テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。
お待たせしました。どうぞ!

※追記 (2015.09.27)
以前感想にて恋ドラモードの姿が原作のままであることに助言をいただき、変更させて頂いています。
現在は髪色をコウジュの名残として銀髪とさせて頂いております。

又、ゲート編であるとの追記をタイトルの後ろに入れさせていただきました。

※追記 (2016.01.05)
ロゥリィが持つ斧の所持方法に関して矛盾があったため訂正しました。


『stage15:ハナシアイ』

 

 

 

「あなたお馬鹿ぁ?」

 

「い、いま、なんと……?」

 

「あなたはお馬鹿さんですかぁって言ったのよぉ、お嬢ちゃん」

 

「お嬢ちゃん……ですって……?」

 

 某巨大掲示板に置いて特地の人間が国会中継に出ていると書き込まれたから早数時間が経過したころ、公共のチャンネルを通じて義務的に行われているこの場の視聴率はかつてないほどに高くなっていた。

 そんな中、とある議員の発言に対する答えが冒頭のものだ。

 そして大音量で以て本国の人間かと思うほど流暢な言葉で答えた主の名はロゥリィ。

 亜神たる彼女は、この場だけでも多数の人間が居るというのに堂々とした態度で目の前の女性を嘲る。

 だがそれは、ただ馬鹿にしている訳ではない。ロゥリィは純然たる理由があって目の前の女に対して言い返すべきだと判断したが故だ。

 まず第一に、見当違いの質問をしている。第二に、見た目で判断して侮っている。第三に、どのような回答をしてほしいか、そしてその答えでもって自分の言い分を通そうとしているのが透けて見えている。

 ぶっちゃけて言えばロゥリィからすれば嫌いな人種だった。

 他を蹴落とすことでその場に居るような輩は総じて死を前にして醜い本性を現す。ロゥリィが何度となく見、そして何度となく断罪してきた存在だ。

 ロゥリィが仕える死と断罪の神は決して命を否定し死へと誘う存在ではない。むしろいずれ来る死の瞬間の為に悔いなく生きることをこそ教義としている。

 しかし目の前の女は己を偽り言葉を偽り他者を貶める言葉を吐く。

 これを前にしてロゥリィが黙って居られる筈もない。

 

「まったく、あなたのような輩が居るこの国の兵士は大変苦労しているでしょうねぇ。彼ら自衛隊は勇敢に闘い撃破したわぁ。そして彼女(・・)と共に村人を救った。確かに死者は出たでしょぉ。でもそれ以上にぃ、炎龍を前にしてあれだけの命が残っていることこそを称えるべきよぉ。彼らが行ったのはぁ奇跡にも等しいということを理解するべきねぇ」

 

 ロゥリィは予め言われていたことに気を付けながらも自身が感じたことをそのまま告げた。

 それは紛う事なき本心だった。

 はるか昔から炎龍は数多くの英雄を喰らい、貪り、その命を無へと還してきた。

 ロゥリィ達の世界において炎龍とは災害そのもの。災害を打破しようなど出来るはずもない。

 だがそれが行われたのだ。

 褒め称えこそすれ、どうしてもっと上手くできたはずだと責められようか。

 

「しかし彼らに死者は出ていないのに現地民にだけ被害が出ているわ! それが職務怠慢と言わず何と言うの!」

 

 ロゥリィの言葉に女性議員は負けじと声を張り上げる。その手に持つフリップボードを叩くようにしながら放送機器に向かってアピールをする。

 全国に放送されているこの場で少女に言い負けては自身の立場が危うい。さらに言えばここで敵対している派閥にダメージを与えることができれば自身の立場は盤石となる。多少の不敬は大人らしく大目に見て言い包めなければならない。

 そう言った心情で以て言葉を続けた。

 だがそこで女性議員は気づくべきだったのだ。

 既にそのやり方は当人以外の全てに対して効果を齎してはいない。

 そもそもその言葉は人の心に響いては居なかった。

 当然だ。その場を見て当事者であり被害を被った人々と共にあったロゥリィの言葉と、数字の話ばかりをして上げ足を取るだけの女性議員。

 この場の趨勢は決まっているようなものだ。

 

