テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。
不定期更新とは言いつつなんとか出来ていた週1更新にちょっと遅刻。ごめんなさい。


『stage16:○○ホイホイ』

 

 

 

「さぁおいでなすったぜ嬢ちゃん」

 

「嬢ちゃんはやめてくださいよ。歳、そんなに離れてませんし」

 

「ああ、そうだったな」

 

「とりあえず、やります」

 

「頼んだぜ。対象は後ろにピッタリ着いてきてるやつだ」

 

「了解です」

 

 国会が終わり、移動のために乗り込んだバスの中で俺は駒門さんと言葉を交わす。

 俺の言葉にニヤリとする駒門さんは公安というところに所属しているらしいのだが、今回俺達の護衛を担当してくれている人だ。

 いまこの車には俺達と駒門さん、そして駒門さんの部下が数人乗っている。

 何故そんなことになっているかというと、その答えは後ろから追いかけてきている不届き者が原因だ。

 国会議事堂から移動する際の諸注意として駒門さんから各国のエージェント的な人たちが追いかけてくる可能性が高いと言われていたんだが、やはり来たようだ。

 本来であればバスを囮にして地下鉄で移動という話だったのだが、先輩が何やら嫌な予感がすると言うので急遽予定を変更したのだ。

 かといって追われる事が分かっているバスにそのまま乗るのもおかしな話なので、俺が対策することになった。

 

 俺は乗っているバスの窓を開け、屋根の上に飛び乗る。

 どこぞの高校生みたいに足の握力で屋根を掴むことは出来ないので影を屋根に巻き付けるようにして固定し、落ちないようにする。だって落ちた所でダメージ無いって言っても走ってる車の上怖いし。

 身体が固定されたのを確認し、後ろから追いかけてきている車の運転手たちを見る。

 驚きに目を見開いている彼らは、薄くスモークがかかっている為見づらいが明らかに日本人では無い容姿だ。

 さすがにどこの国の人達かってのは分からんが、友好的な様子ではないのは確実。

 なら、自分の運命を呪ってもらうしかないだろう。

 まぁ後続の車もあるしあまり派手なことをして関係ない人を巻き込むわけにはいかないので手加減は当然するが。

 

「ミラージュストーム」

 

 手を横に出し、俺は一本の杖を出す。

 黄金の軸に、真ん中辺りに埋め込まれている翡翠を思わせる球体、それを囲うように鳥が翼を広げた姿を思わせる形で装飾されている紅い翼。

 長杖系Sランク武器の『ミラージュストーム』だ。

 

「お疲れさん。良い夢みてくれよ」

 

 俺はミラージュストームを軽く振るう。

 すると、杖が振られるのに合わせて周囲にいくつもの赤い羽根が宙を舞い踊るようにして現れる。

 これはゲーム時からあったエフェクトだが、当然羽がひらひら舞ってるところを見せるだけでは意味がない。

 俺はすかさず手に持つ長杖に意識を向け、込められた概念を呼び起こす。

 ミラージュストームが持つ概念は“一陣の風と共に深紅の羽根が舞い踊りあたりは夢幻の世界に誘われる”というもの。

 ぶっちゃけて言えば催眠系武器だ。いつから錯覚していた?系だ。

 ただし俺との相性があまりよくないのか修行不足というかイメージ不足なのか、掛けられる催眠はあまり複雑ではない物に限られ、又、現実からあまり外れた物を見せることは出来ない。ついでに言えば効果時間も未だに短い。

 けど、今はそれで十分。

 

 舞い踊る羽が後ろを走る車へと殺到する。

 避けることも叶わず、追跡者(ストーカー)達は赤い羽根の中で夢幻の世界へと誘われる。

 

「夢は、うん。目の前で追いかけていた車は炎龍が抱え込んで何処へともなく飛んでいったって感じで良いかな」

 

