テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

やっとイタリカまで辿り着きました……。


『stage11:夜戦!?(ガタ』

 

 

 

 さてさて、戻って参りましたアルヌスへ!

 

 何とか説明を終え、第三偵察隊のメンバーにも居ることを認められた(やたらと暖かい眼で見られるが)俺は再び狐モードとなってアルヌスにある前線基地へと戻ってきた。

 いやー、先輩が思わず変なことを言うから想像をしちゃった所為で本当にそうしてしまった。

 それにしてもあの泥ってあんな風にも使えるんだねぇ。まぁよくよく考えればアレも俺の一部みたいなものだもんな。

 アイテムボックスって手で持てる物しか中に入れられないから、ネギまのエヴァにゃんをイメージした影魔法の転移(ゲート)みたいに()から直接アイテムボックスに入れるか、最悪それが無理だったとしても寄せ集めて掌サイズにしたものをほおり込もうと思ったんだけどね。まさかアイテムボックス通り越して胃の中に…というか消化すら通り越して養分になるとは思わなかった。

 とりあえずお腹を壊したりはしなかったけど、どうせ食べるならドラゴンステーキとか食べてみたかった。

 

 さておき、その所為で嫌なことに気付いてしまったんだよね。俺は今までラーニング能力が何処から来ているのかとずっと悩んでいたわけだがそれの答え、それこそがその“嫌なこと”だ。

 

 以前に俺は、ラーニングというチートを貰っている筈なのにその表記がステータスに無いことを不思議に思った。消去法で『獣の本能』が関係するのかななんて思っていたが、所詮は推測だった。

 けどそれが正解だったんだ。

 俺がラーニングだと思っていたものの正体は『獣の本能』の中でも“幻想を現実に”の方になぞらえて言うなら『喰らう程度の能力』とでも言うべき部分。攻撃を喰らうのもそうだが、そのものを喰べることでもその効果を発揮するものだった。厄介なのはむしろ後者こそがその本質なところ。まぁ喰らう(意味深 とかじゃないっぽいのが唯一の救いか。当然ながら実行して確かめたって訳じゃないけど、無い…筈。

 俺はこの能力を貰った時にラーニングという所から一度技を喰らったり実際に見ることでその技に対する理解を深める必要があると考えていた。だからそっちの方向でばかり使用していた。

 だけど今回炎龍を偶然にも食べたことでその本質が自然と理解できてしまった。

 冷静に考えれば確かに獣の本質は喰らうことでそれを自身の血肉としながら生きていくもの。知能の高い獣なら経験によって学ぶことも可能。どうりでアーチャーからラーニングした投影を自分なりに解釈しようとしたときに食べ物系に偏ってしまった訳だ。つまり俺の腹ぺこはこの能力から来てたわけだな。

 しかもこれにはかなりエグイ部分があって、技を喰らった場合はその技だけをスキルの様に得ることが出来るが実際に食べてしまった場合はそいつの本質を血肉にしてしまうみたいなんだ。因子を得るとでも言うべきなのかな。

 そう、因子だ。いつだったか、あればいいなと言っていたあの因子だ。

 つまり、なんだ……、俺は獣化だけじゃなくて龍化できるようになっちまったんだよ。なんかね、炎を吐けるようにもなったし、ちゃんと翼で飛ぶこともできるようになったんだ。

 しかも今までの様に技だけをコピーした訳じゃなくその本質を得た訳だから、その技をなぞるだけではなくて、最初から応用が可能なんだよなぁ。

 例えばヒトの姿のまま龍翼を出して飛んだり、炎を吐いたり。腕だけ龍にするとかも余裕でした。10年どころではない今までの練習とは一体……なんてレベルである。

 まぁ人状態のままで炎を吐く姿はかなりシュールなんですけどね。あ、でも『恋するドラゴン』ごっこは出来るようになったのでちょっと嬉しかったです。あと、ライダー戦で使ったホワイティルウィングもちゃんと使ってあげられるよ。姿勢制御に使える程度の飾りでしかなかったしね。