「ほんとぉにおばかさんねぇ。前線に立つ兵士が倒れてしまえば誰が後ろに居る人間を守るのよぅ。あなたみたいな後ろで踏ん反り返っているだけの人間がそんな言葉を口にできるのは前に立って守る人間が居るからなのよぉ? それを忘れて前の兵士を貶すだけでは誰もそのうち守ってくれなくなるわぁ」

 

 長い、この場に居る誰よりも長い生を生きてきた少女の言葉だ。

 それはその可愛らしい見た目に反して重く人々の心に浸透していく。

 

「お、大人に対する礼儀を弁えていないようね……」

 

 だが目の前の女性議員には届いていなかったようだ。

 言葉を拒絶し、自身の思惑通りに行かないこの場にただ憤っている故に響きはしない。

 そしてその在り様に、ついにロゥリィは断罪するべきかと己の武器を握り直す。

 持ち歩くと目立つという事でとある少女から渡されたカードの中に収納していたが、正式な場という事で取り出していたのだ。布に包まれているとはいえ巨大なそれに周囲は慄く。

 しかし仕方ないのだ。

 言って分からないのであれば魂となって浄化された方が早い。

 それがロゥリィの関わる世界での教義(ルール)

 敬虔な使徒であるロゥリィにとって眼の前の存在は害悪でしかない。

 

「少しお待ちください!!」

 

「ちょ、ちょっとぉ!」

 

 しかしロゥリィによる断罪が行われるよりも早く、声を上げる存在が居た。

 伊丹耀司だ。

 彼はロゥリィを押しのけるようにして前に立つ。

 ロゥリィは仕方なく「良い所なのにぃ」と言い、手にしていたものを再び収納しながら与えられた席へと戻る。

 常に傍に在った物が無くなるのはどこか落ち着かないが、伊丹に任せるというロゥリィなりのアピールだった。

 それを見てほっとっする伊丹。

 そしてすぐさま、この場の皆を見回しながら再び口を開く。

 

「我々は門の向こう側に行き、様々なものを見ました。そして、こちらの常識が向こうでは通用しないことを知りました。その一つが年齢です。

 私たちは日常の中で年功序列等と言う言葉を使いますが、その言葉で当てはめれば、こちらに居るロゥリィ・マーキュリーはこの中で最も敬われるべき存在です」

 

「ちょっとぉ、その言い方は無いんじゃないのぉ?」

 

 ロゥリィから非難の声が上がるがその表情はニヤニヤとしたものに変わっていた。

 ちらりとそちらを見た伊丹は心の中で最近増え気味な溜息をつき、改めて前を見る。

 どうやらロゥリィは直接を手を下すことをやめて場の成り行きを見守る体勢に入ったようだと判断した伊丹は元々やろうとしていたことの為に軌道修正を図る。

 

「ロゥリィ、悪いが年齢を言ってくれないか?」

 

「まったくぅ。私は961歳よ」

 

 ロゥリィが告げた年齢に場が騒然となる。

 しかしそれも当たり前だ。現代日本には100歳を超えるだけでも何人いるかというレベルなのに、千に届こうかという年齢を言われてしまえば驚かざるを得ない。

 

「ち、ちなみに……」

 

 未だ伊丹の対面に立っていた女性議員が、何とかそう口にした。

 完全に先の一言で場の流れを持っていかれてしまった彼女はそこまで言うのが限度だった。

 しかし彼女の言葉と共に目を向けられたテュカは、その言葉の意味を理解して憮然と答える。

 

「165歳」

 

 再び議事堂内が騒がしくなる。

 女性議員はついに言葉を出すことも忘れて、その隣に座る少女へと目を向ける。

 目を向けられたのはレレイだ。

 彼女もまた答える。

 

「15歳」

 

