テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
今回も短めですが、お盆辺りはもう少し書きたいところ……。
さておき、どうぞ。
「……どうしたもんかねぇ」
「伊丹隊長、狐ちゃん盗られちゃいましたね」
「うるせぇ」
隣で運転する倉田に目も向けずそう口にした俺。
あの焼け落ちた集落からコダ村へと戻っている訳だが、バックミラー越しに後方を眺めながら面倒なことになったものだと溜息をつく。
後方で繰り広げられているのは、後輩(子狐)を抱え込むようにして座席の上で丸まっているエルフの少女。腕と胸で挟まれている狐の顔が妙にほっこりしているので若干腹立たしかったりする。
その様子を見てまた一つ溜息。
視線を遠くにそびえる山々へと向けながら、どうしてこうなったと反芻する。
あの井戸を覗き込んだ時、そこに居たのは後輩とその後輩を頭に乗せているエルフの少女だった。
当然そのままにしておくわけにはいかないので二人を持って来ていたロープを垂らして救出したは良いが、そこで問題が起こってしまった。
というのも、あの集落はほぼ全てが燃え尽きてしまっており、見つけた生存者と言えば井戸の底に居たエルフの少女只一人。そんな彼女が井戸の底から出てきたらどうなるかなど想像に難くない。
彼女は井戸を出て周囲を見回すなり何かを叫びながら走りだし、念のため追いかけるも敢え無く巻かれてしまった。しかも後輩を抱きかかえたまま。
後輩からの念話で何とかしてみると言われたが、それもまた難しい話だ。
俺は後輩がサーヴァントという超常の存在であることを知っているが、他の隊員からしてみればただの子狐を手に走り去ってしまったエルフ少女という場面でしかない。それに後輩一人に任せておくのもまた心配だ。因みに何かやらかすのではないかという意味である。
そんなわけで何組かに分かれて周囲を探索するも見つからず、最終的には再び後輩から来た念話頼りにエルフ少女の元へと辿り着いた。
しかし見つけたはいいがそこには不思議な光景が出来てしまっていた。
地面に立てたネギを前に不思議な踊りをする子狐、そしてそれを極微笑ではあるが先程までとは違い多少の明るさを取り戻したのであろうエルフ少女。やはり何かしやがったようである。
そしてそれ以来だ。あのエルフ少女が後輩をその手元より放さなくなったのは。
後輩曰くアニマルセラピーとのことだが、お前はどこまで行ってもあにまる(笑)だ。
とはいえ二十日以降の差異よりは落ち着いているのも確かな為、無理にエルフ少女から情報を得るのも難しいと考えて一先ず部隊はコダ村へと戻ることになった。
そして今に至る訳だ。
「ほんとどうしたものか……」
改めてバックミラー越しに後部を見る。
そこには何処から取り出したのか、葱を口に咥えたままエルフ少女の上で飛び跳ねている後輩。そしてそんな後輩を掴まえようとエルフ少女に詰め寄る形になる黒川。狼狽えるエルフ少女。
なぁにこれぇ。
あまりにも訳の分からない状況に思わず、俺は頭を抑えた。
◆◆◆
どうしよう、エルフさんが俺を離してくれない……。
現在の俺達はエルフの集落からコダ村へと既に戻ってきていた。
そして先輩が村長さんに赤い竜の事を話すと、村の人達は総出で村を捨てる準備を始めた。言葉が俺には理解できないので先輩経由で聞くと、なんでも人の味を覚えた竜というのは遠からずまた人里を襲うのだそうだ。しかも先輩が告げた竜の特徴から、あの時見た竜はただの竜ではなく古龍という種らしく、撃退など考えられるものではないのだとか。
なので今、俺の目の前では村の人達は家の中から必要なものを場所に詰め込み逃げ出す準備をしている途中だ。
そんな中で、俺はギュゥッとエルフさんに抱えられたままだ。
理由はまぁなんとなく察しはついている。
あの時、エルフ少女が焼け落ちた自らの村を見た後に目の前にある現実を否定しようと何かを探し求めるように走り出した。
パニック状態に陥った彼女は、恐らく人の名前を叫びながら未だ火の燻る瓦礫を素手で書き分けたり自らが傷つくことを厭わず周囲を走り回った。
恐らくトラウマ、というやつなのだろう。自分の住み慣れた村が焼け落ちてしまったのだからそれも無理はない。
だから彼女は目の前に広がる現実を否定しようと走り続ける。
しかし俺は生前に友人から聞いたことがあるのだ。現実を否定して自分で自分に嘘をつくとやがて心が壊れると。
その時の友人は実際には色々とどういうことか教えてくれたのだが俺が理解できなかった為、簡単に言えばとそう教えてくれた。
ただ、同時にこうも教えてくれた。
トラウマやPTSDと呼ばれる心的外傷というものは専門家の元で治療して行かないと悪化する可能性があるのだとか。
それを思い出し、俺は歯噛みした。
どうにかしたいと思っても、俺にはそれをする術が分からない。認知療法だとかなんとかその友人が言っていたが、やり方も分からなければ専門家でもない俺にはどうしようもない。けどあきらめたくない。
だから、必死に友人との会話を記憶の海から掘り返した。
