テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回ちょっと遅くなってしまいました。待って頂いた方には申し分けないです。


『stage38:お も て な し』

 

 

 

「なーんで、こうなったかなぁ……」

 

「仕方ないだろ。それだけ後輩が世界中から注目の的ってこった」

 

「うへぇ……」

 

 アルヌス駐屯地におけるコウジュの自室にて、コウジュが黄昏るように外を見ながら呟いた。

 それに対し、伊丹はのんびりと茶を啜りながら軽く返す。

 

 コウジュと伊丹、本来ならロンデルに居るはずの二人が何故ここアルヌスに居るのか……。

 それを知るには数日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

「は? 俺が出迎え役?」

 

「らしいぞ。なんでも各国からの希望だそうだ」

 

「当店、指名は別料金となっております」

 

「……一応報奨は出るらしいが」

 

「あの、断りたいだけなんですが……」

 

「だろうな」

 

 そんなやり取りで始まったのは、伊丹が狭間陸将から定時報告の際に新たな命令を受け取ったからであった。

 なんでも、帝国との講和が目前でありアルヌスでの安全も確保できていると発表したところ各国から現場の見学をさせてほしいという要望が強く、又、マスコミ関係も特地での様子を映させろと責っ付いてきたらしい。

 日本としてもこれ以上各国の要請(おねがい)を拒否し続けるのは痛くない腹を探られかねない。ある国には既に知られている部分もあるが。

 ともあれ、各国の思惑通りに各国使節団の訪問と相成ったわけだ。

 

 そしてその際の護衛として槍玉に挙がったのがコウジュだった。

 何せ個人で群を相手にするのも容易なのだ。銀座での実績もある。

 それを理由に出されては日本も断る理由がない。

 初めは自衛隊の方でという回答を日本も出した。

 だが、自衛隊の精強さは群でもって発揮される。

 特地でも最強種であるドラゴンを使役するとされているコウジュにはどうしても負けてしまう。

 ただ、さすがにコウジュ一人で各国使節全員を護衛するというには人数が多すぎるため、自衛隊との共同となった。

 結局は無難なところに収まった形だ。

 当然、コウジュ本人の預かり知らぬところで決まったことではあるが。

 

「でも、どうするんですか? 俺達が居るロンデルからはどれだけ飛ばしても一週間以上はかかるでしょう?」

 

「まぁそれは物理的な意味で飛べ(・・)ってことなんだろうよ」

 

()ですか……」

 

 扉、コウジュが持つ『どこでもドア』のカードだ。

 それがあれば確かに一秒とせずアルヌスへと帰ることが出来る。

 だが、それは今まで使わないようにしてきた切り札の一つだ。

 帝国からして日本の通信設備や移動手段が脅威となるように、地球全土から考えても空間を飛び越えて移動できるなどというチートは脅威というしかない。

 それを知られては又余計な面倒が増えるだろうと、狭間陸将からあまり使わない様に言われてきた。

 しかし今回の命令に関しては扉を使うこと前提の命令であった。

 

「今まで隠して来たのに今になって使えってことは……」

 

「使っても大丈夫になったか、使ってでも来てほしい状況になっているか、だな」

 

「前者はともかく後者は面倒っすね……」

 

「狭間陸将曰く、一応“お願い”という形ではあるそうだ。日本は後輩を雇っている形になってはいるが、そこに強制権は無い。そういう契約だしな」

 

「でも一応(・・)を態々つけてきてるんですよねぇ?」

 

「ああ、つまりは後者の可能性が高いってわけだ」

 

「マジかぁ」

 

 項垂れるコウジュ。

 しかしそれも暫くの事で、すぐに頭を上げた。

 

「行きますか。しゃーない」

 

「良いのか?」

 

「陸将には何かとお世話になってるし、断ったら断ったで取り成してくれるんでしょうけど、行かないと今までの努力が無駄になっちまうかもしれないじゃないですか。それに皆に迷惑掛かるかもですし」

 

 そう言いながらにへらと笑うコウジュ。

 そのコウジュの頭をペシっとちょっぷする伊丹。

 

「馬鹿、自分の事を最初に考えろっての」

 

「むぅ、なんなんすか。俺良い事言ったのに……」

 

「言うだけじゃなくて実行するだろうがお前は」

 

「ぬぅ……」

 

 不満げな顔をするコウジュに、今度は伊丹が笑った。

 

「まぁ安心しろ。俺達も一緒に行くから」

 

「え、でもこっちの調査はどうするんですか?」

 