 ホッと、その場に居た者たちがそう口にする。

 別に見た目に反する年齢の何が悪いという訳でも無いが、レレイまでもがありえない年齢であった場合には議員たちは放心してしまっていただろう。

 しかし、ホッとしたのも束の間、彼らは結局頭を悩ませることになる。

 何故ならレレイの隣にはもう一人、銀色の少女がまだ座っているのだから。

 

 そして女性議員は、多少持ち直した心で以て何歳かとその少女に問うた。

 

「ふふん、(おれ)は精々数日だな」

 

 お前のようなゼロ歳児が居るか。

 この場に居るものだけでなく、カメラを通したその向こう側の全員が同時にそう思った。

 なにせそう告げた少女、否、女性は女学生が着るようなブレザーを着てはいるがモデルも斯くやと言わんばかりのプロポーションを誇っていた。

 

「ああ、敢えてこう言おうか。(おれ)は数日前に一度殺され、そして再構成されたのさ」

 

 足を組み、尊大に座るその女性はその場に居るものを睥睨するかのように告げる。

 

(おれ)はさっきからお前たちの話に出てくる炎龍だよ。マグロ食ってるイグアナ擬きとは一緒にしてくれるなよぅ?」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 場の空気が凍った。

 日ごろから空気を読む(読み専)ことに気を付けている俺じゃなくてもそのことには皆気付いているだろう。

 今俺の後ろで銀髪の女性が告げた“己が炎龍”だという言葉を聞いたのがその原因だ。

 空飛ぶ戦車だとかタングステン並みの強度だとか色々とあれこれ言われていたのをその本人(本龍?)が聞いていたとは誰も思わないだろう。

 だが当然ながら実際には違う。ここに居るのは後輩が遠隔操作している泥人形(恋ドラver)なのだ。

 しかしそんなことここに居る人間には判断が付かない。

 だからこそ、俺たち以外の人間は凍り付いたように反応できなくなっている。

 そしてこれで良いんだ。

 この状況こそ、俺達の作戦への第一歩。

 

「皆さん驚くのは仕方ないと思います。しかし彼女が炎龍だというのは確かです」

 

「ははは、昨今の自衛隊は演劇の練習もするのかね?」

 

 引き攣った顔で、議員の一人がそう言いだした。

 俺の記憶によれば結構な古株で各方面に顔が利く議員だったかな。

 さすがは古株。これだけ場を掻き乱しても再起動するまでが早かったな。

 ならもう一手だ。

 

「いいえ、改めて言いますが彼女が炎龍だというのは本当です。そして我々は、彼女を御すことが出来ています。いえ、正確には彼女を御すことが出来る存在と協力関係を結ぶことができました」

 

「何を言って―――」

 

「失礼ですが! これ(・・)に気付くことが出来ていた方はいらっしゃいますでしょうか?」

 

 古株議員の御陰で続いて再起動できたらしい女性議員の言葉を遮るように声を上げて話す。

 進行係の人は既に混乱しているのだ。あとは残る議員の余裕を潰すだけ。

 その為に、俺は俺が立つすぐ横に在るモノ(・・)を指さしながら告げる。

 

「何もないじゃないですか」

 

 何を馬鹿なと鼻で笑うように言う女性議員。

 ありがとう、と俺は心の中で言う。

 全く以て予想通りの返しだ。

 御陰で良い引き立て役だよ。

 

「いいえあるんです。認識できていないだけでここにはあるんです。テレビで見ている方なら気づいた人も居るかもしれません。直接じゃないと効果は薄いらしいですから。だから、ここに段ボール箱が不自然にあること(・・・・・・・・・・・・・・)に気付いた人がそろそろ出てくるんじゃないですか?」

 

「あ……」

 

 そう漏らしたのは誰だったか、在るという前提で見るか在ることを知っていれば容易く意味をなさなくなるらしいこれ。それをこの場に居る誰かが目にすることが出来たようだ。

 続けるように、周囲のあちこちから驚く声が聞こえはじめた。

 驚くことにその中の一人は目の前の女性議員だったりする。

 疑ってかかればまず見つけられない筈なのに案外純粋な心も持っているのだろうか? いや、無いな。

 

