テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

おまたせしました。今週もどうぞ!


『stage37:交差する思惑』

 

 

 

 昼の騒動から時間も経ち、既に外には夜の帳が降りている。

 そんな中、ミモザ宅から不思議な声が聞こえてきていた。 

 

  

「うひ、うひひひ、うへへへへ……」

 

「ドン引き」

 

「真顔で言うなし」

 

 人に見せてはいけない顔で笑うアルペジオを見て、真顔のまま呟くレレイへとコウジュがツッコミを入れる。

 しかし言われている当の本人のアルペジオはそれにも気づかず気味の悪い笑みを浮かべたままだ。

 

「くふふふふ、これで私も……ふふふふふふふ……」

 

 アルペジオはその手にあるものを持っていた。

 それを灯りに翳しては光が乱射する姿に先の笑みを浮かべるのだ。

 

 彼女がその手に持つ物は“宝石剣”と呼ばれるもの。

 見た目は、刃の部分がごつごつとした文字通り宝石で出来た短剣だ。

 とある世界でキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグにより産みだされた第二魔法を行使する限定礼装。

 かつては朱い月の月落としすら防いだという代物だ。

 

 ただ、アルペジオが持つ物は本家に比べればかなりスペックダウンしたものだった。

 

「やはり貰い過ぎな気がする」

 

「構わないさ。アレは本家のコピーのそのまたコピーだし、魔力タンクプラスα程度の力しかない。ま、お守りみたいなものさ」

 

 コウジュが渡した物の正式名称は『宝石剣ゼルレッチ』、いつもの如くPSPo2iにおいてコラボ武器として導入されていたものだ。

 そしてこれは説明(テキスト)として書かれているのだが、この宝石剣は遠坂凜が造ったものでありゼルレッチの愛剣の模造品とある。

 更にそれをコウジュの力で魔力を無限に引き出すという部分の説明を具現化させたものを渡したのだ。

 まぁ原作同様の“遠坂凜が造った宝石剣”を再現してしまうとエクスカリバーには劣るもののサーヴァント数体分を一度に薙ぎ払う事が出来るスペックやその代償を支払うことになってしまうので、再現する部分は魔力を引き出す部分に留めてある。

 それをコウジュは報酬の先払いとしてアルペジオに渡していた。

 

「……感謝」

 

 目を反らしながらもコウジュに感謝の言葉を告げるレレイ。

 その姿にコウジュは思わず微笑ましくなる。

 

「レレイも素直じゃないよなぁ。何だかんだで姉妹仲は悪くないんだろう?」

 

「それほどでもない。あと、あなたには負ける」

 

「待て、それはどういう意味だ」

 

 コウジュの言葉にほんの少しだけムッとしながらレレイが返すと、心外だとコウジュが聞き返す。

 しかしツンとしながら口を開きそうにないレレイに、コウジュがどうしてやろうかと手をワキワキさせたところでその様子を見ていた伊丹が口を開いた。

 

「まぁまぁそこらにしておけって。それよりもレレイの準備をしないとだろう?」

 

「うん」

 

「むぅ、そうだったな」

 

 “レレイの準備”というのはレレイの学会発表の日が明日に迫っているからだ。

 とはいえそれもほぼほぼ終わってはいる。

 あとはレレイの服をどうにかするだけだった。

 アルペジオの気持ちが爆発した結果、スープの色に染まってしまっているレレイの導師服。

 それはコウジュのマイルームで洗濯されて大分綺麗にはなったが未だにシミは付いてしまっている。

 

「クリーニング……に行くには間に合わないよなぁ」

 

「いくらお前さんの力で移動してもクリーニングに掛かる時間は一緒だからな」

 

 コウジュが自らの力でアルヌスまで飛び、そこから地球へ移動してクリーニングに出すことも考えたがすぐに現実的ではないと思い直す。 

 それに伊丹も同意するが、確かにそれでは間に合わない。

 そもそもがアルヌスと地球間の移動には許可を得る必要があり、そう簡単に移動は出来ないのだ。

 

「私は構わない。そもそもこの町に居る間は導師服を変えてはならない決まり」

 

 あーでもないこうでもないと考えを言い合うコウジュたちに、レレイが淡々と自身の考えを口にする。

 その言葉に、コウジュと伊丹が見合い苦笑する。

 レレイならそんなことを言うと思ったからこそ二人は早く服をどうにかしようとしていたのだが、結局本人の口からその言葉を聞くことになってしまったからだ。

 レレイは小さいころの経験により、親しい仲であってもギブアンドテイクが必要だと考えるようになっていた。

 そしてそれは伊丹達と出会ってからの少なくない期間でも何度も見て取れた。

 見方によっては一線引かれているようにも感じる在り方だが、伊丹達もこの数か月でそういった類の感情から来ているのではなく単に好意に甘えるのが下手なだけだと理解していた。