「大丈夫だよちゃんと許可は取ってある。それにこっち方面で急ぎの用事は特に無いしな」

 

 レレイの導師号への挑戦も終わり認定も無事終了した為、伊丹達は本来の目的である挨拶回りと鉱物資源の探索へと戻っていた。

 そしてまず初めにとロンデル周辺の鉱物関係をアルペジオ協力の元、探索していた。

 それを始めて数日、定期報告の日となったために連絡したのだが、その際に告げられたのが今回の命令であった。

 ちなみに、本来であればロンデルとアルヌス間での通信は出来ないのだが、コウジュの扉の力を使って繋げた状態で少しだけ扉を空かして電話することで通信している。ばれなきゃ良いのである。

 

「でも、俺の方を優先しなくたって良いんじゃないっすか? 鉱石探索もやり始めたところだし」

 

「君は実に馬鹿だなぁ」

 

「ぶん殴るぞ青ダヌキ」

 

「おいやめろ。というか、前にも言ったがお前さん一人にするかっての。後輩一人に面倒事を押し付けさせはしないさ。危なっかしくて見てられないし。いや見に行くんだけどさ」

 

「……そっすか。いやまぁそう言うなら吝かでも無いですよ」

 

「照れんなよこっちまで恥ずかしくなるだろう」

 

「だったら恥ずかしいセリフ禁止」

 

 

 

 

 

 そんなやり取りがあって現在に至るわけだ。

 そして今は伊丹率いる第三偵察隊と+αはお客さん待ちの状態だ。

 知らせによればもうまもなくの到着とのことらしい。

 

「うー、緊張してきたっ」

 

「分からないでもないが、レレイ達も手伝ってくれるそうだしちょっとは気分も楽になってるだろ?」

 

「それはそうなんすけどねぇ……」

 

 今回の使節団護衛の任務に、実はレレイ達も手伝いを申し出ていた。

 というのも、各国の言い分は両国の通訳が出来て、それでいて少数で多人数の護衛が出来ることなので、それならばとレレイ達が手を上げたのだ。

 元々レレイ達はアルヌスにおいて自衛隊と地元民との間に立つことも多くあったため、経験値的にも申し分ない。

 それにアルヌスに居る以上は何かしらの手伝いをすることにはなっていただろうし、それなら仲間の近くで助けようという当然の流れだった。

 

 ただ、それが妙に座りが悪いコウジュだった。

 というのも、レレイ・テュカ・ロゥリィの3人はコウジュの事を同じ伊丹好きな仲間と認識しているのだ。

 それが故に積極的に手伝おうとしているのだとコウジュは何となく察していた。

 しかしコウジュの好きはLOVEではなくLIKEの方なのだ。

 少なくともそう本人は思っている。

 まぁ、コウジュと伊丹の仲が良すぎるというか阿吽の呼吸というか、あまりにも近い二人を周りがどう思うかというのは今に始まったことではない。

 

 

「まぁ今更考えても仕方ないっすかね」

 

「そうそう。というかお前さんが何か考えても良い案が浮かぶとは思わないんだが」

 

「……考えるのが苦手な脳筋のおれは思わず狂化しちゃいそうです」

 

「やめろ死ぬぞ。俺が」

 

 それから暫く、コウジュ達は使節団到着までの待機を続ける。

 気づけば、コウジュの緊張も伊丹と話すことで解けていた。

 予定されていた時刻が迫ってきていた。

 まだ余裕はあるが、準備を始めても早すぎる時間ではない。

 コウジュは出していた湯呑などを片づけ、伊丹もまた準備をする。

 

 そんな二人に、異音が聞こえた。

 

「なんだこれ」

 

「後輩、何の音だ?」

 

「さぁ」

 

 ガタゴトと、擬音にすればそういった音だ。

 それは断続的に鳴っており、小さくはあるが確かに鳴っている。

 

 その音の正体に気付いたのはビーストであり耳の良いコウジュであった。

 

「うお、一条祭りが何か荒ぶってる」

 

「どうなってるんだ?」

 

「いやわかんねぇっす」

 

「……持ち主だろお前」

 

 コウジュの自室、その中でも高い位置にある本棚と天井との隙間に押し込められていた一条祭り。

 それが音の正体であり、見れば狭い隙間から抜け出そうとでもしているかのように何やら揺れていた。

 そして少しの間二人して様子を窺っていると、ついに段ボールは隙間から脱出して床へと落ちてきた。

 それをコウジュは慌ててキャッチして、そのまま床へと降ろした。

 

「危ない危ない。ってか、これかなり荒ぶってたけど中身大丈夫かなぁ」

 