 でも、なんだかドンドン人から離れていくのは気のせいだろうか? 正直これって完全にラスボスとかとして倒されるべき存在に成って行ってるんじゃないだろうかと思う今日この頃 

 ただ、悪いことばかりでもないのは確かなのだ。

 特に“炎を吐く”ということと“翼で飛ぶ”という部分を理解できたのが大きかったかな。

 炎龍……というか(ドラゴン)と言えば空を飛び、炎を吐き、その爪牙であらゆるものを屠るというイメージだと思う。でも実際には炎龍に関しては実際に炎を吐いたり空を飛んだりという器質的な機能を持っている訳では無かったみたいなんだ。

 食べたことで理解したんだが、どうやらこれは一種の魔法らしい。

 例えばブレスだが、炎龍は身体の中に炎を吐くための器官が無い。しかし実際には炎をその口から掃き出しその火力で以てして焼き尽くすことが出来る。

 それは“炎を吐こうとする”ことで“炎が口から出る”という現象を導き出しているからみたいなのだ。

 翼に関してもそう。

 あれは翼によって浮力を得るのではなくて、“翼を羽ばたかせる”ことで“空を飛ぶ”という結果を持ってきているようなのだ。

 理屈はわからない。

 いや、何やらここにあってここではない何かから結果を抽出してこの世界に導き出しているというのは分かるんだが、感覚でしかないのだ。炎龍自身も本能的に理解しているだけだったみたいだし。だから口にして説明しろと言われても難しかったりする。

 なんというか、法則とかは分かるけどそれを構成する数字そのものの意味とかはわからない・・・みたいな。あ、重力があるから物が落ちるのは分かるしどうすれば物が落ちるという現象を起こせるかは分かるけどその法則を表す数式がなぜそう出てくるかはわからない・・・みたいな!

 うん、結局俺の頭じゃ理解しきれていないだけなんだろうけどね。

 けど現代日本人だってテレビの構造を知っている訳でも無いけどテレビを見る方法は知っている訳だし、中身が日本人な俺としては別に構わないかなと無理矢理納得することにした。

 他にも出来そうなことが増えてそうだし、暇を見てまた修行かな……。

 

 話が変わるがコダ村の人々についてだ。実は、大半の人があの後そのまま村へと戻っていったんだよね。

 まぁ炎龍の脅威が去ったことを目で見て知っているのだからそれも無理はないか。かなりの上機嫌で戻っていきましたよ。何故か拝まれたが。

 ただ、残りの村人に関しては俺達と共にアルヌスまで戻ってきている。

 というのも、その残った人たちというのは身寄りの無い子供や老人、比較的若い人でも再出発する為の資材すら失ってしまっていたりという人たちなのだ。

 火龍によって馬車ごと襲撃され、何とかモノメイト等により当人は回復できたが俺の力では物を治す(・・)ことはできない。だからその身一つという人たちが大勢出来てしまった。

 無事であった人々にどうにかならないかと先輩が交渉してくれたが、同じ村仲間とはいえ他者を養うほどに余裕がある訳でも無く、どうしようもないとのことだ。それはアルヌスまで来た人たちも納得できなくとも理解していて仕方がないと言っていた。

 それに無理矢理に家へと戻ったとしてもあるのは家だけ。更にコダ村は一番近い集落からでもそこそこ離れている為、再出発しようとも稼ぎ口が無い。畑を作ろうにも実るまでに飢え死にしてしまう。どちらにしろ生きるための糧が必要なのだ。

 さてどうしたものか、とみんなで悩んでいると先輩が「任せろ」と言って引き連れて基地まで戻ってきてしまった。

 まぁ当然の如く上司からはこっぴどく怒られたらしい。子犬を拾ってきた子どもに「拾ってきたところに捨ててきなさい」と怒る親のようだったとのこと。

 しかし捨てる神あらば拾う神ありとでも言うべきか、その怒った上司のさらに上(陸長さんだったかな)が難民として受け入れると言ってくれたらしいのだ。危ない危ない、もうちょっとで嫌がらせしに行くところだったよ。