そうして思い出したことが一つ。それがリラックスしてもらうこと。
リラックス状態になって貰うことでそのトラウマの原因になることについて自然と考えを持っていかないようにしたり、精神的な疲労感を和らげることで心に余裕を持たせることが出来るみたいなことを言っていた。
ならば、と。
俺は現状における、俺ができる最大限のリラックス効果を発揮する何かを考えた。
そして思いついた。
それがアニマルセラピー、つまり俺自身のモフモフである。
何故そこでモフモフと言う人も居るだろう。
だが、モフモフを見くびってはいけない。
古来より、モフモフとは人の心を掴んで離さない魔性の存在だった。例えば古代エジプトの時代から王族は猫を飼っていたという。ほかにも諸説あるが、約1万年前には既にイエネコは存在していたのではないかとも言われている。犬も同様に、始まりは狩猟犬としての側面が強かったようだがペットとして進化し、1万年前位には飼われていたのではないかと言われているそうだ。
そんな昔からモフモフ達によってもたらされた癒やし力というものは決してバカに出来るものではないと思うのだ。
飽食の時代と言われる現代日本ならいざ知らず、明日の食事も気にしなければならない時代から自分たち以外の食事を用意してまで彼らが求めた
故にこそ、俺はこの身を以てエルフ少女を癒す。
そう思い俺はエルフ少女を落ち着かせるためにアクションを起こした。
勿論容易いものではなかったさ。
まずは気を引くために目の前で狐のフリをして血反吐を吐く思いで可愛く鳴いたり、肉球でペシペシとその柔らかさを知ってもらおうと頑張ったり。
それでもパニックを過ぎ、絶望した彼女の心を動かすには至らなかった。
だがその程度で諦めてなるものかと俺は次の手に出た。
次に考え付いたのは物理的に彼女に元気なって貰う方法だ。
ズバリ
一応井戸の底でも掛けていたのだが、ひょっとすればもっと掛けてみると元気になるかもしれない。人というのは体力が落ちている時は精神的にも追い込まれるものだし。
そう思いいつも杖代わりに使ってる例のネギウォンドを取り出し咥えてレスタを使った。これで少しでも元気が出てくれれば、そう一縷の望みに掛けてやってみた。
一応周りに誰も居ないことを確認した状態で使ったのでばれていないとは思う。
そうして俺とエルフさんと二人して緑色の粒子に包まれていると、成功したのかどうなのか、何とかエルフさんの注意を引くことが出来た。
ただ、ジーッと見るだけで何のリアクションも得られなかった為に断念。
それに子狐モードでネギウォンドを使っていると何故か気分が悪くなってくるのだ。
レスタをしても回復しないし
さておき、エルフ少女の興味を一応引くことが出来た俺は次の手に出た。
日本には天岩戸という伝説がある。簡単に言えば引きこもった女神さまを誘き出す為に扉の前で踊ったりすることで興味を引かせ中から出て来させるというもの。
というわけで俺は踊った。
音楽療法というものも世界にはあるらしいし、偶然にも前世界でダンスや歌に関してはそれなりのものを収めたと自負している。
だから、踊ったのだ。キューキュー鳴きながら。
超踊った。
ひたすら踊った。
途中から変なテンションになって訳の分からない動きもした気がするが、とにかく踊った。
その結果、少しだけだが笑みを浮かべることに成功した。
そこからは全身のモフモフを使って彼女へとダイレクトアタックだ。
するとどうだろうか。
絶望を顔に表していた表情は次第に氷解し多少ではあるが和らいだ。
成功だ。
それ以来だ。彼女は何があろうと放さないと言わんばかりに俺の事を胸に抱き続けているのは。
いや正直嬉しいですけどね。
外側は幼女…どころか狐だけど俺の中身は男なわけで、こんな美人さんに抱きしめられてるなんて男としては喜ばないわけがない。特に未使用のまま無くしてしまった自分としては。
しかし少しやり過ぎてしまったようで、彼女はモフモフに依存性が出てしまったようなのだ。
元気になってくれたのはいいが、このままでは中毒症状が出るかもしれない。
これはまずい。
あくまでもリラクゼーション目的の介入であったのだから違う精神的症状を産みだしてしまっては意味が無い。何とかできない物か……。
一番なのはやはりそもそものトラウマを克服してもらうことなのだが、先にも言ったようにそれは専門機関においてしてもらう必要があるものだ。素人がおいそれと手を出して良い分野ではない。
見習いとはいえ神様になったのだからそれくらいできるようになりたいものだ。
そういえばどこぞのドワーフに育ててもらった少年が言っていたっけか、“目の前の女の子も救えずに世界なんか救えるかよ”と。
確かにその通りだ。たった一人の少女も救えずに何が神か。
貰っただけの能力ではあるが、それを育てるのは俺自身。
ならば、出来る限りのことをしよう。
だからまずは、この少女の腕から逃げることから始めよう。
頭の上に行くために抜け出すのは許してくれるのにどこかへ行こうとするとすぐさま捕まえてくるのだ。
これでは何も出来ない。
元気になってきてるのは嬉しいんだけどね!!!