「だからお前さんの物だろうに」

 

「いやでも流石に確かめるために振ったりするわけにもいかないじゃないですか」

 

「そりゃまぁ、そうだな」

 

 もし外の箱を振ることで中身も振られるとしたら、そんな想像をしてしまった伊丹はちょっと気持ち悪くなった。

 以前に見た箱の中の住民達がシャッフルされる姿をつい考えてしまったのだ。

 

 しかしそんな考えもすぐにどこかへ飛んで行ってしまう。

 というのも、目の前で箱の蓋が独りでに開いたのだ。

 そしてそこから二つの影が躍り出た。

 

「ママ!!」

 

「かあさま」

 

「痛ぁっ!? 何だ何だよ何ですか!?」

 

 躍り出た二つの影はそのままコウジュへと体当たりするようにぶつかり押し倒す。

 押し倒されたコウジュは段ボールの真ん前に居たのもあってそれを避けられず、襲い掛かってきた存在諸共後方へと倒れてしまった為に頭を強打した。

 しかし出てきた存在はコウジュの被害にも気づかずただ抱き付いていた。

 

 そんなコウジュを伊丹視点で言うと、白い幼女に紅と蒼の幼女が襲い掛かっているといった風だ。

 そう、襲い掛かったのは紅音と碧依だった。

 

「紅音に碧依か。いきなり抱き付くと危ないって言っただろ?」

 

「「ごめんなさい」」

 

「えと、うん、わかればいいよ。俺は大丈夫」

 

「親馬鹿になってきてないか後輩」

 

「うっさいです先輩」

 

 突撃してきたことに対して注意をするが、シュンと沈んだ様子になる双子龍に即座に許すコウジュ。

 その姿に呆れたように声を出す伊丹だったが、すぐにコウジュからツッコミが入った。

 しかしコウジュに合わせて双子龍も伊丹に向かってグルルと唸り始めたので慌てて話題を変える。

 

「そういえば二人はどうしてここに?」

 

 話題を変えるためにと思いついたのがそれであったが、よくよく考えれば不思議なことだった。

 双子龍は現在、日本で型月チームの護衛をしている筈だった。

 こっちでのゴタゴタで恋ドラ人形は地球から撤退させてはいたが、双子龍に関しては現地に残してきている状態だった。

 勿論双子龍だけではなく日本からも護衛は送られてきていたが、双子龍は野生の勘で次々と曲者を捕えていくため、型月チームの要望もありそのまま残存していたのだ。

 

「型月さん達がこんな所でやってられるかって言い出したの」

 

「……きのこさんが、お菓子上げるから、箱に入らせてって言ってた」

 

「どういう状況だ……?」

 

 紅音と碧依の言葉に首を傾げるコウジュ。

 恐らく、一個目に関しては重なる襲撃に嫌気がさしたからつい死亡フラグチックなことを言いつつも場所を変えたいのだと理解は出来た。

 しかし二個目に関してコウジュは首を捻らざるを得なかった。

 なにせ捕まえた存在をぶち込んでいるのがその()なのだ。

 何故そこに態々入ろうとするのか。

 

「あのねあのね、箱の中では喧嘩は起きないみたいだし、パソコンとかもあるから仕事が捗りそうだって! あとうちゅーが見える所で仕事とかぱないの!って言ってた!」

 

 喧嘩が起きないのは揉め事が起こると何処からともなく触手が現れ仲裁するからで、パソコン機器関係というか空中投影型ディスプレイまである謎宇宙技術の模倣された場所なので電子機器関係は当然ながら充実している。箱の中から宇宙が見えるというのは箱の中に再現された場所がクラッド6というコロニーのロビー等を再現したため、外の景色はそう見える。

 だから条件的に言えば充実しているし、日本国内に居るよりは安全と言える。何せ異空間なので襲撃者も来れない。

 そう考えれば箱の中へ行きたいと帰結するのも当然か、とコウジュは思考する。

 

「まぁ行っちゃいけない場所ではないし良いかな。ってかそういえばどうやってあの宇宙は見えてるんだろう……」

 

 仕方ないか、と許可を出すコウジュ。

 ぶっちゃけて言えば自分の家(?)で尊敬する人達が仕事をするというのだから拒否する理由は特には無い。

 むしろウェルカムと言って良いだろう。

 そう自分の中で帰結し、そのまま違うことを考え始めたコウジュ。

 

 しかし次に碧依が述べた言葉に戦慄する。

 

「……というか、もう入ってる」

 

「嘘でしょ!?」

 