 さておき、ここらがいいタイミングだろう。

 

「後輩、出番だ」

 

 俺はボソリとそう口にする。

 同時、ガバっと勢いよく段ボール箱が空に飛んだ。正確には中から人が出てきた。

 

「待たせたなぁっ」

 

『!?』

 

 中から出てきた後輩の姿に、飛び上らんほどに驚く面々。

 そう、恋ドラちゃんを操作する一方で、後輩は段ボールの中でステルスモード(子狐モード+畳)になって隠れていたのだ。

 その後輩が段ボールを脱ぎ捨てると同時に人型に戻って周囲へとアピールする。

 それが立て直され始めた人々の心へとダイレクトアタックする。

 目の前の女性議員なんて大口を開けて阿呆面を曝してしまっている。俺が言うのもなんだが全国放送でその顔はマズいと思うの。

 しかしそれだけ驚きに包まれ思考を停止してしまっているということだろう。

 よく見れば女性議員だけでなく周囲の何人もがそうなってしまっている。

 好機、かな。

 

「さて皆さん、ここに居る彼女……コウジュこそが炎龍を御し、そしてあの銀座事件で活躍したもう一人なのです。どうしてこんなことをしたのか、そう疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。しかしこれはある話を聞いて頂くためのデモンストレーションなのです」

 

 そう、俺は斬り出していく。

 未だに頭の中が整理しきれない人物が数多く居る様で、俺の話を切ろうとする者は居ない。

 

「今から数か月前、銀座に置いてある事件が起こりました。通称『特地』と呼ばれる世界との間に門を介して繋がりが出来てしまい、そしてその門から突如侵略者たちが現れました。

 銃刀法という法があるこの日本において、それに対する手段などありません。別に銃刀法がどうとか言うつもりは勿論ありません。ただ、そんな平和な日本を脅かす存在に対してすぐさま対応できる人間が居なかったのです。たった一人を除いて。

 話は変わりますが十年ほど前、実は既に一人の異世界からの来訪者は居たのです。その存在こそが銀座事件を最小限に留めた立役者なのです」

 

『ちょ、先輩!? 台本と違う!!』

 

 俺の言葉に後輩から念話が届く。

 しかし俺はそれを無視して続きを話す。

 

「彼女とは十年前にひょんなことから知り合いました。その時はまだ、彼女が異世界の人間であるという事を知りませんでした。何せ彼女は少し目立つ容姿をしていますが、逆を言えばそれだけで、何の変哲もないただの少女だったからです。しかしその認識が変わったのが銀座事件でした。彼女は命を奪うことに忌避感を持ちながらも、矢面に立ち我々を守ってくれたのです」

 

 俺の言葉だけが場に響く。

 誰も彼もが聞くに徹している。

 そう、そのままで居てくれ。俺が全てを言いきるまで。

 知ってるんだよ。この中の誰かがどの派閥かは知らないがフリップまで用意して銀座事件での銀髪少女に関してこの場で聞こうとしている奴が居るってことは。

 勿論情報源は狭間陸将だ。

 あの人に言われた提案、それはこの場において先んじて後輩の情報を提供すること。

 その為に、無駄にパフォーマンスをして全員の頭の中を空っぽにしてもらう必要があった。

 御陰で今話していることはスルスルと頭の中に入っていくことだろう。

 言葉というものは難しいもので、同じ言葉でも捉える人間が違えば捉え方も変わってしまう。

 そこに余計な前情報が入ってしまえば余計にだ。

 だからそれを最小限にするために、静かに頭の中を空っぽにして聞いていてもらう必要があった。そして先んじて言うことで、後から付け足された情報の信用度を下げる。

 この辺りも陸将とともに作戦を詰めた部分だが、陸将曰く、「デカい衝撃を与えて頭の中が空っぽになっている状態の所に一石投じてやれば人間ってのはそっちに転んでしまうもんだ」だそうだ。そうすることで自然と群集心理ってのが働くらしい。

 それを、俺達は狙った。

 ま、少し勝手にアドリブを入れさせてもらうがな。

 