 刷り込む夢幻(イメージ)を頭で作り出し男たちに魅せる。

 途端に車は慌てるようにハンドルを切り、自ら何処へともなく走っていった。

 

「ジャスト一分、良い夢見れたかよ……って言いたかったなぁ」

 

 あまりにもあっけない幕引きに、微妙に肩を落としつつ俺は再びバスの中へと戻る。

 すると苦笑いした先輩がすかさずこちらへと近づいてきた。

 

「先に聞いてはいたが相変わらずエグイのが多いなお前」

 

「ひでぇっすねぇ先輩。でもまぁ否定はしないよ。未だ慣れてない幻術でもこれだけ効果があるんだし。ただやっぱり慣れないことをすると精神的にめちゃ疲れる」

 

 うへぇと俺が零せば先輩は俺の頭をポンポンと撫でる。

 最近このパターンが多い気がする。

 ただ恥かしいので俺が離れようとすると分かっていたかのように先輩は手を止め自分から離れた。

 むぅ、なんだか釈然としないが文句を言うのも変なので気持ちを切り替える。

 俺はこちらの様子を見ていた駒門さんへと顔を向ける。

 

「駒門さん。これで栗林さん達を迎えに行けるよ」

 

「いやはやお見事としか言いようがないねぇ。俺達の出る幕が無い」

 

「何言ってるんですか、俺は索敵とか情報収集が大の苦手だから駒門さんが持ってる情報を頼りにしないと流石に難しいですよ。一人なら好き勝手出来るんですけどねぇ」

 

「はっはっは、俺としちゃ好きかってしてもらってもいいんだが、嬢ちゃんも護衛対象なんでな。目を離すなって言われてるんだよ。申し訳ないんだがな」

 

 本当に申し訳なさそうに言う駒門さんにどう返したものか。

 言われてるって言うのは当然上から(・・・)だろう。

 それ自体は俺も覚悟の上だ。

 ふむ、初邂逅時には胡散臭いと言ってしまったがなんだかんだと良い人っぽいこの人に無駄な心労を負わせるのは流石に悪いよな。

 

「大丈夫っすよ、駒門さんは仕事をしてるだけなんですから。俺もある程度は覚悟の上だし、直接被害が出てるわけでも無し。それに何かあってもどうにかしちゃえますから。あと嬢ちゃんやめてってば」

 

 俺の言葉に一瞬キョトンとするも、すぐに表情を苦笑へと変える駒門さん。

 むぅ、俺がフォローを口にすると苦笑する人が大半なのは何故だ。

 

「くくく、そこまで言われちゃ仕事しないわけにはいかねぇな。俺達より強いらしいが、まぁ守られてくれよお姫様」

 

「そこを直すんじゃないよ!?」

 

 やっぱヤな人だ!

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「あれ、ここって……」

 

「そ、梨紗の家の近く」

 

 後輩が零した言葉に俺は軽く返す。

 ちなみに梨紗とは俺の元嫁さんの名前だ。

 後輩も知る中……というかしょっちゅう遊んでるし後輩も梨紗の家には何度も来ている筈だからこの辺りの事はよく知っているのだ。

 

 現在俺達はバスを適当なところで降り、バスの中に後輩が即席で俺達に似せた人形を乗せて囮にして街中を歩いている。後輩の幻覚とやらはあの赤い羽根を直接見た者にしか効果が無いらしく、バスの中に幻を残すなんてことは出来ないらしいので代わりの影人形だ。

 後輩は確か認識阻害的なことを出来た筈なので聞いてみたが、どうにもあれは自分にしか行使できないそうで感覚を頼りに周囲を警戒するしかない。地味に使えないよな後輩の能力。

 しかし本来なら後輩が居なければもっと苦労していたところなのだから贅沢は言ってられないと諦めている。

 

