テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
あけましておめでとうございます!
新年一発目の今話!
色々と引っかかる部分も多いと思いますが、今後の布石として暖かい眼で見て頂ければと思います。
もうちょっとシリアス続くんじゃよ……。
「おすわり!!!!」
その一言が響くと同時に轟音が謁見の間に響いた。
同時、狂化していたコウジュが地へと沈みこむ。
隕石でも落ちてきたかのようなクレーターを作りながら、その中心で潰れたコウジュは一瞬光に包まれたのち、元の幼女へと戻る。
静寂に包まれる間。
だがそれもすぐに終わる。
「く、そっ! この化け物めが!!」
意識を失い地に伏しているコウジュ。そのすぐ傍に動くものがあった。
ゾルザル・エル・カエサルだ。
彼はコウジュが無力化される時、その腕に捕まれていた。
その為コウジュが地に沈むと同時に彼もまた地へと叩き付けられていたのだ。
そして運よく、コウジュがクレーターを作る直前に掴む腕が緩み、轟音を作るほどの衝撃の近くに居ながら致命傷を負うに及ばなかった。
そんな彼は悪態をつきながら、床より低くなってしまった場所から這う這うの体で這い出す。
片腕は折れ、両の足は傷だらけだ。
だが、彼は怒りのあまりに脳内物質が多量に出て痛みを忘れている。
「ふ、ふん、こうなればただの小娘じゃないか」
言いながら、ゾルザルが傍に落ちていた剣を拾う。
彼は剣を杖にしながら立ち上がり、足を引きずりながらコウジュへと近づいた。
そして剣を無事な方の手で持ち上げる。
「お前には死すら生ぬるい。この俺をこうまでしたのだ。四肢を落とし、懇願しようとも凌辱の限りを尽くしてやる!」
剣を振り落とそうとゾルザルが手に力を入れる。
しかしそれよりも早くタンっと短く破裂音が響き、ゾルザルの腕から剣が弾かれた。
少し離れたところから放たれた伊丹の銃弾だ。
2メートルを超す長身で自らも戦場に出るために鍛えていたゾルザルとはいえ、軽くは無い損傷を負っているため簡単に剣を落としてしまう。
「貴様ぁっ、なんのつもりだ!!」
ゾルザルはすぐさま剣を弾いた相手に気付いた。
振り返り、激高する。
しかしそれに対して伊丹は静かに睨み返す。
「き、貴様も大罪人として処刑してやる!! 近衛兵!!」
ゾルザルは一瞬、伊丹の眼光に怯んだ。
だがそれもすぐにプライドが塗りつぶし、下民に睨まれてそのままにしておくわけにはいかないと伊丹を殺すために兵を呼ぶ。
ただ、それに反応する者は誰も居ない。
この間へと来ていた兵は皆、コウジュによって戦闘不能へと追いやられているからだ。
それに気づいたゾルザルは、頬を引く尽かせる。
この場所は帝国で、その皇宮だ。ゾルザルにとっての本拠地だ。
なのに重傷を負った自分の周りに味方が誰一人居ない。
かといってコケにされたままでは皇子としての名が軽んじられたままに終わる。
それだけは許容できないゾルザルだった。
「ピニャ! 剣を持ってこい!!」
「し、しかし兄上!!」
「早くしろ!!!」
「うっ……」
使えるものは無いかと周囲に目をやり、目に付いたのが皇帝の傍に突っ立っているピニャだった。
ゾルザルは見つけると同時にピニャの腰にある剣へと目をやる。
自分が持っていた剣を弾いた道具を伊丹が未だ構えていることも、それの威力を知っているピニャがなんとか兄を窘めようとしているのもゾルザルには関係なかった。
斬りたい人間が居て、斬れる道具がそこにある。それだけがゾルザルの心を埋め尽くしていた。
そんな中、伊丹はどうにか後輩を救出する手立てを探していた。
思惑通りにコウジュを無力化できた。
後は逃げるだけ……なのだが、その当のコウジュはゾルザルの足元だ。
銃弾はまだ残っているし、強行突破できないことも無い。
だが、それをしてしまえば講和は完全に無くなってしまうだろう。
今更な気もするが、皇子の命を奪ってしまえば帝国が後に引けなくなってしまうのは確実だ。
現状では向こうの拉致が分かったこともあり、なんとかまだ互いに譲歩することができるだろう。
しかしここで殺してしまえば、折角コウジュが耐えた意味も無くなる。
皇子を殺されて動かないわけにはいかない帝国とも、再び戦端は開かれるだろう。
伊丹はそう思い、銃口を僅かに迷わせる。
その一瞬の迷いが仇となる。
「兄上何を!?」
ピニャの叫びに慌てて伊丹は目線を戻す。
そこにはいつまでも剣を渡しそうにないピニャに業を煮やしたゾルザルが落ちていた瓦礫を持ち上げる所だった。
石を使うなぞ王族のすることではない。
かと言ってすぐには武器が手に入りそうにない。
ならば、後にするか?
