テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
今回は初っ端からぶっ飛ばしています。あと短め。
「俺を踏むがよい」
「……は?」
なりきることも忘れて、思わずそんな声が出てしまった。
目の前のこの阿呆は、いや馬鹿は、じゃなかった皇子は何が言いたいのだろうか?
俺は不審な者を見る目で皇子を見ていると、皇子は何故か頬を上気させ笑みを浮かべる。
何この気持ち悪いの……。
「そうだ、それだ。それこそ我が求めていたもの!」
「何この気持ち悪いの……」
「ふぅ、んっ! 中々やるじゃないか……」
しまった声に出てしまった。
けどそれすら何故か喜んでいる。
折角のパーティなのに荒事を起こすわけにもいかず、仕方なしに第一皇子についてきた訳だがどうしてこうなった。
恋ドラモードだからこっちの俺はそれほど身長が低い訳ではない筈だが、この皇子は2mはあるようで尚高い。身体も結構鍛えているようで皇子という割には筋肉質だ。
だからか、近づけば嫌なくらいに威圧感がある。
そんな皇子が何だかおかしなことになっている。
本体の方で皇帝が毒で倒れてるしこっちに意識をあまり回していられないんだが、ほんとどうしようこの状況。
そんな風に本体とこっちの両方で忙しく思考していると、満足げな表情で皇子がこちらを見ていることに気付いた。
「あれ以来、俺は生きることに意味を見いだせはしなかった。あらゆるものに刺激を感じなくなってしまったのだ。全てが味気ないのだ。それは生きる意味がないのも同じだ」
何か語り始めたんですが……。
「奴隷にあの時の状況を再現させたが駄目だった。所詮は奴隷よ、言わせた言葉とは裏腹にどこまでも恐怖心が抜けはしなんだ。他にも多くを試したが駄目だった。やはりお前だ。お前でなければならないのだ」
喜色満面、これ以上に喜ばしいことは無いと言わんばかりに笑みを浮かべながらこちらを見る皇子。
しかし言っている内容は完全に変態だ。ドMだ。関わってはいけない人種のあれだ。
恐らく今の俺はとても冷ややかな目をしているだろう。
しかしそれすらも身を振るわせながらこの皇子は喜んだ。
「う、うざってぇ」
「くぅぅぅぅっ、視線や言葉だけで、これ、とは、本物は違うな……。だがまだだ!」
俺とは反比例してテンションが上がっていく皇子。
その皇子は言いながら突然地面をへと身体を横たわらせる。
そしてそのままキメ顔でこう言った。
「さぁ踏むのだ!!」
「お前変態だったのか……」
「ほふんっ!? じ、焦らすではないか。皇子たる俺をここまで弄んだのは貴様が初めてだ。よかろう、認めてやる。貴様こそが俺を踏むに値する!!」
いらねぇよ。値しねぇよ。認めるんじゃねぇよ。
気づけば冷えるどころかゴミを見る目になっている気がする。
しかしそれもコレにとっては喜ばしい材料でしかないようだ。
見れば一部が盛り上がっている。
元男だから別に見ても恥ずかしくもなんともないが、人のアレがアレしてるのを見てもキモイだけである。俺にそっちの趣味は無い。
さておき、どうしてそこまでこいつは俺に踏ませようとするんだ?
俺……というか恋ドラ人形を見るなりこちらへと近寄り、躊躇いもなく連れ出した。
偶々俺だったとかではなく、確実に恋ドラを目標としていた。
しかしそれは何故だ?
「何で己に踏ませようとするんだよお前は」
俺の言葉に皇子は上半身だけを持ち上げ、やはり無駄にキリッとした表情でこちらへと口を開く。
「あの謁見の間で、何の躊躇いもなく俺を踏んだ貴様の足がどうやっても頭の中から消えはしなかった。この俺が、全てを思うがままにしてきた俺が初めて手も足も出なかったのが貴様の足だった。だが俺は、そこに生きるという真理を見た」
全世界の真理さんに謝れよお前。
というか、やはり解せない。
俺は確かに皇子を攻撃した記憶が朧気にだがある。狂化した時だ。
しかしあの時って踏んだっけか?
投げ飛ばしたりはした記憶があるんだが、踏んだりは……してない筈。でもうろ覚えだしなぁ。
いやでもあの時俺は普通に元の姿だったよな。そこから狂化をした。
それに恋ドラ人形は別に出していたはずだ。
だから俺=恋ドラとは知らない筈。
何かを勘違いしてる? それとも俺が記憶違いをしてるとか?
「俺の準備は出来ている。さぁ、来い!!!」
「お、おう……」
いや来いって言われてもですね……。
ドヤ顔をしながら大の字に寝る皇子。
その前で俺は立ち尽くす。
現状を理解できていない俺はおかしいのだろうか?
