テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

お待たせいたしました、ついにドラゴン戦に突入です。


『stage8:一狩り行こうぜ!!』

 

 

 

 日差しの強い中、草木も生えない岩石地帯を行く集団があった。

 その集団の先頭に居るのはHMVと呼ばれる高機動車や軽装甲機動車。その後ろに続くのはコダと呼ばれる村に住んでいた人々。

 コダ村の住人達が何故揃ってここに居るのか。それは高機動車(HMV)に乗る自衛隊から彼らに伝えられた情報故にだ。

 炎龍がエルフの里を襲った。

 それを聞き、慌ててコダ村の住人は逃げ出す準備をした。

 当然、自衛隊の面々はなぜ逃げるのかと問うた。

 それに対しコダ村の村長は人の味を覚えた炎龍は再び人を襲うと告げる。

 だからコダ村の面々は今こうして当て所も無い旅路を行っている。

 彼らも出来るものならこんな事はしたくない。現代日本とは違い、馬車があるとはいえ生活に必要な物を持ち出すのも一苦労だ。

 しかし、命より高いものは無い。命あっての物種。長年生きてきた村を捨ててでも、彼らは生きるために道を進むしかないのだ。 

 そんな彼らを、自衛隊の面々は見捨てることが出来なかった。故に、随伴するように安全だと判断できるところまで同行している。

 

 そんな彼らの中でも一番前を走るHMVの中で、とある言い合いが始まっていた。

 

 

 

「ねぇ、そこに居る獣なんだけどぉちょっと見せてもらえないかしらぁ?」

 

「駄目……」

 

 子狐を抱えるエルフの少女に向かって問うのは黒いゴスロリ服を着た少女だ。エルフの少女の名はテュカ・ルナ・マルソー、ゴスロリ服の少女はロゥリィ・マーキュリー。彼女らはHMVにおける座席越しに言い合いをしていた。

 

「何で駄目なのぉ?」

 

「駄目ったら、駄目……」

 

「もぅ、その子何か変よぉ?」

 

「それは……そうだけど…」

 

 テュカが手の中に居る子狐を守るように抱きしめる。

 子狐はこの状況から逃げたいのかジタバタとするが、体格の差が歴然である為それもできない。

 その様子を見て、ロゥリィは再びジトっとした目を向ける。

 ロゥリィは死と断罪を司るエムロイの使徒にして亜神。そんな彼女は魂の素質というものにすごく敏感だ。その感覚において、エルフの少女に捕まっている小動物は明らかに異質。彼女とて目に映るすべての生物の根幹を見て取れるわけではないが、それでも目の前の小動物から感じられるそれはその見た目に有り余るものを内包していることが分かる。

 例えば、目の前にコップがあるとする。しかしその飲み口から覗き込んだ中身は湖の様に膨大なものが映っている不自然。千年に近い時を生きてきたロゥリィ自らの感覚ではそのように感じるのに、しかし客観的に見ればただの小動物だ。

 それ故にロゥリィはつい顔を顰めてしまう。

 疑問を解消するためにエルフの少女からその小動物を取り上げるのは正直容易いが、それは自身の生き様に相反する。

 故に彼女は同時に苛立ちを覚える。

 生来からして好奇心旺盛と言われてきた彼女にとって、気になるものが目の前に合ってそれを解決する方法もあるのにそれを成せないというのは只々ストレスの貯まるものだ。

 

「その小動物ってぇこの人達が連れて来たのぉ?」

 

「たぶん、そう」

 

「ふぅーん……」

 

 ロゥリィの言葉に短く答えるテュカ。

 その言葉にロゥリィは一つだけ合点が行った。

 この緑の服を着た人々は異邦人なのだろう。そしてこの小動物もまた、彼らに連なるもの。そう納得した。

 でなければおかしいのだ。

 何故なら、そもそもがこのような動物はこの世界に存在しない(・・・・・)生物。

 確かに似たような生物なら居るため変異種だとでも言われてしまえば納得せざるを得ないが、だがそうであるならばその内に秘めたモノがおかしい。

 だから、一先ずは異世界からの来訪者である故の存在としてロゥリィは納得することにした。

 そうでもしないと気になって仕方がないのだ。

 何故このような何の力も無さそうな小動物からロゥリィ自身、いや、自らが崇める神に近しい気配を感じるのか。その謎を解明したくて仕方がない。靄が掛かったように見え辛いが、だが確かにただの生物ではないと自身の感覚が告げているのだ。