 さておき、今俺達が歩いているのは都内のとある住宅街だ。

 そして何故元嫁さんの家の近くに来ているかというと、勿論その元嫁さんの家へと向かう為だ。

 最近メールで水が止まっただのご飯が無いだのと来ていたので、少しだけだが補給しに行くためにも寄ることにしたのだ。

 本来ならこんなタイミングで行くつもりは無かったのだが、メールの内容的にガチで危なそうなので仕方なしだ。

 後輩の幻覚やら陽動やらでここまでの間に追手は振り切っているし、バスの中で引き続き囮役をしてくれている駒門さんが頑張ってくれているからバレていないとは思うしな。

 駒門さん曰く、内部に裏切り者が居るのは確実らしいので本来俺達に付きっきりになる筈の駒門さん自身が離れた方が安全とのことだ。

 最初は後輩から目を離すなという命令を守っていたが、さすがに周りの動きがきな臭くなってきたから現場の判断というやつで離れることにしたそうだ。

 一応いつでも連絡を取れるように後輩と携帯番号とかを交換していたのだが、俺が言うのもなんだが大丈夫だろうか?

 

「先輩、マジで寄るつもりですか? この大人数で」

 

「マジだ。この現状で飛び込みで寝泊まり出来そうなところってここくらいしか思いつかなかったんだよ。それにほれ」

 

「うっわ。梨紗さんまた根詰めてるのか。懲りないなぁ……」

 

 俺が届いていたメールを見せながら言うと苦笑する後輩。

 まぁそうなるよなぁ。

 別れたってのは伝えてあるし、そのうえ前から後輩は梨紗の事についてもう少し余裕を持った生活をすれば良いのにと苦言を呈していた。

 普段は色々と波乱万丈というか滅茶苦茶な行動をしているように思われがちだが、そういう所では普通にまともなことを言う後輩なのだ。

 

「んー、とりあえずあの部屋で全員寝るのはギリギリだし、何とかするか」

 

「何とかって?」

 

「何とかっす!」

 

 ビッと親指を立ててにかっと笑う後輩。

 よく分からんが、こういう時はたいてい後で溜息をもらすことになるので勘弁してほしい。

 とはいえそういう時は大体誰かの為でもあるので怒ることもできないのが何とも後輩らしい。

 

「何でも良いが、ご近所さんに迷惑はかけないようにな」

 

「先輩たまにかなり失礼っすよね」

 

「お前ほどじゃないよ」

 

「っと、着きましたよ」

 

「おい」

 

 いつものやり取りしている内に、梨紗の住むアパートへと到着したようだ。

 ただ誤魔化されただけの気もするが、着いたのは事実だ。

 言われていた食料に関しては自分たちの分も含めて後輩のアイテムボックスの中に購入してあるし、後は中へ入るだけだ。

 生きてるかな……。

 

「え、隊長ここが目的なんですか」

 

「そうですよー。何でここかは後のお楽しみってことで」

 

「あなたはここが何か知ってるのぉ?」

 

「うい。ここは俺もよく来るので」

 

 目的地を告げずに来たんだが、その行き先がこのどこにでもありそうなアパートだとは思わなかったようで驚いた栗林。

 その声にニヤついた笑みを浮かべながら答える後輩に質問したのはロゥリィだ。

 

「ここはまぁなんというか、俺と後輩に馴染み深い人が住んでてな」

 

「伊丹達に馴染み深い人って?」

 

「あー、入ってから説明するよ」

 

 ぞろぞろとアパートの階段を上がり、目的の扉へと向かう。

 俺、後輩、栗林に富田、テュカ、レレイ、ロゥリィ、そしてピニャさんとボーゼスさん。結構な人数だが、まぁ何とかなるだろう。

 最悪何人かは外に行くか。

 

「さてと、あいつは無事かな」

 

「まぁ無事じゃないでしょうね」

 

「だよなぁ……」

 

 鍵を開けながらつい口にした言葉にすぐさま帰ってくる言葉に納得せざるを得ないのがなんとも言い難い。

 俺は扉を開けて中へ入る。

 