◆◆◆
ゴスロリ様は本当に存在したのか……。
いや、頭がおかしくなったとか幻覚を見ているとかではなく、炎龍の事を告げた途端に村を避難することに決めた村人たちを放置するわけにもいかず同伴して道を行く途中に見つけたのだ。
徒歩や荷馬車の速度に合わせながらゆっくりと進んでいる途中、前方にやけに烏が集まっているため双眼鏡越しに前方を見ればしゃがみながらこちらを見るゴスロリ様。
フリルの多い服に、腰よりもなお長い黒髪、所々に赤いアクセントがあるが黒一色に染められたその容姿は等身大の球体関節と言われても信じて疑わないほどに美しいものだった。
容姿に反してどこか凄みや妖艶さを醸し出すその雰囲気もまた、容姿を後押しする一因でしかない。
とはいえこのまま放置するわけにもいかず、かなりの距離があるが視線はこちらを見ているようだし景色を見ている訳でも無いようなので近くまで行った後は隊員二人に事情を聴きに行ってもらった。
一応片言ではあるがこちらの言葉を話せる筈なのだが、どうにも少女には通じない。
二人の言葉が聞こえていないかのように黒ゴス少女はこちらへと近づいてきた。
「サヴァール、ハル、ウグルゥー……?」
“こんにちは、ごきげんいかが?”とこちらの言葉で問いかける。
しかし少女は微笑むばかりで何も言わない。
しばらくどうしたものかと悩んでいると、少女は唐突に後部に乗って貰っていたコダ村の子ども達と話し始めた。
何を言っているのかは分からないが何やらテンション高めに少女に何かをいう子ども達。
よく見れば足が悪いなどの理由であまり動けない老人の方々は少女の方を向いて拝んでいる人(特地なりの様式で)まで居る。
え、さっきから冗談半分にこの美少女をゴスロリ様とか言ってたけど、マジで宗教的に偉い人?
そう割とまじで焦っていると、少女は斧を後部に回って乗せると再び俺が座る助手席側へと回ってきたかと思うと乗り込んできた。
いやもう乗るとこないから!
そう言うも咄嗟の事で日本語で話してしまい、というか特地の言葉でも聞いてくれたかどうかは分からないが構わず少女は乗り込んできた。
終いには俺の上に乗ってくる始末。
隣の運転席で倉田が羨ましいやら何やら叫んでくるが、お偉いさんかもしれないこの子を無碍に扱うこともできず触る場所を気にしながら少女を除けようとこちらは必死なのだ。反して相手はお構いなしにそこら中触りまくるし、触り方一つ一つがやけに妖艶で心臓に悪い。
何なのまじで。
「シャー!!!」
俺が焦っていると、後部より後輩が吠えるように鳴いた。
吠えると言っても子狐だしエルフ少女に捕まったままなため可愛いものでしかないのだが、その声にゴスロリ少女は動きを止めた。
オメガグッジョブだ後輩。助かったという意味を込めて後輩にサムズアップする。
その様子にニヤリとする子狐後輩。子狐モードでそんな顔をされると微妙に気持ち悪いが、助けてもらっておいてそんなことを言うのも失礼なので我慢する。
さておき、そう言えば件のゴスロリ少女はどうしたのかと思い見てみると、何故か彼女は後輩をジーっと見ていた。それはもう訝しむような目で。
その目に当てられてか、後輩はブルリと身を一度振わせた後エルフ少女の後ろに隠れてしまった。
うちのサーヴァントよっわ!? あの反応もう完全に小動物の動きじゃないか。人類に戻ってこい後輩。
とはいえ混沌とした場はとりあえず収まった。
最終的には俺が少し横に避けることで落ち着いたのだが、このゴスロリ少女は何でまた後輩を訝しむような目で見ていたのだろうか?
ひょっとしてこちらの宗教的な不思議パワーで後輩の正体を見破ったとか? 実際、こちらの世界には魔法もあるみたいだし、実際にこの集団の中には魔法を使える御爺さんと少女が居るらしいし。
まぁこの疑問を解消しようとしても言葉の壁があるから難しいんだけどな。
とりあえずは近くの村か近くまででも村人さん達を連れていくことを優先しよう。
それが今の俺に出来ることだ。
ところで後輩よ、エルフ美少女と黒川という大和撫子美人に撫でられて良い御身分だなぁおい。
お前のサーヴァント設定どこ行ったよ。
いかがだったでしょうか?
漸くゴスロリ様の所まで来れました。
しかしながらどうやら初邂逅は失敗の様子。
今後どうなるか、うまく書いていきたいところです。
それではまた次回!
P.S.
評価で原作詐欺と頂いたのですが、注意事項や以前に書いた理由で一先ず原作はPSPo2で行こうと思います。他のクロス作品を拝見させて頂いても同じようにしていらっしゃる作者様も居らっしゃるようですので。
ただ、進行している元作品を原作にしている方もいらっしゃるようですので、今後の進展によっては改めて対応したいと思います。