だがそんな判断が出来る状況にゾルザルはなかった。
目の前に落ちている、自身をコケにした存在を傷つけられればそれで良いのだ。
「その身で贖え化け物が!!!!」
ゾルザルが瓦礫を落とす。
片手を負傷しているとはいえ、それなりに体格が良いゾルザルが持ちあげた瓦礫は人の手足位簡単につぶせそうな重量がある。
ただ、持ち上げるに精いっぱいで、落とすしかできなかった。
それでもその重量が1メートルちょっとの高さからとはいえ落ちれば下にあるものはただでは済まない。
その塊が、ゆっくりとコウジュへと落ちていく。
銃では弾けないと伊丹が走り出した。
だが、走るよりも早く、瓦礫はコウジュへと辿り着いた。
「いやはや
声が響いた。女性の声だ。
それと同時に、離れた場所でドゴンと何かが壁にぶつかった。
それはよく見ればコウジュの上へと落とされそうになっていた瓦礫だった。
そして落とされる筈だったコウジュはと言えば、そのすぐ近くにゾルザルとは別の存在が立っていた。
それが先程響いた声の主だ。
その女性は足を蹴り抜いた形で居たのを正し、何事も無かったように佇んだ。
この女性こそが伊丹よりも早くコウジュの元へと駆け寄り、瓦礫を蹴り飛ばした正体だ。
伊丹はその女性を、何故と驚愕の目を向ける。
長い銀髪に勝気な紅い瞳、その瞳孔は縦に割れて肉食獣を思わせる。
肢体はモデルが羨むような凹凸の激しい身体。
しかし、服装は反して学生を思わせるブレザーを着ている。
そして、トレードマークなのか、頭よりも大きい丸い帽子を被っている。
そう、コウジュが恋ドラ人形と呼んでいた、動くはずの無い存在だった。
◆◆◆
俺は目の前の状況に、悔いと安堵と驚愕を綯い交ぜにして動けなくなっていた。
悔いは勿論、後輩の為に咄嗟に動けなかった事。
安堵はその後輩が一先ず助かったこと
そして驚愕は、動くはずの無いものが動いたこと。
改めて恋ドラ人形を見る。
今まで動くはずがないからと数に入れていなかった文字通り人の形をしているだけの物の筈だった。
恋ドラ人形は完全に後輩のマニュアル操作だ。そう後輩自身が言っていた。
なのに今、後輩が気絶している今、恋ドラ人形は独自に動いている。
正直に言って、意識の中からすら抜けていたほどにその存在感は無かった。他の者も見れば同じ様子だ。
だが、それが今になって動き出した。
何故……?
「ふふん、何やら訝しんでいるようだけど己は味方だぜぃ英雄殿」
そんな俺を見て、恋ドラ人形は薄っすらと、妖艶にすら思える笑みを浮かべた。
後輩が操っている時には見られなかったものだ。
「小娘! 何のつもりだ!!」
自身が行ったことが成されなかったと今更ながらに気付いた皇子が恋ドラ人形へと声を荒げる。
それなり以上ののプロポーションを持つ恋ドラ人形は身長も高い。それからしても巨体の皇子が上から拳を振り落とす。
それを恋ドラ人形はポスンとコミカルにも思える軽い音と共に掌で容易く受け止めた。
「戦闘力たったの5か、ゴミめ」
「な、ご、ゴミ!? この俺を!!?」
「あまり吠えるなよぅ。弱く見えるだけだぞ?」
「貴様……、な!?」
恋ドラ人形は受け止めた拳をそのまま掴んでいた。
それを皇子が外そうとするも、全く動く気配が無かった。
「良い身体つきだ、だが無意味だ」
「は、放せ!! この! くそ!!!」
「何だ放してほしいのか? ほれ」
「うおおおおおおおおおっ!!!?」
傷ついた足にも拘らず、皇子は身を振ってでも逃げようとする。
それでも逃げられないで焦っている皇子の手を恋ドラ人形が少し勢いを付けて放した。
すると軽い動作だったにも拘らず、皇子の身体は空を滑り暫くして地へと転がった。
「お前、は、恋ドラ人形じゃない……のか?」
俺はそこに至ってやっと声を出すことが出来た。
それを聞いただろう恋ドラ人形は答えず、しゃがんで後輩の身体を抱き上げたかと思うと、それをこちらへと放ってきた。
「うおっと!?」
俺は慌てて飛んできた後輩を受け止める。
あれだけの事をして、あれだけのクレーターを地に作ったというのに服が多少汚れているだけで傷一つない後輩。実に幸せそうな寝顔で寝ている。
その寝顔に少し引っかかる部分もあるが、今は恋ドラ人形に関してだ。
動くはずの無い存在が、何故動いているのか。
後輩の泥からできている以上、敵ではないと思う。今の行動からもそう思える。
