テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

少々遅くなってしまいました。
今回のイタリカ攻防戦をお待ちいただいていた方も多いと思いますが、すみません。こうなってしまいました。


※追記 (2015.09.27)
恋ドラモードの表現を2Pカラーへと変更しました。



『stage12:いたりかこうぼうせんはたいへんでしたね』

 

 

 

「こんなものを、こんなものを求めて俺達は!!!!!」

 

 戦場に、男の嘆きが響く。

 僅かな望みすら潰えたのか、この世の終わりを嘆くようなそんな声だ。

 

 

 

 男は兵士であった。

 子どもながらに国を守りたいと願い、志願し、いつしか数百人の兵を率いる長とまでなっていた。

 しかしそれも遠い昔の話だ。

 

 数年前、自らが所属する国で戦争が起きた。

 相手国はこれまでにもいくつもの国を併合してきた『帝国』だ。その全てを飲み干し、その支配地域は留まるところを知らない。

 こちらの国が何かしたわけではない。あえて言うなら、順番が来ただけ。

 だからと言って自らの住み慣れた土地を易々と明け渡すわけにはいかない。

 故に闘った。

 しかし結果は悲惨なものだ。そもそもの数が違う。

 質で負けているつもりは無かった。だがそんなもの絶望的な数の差の前では何の意味もなさない。

 それからは帝国の属国として搾取される側に回った。

 何をされようとも敗残国の我々に拒否権は無い。

 “負けた”というその事実が何よりも重たくのしかかる。

 幸いにもと言って良いかは微妙なところだが、軍に関してはそのまま運用されることとなった。その実態は飼い殺しでしかないが。

 帝国の属国となって数年、その間にも帝国は戦争を続ける。その度に絞り取られていく国庫と人材。帝国が一定以上に軍属を増やしてはならぬとするため、余ってくる資金等は帝国に持っていかれてしまうばかり。

 

 そして今回もまた同じように、帝国に良い様に使われながら相手を蹂躙するのだと思っていた。

 相手は門の向こうからの侵略者だという。

 時々この世界はどこかへと繋がる門が開くというが、それもごく短期間であり、迷い込む者もそれほど多くない筈だ。

 だが今回はどうしたことか向こう側から攻めてくるという。

 対するこちらは、帝国による支配をうける属国、それからなる連合軍。

 とはいえ男にはそんなものは関係ない。飼い殺しの中、己の意思をぶつける相手は誰でも良かった。

 だが負けた。いや、戦ですらなかったのだ。勝った負けたそれどころの話ではない。

 相手を見ることも叶わず、各地で黒い靄に包まれ倒れていく仲間たち。決死の覚悟で突き進もうとも、少しでも靄を浴びていた者は立所に病で倒れた。

 帝国に敗れたとはいえ精強な部下たちだ。病に倒れるような軟弱な者は居ない筈だった。

 手に持つ剣を振るう暇すらなかった。

 原因を調べる間にも増えていく病人。そしてそれを介抱する為にも人員が要る。

 足りない。

 情報が足りない。

 人が足りない。

 対処をするにしても時間も無い。

 

 戦とも呼べぬそれは実に数日続いた。 

 只々、向かえば倒れるものが増えていく毎日だった。

 何とか黒い靄を抜けても、何かが飛んできては倒れていく。

 そして、気づけば男はまたしても敗残兵となっていた。

 無様にも、病に倒れた仲間を捨て置き無事な者を連れて逃げるだけで精いっぱいであった。

 男以外の者もそうだ。

 足元を駆ける何かに(・・・)気を付けながら、怯えながらただくだ男の後ろをついていく。

 男は幸いにも見ることが無かったが、数人が黒い靄の原因であろう何かを目撃した。いや、正確にはそうであろう影を辛うじて見ることが出来たが正しい。

 しかし見た者は皆、口を揃えて“銀色の獣が”と口走る。そんな馬鹿なと口にする者も居たが、確認しようとして無事だった者は居ない。

 姿を見て未だ立っている者はただ運が良かった。

 足下を何かが駆け、その数瞬後に地より何かが浮かび上がり、その近くに居ればたちまちに黒いもやに包まれる。

 恐ろしきはそんなものを行使する敵軍か。男は理解しきれていないながらもそう思った。

 