「梨紗ー居るかー。って寒っ!? 暖房位着けろよな」

 

「せ゛ん゛は゛い゛ぃぃぃ!!! って、げ、コウジュちゃんも」

 

「げって酷いなぁ……、ってかなんですかこの状況。俺言いましたよね? 愛想尽かされちゃうぞって。まったくもう、まったくもうですよまったくもう」

 

「うー、ごめんてばぁ」

 

 立って歩く元気もない位なのか足元に這い寄る梨紗。そしてそのまますぐ横に居た後輩を見つけて渋い顔をする。

 後輩は苦笑いをしながら梨紗に言い、当の梨紗はバツの悪そうな顔をして謝る。

 相変わらずの様で妙に安心したよ。

 昔からこの二人はどっちが先輩後輩なんだか分からない調子なのだ。いや年齢的には合っていたってことなのか?

 ともあれ何かと梨紗を気に掛ける後輩なのだ。

 

「えっと、隊長にコウジュちゃん。この方って?」

 

 ここまで黙ってついてきてくれていた富田がこの混沌とした状況についに質問してきた。

 当然と言えば当然か。むしろよくここまで黙って来れたな。

 とりあえず、富田だけでなくその後ろで首を捻っている面々にも説明は必要なので答えを言うことにした。

 

「この人は、あれだ、俺の元嫁さんなんだ」

 

「ちなみにマジです」

 

「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」

 

 何故念を押した後輩よ。俺に嫁さんが居ると不思議だってのか?

 いや、それもそうか。全員驚いているのも仕方ない。 

 自分で自分を客観的に見れば嫁さんが居たってのは割と不思議な状況だよな。

 これもまた運が良かったからというべきかもしれんが、まぁ少し普通とは違う夫婦だったのは確かだろう。

 

「あれ、この人達は?」

 

「今気づいたのかお前……」

 

 今さらながら俺と後輩以外にも人が居ることに気付いたのか、首を傾げる梨紗。 

 リビングまでの廊下にぞろぞろと居る状況なのだが、よほど俺と後輩の存在にしか意識を向ける余裕が無かったのだろう。

 

「とりあえず奥に行くぞ梨紗。あと色々借りるから」

 

「え? え? 何この状況!?」

 

「とりあえずお邪魔します梨紗さん」

 

「何なのー!?」

 

 状況が理解できずに居る梨紗だが、とりあえず立ったままというのもあれなので奥へと向かう。

 元々借りる予定だったアパートとは違い後輩と共に梨紗がしたバイトの御陰か少しだけ広い部屋を借りることが出来ている梨紗。

 なのでリビングまで行けば余裕があるとまでは行かないだろうが全員が座れる程度には場所がある。

 俺は先導して奥へ向かい、後輩は梨紗を引っ張りながら後をついてくる。

 他の面々もイマイチ状況が分かっていないようだが、とりあえず落ち着ける場所があると理解したようで着いてくる。

 

「皆何を飲みます? 先輩はいつもので良いっすよね?」

 

「よろしく。後の皆は無難にカフェオレとかにしといて」

 

「ういうい」

 

 そう言い残し、梨紗を放した後輩がキッチンへと消える。行くついでに暖房をつけていく後輩にはグッジョブと言わざるを得ない。

 まぁ何度もここに寝泊まりしているし勝手知ったるなんとやらだ。

 なので飲み物は後輩に任せて、皆をそれぞれ座らせて話が出来る状況を作る。

 

「さて、とりあえず落ち着ける場所に来たわけだがまずは梨紗」

 

「は、はい! って何なのこの状況!?」

 

「落ち着いて聞いてくれ」

 

「えっと、うん……」

 

 いつもは絶対に出さないような真剣な声で梨紗を真正面から見て言う。

 俺の言葉に何時にも無い雰囲気を感じ取ったのか、声を小さくしていく梨紗。若干頬が赤いのは暖房を一気に効かせ過ぎたからか、念のため温度を少し下げておく。

 改めて俺は梨紗を見ながら告げる。

 