いやいやいやそんなことは無い筈だ常識的に考えて。
「さぁ!!!!!」
とりあえず俺は足を振りあげ――――。
◆◆◆
皇居内の一室にて、豪奢な服を着た男とフードで顔を隠す背の低い男が会話をしていた。というよりは叱責に近いだろうか。
「何故あいつが生きている!!」
「分かりませぬ。確かに毒を飲んでおりましたが、効果が出てはいない様子。皇帝が飲んだものと同じ物なのですが……」
「しかし倒れなかったではないか! お前たちの言う秘薬とはその辺の雑草で作った物か!?」
「ぐっ、ぬ、申し訳ありませぬ……」
「もうよい。しかしまずいぞ。このままではピニャが王になってしまう」
呻くように自身の非を詫びる小男―――ボウロは目の前のディアボへと頭を下げる。
それに合わせ、フードから垣間見えた顔にディアボは軽く舌打ちをする。
何故このような下賤な男を利用しなければならないのか。何故このような状況に追い込まれているのか。考えれば考えるほどにディアボは腸が煮えくり返る思いだ。
それもこれもあの銀髪の小娘が悪い。
そうディアボは脳内でつい今し方策を台無しにした娘について思い浮かべる。
「見目は良いが、所作は完全に庶民のものであった。しかし父上を瞬く間に癒したあの魔法は看過できぬ。何か策はあるか?」
「毒が効かぬのであれば直接どうにかするしかないかと」
「だがあれほどの術師だ。容易く殺せるとは限らんぞ」
「ハリョでも特別優秀な者を向かわせまする。暗殺されたことすら気付かせずに仕留めて見せましょうぞ」
「ふん、任せたぞ」
「御意に」
言うと同時、ボウロは陰に溶け込むようにその気配を消した。
それを確認するや否や、ディアボは近くに置いていた酒を一気に飲み干した。
ガンと割れることも厭わず空になったグラスを机を叩き付ける。
しかしディアボの心は晴れることは無い。
「何故だ。何故こうも全て上手く行かぬ。ゾルザル兄はもう役に立たぬ。ピニャは皇帝の座を継ぎたくないと言っている。ならば俺だろう!? もう俺しか居ない筈だ!! なのに何故!!?」
一人喚くディアボ。
しかし答えるものは居ない。
ディアボは考える。
つい最近ピニャから、ゾルザル兄は考えなさすぎだがディアボ兄は考え過ぎるきらいがあると言われたところだが、それが性分なのだから仕方ない。
全ての事に策を練るのは当然だ。
人とは考える生き物だ。だからこそ大陸を支配する種族でもある。
あのハリョとか言う一族を手駒にしてはいるがイマイチ信用しきれない上に手札として物足りない。
皇帝の暗殺は失敗した。つまり毒に関しては今まで以上に警戒される。
ではどうする? どうすれば皇帝の座へと辿り着く?
そこまで考えて、ディアボは結局は同じところへと思考を巡らせる。
「手駒だ。手駒が圧倒的に足りない」
幸いにも自身は第二皇子であり元老院である。そう皮肉気にディアボは笑う。
少しでも自らの有用性を周囲に理解させるためにと始めた試みであった。
早くから政治に関わることで皇帝としての価値を見せるための小細工だ。
その為に多くの根回しや賄賂を必要としたが、実際には皇帝となる者の補佐としてしか見られていなかった。
腹立たしいことこの上ない評価だった。
かと言ってその地位を投げてしまえば全てが水の泡。皇族としてすら嘲笑を浴びてしまう。
だがその地位を、今こそ使うべきだろう。
「手始めに帰還した貴族たちか」
見るからに不満を募らせていた元捕虜である者達。
皇帝のいざこざで遠目に見ただけではあるが、帝国とニホンの講和に不満しかないのは見て取れた。
アレは使える、とディアボは判断した。
「もう猶予は無いな……」
自分に言い聞かせるようにディアボは呟く。
そして彼は、深夜にも拘らず自身を皇帝とするために動き始める。
その方法が侮っている兄が歩もうとした道筋とも気付かずに。
◆◆◆
「どうするかなぁ、これ……」
手に広げるのは感謝状と共に渡された、名誉貴族となるための書類だ。
数枚分あるとはいえ、容易く破れそうなものなのにやけに重く感じるのは何故だろうか。
当然これは俺が皇帝を咄嗟に助けたが故に渡された物だ。
パーティの最中に突如倒れた皇帝を治した訳だが、その後も一時的に皇帝が辞したがすぐに戻ってきた。
念のための検査をしにお抱え医師の下へ行き、しかし皇帝自身がむしろ前より元気になったと言いながら戻ってきたのだ。
大人しくしてろよと言いたかったが、菅原さんに聞いたら皇帝としての威信を優先したんだろうとのこと。
そして騒ぎは有ったものの何とか終わったパーティ。
だが俺は終わると同時に皇帝の下へと招待された。
警護やら何やらの仕事がある先輩達は菅原さん達と先にアルヌスへと戻ったが、俺は単身皇帝の下へ。
そこで渡されたのが今手に持つ紙切れだった。
「貴族ねぇ……」
「何か知らんが俺も貰ったぞ」
「先輩が貴族? にっあわねぇなぁ」
「お互いさまだろうが」
「あははー」
そんなこんなでアルヌスに帰ってきた俺は、自室のベッドで寝ころびながらピラピラと紙を弄んでいたのだが、聞いていた先輩が相槌を入れてくる。
しかし先輩も貴族とはどうしてだろうか?