 実際に、特に伊丹に対してだが甘えようとして空回りしているような姿が何度も見られた。というかアクセルとブレーキの加減が上手くできていないというべきか、何だかんだと言いつつ見返りも無しに面倒見の良い所を見せる伊丹にレレイは惹かれていった訳だが、その感情を表面に出そうとして伊丹の周りで微笑ましいことをしているのをコウジュは知っていた。勿論伊丹も薄らとだがそれには気付いていた。

 だからこそ、レレイの晴れの舞台でそんな遠慮なぞさせる気は無かった。

 

「年ごろの娘さんがあの状態のを着るのは感心しないぜぃ。折角の晴れ舞台だ。良い思い出にしようじゃないか」

 

「そうそう。それに何より俺が見たいんだ。それじゃ駄目か?」

 

「駄目……じゃない」

 

 二人の言葉にレレイが照れたように呟く。

 その姿を見て二人は笑みを浮かべる。 

 

 そしてそれを遠目から見る者が一人。

 

「……そうですよ悪いのは私ですよでも除け者はひどくないかしら?」

 

 口を尖らせながら早口にそう言ったのはアルペジオだった。

 

「あ、まともになったんだ」

 

「ちょ、ちょっと現実逃避していただけよ」

 

 復帰した彼女の姿を見てコウジュがどストレートにそう言うと、目を反らしながらアルペジオも返す。

 その姿が面白くてコウジュはつい声に出して笑ってしまう。

 抑えようと手を口元に持って来るも、あまり効果は発揮できていない。

 

「く、ふふ、姉妹揃って素直じゃないなぁ。謝って、それをレレイも受け入れてくれたんでしょ? なら現実逃避までしなくても良いのに」

 

「それでも悪いとは思っているのよ。やるにしても他のやり方にすればよかったわ」

 

「はは、やるのは変わらないんだ」

 

「それとこれとは別よ。姉の威厳に関わるんだもの」

 

 拗ねたような口調のアルペジオに、コウジュは再度笑ってしまう。

 変な所で意固地なのも凜ちゃんそっくりだと、懐かしくなりながら。

 

 そんなコウジュにアルペジオは更にふてくされると、話題を変えるためにも口を開いた。

 

「……導師服は私がどうにかするわ。明日までに責任を持って仕上げます」

 

「え、でもロンデルに居る間は同じのを着ていないといけないんでしょ?」

 

 伊丹の疑問も最もだ。

 ロンデルに入った際、白い導師服に着替えたレレイからそう確かに聞いた。

 だがアルペジオはそれに首を横に振った。

 

「厳密には違うのよ。導師服を汚すことができるのは老師達だけ。私は、あれよ、博士だから」

 

 言いながらアルペジオは苦笑する。

 それは幾ら姉とはいえ頑張ってきた妹の服を汚す資格が自分には無いと理解しているが故だった。

 一時の感情でついスープをぶちまけてしまったが、本当は褒めてあげたかった。頭を撫でて上げたかった。

 しかし自分の性格や矜持がそれを良しとしなかった。

 自分で自分が嫌になるアルペジオ。

 でも、姉妹であり続けるには必要なことだったのだ。

 ただやり方がアレだっただけで。

 だから、その失敗を取り戻すのだと鼻息も荒く決意したのだ。

 

「間に合わない」

 

 端的に、レレイが告げる。

 それにアルペジオは首を横に振る。

 

「いいえ間に合わせるのよ。だって私は姉だもの。それに私でも裁縫くらいできるのは知ってるでしょ?」

 

「そう……」

 

 アルペジオの決意に、下手をすればそっけなく思えるほどに軽く思える返事。

 しかしその頬は赤みを増しており、照れているのだと見るからに分かる表情だった。

 

「さて、それじゃあ時間が惜しいし早速取り掛かるか」

 

「あ、じゃぁ干してある導師服をとって来るよ」

 

「お願いするわ」

 

 アルペジオが席を立つのに合わせてコウジュも席を立つ。

 その二人を見送りながら、伊丹はレレイへと声を掛けた。

 

「良い姉さんじゃないか。中々に過激だけど」

 

「嫌いではない」

 

「そっか」

 

 レレイの言葉に笑みを浮かべながら、伊丹もまた席を立った。

 そして通りすがりにレレイの頭をポンポンと撫でてそのまま部屋を後にした。

 