 敗残兵となって暫くしてからも男は国に帰らなかった。残った仲間とともに死地を探すことにした。

 戦というものに飢えてしまっていたのだ。

 男を含めその仲間たちは帝国の属国となりながらも、それでも国を守るために自らを鍛えてきた。

 だが今回のことで、その存在意義を失ってしまった。

 守るものも無く、戦うことすらできない。帝国に言われるままに戦場へ行き、今回はその帝国兵すらいなかった。完全に当て馬だ。

 そんな繰り返しの果てに、ついに兵士であるはずの彼らは何かが切れてしまった。

 

 そこからはただ戦を求めて進むだけであった。

 恐怖の中に居た者も、それをかき消すために同じくして突き進む。きっと悪夢でも見ていたのだ、と無かったことにしながら。

 そして辿り着いたのがイタリカ、帝国領内の城砦都市だ。

 城砦都市というだけあってしっかりと町は砦に守られて兵も多い。何か壊れてしまった男は、それが晴れ舞台に丁度良いと考えてしまった。思えてしまった。

 

 だがそれは間違いであった。

 

 防衛戦に徹している砦を襲うのならば3倍以上の人員が必要だろう。だが今の男には、男たちにはそんなものは関係ない。

 ただ戦いを求めているだけなのだから、勝とうが負けようが、戦であるのなら何でもよかった。

 しかし、2度の交戦を経ての3度目。ここで何かがおかしくなった。

 正確に言うならば、おかしなもの(・・・・・・)が現れたというべきか。

 

 

 

 

 

「俺達は、俺達はイタリカに来たはずだ。そうだろう? なのになんでこんなのがいるんだよおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!????」

 

 男が再び叫ぶ。

 その声はやはり、絶望を見た者の嘆き。

 

『GYUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――――――!!!!!』

 

 轟々と燃える周囲の炎の中、そんな男を見るものがあった。

 その姿は炎龍。絶望の象徴だ。

 確かに居てもおかしくは無い。

 イタリカから比較的近い村を襲ったという噂はあった。だから味を占めた炎龍がここに居てもおかしくは無いのだ。

 だが、この炎龍は何かがおかしい。

 炎龍とは目の前に広がるものを尽く燃やし尽くし、破砕し、喰らう災害の様な物であったはずだ。

 なのにこの炎龍はイタリカを守るようにして男たちを見下ろしていた。

 

『『GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――――――!!!!!』』

 

 そんな絶望の淵に居る男を更に追い詰める咆哮が追加で二つ響く。

 見れば、囲うように炎龍とは別の化け物が二体、炎に怪しく照らされながらも近づいてきていた。

 狼をそのまま大きくしたような化け物と狼に似た四足獣ではあるがやや細身の化け物。双方ともに、炎龍ほどの大きさがある。

 三体の化け物が綺麗に三方向から男たちを囲んだ。

 グルルと唸り声を上げる化け物共。その巨体に合わせて、ただの唸り声も地響きもかくやという大きさだ。

 門の向こうから来た軍勢と闘う為に用意されていた武器防具は良くも悪くも使わず仕舞いだったために余裕がある。

 だがそれが何だというのだろうか。

 男たちから見て、いくら手元に潤沢な装備や道具があっても目の前の化け物に勝てる気がしなかった。

 

「う、うあ……」

 

 精霊使いの娘が地に尻餅を付いて座り込んだ。

 セイレーンである彼女はヒト種に比べて感覚系が鋭い。それ故に何かを感じとったのか、その瞳にはもはや戦場に出られるような覇気は無く、幼い子供の様ですらあった。

 

「くそおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 この重苦しい空気に耐えられなくなった一人が、四足の巨獣へと闇雲に弓で矢を放つ。