 そんなわけで、人道上の配慮ってことから受け入れられた元コダ村の人達。あ、エルフちゃんと黒ゴス様も一緒だな。あと何故か本を大量に荷台に積んだ杖持ちの御爺さんとクール系美少女も。

 そして先輩はそんな彼らの保護・観察を言い渡され、第三偵察隊の面々と生活環境を作っている最中なのだ。

 

 

 

『いやはや、さすが先輩ってところかな?』

 

「違うよ、ただあのまま見捨てるのは後味が悪いなって思っただけだ」

 

『後味悪いからってその後を引き受けるなんてのがさすがって言ってるのさ。面倒事を自ら背負い込んでるわけなんだからさ』

 

「見てられないからって炎龍に喧嘩売った奴もどっかに居た気がするんだが?」

 

『……』

 

「おい黙んなよ」

 

 通路を歩く先輩の帽子の上に子狐モードで乗っかっている俺。そんな俺を突きながら先輩は避難民を保護するために必要な書類を取りに向かっているところだ。

 俺は念話で、先輩は小声で、怪しまれない程度にコミュニケーションを取りながら俺は帽子の上で揺られる。

 

『さっきの柳田って人が言ってたこと、ほんと?』

 

「特地の価値がどうとかって話か?」

 

『そう』

 

 柳田二尉と先輩が呼んだちょっとナル……キザな感じの男性。その人と先輩が今さっきまで話をしていたんだが、それが中々に込み入った話だった。

 簡単に言えば、この特地には未だ発見されていない資源等が数多く存在する可能性があり世界各国が狙っており、だからその資源を独占する為には世界の3分の1を敵に回す必要があるという話だった。そして日本の上層部は、世界を敵に回してでもその資源を確保する価値があるかどうかを知りたいのだそうだ。

 俺自身あの銀座事件以降、俺を確保しようとしたのは日本だけではなく結構な数の外人さん部隊も居たのだ。それもかなり殺傷力の高い武器も携えていた。殺す気は無くとも腕の一、二本は仕方ないと言わんばかりの勢いだったのを覚えている。

 それだけ未知の可能性というものが喉から手が出るほど欲しいのだろう。ほんと、物騒な話だ。

 でも資源を外国に頼っている現状の日本だからこそ、外交の武器となる一手が欲しいのも確かだろう。

 例えば現在諸外国に頼っている状態の食物が特地で生産できるようになったとする。それを考えるだけでも貿易によって支払っていた金銭等が浮いてくるわけだから莫大な利益が出てくるはずだ。

 当然そんな単純にはいかないだろうが、陸続きで東京のど真ん中に広大な土地が増えた訳だから諸々の問題点を無視してでもそんな方向に行くかもしれない。輸出に関しては、食品で言えば“日本ブランド”という安全性が買われている部分もあるから逆に特地での生産によってブランド性が揺らぐ可能性もあるが。

 他にも輸出入に関して安全性の問題点がニュースでよく取り上げられたりするが、門の向こうとはいえ同じ日本国内とするならばそれも大幅に減少するだろう。

 あまり詳しくない俺が単純に考えただけでもそれだけパッと思いつくのだから、専門家が考えればもっと出てくるだろう。

 

 さておき、そんな話をついさっきまで夕日を背に男二人が語り合っていた訳だ。俺の場違い感半端なかったと思うよ。

 けどその話も終わり、釈然としない気持ちを俺も先輩も抱えながら最初の目的であった書類の回収へと向かっている。

 そもそも何故そんな話が先輩の所に来たかというと、特地に詳しい“特地の住人”と一番コミュニケーションを取り、一定以上の信頼を得ているのが先輩だからだそうだ。自業自得と言われてしまえばそれまでだが、どうにも話が大きくなりすぎている気がする。

 