 

「彼女はコウジュ、コウジュスフィール・フォン・アインツベルン。コウジュ以下の名前は貰い物だそうですが、都合この地球で3つ目の世界となる異世界からのお客様です」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 先輩のセリフが台本と違う件について。

 いやまぁ作戦に支障をきたすわけじゃないけど、何故それを言ったし。

 アインツベルンまで言っちゃうと大きいお友達たちはすぐにどういう意味か気づくはずだ。

 だってつまり俺は立場的に言えば3次元に居るオリ主だってことを日本全国のお茶の間に宣言されちゃうって訳だ。そんなのマジで勘弁してほしい。

 いや、主人公ってわけじゃないだろうけど、それでも二次元に介入した後だって言われるわけだぜ? そんなの恥ずかしくて悶え苦しむわ。

 普通なら、そんなの信じる訳がない。

 でも今は普通ならありえない(・・・・・・・・・)デモンストレーションをしたすぐ後だ。

 元々の作戦でもインパクトを与えて呆けてもらっている間にこちらの都合が良い情報を叩き込むというものだったわけだが、ちょっと俺のリアル黒歴史を公開しちゃうのホント勘弁してくれませんかねぇ!?

 あー、別にあの世界に関わったことを恥ずかしいって思ってる訳じゃないけど、でもほら、ねぇ……? 銀髪ケモ耳紅目巨乳幼女な見た目で、魔法とか使えることは銀座事件の事で一部にはばれてるし、そこにしかもドラゴン倒せるとか言われると、ねぇ……?

 先輩後で覚えてやがれ。

 

 そんな風に一人復讐を誓っている間にも先輩の言葉は進んでいた。

 

「彼女は元々、宇宙進出を済ませた世界に居たそうです。その世界には幾つかの種族が居たそうですが、その中でも彼女と同じ種族であるビーストという種は、過酷な宇宙環境でも適応できるように遺伝子操作で産まれた種族らしいのです。そんな彼女は傭兵業営む組織に属していたそうですがとある事件に巻き込まれてそれを解決、その後に二つ目の世界へと渡ったそうです。二つ目の世界でも彼女はとある事件に巻き込まれて、その後何とか解決に至りました。そしてその後にこの世界へと来訪したのです」

 

 ごめんなさい最初の方はそういう設定なだけなのでホント勘弁してください。

 最初の世界は普通の学生でした!

 

「しかし彼女はまた事件に巻き込まれてしまいました。それが銀座事件です。それ自体は彼女も言っていましたが後悔はしていないそうです。彼女が元々行っていた傭兵業も大まかに言えば人助けをする職業、そういう気質なのでしょう。

 だが、その彼女を脅かそうとする存在が居ます!」

 

 待って、ねぇちょっと待って先輩。一体何を言うつもりなのさ。

 

「彼女はとある場所に住んでいたのですが、銀座事件の後、彼女は何処とも知れぬ謎の組織()に狙われ続けています。しかしまぁ先程ご覧いただいたように彼女は隠れることが得意です。その為に彼女は捕まることなくこの場に居ます。しかしそいつらはその内こいつの周りを狙い始めやがった。そんなこと許せるわけがない!」

 

 途中から、敬語も無くなり感情のままにそう言った先輩。

 その顔は怒りを浮かべていた。

 先輩は、俺の為に怒ってくれているんだ。

 作戦とは全く関係ない言葉だけど、現金なことに俺は内心溢れんばかりに嬉しかった。

 俺自身、自らがこの世界では歪な存在だと思っている。だから狙われても仕方ないと諦めていた。

 だけど、それが先輩には我慢ならなかったらしい。

 当初の作戦はどこかに行ってしまったが、これだけの面々を前にして素の感情でらしくない言葉を吐く先輩は何処までもカッコよかった。

 ああ、確かに彼は英雄だ。

 そんな英雄殿はつい声を荒げてしまった自分を少し恥じたのかコホンと1拍置き、続けた。

 

「それでも彼女はその攻めてきた奴らを一人も殺しちゃいません。さすがに放置もできないからと捕えてあるそうですが、さすがに食費やらを維持するのが大変なのでそろそろ引き取ってほしいそうです」

 

 待って、今いい話してたのに途端に安っぽくなったよ!? もっと良い言い方ってものがあるよね!? 俺の感動返して!!?