 

『GURUUUUUUUUAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!』

 

 だが、その一矢は化け物の注意を引いただけでかすり傷一つ付けることは叶わなかった。

 それどころか巨獣に矢は届いていない。巨獣に当たる寸前に見えない壁でもあるかのように弾かれてしまったのだ。

 一矢は唯でさえ絶望的な状況で、為す術がないことを確定させてしまうだけのものであった。

 一歩、また一歩と徐々に幅を狭める化け物達。その姿は不自然な程に統率が取れたものだ。

 だから逃げ場は無い。

 3匹の化け物の間にはそれなりの距離があるが、それ以外にも盗賊達を囲うものがある。

 化け物達の周囲では至る所で火の手が上がっているのだ。

 イタリカの門外であるこの場所は穀倉地であり、周囲には燃えやすいものが数多く存在する。だから、盗賊達はそれらにドラゴンが時折吐く炎が引火したと思ったのだろう。

 しかしながら事実は違う。

 夜が明けていない時間でありながら異様な程に明るく照らし出された周囲。それはイタリカの住民と自衛隊によって用意された光源であるのだが、冷静に頭が働いていない元兵士でもある盗賊たちでは気付かない。

 何せその明るさで以て化け物達の姿を見ることが出来ているのだ。

 闇の中これらに襲われる瞬間なぞ盗賊たちは考えたくもないだろう。見えることでの恐怖もあるが、居ることが分かっているのに見えないのはそれ以上の恐怖だ。

 原初より人が恐怖するのは闇だ。

 だから今は、この火が消えないことを切に願うしかない。

 

『GURUUUUU……』

 

 何度目かになる唸り声。距離があるにもかかわらず賊達の腹に響くほどの重低音。

 対してイタリカの街は恐ろしい程に静かだ。

 人の気配はする。しかしこれほどの化け物が居ながら逃げる様子もなく砦内に居る。

 それが賊を率いる男には不思議でならなかったが、それがただの現実逃避であると即座に気付いた。

 どうすることもできないのだからそれも仕方ないだろう。

 戦うことも叶わず、今回に関しては逃げることも叶わず、兵としての自らに男は絶望するしかなかった。

 何を間違ったのだろう、男は自問する。

 しかしそれに優しく答えを出してくれる存在は居ない。

 

 ゆっくりと近づく化け物達。

 その距離も大分と近づいた。

 ああこれで終わりか。

 男は剣を下ろし、天を仰ぎ見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あー、あー、テステス。聞こえてますか盗賊の皆さん。こちらイタリカ城砦内、自衛隊所属伊丹二尉であります。死にたくなかったら武器を捨て投降してください』

 

 盗賊達は喜んで武器を手放した。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「うん、えっぐいな後輩……」

 

「だ、だってしょうがないじゃないか! あれだけ大勢なのを無力化するには闘う意思をなくさせるのが一番だと思ったんだよ!」

 

「いやでも、あれはなぁ……。なんというかあれだな、ゴ○ラとモ○ラにギ○ラが闘おうとしている中心に取り残された一般人みたいな?」

 

「ああ確かに言い得て妙っすね。って、あれはただの脅し! 脅しだから!!」

 

 うっすらと空が明るくなり始めた頃、俺と先輩は砦の中に続々と捕まった賊達が放り込まれていくのを見ながらそんな会話をしていた。

 それにしても失礼なことを言う先輩である。甚だ遺憾である!