 一人残されたレレイ。

 その彼女は周囲をキョロキョロと周囲を確認した後、自らの頭に手を当ててポムポムと伊丹にされたように触ってみた。

 

「……悪くはない」

 

 ボソリと呟かれたレレイの言葉を聞くものは既に居なかったが、その言葉にはいつもに無い位に感情が込められていた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「森田さん、あんた本気か?」

 

「ええ、本気ですよ」

 

 日本のとある場所で、緊迫した空気の元その様な会話が成されていた。

 その部屋で向かい合うように座る二人の名は閣下と伊丹に呼ばれる嘉納外務大臣と現総理大臣の森田だった。

 

「しかしいくら諸外国の圧力が強いからって言ってもそれが無茶なのはあんたも分かってる筈だ」

 

「ええ分かっています。しかし、これ以上諸外国の追及を逃れるのも難しいのですよ」

 

「それは……、確かにそうだろうが……」

 

「それに向こうには彼女が居るではないですか。彼女が居れば安全なのでしょう?」

 

「そいつはひょっとして向こうさんに言われた言葉か?」

 

「ええまぁそういう事です。彼女は諸外国から見た場合、戦力でしかない。それをただ囲っているだけではいかなくなってきたのですよ」

 

 その森田の言葉に嘉納は頭が痛くなる思いだ。

 思わず眉間を揉んでしまう。

 

 現在、コウジュという存在はとても危ういものとなっていた。

 直接的な方法で確保することを断念した各国は、政治的にコウジュを利用、もしくは自国へ招き入れようとあの手この手で様々な手段を用いてきていた。

 それは一種の攻撃だ。

 むしろ目に見えない分厄介だとも言える。

 そしてそれを、森田総理は捌き切れなくなってきていた。

 

 そのことを嘉納も予見はしていた。

 伊丹からの紹介で狭間陸将とも知り合い、コウジュに関する扱いを色々と裏でやり取りしていたのだ。

 だからもしコウジュという存在が政治的に問題になった場合に備えて、本人からの要望もあり色々と準備はし始めていた。

 だが、その時がこうも早く来てしまうのは予想外だった。

 予定では帝国との講和が完全となるまでは持たせるはずだった。その程度は出来るはずだった。

 しかし、そうはならなかった。

 

「森田さん、あんた何を言われた?」

 

「……何のことですか?」

 

 嘉納の言葉に、顔色も変えずに答えるのは流石は政治家というだけの事はある。

 だが、答えるまでに空いた少しの間が嘉納に対する回答とも言えた。

 パターンで言えば前回の本位元総理の時と同じだ。

 日本にとってか森田にとってかは分からないが、不利になる情報をチラつかせられ要求を飲まざるを得ない状況に持って来られている。

 

 それが分かった嘉納は、このまま平行線を辿っていても埒が明かないと話の方向を変えることにした。

 

「それで、そのお客さん達は何時こっちに来るんですかい?」

 

「早くとも一週間後には。どうやら各国同士も牽制しあっているようで、日を合わせている最中のようです」

 

「ちっ、それだけあれば多少はどうにか出来るか。とりあえずはどうにか連絡を取らないといけねぇな」

 

 急だ。あまりにも急すぎる。

 だが、明日明後日の話ではないことをここは喜ぶべきかもしれない。

 そう嘉納が考えていると、釘をさすように森田が告げる。

 

「言っておきますが、訪問される方々に近づけないという方法は勘弁願いますよ」

 

「……そんなこったろうと思ったよ」

 

 森田の補足に、嘉納はもう一度舌打ちを打ちそうになるが何とか堪える。

 

 つまり、纏めるとこういう事だった。

 

 一週間後には諸外国からお客さんが来る。

 そしてそのお客さん方は特地に居るコウジュに会うために特地の訪問をさせろと言ってきている。

 それを日本は断れない位置まで来ている。

 当然お客さん方の目的はコウジュへの勧誘だ。

 もしくは、特地での日本の活動から弱みを握り、それを材料にコウジュという存在を引き出そうとしているのだ。

 

 その事に、嘉納は頭を抱える。

 

 そもそも今は帝国との講和が始まってはいるが条約の内容を決めている最中であり、かなり微妙な時期だ。

 講和を決めるパーティにおいてのコウジュの活躍もあって、以前に比べ帝国のトップである皇帝は講和派側へと流れている。

 だが、それでも帝国内には未だ数多くの主戦派が残っている。

 菅原と白百合の特地での活躍により講和派が増えてはいるが何かあれば主戦派に意見が傾いてもおかしくない。

 そんな状況なのに更に部外者を入れるとなれば対応に追われることになるのは目に見えている。

 更に言えば、現在コウジュはアルヌスを離れている。

 しかしお客さんが最も求めているのはコウジュという存在だ。

 居ないと分かれば会えるまでアルヌスを離れないぐらいのことはするだろう。

 その間に起こるかもしれないことを想定するだけで嘉納は頭痛がしてきた。

 