だが、後輩の意思を越えて動いている以上、無視することは出来ない存在だ。
「味方だと言ったんだがなぁ。そうでも無ければこんな面倒なことはせんだろうよぅ」
「だが、自分では動けないと聞いていた。それが何故動く?」
「ふむふむ、確かにな。だが説明が面倒だ。オートモード的な何かだと思ってくれればいいさ英雄殿」
現状に似合わない、何の気負いも無いような笑顔でそういう恋ドラ人形。
だが目が笑っていない。
それはまるで、仕方がないから居るだけで有象無象などどうでも良いと言わんばかりに見る物に価値を見出していないような目だ。
後輩に対してだけは感情が籠っているような気がするが、少なくとも英雄殿と俺を呼ぶくせにそうは確実に思っていないと目からわかる。
「こ、の!!!」
そんな恋ドラ人形へと皇子が剣を手に斬り掛かった。まだ諦めていなかったようだ。
だがそれを、恋ドラ人形は避けもしない。
「
自身に
事ここに至って、皇子は自分が相手にしているものの強さを垣間見たのか、今更になって後退りをする。
「お、お前は何なんだ!」
「さっきも言っただろう。ドラゴンだと」
「そんな訳が―――」
「ありえないなんてことはあり得ないそうだぞ、人間。がおー!!!!」
「ヒィッ!!?」
恋ドラ人形が吠える。それは声を大きくしただけの可愛らしくもあるものだ。
だが、目の前で恐慌に陥っている皇子にはそうでも無かったのか、尻餅をついてしまう。
そしてそんな皇子を恋ドラ人形が蹴る。
「ぐ、がぁ!?」
軽く飛ぶ皇子。
だがその着地地点には既に恋ドラ人形が居た。
恋ドラ人形は仰向けに地へと倒れ込んだ皇子の腹へと足を乗せる。
それだけで皇子は動けなくなったのか、ジタバタとその下でもがくが全く身体が動いていない。
「や、やめろ、俺をつぶす気か!?」
「何だ、潰されるのがお好みかな?」
恋ドラ人形がススっと足をずらす。
その先は、皇子の股の間にあるアレだ。
「おい待て止めろ俺は皇子だぞ?! 何をするつもりだ!!?」
「何ってナニを潰されたいんだろう?」
「違うそうじゃない俺は―――」
「えい」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ、あ、……ああ?」
「あっはっは、マジで潰すと思ったのか? そんなばっちぃことするかよぅ」
「あ、ああ、残ってる。残ってる……」
思わず俺は足を内股にした。
皇帝も、若干広げていた足が閉じている気がする。
それほどの恐怖。
だがそれを、恋ドラ人形は容易くしようとした。
実際にはやらなかったが、少し流れが違えば簡単にやってのけそうな目をしていた。
やはり、後輩らしくない。
それに後輩が作っていた“恋ドラ”というキャラクターとも何か違う気がする。
一先ずは味方らしいとはいえ未だに警戒心を解けずに居ると、その間にも恋ドラ人形はしでかしていく。
「ってうぇ、漏らすどころかこんなので興奮してんのかよ。変態だなお前」
そう言って、恋ドラ人形は素早い動きでその場から離れた。
そして気づけば、俺のすぐ傍まで来ていた。
「恋ドラ人形、お前は本当に誰なんだ……」
「しつこいなぁ……。そうだな、己の事は一条とでも呼べ。それが今の所一番近い。マツリちゃんでも良いぞ」
一条? マツリ? どこかで聞いたような……。
だが思い出せない。
今の状況についていけないのもあって、頭の中が混沌としている。
いや待て、後輩が似たようなことを言っていなかったか? 一条祭りがどうとか。
だが後輩が言っていた“一条祭り”とは―――、
そう考えている間に恋ドラ人形――もとい一条とやらは皇帝に向かって交渉をしていた。
「一先ずは脱出と行こうじゃないか。良いよなぁ、そこの人間」
「う、うむ……。だがこちらとしてもこのまま其の
皇帝は何とか憮然とした態度を取り直しそう言いながら自らの息子である皇子へと目をやる。
皇子は自らの急所を押えながら呆然と床を見ている。
その目は何も映さず虚ろで、ぶつぶつと何かを呟いている。
その姿には当初の傲慢さは欠片も見られない。
その姿を一条はチラリと見た後に鼻で笑った。
「ふん、これだから人間は嫌いだ。己は許可を得ようとしたんじゃない。通告したんだ。お前は潰されたい方か?」
「い、いや、潰されたくはないが」
一条が牙を剥き出しにしながら言えば、皇帝も憮然とした態度を取っては居られず声が震える。