 しかしまぁ、今回に限ってはちょっと、ちょぉぉぉっとやりすぎたかなと思わなくもない。

 でも仕方ないじゃないか。これしか思いつかなかったのだから。

 それに、出来る限り誰かの命を奪いたくはないという俺の我が儘でもある。

 

 今回、俺がやったのは簡単だ。

 イタリカの城砦外にて盗賊が現れたと同時に3匹の怪物に囲わせてやる気をなくさせる作戦。

 といっても、言うのは簡単だがやるのは難しいか。

 

 まずはあの怪物たちに関してだが、炎龍は勿論俺が変身した姿だ。

 だが、他の2匹も実は俺なのだ。

 2匹の獣の正体は狼と狐、俺が持っている獣化の因子の一部だな。

 今回はそれらを俺の中から取り出して泥に混ぜ込み、存在置換(変身)した時の姿をそのまま大きくして配置したのだ。

 炎龍を取り込んだことで巨体での運用方法を理解できたからさなせる技でもあったけど、同時に自分を別に生み出すというのは成功するか実は五分五分だった。

 いやまぁ実際には今回のは失敗だったんだけどね。

 というのも、いつだったか考えていた分身の術。最初はあれをしようと思ったんだよ。だけど失敗した。

 だって未だに同じ自分を何人も産みだすというのが理解できないのだ。忍者の世界に産まれた訳でも教えてくれる人が居る訳でも無いので仕方ない。

 けどそこで俺は考え方を変えることにした。

 分身の術を考えるに至った経緯として、俺が覚えた『秘剣燕返し』の本質である多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)がある。

 この燕返し自体は同時に3つの剣閃を産みだすというものなわけだが、実際には一つの剣閃にプラスして違う振り方をしたという可能性を平行世界から持って来て同時に存在させるという荒業なのだ。

 つまり何が言いたいかというと、俺は今回まず自分が炎龍の姿になり、そして泥を基に今存在するために狐であったかもしれない自分と狼であったかもしれない自分の巨大バージョンを存在させるという方法を行った。

 泥が自分自身でもあるらしいことを含めて、泥の性質変化が自分であるならばある程度できるというのならと思いつき実行したのだが、わりかし上手く行くものである。

 ただ問題点があるとすれば、出来るかどうかの確信が持てていなかった為か自分自身が変身した炎龍はともかく他2体に関しては見た目だけで、しかも完全手動(マニュアル)操作だったりする。

 ぶっちゃけ張りぼてである。

 まぁ張りぼてにしては些か上等なものだとは思う。咆哮は上げられるし、視認しながらのマニュアル操作とはいえ、そのモデルは俺なわけだから結構なハイスペックだったりする。慣れないことをした上に巨獣を2体同時に操りながら自身も動かないといけないので時折狼型と狐型がまったく同じタイミングで咆哮を上げたり、シンクロしているかのように綺麗に同じ動きをさせてしまったりとかもあったが気づかれてなかったみたいだし、セーフだろう。

 しかし中身が無いだけでその迫力は本物だ。

 最初は炎龍だけでいくつもりだったんだけど、作戦を話してから少し時間が有ったし、何とか作戦開始前にこの技が完成したので盛り込んだ。炎龍だけだと逃げられてまたどこかで同じこと繰り返されるかもしれないしね。

 御陰で囲まれた盗賊達はビビりにビビッて、容易く投降してくれた。

 鳥っぽい子とかちょっと地面が濡れちゃうほどにビビってたけど、うん、許してください。

 

 あとの問題点は感覚を共有してることかねぇ。

 一応あれも俺だから結構なステータスを誇る訳だけども、自分で動ける訳じゃないから良い的も良い所だったりする。

 だからあの巨獣たちがダメージを負うと全部俺に返ってくるのだ。巨獣たち自体は中身が無いから痛みを感じることは無いしね。

 これは消そうと思えば消せるけど、そうすると操作できなくなるから仕方ない。

 

 次に砦周囲の炎に関してだが、あれは事前に周囲の数か所に燃えるものを用意してもらって敵が来たと同時に着火するように仕組んでもらったものである。

 これに関しては先輩主導の元、街の人達にもいくらか手伝ってもらって準備した。俺は変身とかの方の予行演習してたからね。

 でもこれも最初は手間取ったものだ。

 幾ら自衛隊の装備がこの世界に対して有効的すぎる殺傷力を持とうとも、それがどういうものか理解されていなければ意味がない。どれほどの強さを持つか分からなければ手伝うと言ってもイタリカの人達からすれば十人程増えるだけで梨の礫としか感じてもらえない。