「あー、くそぅ! もやもやする!」

 

『確かにいきなり世界がどうとか言われてもねぇ……。けどさ、先輩』

 

「なんだよ」

 

『先輩が襲われても俺が守るから大船に乗ったつもりで居てくれていいんだぜ? これでもそれなりに強いんだからさ』

 

「……」

 

『いや黙んないでよ先輩』

 

「恥ずかしいセリフ禁止」

 

『それをおっさんに言われてもなぁ……』

 

「ああお前言ってはならんことを!! 30代ってのはナイーブなんだぞ! このロリBBA!!」

 

『先輩こそ言ってはならんことを!! まだ40代だからセーフだし!』

 

「年上に見えないんだよこの幼女!」

 

『煩いわ! こちとら成長できるもんならしてるわ!!』

 

 

 

 

 売り言葉に買い言葉。先程までのモヤモヤとしたものなどどこへ行ったのか、その後も暫く先輩との言い合いは続いた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「今から暫くは俺達運送業者っすか……」

 

「そう言うなって。難民の皆に自活してもらえるのはかなり大事だろ?」

 

「そりゃそうですけどね……。うーん、狐ちゃん……じゃなかったコウジュちゃん! 俺を癒して!! ケモミミ触らせて!!」

 

「嫌です真面目に運転してください」

 

「そんなガチで言わないでよ……」

 

「だって倉田さん尻尾が無いからって溜息吐いたし」

 

「あれはほら、ケモ耳と尻尾はセットだって固定観念が……ね?」

 

「どうせ俺は尻尾無しのはずれですよ。というか獣度は内面も大事だし。語尾とか!」

 

「いーや、やっぱり見た目からの獣度も大事だと思うね! 肘膝までケモってるとか超萌えるじゃないか! それにモフモフと言えば肉球と尻尾でしょ!? 耳だけってそれほぼコスプ……、あ……」

 

「月夜ばかりと思うなよ」

 

 どうでも良いが俺の頭の上で話し込まないでくれ。そう思い頭の上の後輩を倉田の上に置き直す。

 同時に後ろから羨ましげな声が聞こえたがさておき、後輩は何だかんだ文句を言ってくるが倉田の上から避けることはせず、そのまま居座ることにしたようだ。

 倉田はこの部隊で唯一俺以外にオタ話が出来る存在だから割と仲が良かったりする。しかも二人ともモフモフ好きらしいから余計だろう。その所為で意見がぶつかり合う部分もあるみたいだが……、まぁ大丈夫だろう。

 

 頭の上が少し寂しくなった(髪的な意味ではない)様なスッキリしたような微妙な気分のまま改めて前方を見る。といってもあぜ道にも似た舗装されていない道がただ続くばかりだが。

 右を見れば山。左を見れば草原。先を見れば終わりの見えない道。

 先日と違い馬車や徒歩の人と同速で動いている訳でも無いからそれなりのスピードは出ているが、それでも話を聞く限りそれなりの距離があるそうだ。

 予想ではもうすぐだと思うのだが、いつ終わるのやら。

 

 現在俺達はHMVや装甲車を使い、いつもの第三偵察隊に加えてテュカ(エルフ少女)、レレイ(杖を持った少女)、ロゥリィ(黒ゴス少女)と共にイタリカという町へと向かっている途中だ。

 というのも、元コダ村の人達を難民として迎えるのはいいが当初の目的である自活する方法をどうするかという話を詰めている際にレレイが翼竜の鱗を売りたいと言い出したのだ。

 話をする前日にレレイが敷地外で的と化していた翼竜を見て何やら思案顔で鱗が欲しいと言ってきたのはその為だったらしい。

 こちらとしては固いだけの的でしかなかったし自活方法の準備金になるのならと許可し、それを売りに行くのが今回の目的である。

 

「なんか焦げ臭くない?」

 