 しかし、とそこでロゥリィは踏み止まる。

 腑に落ちない点ではあるが、それをするのはやはり自分らしくない。

 ロゥリィがはぁと嘆息をもらす。

 それを見て子狐はびくりと怯えを見せた後、テュカの背後へと駆け去った。

 いや、無いな。

 ロゥリィは子狐の様子を見て疲れているのだろうと思い直す。

 きっと長年相棒としてきた第六感というのも偶には休憩をしたいのだろう。そうでなければこの程度で怯える子狐が尊い魂を持つ訳がない。

 止めようと思いつつもやはり気になってしまう自身の性格を難儀に思いつつも、ロゥリィは意図的にその存在を意識から外すように今度は自身の隣に居る男を見上げた。

 

「な、何?」

 

 ぎこちないながらもこちらの世界の言葉を話す、見るからにうだつの上がらなさそうな男。しかしこの男は周りの人間から隊長と呼ばれていたのをロゥリィは耳にしている。

 亜神であるロゥリィはこちらの言葉でなくとも意味を理解できるが悪戯心が芽生え、ただその男の言葉に意味深に微笑み返した。態々言葉に気を使いながらこちらの言葉で話していたのはこの集団の真意を知るためであったが、ここでネタばらしも面白くない。

 そんなロゥリィに対し男はというと、苦笑いした後に何か間違ってたかなと手元にある小さな本の様な物を見直した。何とも情けない姿だ。

 だがロゥリィは思う。先程の小動物も気になるがこちらの男もまた面白い存在だ、と。

 覇気も何もない様に見える目の前の男だが、ロゥリィの感覚から言えばその在り方がとても好ましいものに観えた(・・・)のだ。

 揺るがなく、自らを貫く魂の輝き。

 面白い。この集団に着いていくことで面白いものが見えるかもしれない。だからもうしばらく一緒に行動することにしよう。

 ロゥリィは自然と笑みを浮かべながら、そう決めた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 やっべぇ、何か知らないけど黒いゴスロリ少女がめっちゃこっち見てる。

 ジッと見たり、ちらっと見たり、見ながら意味深な笑みを浮かべたり、思わずエルフ少女の背中に隠れちまったよ。ごめんねエルフちゃん、盾にしちゃって。

 でも許してほしい。だってなんかおっかないんだよあの女の子。

 なんというか、そう、例の金ぴかとかと相対した時の感覚。

 実際はベクトルが違うと思うんだけど、なんかこう身体の奥底からこいつはやべぇと囁き掛けてくるんだ。

 

 ひょっとして獣の本能ってやつが原因だろうか?

 

 実は、既に20年近い時間を過ごしたこのちーとぼでぃだが、未だにその全容を把握しきれていなかったりする。

 例えば、ラーニングの能力があると言われたが以前見た自身のスペック表にそんなものは無かった。

 一先ず“獣の本能”がソレっぽいと納得することにしたが、未だにその確証は得ることが出来ていない。

 他にもポケットの中の幻想(ファンタシースターポータブル)なんてものを能力としてもらってるわけだが、これもゲームそのままの部分もあれば現実に則した部分もある。

 先日使った地雷(トラップ)もその類いだ。

 持っている人間のステータスによって威力が変わるなんて部分はゲームっぽい仕様なのに、ゲーム内の設定であった三つまでしか同時設置できないという部分は掻き消えている。ちなみにEXトラップも設置個数制限は消えており、又、念じることで起動できる形になっていた。そのくせ自身の職業(タイプ)をブレイバーに変えておかなければ使えないという謎仕様。

 さておき、使い勝手が良いのか悪いのか良く分からないこのちーとぼでぃだが、かといって今すぐどうにか出来るものでもないので諦めるしかないのが現状だ。

 覚えた泥も中々進展が無いし。

 色々と形作るのは大分慣れたのだが、中々中身があるものを造れない。あと性質変化も難しい。

 正直に言えば俺自身の想像力が貧困な所為でこうなっているのだろうけど、でももう少しどうにかなってほしいものだ。

 

 いつだったか、キャスターが俺はルールを変える(矛盾させる)ことが出来ると言っていた。

 泥の性質変化というのもその流れから来るものだろうと思うんだが、これがなかなか難しい。

 泥に性質を与えるのは割かし出来るのだが――と言ってもかなりの集中力が必要だが――そもそも在るものを性質変化させようとする場合だと中々難しい。

 それは自分に関しても言えることで、門を越える前から考えても何も進歩していないと言って良い。

 やはり何か切っ掛けが必要なのだろう……。

 