 しかしそこで俺の出番である。

 まず、先輩に炎龍を倒したのではなく使役することに成功したと法螺を吹いてもらう。こいつは何を言っているんだと思われるだろうがそこに俺が登場して一部だけ変身してみせる。アドリブに関しては念話があるから楽勝だし、炎も吐けて剣すら通らない鱗があれば信じざるを得ないだろう。

 ついでに言えば、えっとピニャ皇女殿下? ピノだっけ? には少しだが既にKoujuの姿で会った後だったので幼女の姿では些か迫力に欠けると思い違う人型で会おうことにした。大人verってやつだ。

 超大型の獣になる応用で、しかも俺は炎龍という成体の因子があるからいけるんじゃないかと思ってやってみるとこれまた成功したのだ。

 ただこれにも問題点があって、龍が人に変身した姿で威厳も迫力もある姿で思いついたのが時折話に出していた『恋するドラゴン』の姿だったのだ。

 その姿を思い浮かべてしまったが故に、俺の大人verはほぼほぼ恋するドラゴンになってしまった。

 ただし2Pカラー。

 銀色の髪(元キャラはピンク)に、頭に乗せたKouju時にも被っている物に似た大きい帽子。翡翠の瞳に割れた瞳孔。美しい容姿に均整の取れたグラビア顔負けのスタイル。ただしブレザー着用。そして何故か人型でありながら驚くべき重さを誇る体重。

 普通に御屋敷の中を歩くと床が抜けてしまうので(何か所か抜けた後である)、常に木製の床の上を歩くときは足元に魔力で足場をばれない様に作りながら歩いています。体重計に乗ったら体重計が(ひしゃ)げるレベルですね。

 まぁでもその御陰でかなり無茶苦茶な作戦だが無理を通すことが出来た。

 もし成功しなかったとしても砦内の人達にとっての損害が無いのも大きかったのかもしれない。準備を少し手伝ってもらったが、余った燃料を渡すことでトントンだろう。

 

 そういやその燃料なのだが、何気にこれが一番の難題であった。

 いや、普通に考えればいつ来るかもわからない上にどの方面から来るかもわからないのだから、それに対応する光源に出来るほどの炎の為の燃料ともなると結構な量になる。

 この世界には未だ液体燃料など便利なものも出回っていないようだし、そんなものがあれば俺達が砦に到着するまでに使い切り勝利を収めているだろう。

 なので、俺が用意しました。

 用意したと言っても地中から掘り出したとかではない。

 作り方自体は簡単だ。かなーーーーりの覚悟が要ったが。

 まず少量の液体燃料(揮発しないもの)を少量用意します。それをコップに入れます。因子を取り入れます。出します。

 ほら簡単でしょう?(死んだ目

 自分で言いだした作戦なのだから仕方ないのだが、手に付いたものを間違って舐めるとかじゃなくて口に自ら含むわけだから色々な覚悟が必要だった。後になって先輩から龍の時みたいに影で飲んだりできないのかと言われて無言で腹パンした俺は悪くない。

 だがその苦難を乗り越えた結果に得た物は素晴らしいの一言だ。

 石油王に俺はなる!(ただし石油は身体から出る

 