男である以上、あの光景を見て、次の標的が自分かもしれないと言われれば冷静ではいられないだろう。
「ふん、最悪の気分だ。餌位は貰っていくぞ」
一条はそんな皇帝にもゴミを見るような目を向けた後、地面に転がって気を失っている奴隷たちへと近づいた。
そして、後輩がするように自身の影を広げ、その広がった影で転がていた奴隷たちを飲み込み始めた。
「おい恋ドラ……じゃなくて一条! それは流石に看過できないぞ。これじゃ強盗だ」
「ふん……。良いよなぁ?」
一条は一瞬こちらを見るも、気に入らないとばかりに鼻を鳴らす。
そしてそのまま皇帝を見て、疑問形でありながらも言外に断ったらどうなるかと言わんばかりに鋭い目線を向ける。
「……構わぬ。その程度の奴隷好きにするが良い」
皇帝はもう何も言わぬと、諦めたように憔悴していた。
確かに今までの流れを鑑みれば言う気も失せるだろう。
俺もそうだ。
そんな風に考えていると、すっかり忘れていた2回目の地震が襲った。
「ひいいいいいいいいい!?」
「ぐ、こ、これかっ……」
ピニャ皇女や皇帝の声が響く。
倒れている兵や心神喪失状態の皇子は声を上げる余裕もないようだ。
そんな中、ここまで傍若無人をそのまま形にしたような態度を取ってきた一条は、もう用は無くなったと出口へと歩き始めた。
そして出口近くになると振り返り、俺の方へと向いたと思えば早く来いと顎をクイとやる。
俺は後輩を抱き直しながら、慌てて駆け寄る。
そこへ、皇帝が待ったを掛けた。
「待つが良い!」
「……何でしょう?」
俺は振り返り、皇帝の方へと向く。
すぐに振り返れなかったのは、速く脱出したいのもあるが目の前の一条が面倒だから殺すかと言わんばかりの目をしていたからだ。
だからそうなる前に俺が返答することにした。
「その女子がドラゴンと言っていたのは本当か? 先程のばけ……巨躯へと変化した少女もまたニホンとやらの持つ力の一端なのか?」
揺れる最中、皇帝は意を決したようにそう言った。
それに対して俺はどう答えるか悩む。
確かに後輩は自衛隊へと協力してくれている。
だが、それは戦力としてではない。
上からすればそう言った気持ちもあるのだろうが、俺個人としてもそうは見たくない。
馬鹿やってるのが似合う、普通の少女だ。
ただ変な力を持っているだけで、今までだってそんな力を大っぴらに使わなくてもこいつは普通に生活できていた。
とはいえ、やはり後輩という存在が居るだけで得ることが出来る利益というのは確実に存在し、そしてそれに甘えてしまっている部分があるのは確かなのだ。
だからそういう意味では、力の一端と言えなくもない。
そうして悩む間に一条が答えた。
「己はお前たち人間が恐れる幻想種だ。それに違いは無い。ほれ、炎も吐ける」
言いながら口の端から炎を零れさせる。
少し距離が離れているのに凄い熱量を持つのか肌がチリチリと焼けるようだ。
そんな一条の姿を見て皇帝は何かを悩むように口元を抑える。
一条は続ける。
「化け物を討つのはいつだって英雄だ。それは己も否定はしない。だがな、貴様らに討てるとは思いあがるなよ?」
「そんな気はせぬよ。早く行くが良い」
「ふむ、ではな人間」
言うが速いか、一条はそのまま歩いて行ってしまった。
俺もそれに追随し、宮殿を後にする。
その俺に、幽かに皇帝の声が聞こえた。
「我々は、龍の尾を踏むどころか招いてしまっただけだったのか……」
いかがだったでしょうか?
ここで新キャラか!とか、流れが厨二臭すぎるとか、色々ツッコミはあると思います。
ですがお許しください!
コウジュが気絶しているのに出てきた何か。これは改変前から出そうと思っていた、だ―いぶ前の話から布石にしていた存在で、話の根幹に関わる大事な存在です。
もちろん学級委員ではありません。
ただ、なんか変なのが出たと、そう思っておいていただけると幸いです。
さて、新年早々こんな話で申し訳ないのですが、皆様改めましてあけましておめでとうございます。
皆さまはいかがお過ごしでしょうか?
私の方は生まれて初めて大吉が神社のおみくじで出て有頂天でございます。
とある方にはそれを引くのに運を使ったからもうダメなんじゃないかと言われましたがそんなことは無い筈と思い、今後も頑張っていきたいと思います!
それでは皆様、今後も当SS『テンまじ』をよろしくお願いします!