「追われてるんだ、匿ってくれ」

 

「帰ってください」

 

「……あれ?」

 

 一瞬で冷めた目に変わった梨紗に速攻で拒否された。解せぬ。

 何が駄目だったんだろう。

 

「隊長! 元奥方とはいえ一般人の方を巻き込む気ですか!?」

 

「だが行く場所が無いだろう?」

 

「会館があるじゃないですか」

 

「ほれ」

 

「うわっと…」

 

 流石に一般人である梨紗の家に止まるのは気が引けるのか言ってきた富田だったが、俺は事前に調べてあった情報を携帯電話の画面に出して放る。

 何とか受け取った富田はそれを見て難しい顔になる。

 映し出したニュースは富田の言う会館が火事にあったというものだ。

 どうやら厄介な追手は予めの予定通りに会館へと行き問題を起こしてくれているらしい。

 そのことを富田が全員に言えば全員が似たような表情になった。 

 

「それじゃ、こんなきれいどころばっかりを連れてきた理由は何ですか?」

 

 久しく聞いていない敬語でジト目をこっちに向けながら言う梨紗。

 悪かったって、そう言いながら俺は説明を続ける。

 

「ニュース見てないか? この子達は特地の子だよ」

 

「じゃあコスプレじゃないの!? にょほぁああああああああ!!!!」

 

「落ち着けって。とりあえずニュース見てくれ」

 

「うん!」

 

 俺と同じような趣味を持つ梨紗の為、明らかにエルフっぽい子や宝塚みたいな子たちが居ることにテンションが上がってしまったようだ。

 落ちつくように言うも無駄だと思うので、とりあえず分かりやすい様に昼間の国会に関してのニュースを見るように言う。

 

「あれ、この炎龍の子は?」

 

「ああ、その子は、まぁ詳しくは言えないがここには居ないよ」

 

 パパッと自分のパソコンで素早く情報を見つけた梨紗が、ニュースの中に出ている炎龍の子、つまり恋ドラモードの後輩が居ないことに気付き質問してくる。

 言いながらも画面から目を離さない梨紗に苦笑をしつつ、軽く誤魔化す。その辺りを梨紗にするには話が長くなってしまうからだ。

 実際のところこの場に居ないのは単純に後輩が具現化させているのを解除しただけだ。場所を取るだけだなので。

 

「ってあれ、この子コウジュちゃん? え? 段ボールから生まれた?」

 

「ああそうか、そういや梨紗はまだ知らなかったんだな」

 

 そういえば梨紗にはまだ後輩が異世界から来た存在だったことや色々な能力を持っていることは伝えていなかった。

 特地に行くことになったことやその後の色々があって伝えることが出来ていなかったのだ。

 

「お呼びですかな?」

 

「コウジュちゃんってソリッドなの? リキッドなの? ビッグなボスのクローンだったの!?」

 

「うわお、危ないって梨紗さん」

 

 タイミングよく飲み物を持った後輩が来たのだがそこへ突撃した梨紗。

 それをさすがというべきかひらりと回避して、そのまま全員へと飲み物を渡していく。

 

「一応、某傭兵さんじゃないよ。ネタであれをやっただけで、インパクトがあれば何でもよかったし。あ、お菓子はこれね」

 

 何でも無い様に言いながら空間からお菓子が山盛りになったお盆を取り出して机の上に置いた後輩。

 それを見て梨紗が驚きに目を見開く。

 

「王の財宝!?」

 

「ただのアイテムボックスです」

 

「あ、そう」

 

「それもう俺がやった」

 

 どこかで見たことあるやり取りだなと思ったら俺だった。

 

「後輩って実は特地とは別の異世界から来てたんだってさ。それで今は協力してもらってるんだよ」

 

「ええ!? じゃあそれコスプレじゃなかったの!?」

 