 さておき、そんなこんなで今回のイタリカ攻防戦は何の山も谷も無く終結した。

 倉田さんに死ぬよりひどいトラウマがどうとか言われたが知ったこっちゃない。あとメイドのペルシアさん(猫獣人さん)は渡さない。

 でもまぁ、結果だけを見れば大成功だろう。死傷者はなんと0人なのだから。

 ちょっと大きな獣にトラウマ抱えちゃった人も居るけど、死ぬよりはマシ……な筈だ。

 ただ、問題はこの捕まえた人達をどうするかってことだ。

 イタリカの人達の中には殺すべきだと訴える人も居る。多数派ではないがそれなりに居るのだ。

 しかし俺はそんなことをしたくないし、自衛隊の面々もその信条に反すると言ってしない。

 彼ら盗賊落ちした人達は、よくよく理由を聞けば闘うこともできずにいる自分たちが許せなくてこんなことをしたそうだ。その結果死んでも悔いは無いとも言っていた。

 とはいえその境遇に同情はしない。

 彼らは人を殺すつもりでこのイタリカを攻めたのだ。死ななかったから許せるというものだろう。

 そして後悔もしない。

 話を聞く限りは俺がやり過ぎた所為で彼らは自分というものを失ってしまったのだろう。最後の切っ掛けを生み出してしまった原因は俺にもあるのだろう。

 だけど、ここで後悔してしまってはイリヤや士郎、先輩に教えてもらった言葉を意味の無いものにしてしまう。俺は、救えた命を誇りに思うし、無為に人の命を奪いたくなんかない。そして助けたいと思ったから助けたのにそれを後悔するなんてしたくない。

 だから盗賊の人達が産まれた原因は大元は俺なのかもしれないがそれを悔いたくはない。

 ただ、だからと言ってこの人達をこのままにするのは無責任が過ぎる。

 さてどうしたものか……。

 

 そんな風に悩んでいると、何か音楽なようなものが聞こえてきた。

 

「なぁ先輩。なんか聞こえない?」

 

「へ? いや何も聞こえないけど」

 

「うーん、いややっぱ聞こえる。なんかこう洋画とかで聞いたことあるようなの」

 

 何で聞いたんだったか、思い出せないがリズムは思い出せる。

 だからふと口ずさむ。

 するとそれを聞いて先輩が答えが分かったのか教えてくれた。

 

「ああ、それはワルキューレの騎行だな。ほれ、地獄の○示録って映画でも使われてたやつ」

 

「なるる。でもなんでそれが聞こえてきてるの?」

 

 再びの俺の質問、それをすると先輩は何故か口を開いて何かを思い出したのか間抜け面を晒す。

 なんかこう、テスト当日にテスト勉強の範囲を間違えていることに気付いたような絶望的な顔だ。

 

「あ……。後輩! あの獣たち消せ!! 早く!! 富田は通信急げ!!」

 

 そして次の瞬間には慌ててそう言う先輩。その姿に思わず呆けてしまう。

 確かに、炎龍は俺自身が変身していたから既に居ないのだが、確かに残る二匹は念のため門の外で待機させてある。

 無いとは思うが盗賊の人達が暴れ出した時用だ。

 それを消せってのはなんでだ?

 しかし何故獣を消せと言ったのかすぐ理解できた。

 突如鳴り響いた轟音。ヘリのローター音とガトリングでもぶっ放しているような音だ。

 そして――――、

 

 

「痛たたたたっ!? 痛い!? 痛いよ!!!!? にぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 全身を襲う痛みに俺は床を転がり悶える。

 そして最後には頭をぶつけた感覚と同時に視界が真っ暗になった。

 

 最近こんなのばっかりだ……。




いかがだったでしょうか?

すみませんすみません! 攻防戦と言いながらこんな結末にしてしまいました! 
いや炎龍喰ってその姿に成れるのに使わないという選択肢は無いと思ってついこんな形に……。
ついでに言えば炎龍が倒されたっていう噂も届いていないし、絶好の機会じゃないですか!
おまけつきですが、こうするのは前から決めていたのでお許しください…。

後の案はロゥリィとコウジュの二人で無双するというものでしたが、コウジュがしたくない殺しをしてしまうので没にしました。


さておき、最後に酷い目にあったコウジュ。
しかしこれ、実は自業自得なのです。
今話の途中に急遽盛り込んだと書いてあったのですがそれがフラグだったんです。ほんとに作戦決行前に盛り込んだ所為で伊丹先輩が支援部隊に伝える暇が無かったんですよね。
哀れコウジュ、君の活躍は忘れない。

P.S.
恋ドラ盛り込んだのは完全に趣味です。だってかっこかわいいじゃないですか。
ボイス付きになって一段と好きになってしまったんですよね……。

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