銀座に居合わせたことなのは確実だろう。

 夏の祭典に参加しようと後輩とそこに居ただけだったのだが、突如現れた異世界へとつながるゲートからなる一連の騒動に俺は巻き込まれてしまった。

 色々あって避難誘導やら救助活動やらをしている間にどこかのバカ後輩や基地に居た自衛隊員の援軍によって事態は収束したのは良いが、今じゃ英雄呼ばわりだ。

 俺なんかを英雄呼ばわりしなくても良いのに困ったものだ。むしろしないでほしかった。

 英雄というプロパガンダを必要とするのは分かるし、論功行賞を怠る訳にはいかないのもまぁ理解はできる。だが納得し辛い。おかげで次の祭典に参加できるかも怪しくなり始めている。

 どこかから俺へと話しかけている後輩辺りにでもその役目を与えてくれればよかったんだが、実はこいつ、現在雲隠れ中なのである。

 

 あの事件からすぐに後輩の正体は各上層部に知られるところとなった。

 在籍していた大学、住居、職場、あらゆる情報を取り逃すまいと様々な組織がそれぞれの思惑を抱えて捜査していたらしい。

 しかしいざ調べてみると割と情報は出てくるのにとうの本人は全然見つからなかったそうだ。その捜査中も各地で目撃情報が出るのにまったく捕まえられなかったそうな。あいつバーサーカーじゃなくてアサシン名乗ればいいのに。

 さておき、当然調べられた中には俺との交友関係も含まれていたわけで、当日に一緒に居た所までをも知られていた。英雄という扱いをしておきながら容疑者を尋問するように尋ねられたものだから堪ったものではない。まぁそれに関しては後輩(の知り合い)から祭典の御宝を回してくれることで話が付いたから良いが。

 ただ、よくよく考えればあの容姿は目立つ(良い意味でも悪い意味でも)筈なのに、精々がかわいい子が居るという噂程度で落ち着いていた。それは明らかに不自然だ。俺自身、改めて考えて初めて分かったのだが、それもあいつが何かしていたのだろう。

 そしてそんな後輩をそう簡単に探せるわけもなく、本人は悠々と今俺の近くに居る訳だ。

 今から門をくぐるっていうピリピリしてる部隊の近くでどうやっているのやら。

 

 そういえば、以前に後輩の家に一度訪れたことがあるのだが地味に後輩は良い所に住んでいた。今はどうなっているのだろうか。

 実は後輩、俺も何度か訪れたことがあるのだが億ションとまではいかないが一等地にある高級マンション在住なのだ。

 それでも何故か後輩はコンビニでバイトをしていたり、その他にもあいつは造形師の真似事らしきこともやっていたがな。深夜にたまたま立ち寄ったコンビニで後輩が品出しをしていた時は本気で焦った。

 造形師に関してはどうやっているのやら、本人は企業秘密だとか言っていたがそれなりの値が付くレベルのものを造っていたらしい。かくいう俺も実は、好きな魔法少女物のフィギュアをオーダーメイドで作ってもらったことがあるのでレベルが結構高いこと自体は知っている。

 だからまぁ後輩はそれなりの資金を持っているはずなのだが、口座の凍結とかされてしまえばそれも意味のないものになっている可能性がある。

 考え出すと心配になってきた。

 すぐ近くに居るってことが無事な証拠ではあるし、時たま念話が来てたから安否確認はできていたが後輩の姿自体はあの銀座以降見ていなかった。

 

「……なぁ後輩」

 

『何かな先輩。また怒られるよ?』

 

「分かってるよ。だからとりあえずはこれで最後だ。ちょっとだけ姿見せてくれ。無理なら構わない」

 

『ん…、まぁ先輩になら構わないか』

 

 少しの間が空いたことから後輩でもそれなりのリスクがあることなのだろうか。求めた俺自身が言うのもおかしな話だが大丈夫だろうか。

 しかし了承自体はしてくれたし、俺にならと言ってくれたことには嬉しく思う。先輩後輩だけでなく趣味仲間として数年来の付き合いであるし、最近の事で妙に遠い存在のように感じていたから余計だろう。

 

 そこまで考えて自分らしくない思考に苦笑してしまう。この後輩と関わり始めてからは調子を崩されっぱなしだ。

 