 しかし俺の内心など知ったことかと、先輩は無駄にキリッとした顔で続ける。

 

「さて、本題に入ります。彼女はいくつかの世界を渡り、幾つもの技術を身に着けています。炎龍を我々と共に倒してくれたのも彼女の技術あってのもの。その様に我々には予想もできないものを彼女は持っています。勿論、扉を越えた向こうの世界もそうです。ここで今一度、彼女たちへの対応を考え直して頂きたい。以上です」

 

 そう言って先輩はマイクから離れて自分の席へと戻った。

 え、俺はこのまま? 俺の登場は予定にないから席も無いしで立ってないといけないんだけど、放置?

 酷い先輩も居たもんである。

 だけど、その先輩の御陰でなんだか少し救われた気がした。

 正直助かった命が有るというだけでも嬉しかったが、こうやって身近に俺について怒ってくれる人が居るというのはやはり何よりも嬉しい。

 対価が欲しい訳じゃないが、だからと言って良い様に使われるのはまっぴら御免である。

 その辺りの事を今回伝えようって最初は予定していたはずなんだが、どうやら先輩はそれだけでは物足りなかったようだ。

 むむ、何だよ先輩カッコいいじゃないか。

 俺はつい嬉しくなって、でも流石に自分では恥ずかしいので恋ドラちゃんを使って先輩へとありがとうを伝えることにした。

 

「さっすがは己の英雄殿だ!」

 

 勢い余って抱き付く形になってしまったが、まぁ仕方ないか。

 人形とはいえ中身が無いだけで人種(ひとしゅ)そのものの外側だから色々柔らかい筈だけど俺そのものじゃないし、うん、気にしないでおこう。

 

 さて、俺も本来予定していた行動へと戻ろう。

 元々は先輩と共に色々話すつもりだったわけだが、先輩は勢いでそのまま席へと戻ってしまった。

 今更こちらへ戻ってくるのも締まらないだろうし、ここからは俺ががんばろうか。

 折角先輩が気を利かせてくれたんだ。このまま世界へとアピールしようじゃないか。俺達と敵対するよりも仲良くした方が利益がありますよってな。

 元々が日本人なのもあって日本贔屓ではあるが、その上で攻めてくるのならどこだろうと知ったこっちゃない。

 俺自身に対してなら構わないが、周りにまで迷惑掛けようものならボコボコにしてやる。

 でもまぁ狭間さんが言っていたがこれである程度民衆を味方にできるそうだ。

 そうすれば敵さんも動きにくくなるし、その分余計に俺自身を狙うようになるだろうとのこと。

 難しいことはよくわからないが、そうなるのなら真正面から叩きつぶすだけだ。

 その為にも、俺自身の有用性をある程度伝えなければな。

 さぁ、ここからが正念場だ。

 

 

 

 

 

『ってこら先輩ドサクサ紛れにどこ触ってやがる!!』

 

「うおっ!?」

 

 操作の為に感覚共有を使っているから嫌なところに手が触れた感覚が有ったので、恋ドラ人形で殴っておく。

 このタイミングでラッキースケベとかどこのRITOさんだ。まったく……。

 

 




いかがだったでしょうか?

今回の話はどうするかかなり悩んだのですが、結局この形としました。
事前に自衛隊側から情報を渡してある程度相手の動きを予測しやすくし、そしてコウジュ任せでとっちめる。さらに言えばいくつか相手を牽制できる言葉を入れることで抑止力とする。
とまぁそんな感じです。
この裏では狭間さんが同時に上層部へと色々手を回している予定なので、実験台堕……ゲフンゲフン、実験台オチとはならない予定です。

あ、補足ですが捕えたどっかの部隊さんは一条祭りの中でくっころされている予定です(え

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