 唐突に鼻をくんくんとひくつかせながら言う後輩。

 その言葉に倉田も同じように鼻をひくつかせるが何も分からなかったのか首を捻る。

 それによって後輩が落ちてしまい、後ろから「あ…」と声が漏れる。俺は知らないからな倉田。

 さておき、焦げ臭い臭いなんぞ俺も感じないが、なんだろうか。

 

「これ、血の臭いも混ざってる」

 

「何……?」

 

 転げ落ちた後輩は器用に俺の方まで登ってくると、今度は物騒なことを言いだした。

 

「隊長、あれじゃないですか? 前方に煙が見えます」

 

「うーん? あ、あれか」

 

 目を凝らし前方を見れば、今進んでいる道のはるか先で黒煙が確かに上がっていた。

 双眼鏡を取り出して見れば、周囲の物から目測で考えても結構な範囲で燃えているようだ。

 

「俺達が向ってるのって、あっちだったよな?」

 

「ですねー。というか黒煙を見るのこれで2度目ですよ。さすがに嫌になります」

 

「言うなって、俺も今そう思ってたところなんだから」

 

 うへぇとあからさまに嫌な顔をする倉田。恐らく俺も似たような顔をしているだろう。

 全く以て嫌になるよほんと。

 どうして異世界に来てまでこんなに争いごとばかりなんだか。夢も希望も無い。

 しかもどうやらその煙の出ている場所がイタリカのようだ。

 つまり俺達はその煙の元へと行かなければならない。

 

「今からあそこに行くのよねぇ?」

 

 俺達とは違い、笑みを浮かべながら座席の隙間から顔を覗かせたのはゴスロリ少女だ。

 

「あ、ああ。だけどどうした?」

 

「いいえぇ。ただ争いの“匂い”がしたからぁ」

 

「そ、そうですか……」

 

 嬉しそうに言う彼女に、思わず引き攣った声が出る。

 そういえば彼女は死と断罪を司る神に仕えているんだっけか。レレイに教えてもらったんだが、あのゴスロリも神官服だかららしい。

 ってあれ、今ナチュラルに日本語話してなかったか? ひょっとしてレレイみたいに覚えた?

 

「嫌な臭いだ」

 

「そぅ、でも死を否定していては人は生きていけないのよぉ?」

 

「そう…、なのかな」

 

 ボソリと後輩が口にした言葉に、諭すように言うロゥリィ。

 死を否定してると生きていけない、か。

 その言葉に思う所があったのか、後輩は思い詰めたように下を向く。

 車内を包む沈黙。

 何故か突然シリアスが始まってしまってるんだが……。

 俺は倉田の方へと顔を向ける。丁度倉田もこちらを向いたところだった。

 俺は無言で一つ頷く。それに返すようにうなずく倉田。

 

 とりあえずイタリカに向かおうか。当初の目的通り。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「はっ!?」

 

「あ、気づいたの?」

 

 目を覚ます。と同時に視界に広がったのは黒川さんの顔だ。

 何この状況。俺は気を失っていたのか?

 ちょっと照れるので、誤魔化すように辺りを見回す。

 どうやら俺はベッドの上で寝かされているらしく、それもダブル位はありそうな大きさだ。よく見れば部屋自体もレトロな雰囲気だがかなり豪華な内装となっている。

 庶民的な感性しかないから高そうとしか言えないが、買おうとしたら端の方に置いてある花瓶一つで幾ら位になるのだろうか。うん、考えたくない。

 

 ふむ、それにしてもここはどこだろう?