 

 

「―――――全員乗車!!」

 

 響く声にハッと意識を再起動する。

 なんとか周りに合わせて装甲車へと乗車するが、したところで後輩に言った言葉を思い出す。

 あ、やっべ。そう思うももう遅い。

 何とか座席に座ったまま不自然の無い程度に外を見るが、その狭い隙間から覗けるのは精々が街路樹程度だった。

 

『んと、あ、居た居た先輩こっちだよ』

 

 そう頭の中で言われるも見ることが出来るのは街路樹のみ。一応見て見るもそこには誰も居ない。

 

『あ、そのまま見ててね。一瞬だけ解くから…』

 

 え、解くって何を? そう聞きたいも、向こうからの一方通行でしかない念話ではそれもできず、そのまま見ることしかできなかった。

 しかし見ていると、街路樹の枝の上に変なものが現れた。

 

「畳を背負った狐…?」

 

「伊丹二尉…頭でもぶつけたんすか?」

 

「……」

 

「痛った!?」

 

 いや俺も何を言っているんだと思うが今そこの街路樹に居たんだよ。もう風景に溶けるようにして消えたが。

 それを見て言葉をこぼした俺は悪くない。なので俺を変なものを見る目で見た目の前の同僚にデコピンを喰らわせる。

 

 しかし一体今のが何だと言うんだ。

 あれがコウジュ? いやいやいや、ファンタジーな見た目だがあれでも一応人類の姿をしていたぞ。なんだよ畳を背負った狐って。

 

『あ、見えたみたいだね。さすがにこれ以上は見せてられる余裕はないから、向こうで会った時にでも改めてってことで!』

 

 あ、本当にあれが後輩なんだ。ただでさえ小さかったのにさらに小さくなって可哀そうに。

 とまぁ現実逃避はさておき、どうやら今見えた畳を背負った狐が後輩のようだ。確かにあの銀色の毛並みは後輩の髪色を思い浮かべさせる。

 しかし確かにあれでは上層部も捕まえられない筈だ。どこの諜報部が失踪した人が狐になってるなんて思おうか。

 そう言えばいつだったか、どこの英霊なのかを聞いた時に異世界のビーストって種族だとか言ってたな。ビーストって直訳すると獣だし、そう言う意味だったのか。倉田辺りが聞けば喜びそうなネタだ。

 畳に関しては意味が解らんが。

 

 うん、あまり考えると頭が痛くなるし、後は実際会った時に聞くことにしよう。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 先輩との念話を切り、ちょこちょこっと地面を走って近くの車の荷台へと飛び乗る。

 周りを確認すれば武器やら装備品を運ぶための車らしく、この車に乗ってる人は運転手のみのようだ。

 それを確認したところでぷはぁと息をこぼし、気を張るのをいったん止めた。

 この装備はほんと燃費が悪い。そう考えながら改めて、鏡面の様に磨かれた武器の表面に映る自身の姿を確認する。

 

 はいそうです私が畳を背負った子狐さんです。

 

 さて、まずは俺が何故子狐なんてものになれるようになったかから始めようか。

 と言っても簡単に言えば覚えた聖杯の泥を使ったってだけなんだけどね。

 そのまま聖杯の泥というのもややこしいので何か名前を付けたいところだがさておき、この泥めっちゃ優秀なんです。

 

 この泥、どうやら何にでもなる性質があるらしく形を定めるとそのしたい物になるようなのだ。ついでに言えば覆ったものの性質を変えるなんて効果もあるらしい。

 例えばこの泥を使ってフィギュア状になるように形を整えて、その後でこれはフィギュアだって願えば(思えば)そのフィギュアになる。ちゃんと材質とかもフィギュア用のもので再現されるのだ。副業を思いついた瞬間である。

 ただ、これは俺の『幻想を現実に変える程度の能力』のダウングレード版の様なものらしく、俺の想像力や集中力に比例して出来上がりが変わる。

 初めの頃は役に立たないと嘆いたものだ。

 なにせ俺は既に投影を覚えているから剣などの武器を産みだすならそれを使えば良いし、想像力に依存しているから俺が知らないものや複雑なものは産みだせない。そして集中力も必要だから咄嗟に使用できるものでもない。瞬時に使おうとしてもぶっちゃけ俺じゃ泥を形にする前に自分で突っ込んだ方が早い。