 と、ここらで現実逃避はやめようかな。

 どうやら『黒ゴス様がみてる』状態は脱したようだ。何かが始まる訳じゃないだろうけど、タイを直されるどころか生き方とか(矯正)されそうなレベルで言いしれない圧力を感じた物だからつい思考の海にダイブしてしまっていた。

 

 さておき、黒ゴス様は次の標的を先輩にしたようだ。

 何やらジーッと先輩の事を見ているが、その表情は面白いものを見つけたと言わんばかりのとてもイイヒョウジョウをしてらっしゃる。俺の時みたいな棘々したものじゃないので若干羨ましい。隣の運転手さんも絶賛羨ましがってるし。今にも血涙を流しそうな程。

 対して先輩はあからさまに視線を黒ゴス様から反らし、景色を見るようにしていた。

 だが視線を反らす先輩を更に面白がって突いたりもたれ掛かったりとして遊んでいる。

 何があの黒ゴス様の琴線に触れたのだろうか?

 確かに先輩は陰でモテてたりする。

 見てくれはお世辞にも良いという部類ではないし、俗に言うフツメンというやつだろう。

 けど、直接関わればわかるがあの人は自分を貫き倒す覚悟がある。普段はまぁ駄目な方向に自分を貫いちゃってるが、いざスイッチが入ると中々に頼り甲斐があるのだ。

 そんな先輩にあの黒ゴス様が気付いた?

 いやでも今さっき会ったばかりなのにそんなの解るものかねぇ。

 うー、なんかもやもやするぜ。

 いやだって先輩の……元嫁さんになってしまうわけだけども梨紗さんの存在を知っている以上、これが変なフラグになっていないかと心配なのだ。断じて他意は無い。

 ハーレムってのも創作の中にはよくある……いやまぁ絶賛士郎君が作り上げてしまったわけだけどもあまり現実的ではない。とりあえず爆発しろ。

 

 とりあえずそんなわけでこの状況を何とかしたい俺。

 

 って言っても、現在進行形で狐モードな俺はエルフさんに抱えられているんだよねぇ。

 バタバタと身体を揺すくってもびくともしない。

 鳴声を上げても首を捻られるだけで放してくれそうもない。ただ可愛い仕草が見られるだけです。

 さて、どうしたもんかねぇ……。

 

 

 

「何だ、あれ……」

 

 ある意味ショウもないことで悩む俺の耳に先輩の声が届く。

 あれって何?

 そう念話で聞こうとするが、それよりも早く先輩が答えを口にした。

 

「おいおいおいこのタイミングでかよ!!? ドラゴンだ!! 戦闘用意っ!!!!!!」

 

 その声に、俺を掴んでいた腕の力が強まった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「くそったれ! 怪獣と戦うのは自衛隊の伝統だけどよ!! こんな開けた所で来るんじゃねぇ!!」

 

 後方の隊列に向かって走り出したHMVの中でおやっさんの声が響く。

 それと同時、後部座席からきゃあと甲高い悲鳴が聞こえた。聞こえた声は恐らくエルフ少女のものだろう。

 急加速した車の勢いで座席から滑り落ちたのかと目をやるがどうやら違うようだ。

 俺が後ろへと目を向けると違和感があった。

 居るはずの奴が居ない。怪我をした老人や体力のない子ども達、そしてエルフ少女や何人かの隊員は居る。だが、エルフ少女の近くに居たはずの後輩が居ない。

 あの馬鹿!!

 そう口に出しそうになるも一人飛び出すわけにもいかず、各員へ小銃の準備をするよう伝える。

 しかし、素早く準備を終えてドラゴンへと各車両が走っていけば、異様な光景が視界に入った。

 降り立つなり炎を吹き出し、もしくはその爪や咢を以て村人を襲っていたはずのドラゴンが人々を襲わず周囲から湧き出るようにして出てくる黒い泥の様な物を相手に戦っているのだ。

 泥は不完全な形で剣や盾になりながらドラゴンを襲っている。

 それに対しドラゴンはその巨体と堅牢な鱗の鎧を武器に、形作られる武具を尽く破壊していく。

 一体何が起こっているというのだろうか。誰もがそう思っていることだろう。

 俺自身、あまりにも現実離れしたその光景に思考が一瞬止まってしまう。 

 しかしすぐさま思考を再起動させよく観察すれば、その作られゆく武具ではドラゴンに傷一つ付けることはできておらず、形が武具というだけで簡単に崩されていくところが見て取れた。正直なことを言うと見た目に反してあまりにも心もとない。