 窓の外を見れば既に日は落ちているようだし、気を失う前から考えてそれなりに時間が経っているようだ。

 素直に聞いてみるか。

 

「えっと、ここは?」

 

「ここはイタリカのフォルマル伯爵家よ。その客室」

 

「何でそんな所に……?」

 

「ほら、伊丹二尉と一緒に門の前まで行ったでしょう? その時突然門が開いて……」

 

「あ」

 

 そうだ。そうだった。

 イタリカに着いた時、門内からいきなり門が開いて先輩諸共頭をぶつけたんだった。

 考え事をしていた所為で反応が遅れ、子狐モードだから防御も低い状態だから普通に意識を失ってしまったようだ。

 

「傷はいつの間にか治ってたけど、大丈夫?」

 

「うん何処も異常は無いよ。むしろ寝た分元気なくらい」

 

「なら良かったですわ」

 

 元気なのをアピールするようにピョンと宙返りしてみると、御淑やかに微笑む黒川さん。ほんと大和撫子という言葉をそのまま人物にしたような人である。これで暴走さえしなければ……。

 

「そういえば先輩は?」

 

「伊丹二尉ならここのお嬢様達とお話し中よ。夜襲があるかもしれないらしくて救援要請を受けたのよ」

 

「夜襲、夜襲ねぇ」

 

 それでイタリカから煙が上がっていたのか。警戒していたのもその為ってことね。

 まったく、こっちに来てから闘ってばかりだ。嫌になる。

 血の臭いを嗅いでにわかに騒めくこの身体も、嫌になる。

 先程(と言っても俺の記憶で言えばさっきなだけだが)黒ゴス様が死を否定してはいけないと言っていたが、俺には未だに良く分からない。

 確かに人はいつか死ぬものだ。俺は死ねなくなったが、ヒトのつもりだ。神になれと言われたとしても、ヒトのままであり続けたい。

 だからと言って、死を肯定する気にはなれない。

 誰だって命を失うのは嫌だし奪うのも嫌な筈だ。

 だけど夜戦が起こるということは、また人の命が失われるのだろう。

 なぜそうも簡単に命の奪い合いが発生するんだ。皆楽しく笑い合っていればいいじゃないか。ハッピーエンドで良いじゃないか。

 争うこと自体を否定はしない。それが無ければ前へと進めない時というのは幾らでもある筈だから。

 けど、今から起こるのは殺し合いなのだそうだ。

 

 はぁ、と溜息が出る。

 止め止め、考え込んでも答えは出なさそうだ。

 とりあえず“死んで欲しくない”と思っておこう。

 俺のスタンスは変わらない。

 悲劇を見たくない。それで良いじゃないか。

 それ以上を考えてしまうと、またあれこれ手を出し過ぎて自分だけの手に余り出す。

 

「それであなたはどうする?」

 

 ただ先送りにしただけの思考のぶった切り、それを終えたと同時に掛かる声。俺の顔を見ながら微笑んでいる。

 ふむ、どうやら俺が考え事を終えるのを待ってくれていたようだ。

 でも狐状態なのになんで表情読めるのこの人。

 

 まぁさておき、だ。

 聖杯戦争時代から変わらずのスタンスを貫くのなら、今から起こる夜戦ってのを放って置く訳には行かない。

 いや違うな。

 放って置きたくないんだ。

 

「それじゃあ先輩の所に向かわせてもらおうかな。ちょっとやりたいことが出来たし。それにいい考えがあるんだ」

 

 俺は立ち上がり、ベッドから飛び降りる。

 

 さぁやってやろうじゃないか。

 最近大規模戦が多いし、ちょっと手札を増やしたかったところだ。

 チートスペックで以て返り討ちにしてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで黒川さん扉開けてくれないかな。そんな所で微笑んでないでさ。

 子狐モードだと届かないんだ。




いかがだったでしょうか?

今回はタイトルで予想できたかもしれませんが、夜戦の手前まででした。タイトルを見て「座れ」と言いたくなった方は多い筈w

さておきコウジュの「私に良い考えがある」みたいな引きでしたが、もうこれで大丈夫そうですね! ね?
まぁそんなわけで次回はちょっと暴れてもらおうかと思っています。

そういえば補足ですが、感想でも頂いたのですが今回の話でもコダ村の人が村に戻ったのもあり噂の広がり方が抑制されている形になります。
少しずつそういった原作とのズレを表現していきたいなと思いますので、何か違和感があれば教えて頂けると嬉しいです。

ではではまたお会いしましょう。

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