 だがある時、この泥に覆った物の性質を変える効果もあると気づいてからは認識が変わった。

 切っ掛けは厨二ごっこをする為(現代社会におけるストレスを発散する為)にその泥を両手に纏わせ腕だけ獣化した時の手にしてモンスターな王女様の漫画に出てくるリ○・ワイ○ドマンごっこをしていた時のことである。

 関節の位置がおかしかったのだ。

 俺の低身長のまま腕だけ獣化させると、獣化した際の身長は2m超えだから中に在る筈の手首の位置や肘と外に来るそれぞれの関節の位置は違ってくる。

 だけど何の問題もなく俺は動かせた。何度もポーズを取ったから気付いたのだ。

 そこから何度か実験した結果、この泥は覆ったものであっても性質ごと変わると気づいたのだ。

 フォークを包んでナイフにするとかできます。実用性があるかはさておき。

 しかし、これは俺にとって大きな進歩だ。

 今までも『幻想を現実に変える程度の能力』を使ってはいたがこれは十分な想像力が無ければ失敗するか残念な物しかできなかった。精々が外堀を埋めることでそれになりやすくする程度だった。

 だが、ダウングレードされた泥は目の前に物がある分想像しやすい。直接手で触ってこねくり回すことが出来るのも大きいだろう。

 ふとその自分を客観的に見たら泥んこ遊びに興じる幼女の図だなとも思ったが、ボッチで部屋で遊んでるのだから誰に見られるでもないし迷惑もかけないので気にしないことにした。ボッチの特権だ。

 

 さておきその実験の結果分かったのが――、

 

 1:泥を基に作ればその作りたい物の性質になる。

 2:難しい構造の物、構造が理解できない物は作れない。

 3:元々形あるものを覆った上で変化させればその覆った物ごと性質が変わる。

 4:基本的に生物を覆い性質を変えることは出来ないが、自分であるならばある程度の性質変化が可能である。ただし性質が離れすぎているものほど難易度が上がる。

 

 ―――といったことだ。

 

 つまりこの泥の性質変化を使って狐に化けているのである。

 全身を泥で覆って、ギュッと圧縮して、ポンで変身だ。なんと使い勝手のいいことだろうか。

 最初は何度か失敗して、というか余計なことを考えた所為で、某忍ばない忍者漫画の砂瀑送葬をセルフでやる感じにブシャァとやっちまったが今では狐になるのもお手の物だ。オソウジ大変でした。

 ちなみに今成れるのは狐、狼、猫の3種にそれぞれの子どもverだ。

 ただ、現状成れるのは普通の動物の狐猫狼。

 男としてはやっぱり竜とか、あとは貰ったPSPo2iにBOSSとして居るヤオロズ様くらいの威厳ある存在になりたいものだが、想像力が足りないのか現状出来てはいない。

 狐狼猫の3種に関しては獣化で成れるものだから出来ているのかもしれないが、ひょっとすると他にも条件があるのかもしれない。

 いやだって、これ使って意気揚々と男になろうとしたんだが出来なかったんだよ。

 元男なんだから男に関しての知識はあるし、中身が男だったわけだから因子的なものもある筈なんだが、成れないのだ。一瞬世界滅べと呪いそうになり踏み止まるのに苦労した。

 意気揚々と言った程度には確信があったのに何故だ。確信があるほど出来る可能性が増える筈の『幻想を現実にする程度の能力』なのに、だ。

 しかしここで諦めたら男が廃る。

 脱幼女! 幼女は愛でるものであって成るものではないのだ!