「先輩を貴族にとは物好きも居た者ですね」
「違うっての。前にお前さんが倒してくれた炎龍達居るだろう? アレがそのまま何故か俺の功績になったんだよ。俺がお前のマスターだってのが正式にばれたからだとは思うが」
「ああ、なるほど」
そういえばダークエルフの人達も金剛石がどうとか言ってたし、炎龍退治ってだけで結構な評価を受けるものなのかね? まだ生きてるけどさ。
しかしあれは自分の為でもあったし、評価されても困る。
まぁ先輩の功績になるのなら良いか。
名誉貴族ってのは文字通り名誉職だ。
功績に合わせて送られる訳だが、この貴族位はその者だけに与えられる者であり一代限りのものである。
だが、それでも貴族は貴族。
与えられる権限は一般人からすればとても大きなものだ。給料出るし。
しかし当然ながらそれに合わせた面倒事……責任も発生する。
とはいえ、これからは講和を結ぼうという流れなわけだし帝国と縁が深まるのは悪い事ばかりでもないのは事実。
「あ、でもそうなると資源探索の方はどうするんですか? 俺は授与式あるらしいんですが……」
名誉貴族とはいえ、貴族となるのであれば国内へそれなりに通達を行い授与式を行う必要が在る筈だ。
当然俺も皇帝に出てほしいと言われている。
正直ボイコットしたい気でいっぱいなのだが、それはそれで日本側との関係に罅が入る要因にならんとも限らんので出ようとは思っている。
「ああ、俺はそんなの無いよ。そもそも無理矢理書式で渡されているものだし、出来れば来てほしいって程度のものらしいよ。だから授与式までは無いってさ」
「うらやましいっすねぇ」
「ドヤ」
「殴って良いっすか?」
「お前に殴られたら死ぬって」
俺の方ばっかり厄介事が転がり込んできている気がする。
そんな思いを込めて俺は身体を起こして先輩の方へとジト目を向ける。
その俺を見てニヤリと笑う先輩。
むぅ、釈然としない。
「まぁお前を置いては行かないから心配するな」
「え?」
変わらずの笑みを浮かべながら、そういう先輩に呆けた声をつい出してしまう俺。
「だから、お前さんの授与式が終わるのを待つってば」
「何でまた?」
「それはお前、放っておけないからだろう?」
「そ、そっすか……」
何を当たり前のことをと言わんばかりに先輩はそう言ってくる。
その言葉に、何故か頬が熱くなる。
いや何故かってものでも無いな。面と向かってこうまでストレートに言われたら誰でも恥ずかしいわ!