 だが、その心もとない泥の武器たちの御陰でドラゴンはそれを壊すのに意識が取られ、周囲からは人々が何とか逃げることが出来ていた。

 

「い、伊丹二尉! 何すかあれ!? このまま近づいちゃって大丈夫っすか!!?」

 

 ドラゴンに向かって運転しながらも弱音を吐く倉田。

 倉田もこの光景に思わず思考が止まっていたのだろう、思い出したように聞いてくる。

 

「大丈夫だ! あの泥は味方だ! 一先ず各車両は人命救助優先で、俺達はドラゴンの周囲を走って牽制!!」

 

「りょ、了解っす!」

 

 俺は倉田に、何事も無いように返す。

 あの泥には見覚えがあるのだ。

 あの馬鹿がいつだったか変身する時に使っていたやつだ。

 だからあそこに居るのは、ここに居ないあの馬鹿後輩なのだろう。

 どこに行ったかと思えば……。

 

「それにしても、二尉はあれが何か、うお、知ってるんすか!!?」

 

 ドラゴンより吐き出された流れ弾()を上手く避けながら聞き返してくる倉田に心の中で賞賛を送りつつ、どう返したものかと悩む。

 再びドラゴンの方へと目を向ければ、その周りを翻弄するように走り回る銀色の子狐らしきものが居るのが見える。俺はあいつを何と紹介すればいいのだろう。

 味方とは言った。だが俺の後輩だと紹介していいのか?

 あいつは向こうの世界では今の時代では珍しいお尋ね者というやつだ。

 この短い間に第三偵察隊の面々が気の良い奴らだというのは理解しているが、どこから情報が漏れるとも限らない。いや既にドラゴンと何かが闘っているのはここに居る村人含めての全員が見ていることだ。それが国に伝わった時どうする…?

 今はまだ、先程までこの車に乗っていた子狐が闘っているとは誰も気づいていないだろう。俺も実際には見えている訳ではなく、推測と前情報ありきで見ているからあいつだと分かっただけ。

 しかし、ばれるのも時間の問題だろう。

 さぁどうする……?

 

 考えながらも、ドラゴンの意表を突くように銃を撃つ。俺だけじゃなく、この車両に乗る面々も各自で攻撃してくれている。

 だが、その全てが弾かれる。

 むしろ後輩が出しているであろうあのできそこないの武器たちの方が大きい分ドラゴンの気を引くことが出来ている。

 どうする、どうすればいい、この状況を打破し、その上であいつの存在がばれないようにする方法は――――、

 

 

 

 

『先輩!!!!!!!!』

 

「うお!?」

 

「どうしたんすか!?」

 

「い、いやなんでも無い!」

 

 突然頭に響いてきた声。それに驚きつい声を出してしまったが慌てて誤魔化す。

 どうにも慣れない念話というものに辟易しつつ、その件の後輩が何を言うのか銃を撃ちながら意識を集中する。

 

『20秒、20秒で良いから完全にこいつを任せて良い!? そうすれば村の人達を襲ったこいつを俺がぶっ倒すから!!』

 

 ハハ、と思わず笑ってしまう。

 後輩の言葉に、俺は自分が先程まで考えていたことが馬鹿らしくなってしまった。

 ああそういえばこいつはそういう奴だったな、と。

 今まで姿を隠してきたのにバレたらどうなるかとか絶対考えてないわこいつ。しかもぶっ倒すだと? バカじゃねぇの。いやバカだったな。

 

 そういえばあいつは、自分なんぞ置いておく癖にやけに人が傷つくのを見てられない大バカだった。

 そしてあいつは、やると決めたらやる奴だ。

 なら、こちらも合わせてやらないとな。

 自衛隊は怪獣にやられてばかりじゃないってところを見せつけてやろう!!

 

「倉田はこのままドラゴンの周囲を囲う様に走りつつブレスに注意! おやっさんと黒川はそのまま牽制! 各車両は救助を終え次第に牽制に加われ! 軽装甲機動車(ライトアーマー)はミニミとキャリバーで牽制! 勝本はパンツァーファウストが用意出来次第ぶっ放せ!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 俺の指示に、この訳のわからない状況に異議を唱えるわけでも無く意気の良い返事をくれる面々。頼もしい奴らだ。

 返答と共に各自それぞれの仕事を始め、俺の乗るHMVは指示通りにドラゴンの周囲を周回し始める。

 同時、ドラゴンを襲っていた泥が引き、銀色のちっこいのもどこかへと走り去るのが幽かに見えた。

 

「あの泥っぽいの消えちゃいましたよ!?」

 