 きっと何かしらの条件か経験値が足りないだけだろう。

 

 そんなわけで、狐になる能力を手に入れたので逃亡生活中に外を出歩く際はそれぞれの動物の姿でうろちょろしているのだ。

 狼や猫じゃないのは野良が襲ってくるからだ。しかも発情した状態で。

 あの恐怖は今でも忘れない。

 襲われそうになった時は変化を解くことすら忘れて全速力で逃げたものだ。

 身体能力も普通の動物程度になっているからマジで焦ったよ。

 

 そんな狐モードだが、抜け道を俺は見つけた。

 それが畳を背負っていた理由である。

 

 シールド系Bランクダウンロードアイテム『タタミガエシ』。

 テキストに書かれているのはニンジャが使っていたらしいこと、そして身を隠す効果があるということ。

 いつものごとくゲーム内ではそんな便利な能力は無かったが、それを使えるのが俺の能力。

 ついでに言えばこの盾には回避力アップの効果が付いているので、これを背負うだけであら不思議、アサシン狐の出来上がりである。そしてアサシンカードリストラの瞬間でもある。

 まぁよくよく考えれば身体スペックが普通の狐やらになっていても中身は俺なのだから能力とかが使えなくなっている訳がないのだ。さもないと一度でも動物モードになった瞬間、戻るために能力を使えなくなっているわけだから詰みである。動物エンドとか誰得だ。

 

 話が逸れまくったが、この動物モードと能力の同時使用、そしてそもそもがマイルームやどこでもドア擬きを持っているのだから俺が捕まる訳がない。

 

 そもそも何で俺を追いかけるのか。

 いやまぁこの現代社会において俺の力が異質なのは分かるけど、何で家でゆっくりしてたら特殊部隊みたいなのが突っ込んでくるのか。敵かと思って全員伸しちゃったじゃないか。

 それ以来である。追いかけられているのは。

 何度か先輩や俺の周囲の人を人質にして俺をおびき出そうとした連中も居たが、そんな外道も今では一条祭りの中である。一応生きている筈だけど、これ以上増やしたくないものだ。

 現在では、一番仲の良かった先輩の周りを密かにマークして泳がしている状態のようだ。俺にばれている時点で密かではないけど。

 けどそれの方が俺もやりやすい。それに狙い通りでもある。

 実は逃亡中に先輩の周りに痕跡が残るように動いていたのだ。

 御陰で追手のほとんどが先輩の周りに集中している。

 ただ面白いのが、俺としてはバラバラに動かれるより纏まってる方が対処しやすいと言った程度の思惑だったのだが、俺と先輩との仲がバレたのは先輩の事が全国放送で紹介された後だったからか英雄状態の先輩を直接どうにかすることもできないで居るようで、思わぬ膠着状態を生み出している。

 このまま俺なんかに構わず差し迫った危機の方をどうにかしてほしいものである。

 まぁもしも先輩以外の人を襲おうとしたら密かに置いてきたプチ一条祭りさんが何をするか知らないってだけだ。

 ほんと未だにあれの中身が分からないのだが俺の思った様には動いてくれるので助かっている。あまり考えるとSAN値下がりそうだから思考放棄してるわけではない。

 

 んで、そんな風に時には追手を躱し、時には外道にOHANASHIし、たまに先輩とお話しながらのらりくらりと逃亡生活をし、そして今日ここに至るのだ。

 逃亡中に先輩が出世したことを知ってお祝いの言葉を贈ったが、ついでに特地送りだとか事情聴取されただとか恨み言を言われたのももう何日前だっただろうか。御宝を渡すからと言えば許してくれたけどね。先輩マジちょろい。

 とはいえ先輩と契約が成立しちゃってる以上、先輩だけを特地とやらに送り出すわけにはいかない。

 だから俺はついていくことにした。マスターを戦場に行かせて自分だけ安全地帯(まるっきり安全ではないけど)に居る訳には行かないだろう。

 別にサーヴァントとしての誇りだとか騎士道精神的な高尚なものではない。

 先輩にはとてもお世話になったのだ。そんな人を知らぬふりはできない。

 だから、行くと決めた。

 

 あの時密かにイリヤに誓ったように、俺はまた誓おう。

 先輩を無事に連れて帰る。

 それだけは貫き通す。

 覚悟しろ異世界、俺の日常(フリーター生活)を邪魔した報いを受けさせてやる。

 

 

 

 

 

 

 ところで運転手さん、もうちょっとゆっくりお願いします。

 今子狐モードなので三半規管が、うえっぷ、出る、出ちゃうから!

 

 




いかがだったでしょうか?

少しごちゃごちゃした解説もありましたが、これでゲートをくぐる準備が出来ました。

さぁヒロインに会いに行きましょう!

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