「あ、そういえば帝国内への案内もしてほしいとのことです」

 

「はぁっ!? あんた正気か!!?」

 

 さらりと告げた森田の言葉に思わず嘉納は声を荒げた。

 それも当然だ。

 幾ら講和が始まったとはいえ、主戦派の人間は講和を無くすための材料を探すのに躍起になっている。

 そんな所へ客を連れて行くなど、猛獣の前に肉をぶら下げて立つようなものだ。

 

「正気ですとも。しかしホストとしてお客さんの要望に応えるのは当然でしょう。それに自己責任という事になっています」

 

「そういう問題じゃないことくれぇはあんたも分かるだろ! それが主戦派にどう捉えられるか分かったもんじゃねぇ!!」

 

 講和が成り立つ前に自国領でもないのに我が物顔で他国の人間を入れるという事の意味、その危うさ、それを暗に告げる。

 

「分かってます分かってますとも。しかし彼女という存在が居る限りこちらが負けることは無い。そうですよね?」

 

「あ、あんた、どこまで……」

 

「私もこんなことは言いたくないのです。しかし現状がそれを許しません。知っていますか? 現在、各国では黒魔術めいた召喚儀式が流行っているそうですよ」

 

「……聞いているさ。英霊の召喚だろう?」

 

 英霊。サーヴァント。

 現在確認されているのは、当然ながらコウジュ唯一人だ。

 そして彼女はどの国も、そして誰もが欲する存在となっている。

 英霊というだけでなく、異世界の存在であるという少女。

 その少女からもたらされるであろう利益が底知れないのは誰でも予想できる。

 

「ええ。しかしそれも上手く行っていないようでして、それ関係を片っ端から合法非合法を問わず集め出しています。原作者の所にも、当然ながら忍び込む者が後を絶たないようですね?」

 

「ああ、確かにそうだよ。だが、その代わりに彼女を差し出すってのかあんたは」

 

 嘉納の言葉に、森田は首を横に振った。

 

「違いますよ。これはただのリスク管理です。もしも何かの拍子に原作者が攫われ、更にそれによって儀式が成功してしまえば、英霊とやらによって戦争が起きても不思議ではない。そうは思いませんか? とある筋によれば死刑囚を用いての儀式までもを行っている国もあるそうですよ」

 

「だが……」

 

 森田の言葉に言いよどむ嘉納。

 確かに森田のその発言には考えさせられる部分もある。

 人体実験に至るほどの各国の取り組み。

 コウジュ本人に対して過激なアプローチが出来ないのならばとその周囲に目標が変わるのは当然と言えば当然だ。

 そしてそれをコウジュは理解しており、対抗策は取ってきた。

 だが、コウジュの手が届かない範囲に関してはその限りではない。

 ある程度は日本の自衛隊や警察組織等で対応しているが、組織も一枚岩ではない上に数が多すぎる。

 日本が保持する人員も無限ではないのだ。

 

「だが、あの国会招致以降で友好的に接してきている国も多くなってきている。それを差し置いて、言っちゃぁ悪いが過激派の意見を通しちまうと共和派がまた過激な方に傾いちまいますよ」

 

「まぁ、確かにそうかもしれません。しかし、何度も言いますがもう遅いのですよ。だからいっそのこと全部招き入れる。出来なくはないのですよね?」

 

「出来なくはない。出来なくはないが……」

 

 リスクが高すぎる。

 そう嘉納は心内で言う。

 

 伊丹経由でコウジュが同世界であれば飛べることを聞いていた。

 その結果があの旅館での一幕であったとも。

 だから可か不可かで言えば可と言える。

 だが、この方法は全てのリスクをコウジュに集約させるだけだ。

 確かにコウジュは底の見えない力を今までにも見せつけている。

 生半な重火器では装甲を貫けない炎龍すら使役し、最近ではその子龍二匹も使役に成功したとされている。

 それに、実年齢は40代であり、立派な大人だという。

 銀座事件でも、サーヴァントとしての本領を多く発揮していた。

 しかしだからと言って御人好しとも言える少女を生贄にして良い訳がない。

 これは彼女に対する裏切りだ。

 

 そこまで考え、嘉納は再び口を開いた。

 