「それで良い! 少しで良い、少しだけ気を反らせばあの馬鹿が仕留める!!」

 

「あの馬鹿って!!?」

 

 倉田の問いに投げやり御答えると次は俺の後ろで64式を撃ち続けていた黒川が問うてくるがそれを説明している暇はない。

 あの泥が消えたことで、ドラゴンは次の標的をすぐさまこちらへと変えてきた。

 片目の潰れた厳つい顔でこちらへと咆哮を浴びせかけてくる。

 そんなものに構ってる暇はないと、続けて撃ち続ける俺達。

 だが、ドラゴンは予想以上に俊敏な速さでこちらへと駆けてきた。

 

「まずいまずいまずい!! もっと飛ばせ!!」

 

「ガン踏みしてるっすよ!!!」

 

 追いかけてくるドラゴンに弾は当たっている。しかしそれがどうしたとドラゴンはこちらへと迫ってくる。

 

「お待たせしました!!」

 

 そこへ、工事現場で聞こえる削岩機の様な音を出しながらライトアーマーが近づいてきた。 こちらで撃っている物とは違い、多少は効くのか――見た感じかゆみ程度も感じているかは怪しいが――、ドラゴンがこちらから目を反らす。

 すかさず俺達はドラゴンの側面へと回り込み、再び鉛玉をぶち込む。

 栗林たちが乗る車両もほぼ同じくして牽制に参加し始めた。

 ドラゴンが、不愉快そうに喉を唸らせる。

 相変わらず、ドラゴンの鱗には傷一つ付いてはいないが、それでもなんとか気を引くことには成功しているようだ。

 

「後方の安全確認良しっ!!」

 

 響く勝本三曹の声。見ればキャリバーを撃っていた笹川士長に代わり、上部ハッチから身を乗り出してパンツァーファウストを構えていた。

 さっさと撃てと全員が思ったことだろうが日ごろの訓練の成果でもある以上、ある意味仕方ないのかもしれない。

 しかし、その間にもドラゴンは声に気がひかれたのか身をよじりそちらを標的としていた。

 それに対し、車が急制動を駆ける。合わせて、照準していた勝本三曹の手元に力が入ってしまい、元々重心位置が扱いづらいこともあって照準がずれたまま撃ってしまう。

 外れる。誰もがそう予想した。

 そして予想通りに外れた弾はドラゴンの足元へと着弾する。

 巻き上げられる土煙。

 不幸中の幸いか、それによって俺達を見失ったようでドラゴンは翼を羽搏かせることで土煙を晴らそうとする。

 

「次急げ!!」

 

 現状、用意できる携帯武器で一番の高威力を誇るのがパンツァーファウストだ。

 早く次を撃ってもらわなければその内に銃を脅威と感じなくなったドラゴンはお構いなしに一台ずつ片付け始めるかもしれない。

 そんな嫌な予感がよぎり、慌てて指示を出す。

 この土煙が晴れ次第、再びやつは襲ってくるだろう。

 だが、遅かった。

 

 いや、意味がなくなった。

 

 

 

 

 ドゴン!!と地面すら揺らすような轟音が辺りへと響く。

 

「GYUOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAっ!!!?」

 

 続いて響いたドラゴンの咆哮。

 しかしそれは先程までと違い、こちらを威圧するものではなく悲鳴の様にも聞こえるものだった。

 

『お待たせ先輩、後は任せてくれ』

 

 いつの間にか20秒は経っていたのか、再び頭の中に念話が届いた。

 そしてドラゴンの方を見れば既に土煙は晴れかけており、その中からドラゴンが姿を現す。

 しかしよく見ればドラゴンだけじゃない。ついでに言えばドラゴンも先程と様子が違っていた。

 片翼がぐちゃぐちゃに潰されたドラゴン。

 そしてそのドラゴンを睨むようそこに居る幼女、もとい見覚えのあるバカ後輩。

 

『ここまで躊躇いなく全力出せそうな相手は初めてだわ。そんなわけで先輩、巻き込まれたくなかったら退避よろしく』

 

 そう念話を残し、後輩はドラゴンへと駆けだした。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

ロゥリィとテュカの見せ場が消えちゃったけど仕方ないですよね…(目反らし
既に色々と原作との乖離が起きていますが、まぁ異物が紛れ込んだらどこかは変わると思うのでこんな形になりました。
そして次回、本格的にドラゴン戦となります。
さぁドラゴンさんはどうなってしまうのでしょうかね…。

というわけで、また次回お会いしましょう! ではでは!!

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