「コスプレちゃうわ!」

 

「えぇ……」

 

「何で残念そうなんすか……」

 

 ここに来るときはいつもジャージ姿なことが多い後輩が今日は戦闘服だっていう一般向けではない服に見えるそれを着てるのを見て梨紗はどうやらコスプレだと思っていたらしい。

 そういえば梨紗は何かにつけて後輩にコスプレさせようとしていたな。尽く拒否されていたが。

 

「とりあえず、黙っていてごめんなさい梨紗さん。実は俺、異世界から来た存在だったんだよ。特地に行く前に伝えられれば良かったんだけど……」

 

 言いながら頭を下げる後輩。

 普通に考えて簡単に言えることでもないし仕方ないと思うんだが、後輩的には黙っていたことに良心の呵責を覚えていたようだ。

 相変わらず変なところで律儀な後輩だ。

 そんな後輩に、梨紗は先程までの慌て様は何処へ行ったのか優しい笑みを浮かべながら言う。

 

「気にしないで良いよコウジュちゃん。そんなこと普通は言えないって」

 

「梨紗さん……」

 

「それに言われてたら頭疑うだけだし。もしくは厨二病再発」

 

「先輩そっくりだよあんた!」

 

「どういうことだおい」

 

 謂れのない被害を受けた気がするのでツッコムが俺の言葉など聞こえないかのように後輩と梨紗は言い合いを始めた。

 俺との言い合いとは違い可愛いものだが、まだ話の途中なのでとりあえず止めることにする。

 

「はいはい、詳しいことはあとでだ。とりあえず寝る準備だけさせてくれ。とりあえずテュカ達は休ませたい」

 

「うー…。でも先輩、布団とかどうするのよー?」

 

「寝袋もあったろ? それとか使って何とかできないか?」

 

「それならなんとか」

 

 どこだったかなと言いながら押入れの方へと歩いていく梨紗。

 俺も任せきりにするのは悪いのでついていこうとするがそこへ待ったがかかった。

 

「ふっふっふ! お待ちなさいなお二人さん。俺にいい考えがある!」

 

 ニヤリと笑みを浮かべながら言うのは後輩だ。

 その手にはカードを持っており、何かをするつもりなのだろう。

 そういえば家に入る前に何か言っていたな。

 それがこれか。

 

「こんなことになるだろうと思ったよ。だから今こそこれの出番だ!」

 

 言いながら、後輩は手に持つカードを近くの扉へと叩き付けた。

 

「空間移動『どこでもドア』! これがあれば俺が行ったことのあるドアになら例えどんなドアでも繋ぐことが出来るのさ! これで俺の部屋に行けば布団どころか余裕で寝られるスペースがあるよ!!」

 

 ドヤ顔で言う後輩。

 言いながら開けたドアの向こうは、確かにいつしか見た後輩の部屋の景色へと変わっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お前それあるならここまで歩く必要なかったじゃねぇか!!!!!!!!!




いかがだったでしょうか?

今回は繋回でもあるのでそれほど盛り上がりのある場面では無かったですが、とりあえず元嫁さんたる梨紗さん登場の回。
原作程のはっちゃけ感は出していませんが、それもこれもコウジュってやつの所為なんだ。
ただ、コウジュが居ることのバタフライエフェクト的なサムシングでちょっとだけいいお部屋に住んでいる様子。
やったね先輩!間取りが増えたよ!

さておき、長らく使っていなかったどこでもドアのカード。
実はこれがあると色々と回避できてしまうんですよね。本人は忘れていた様子ですが。
追いかける人も大変ですよねこれがあると(目反らし

そういえば、前回の掲示板回は大好評だったようでとても嬉しいです!
四苦八苦しながらなんとか書いたのですが、喜んでいただけたようで何よりです。
またして欲しいとのご要望がたくさんありましたので、ネタが貯まれば再びチャレンジしてみようかと思います。

それではまたよろしくお願いします!

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