俺は頬を思わず掻きながら、目を反らす。
そうすると自分が言った言葉に今更ながら気づいたのか、先輩も慌てだす。
「言っとくがアレだぞ? お前を一人にすると何をしでかすか分からないから放って置けないってことだからな? それに俺は後輩のマスターらしいし、今更別行動ってのも変な話だろう?」
捲し立てるようにそういう先輩。
その姿につい笑ってしまう。
すると先輩も笑いだす。
「いやまぁ確かにその通りですけど、酷くないですか?」
「否定しない時点で日頃の行いを自覚してるってことだろうが」
「あは、確かに」
暫く静かに笑い合いながら、最近はしていなかったのんびりとした時間を過ごす。
数カ月前までは普通にあった日常だ。
それがやけに久しぶりに感じてしまう。
騒がしいのは嫌いではない。むしろ好きな方だろう。
だが、生前の自分の気質故か、こうのんびりするのもまた好きなのだ。
「なんか、久しぶりっすねぇ。こういうの」
「まぁな。周りの人間が増えたってのもあるけど、ファンタジーな世界じゃしょうがない気もするよ」
「実は一番ファンタジーなのが元から横に居たってオチですが、気分はいかが?」
「嫌いじゃないわ!」
「絶対嘘だ。趣味に生きる人が今のドタバタを受け入れる筈が無い」
「バレたか。でも、今の状況を悪くないと思う俺も確かに居るんだ。以前はそうは思えなかったけどさ。存外リアルってのも悪くはない」
「うん、それは俺も思うっすよ」
今度はしみじみと、互いにそう言う。
何となく緑茶が飲みたくなった俺はアイテムボックスから淹れたてのまましまっていた緑茶入りの湯呑を二つ取り出し、自身と先輩の前に置く。
ついでに煎餅と。
「お、サンキュー」
「いえいえ、なんか飲みたくなったもので」
「はは、考えることは一緒か。後輩が出さなかったら淹れに行ってたところだ」
「似た者同士っすねぇ」
「だな」
ズズズと緑茶を飲む。
まぁ俺は猫舌なのでふぅふぅと冷ましながらだが、それでもこのザ・日本と言わんばかりのセットはとても心を穏やかにしてくれる。
「講和が確かなものになれば、この騒動も一段落っすねぇ」
「ああ。長かったような短かったような、ほんとに色々とあったものだ」
シミジミと俺は呟く。
先輩は何を思っているのか、遠くを見る目をしながらそう言う。
確かに色々とあった。
始まりはあの銀座。そこから特地へと訪れるもすぐに諸王国連合との戦争。それが終わればテュカさんやレレイ、ロゥリィさん達と出会った。
他にも多くの人と出会った。
その中にも、悲しい出来事は多くあった。人死ににも多く触れた。
けど、不思議とこちらに来ない方が良かったとは思えない。
前の世界の様に、事前にある程度の予測を立てることはできない。
だから、全てを救うなんてのは出来ないと理解はしている。
だけど納得できるかというとそうではない。
それでもこのチートな身体で出来ることは全てしてしまいたい。
講和が成れば一先ずかもしれないがこの騒動にも一つの決着がつくだろう。
そうすれば後は周囲を固めて行けばいい。
だがここで油断してはいけない。
ここで講和を潰されでもすれば、またあの悲しい殺し合いが起こってしまう。
それだけは阻止しなければいけない。
だから、再びの誓いだ。
「もし何かあっても、もう自重しませんからね」
「唐突にどうした?」
俺の言葉に、先輩は目をぱちくりとさせてこちらを見てくる。
それを俺は真剣な目で見返す。
「大切な人が沢山できました。それを俺は守りたいんですよ。ただそれだけっす」
「そっか」
そう言いながら手に持つ湯呑へと目を落とす先輩。
そして暫く何かを考えた後、再び俺の方へと目向けた。
「けど、無理だけはするなよ。俺も、梨紗も、多くの人が悲しむからな。それに俺はお前のマスターだからな。俺もやるぞ」
「はいっす」
そのまま俺達は互いに見合う。
恐らく先輩も思っていることは一緒だろう。不思議とそれが分かる。
“日常を守ろう”、それが俺達の誓いだ。
だから、頑張りましょう先輩。
「耀司ぃ、私疲れちゃったわぁ……って、二人して何を見つめ合っているのぉ? お邪魔だったかしらぁ?」
「「ち、違うから!?」」
いかがだったでしょうか?
ドMに目覚めたzrzr皇子、どうしてこうなったんでしょうね(目反らし
でもこの皇子に関して、実はこのゲート編を始めるにあたってかなり最初の時点でこうなることはほぼ決まっていたんですw
最初はBLに目覚めてもらう方で行こうかと思っていたんです。そうすればピニャを助ける形に抑えられそうだし、女性嫌いからそちらに走ったというのも不自然ではない(?)でしょうし。
しかし結局この形に落ち着きました。だってその方がおもしr…色々絡ませられそうだったので。
まぁどちらにしろノーマルでは無い方には行くことが決定していたのは変わりませんね(笑)
真ん中の陰謀()はスルーしてください。
そして最後の伊丹先輩とコウジュの日常(?)回。
メインヒロイン3人娘はアルヌスでの仕事があるので居ない設定。最後に帰ってきましたがw
でもその中で改めて再認識することができた日常の大事さ。
これを基に、ゲート編も終盤へと差し掛かって行こうと思います。
まぁ何話かかるか分かりませんがw
そんなわけで、今日は短めでしたがまた次回に!
ではでは!!
P.S.1
PSO2で戦艦大和が飛ぶってよ(遠い目
P.S.2
リアル事情なのですが、次の更新はちょっと遅れるかもしれません。遅れたら申し訳ないです。
P.S.3
重ねてになりますが、誤字報告、評価、お気に入り、感想ありがとうございます! 被お気に入りユーザーも久しぶりに見ると多くの方が登録してくださっていてとてもうれしいです!
これほど多くの方に見ていただけるとはSS作者として嬉しい限りです。
正直に言って地雷だらけの見る人を選ぶ要素満載なSSだと思いますが、今後も頑張りますのでよろしくお願いします。