「はぁ、分かりました。あんたがそういう考えなら俺達はそう動くしかねぇ。なんとかするさ」

 

 溜息をつきながら、嘉納は席を立つ。

 そして頭の中でまず何から始めるか考え、そしてやはり当事者となるであろう少女に“お願い”するしかないと嘆息する。

 

「あ、その時は一緒にマスコミも入る予定なので」

 

「分かったよこんちくしょう!!!」

 

 背中越しに告げられた森田の言葉に嘉納は、吐き捨てるようにそう言うしかなかった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「失敗だと? 失敗したと言ったのか貴様!!」

 

「……申しわけありませぬ」

 

 帝国内某所にて、ここでも会談が開かれていた。

 会話するのは帝国の第二皇子であるディアボとボウロだ。

 線の細い優男と豚犬とも揶揄される男の会話、その内容はとても物騒なものだった。

 

「彼の者が予想以上に精強でありまして」

 

「言い訳は要らぬ。私が欲しいのは結果だけだ」

 

「御意に」

 

「それで、次はどうするのだ?」

 

 その言葉を待っていたと言わんばかりにボウロが告げる。

 

笛吹男(バイパー)はご存知でありましょうか?」

 

「ほう、あの姿も性別も分からぬという暗殺者か。貴様の手の者であったか。確か自らは姿を見せず、標的の周囲の者を言葉巧みに操り殺人鬼に仕立て上げるとか」

 

 ボウロの言葉にディアボは興味深げに声を上げる。

 そして自身の記憶からそれに該当する情報を述べた。

 

「よくご存じで」

 

「ふん、我らを狙う可能性のある物について位は調べてある。しかし今度こそ可能なのか?」

 

「はい。実際にこの目で見たのですが、彼の者に触れることが出来るのはその近辺に居る者だけでございました。差し向けた者の攻撃はその身体に触れる前に薄い膜の様な物で弾かれておりました。こちらの世界の魔法使い共と似たような性質でありましょう」

 

 淡々と告げるボウロに、ディアボは顔を顰めた。

 差し向けた暗殺者共はボウロの血族の筈だ。

 だが、それにしては撃退されたことをあっさりと告げているように思える。

 そこでハッと、ディアボはとある可能性に気付いた。

 

「まさか、それを知るための前座だったのか……?」

 

「……それは想像にお任せいたします」

 

「食えん男だ。まぁ良い。次こそ始末しろよ」

 

「御意に……」

 

 その言葉を最後に、ボウロの姿が部屋の中から消える。

 それから暫くして、ディアボは徐に立ち上がりそしてその顔に笑みを浮かべた。

 

「ふふふ、あの笛吹男が相手ならばあの小娘も始末されるだろう。こちらも内部の主戦派は抑えた。あとは……」

 

 運が回ってきていると、ディアボは確信していた。

 内部の掌握は予想以上に上手く行った。特に解放された捕虜たちはディアボの言葉にすぐさま縋りついたほどだ。

 だから、計画は最終段階に来ていると言えた。

 

「ああ、忌々しい。我が妹ながら忌々しいぞピニャよ。だが、それもここまでだ……」

 

 

 そう言いながら笑うディアボの端正な顔は、驚くほどに歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、もしここにコウジュが居てディアボの顔を見たのならこう告げただろう。

 あんた某死のノート書いてた人みたいに死にそうだよ、と。

 

 




いかがだったでしょうか?

今回の話はこれからへの布石となるモノがちらほらとある回でした。
さてさてお偉いさん方の思惑はどうなるのでしょうかね?

そういえば、今回の話でレレイの服に関してなのですが、原作やアニメでロンデルに居る間は導師服を着続けなければならないのが慣習であるとあるのに、普通にスープ事件後に着替えているのが何故か分からなかったので捏造しています。自分なりに着替えても良い理由が汚したのが老師ではないからというのが原作文章的に齟齬が少ないかなと思いこういう形にしました。
もし、ちゃんとした理由が存在していてそれをご存知の方がいらっしゃれば教えていただけると幸いです。

さて、気づけば100話もあと少し。
次回もまたよろしくお願いします!


P.S.
皆さまの御陰でお気に入り登録が4000件を突破しました!!
ありがとうございます!
この調子で頑張っていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします!!


P.S.2
PSO2内スクラッチで今週追加された竜アクセ高すぎです……;;
全部で3つなのですが、コツコツ貯めてた貯金が無くなってしまった。
またお金溜めないと……。

あ、買わなければいいじゃんという意見が出るかもしれませんが、見た瞬間欲しくなってやめられませんでしたw
だって人間だもの(目反らし

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