 慌てて一条祭りの中を見るコウジュ。

 外側からは持ち主が望めば中を見せてくれる謎仕様な箱。

 個人情報もプライバシーも有ったものではないので普段コウジュは嫌厭して使わなかった機能だが、非常事態なので仕方ないと見たい物を思考するコウジュ。

 すると思考に合わせて箱のなかに見える物が変わっていき、数瞬の後に目的の場所が写る。

 

「うわ、マジで居た……」

 

 恋ドラ人形越しに見た型月チーム。

 その人達が箱の中の一室で仕事をしていた。というか色々機材や資料を持ち込み終わった後なのか、完全に自分たちの空間が出来てしまっている。

 

「……かあさまなら大丈夫って言うと思って、移動、してもらったです」

 

「お菓子いっぱい貰ったよ!!」

 

「餌付け終わってんのかよ……」

 

 ハハ…と乾いた笑いを出してしまうコウジュ。

 そのまま箱の中を見れば、型月チームは何やら不思議なテンションで全員が忙しそうにしている。どうやら何かを作っているようだ。

 邪魔をしては悪いと箱を閉じるコウジュ。

 

 しかしそこではたとコウジュは気づく。そして思い出す。

 

 もしこのままコウジュが箱の中に入れば、地球に居たはずの人と直接会うことが出来る。それもゲートを使わず。

 そして実際に双子龍は地球から箱を介して特地へと来た。

 これは一体どういうことかと頭を悩ませる。

 

「なぁ紅音に碧依、ちょっと聞きたいんだが箱には普通に入ってこれて、こっちにも普通に来れたのか?」

 

「入るのは普通に出来るよ!」

 

「……出るのは、私たちがどうやってかあさまに会おうか相談してたら、触手さんが出てきて、パーッとなって、気づいたらここ、でした」

 

「どうして一条祭りさんは俺に出来ないことを平然とやってのけるのでせう?」

 

「いや俺に聞かれても分からないよ」

 

 双子の言葉に頭を捻りながら伊丹へと目線を向ける。

 しかし当然本人が知る由もないことを知る訳がないので言いながら首を振る伊丹。

 

「俺の扉や能力じゃ異世界を越えられないんす。それは確実。実験もしましたから。ならどうして……?」

 

 そう、コウジュが使う能力では未だに異世界間を越えるには至っていない。

 現状で空間を越える能力があるのは『どこでもドア』と『ツミキリ・ヒョウリ』の二つ。

 だが、その両方共に世界を越えることは出来ていないのだ。

 

 どこでもドアは一度行った場所に在る扉になら、扉から扉という制限はあるが距離に関係なく繋ぐことが出来る。アイテムボックスに収納してある扉や、建物が無くても扉っぽいものがあれば大丈夫と知ってからは尚のこと重用している能力だ。最初の方の自身の能力に迷いが少なかった時点で作っておいてよかったと本気でコウジュが思っている力だ。

 しかし、コウジュがそう思っているからか何なのか、異世界を越えての使用は出来ていない。

 どこでもドアのカードを使ってFate世界に帰ろうとしたが成功した試しは無く、失敗作である“怪奇移動『どこでもドア』”に関しては、異世界ではあるだろうが目的の場所へとつながった試しがない。

 失敗作の方でだが、曲がりなりにも異世界へと繋がっているという事は能力上無理ではない筈なのだが、それが出来ていないのはコウジュの認識が甘いという事に他ならない。

 つまりは、どこでもドアでは異世界を越えられないのだ。

 

 そして『ツミキリ・ヒョウリ』に関しては、それ自体が武器である為に斬ることでしか空間へと効果を及ぼす方法が思いつかず、空間を操作するという感覚を覚えようにもその感覚が分からない内に空間をあれこれして武器に付いている確率即死効果が空間に発動しないかと戦々恐々としている為に練習は全くしていなかった。

 

 だから、コウジュには異世界を越える能力は無い。無い筈なのだ。

 

「うーむ、謎だ……」

 

「それが出来るなら冬コミも簡単に参加できたのに、早く言ってほしかったよ後輩」

 

「いや知ってたら真っ先に俺が行ってるっすよ」

 

「それもそうか。でも実際できてるじゃないか。他に何か要因が……あ、」

 

「あ……? 何か思い当たります?」

 

「いや違う違う。あれだ。忘れてたけどもう時間だなって」

 

「あ、ほんとだ」

 

 時計を見れば既に予定時刻間近。

 余裕があったはずの時間ももう無い。

 

 それを教えられたコウジュは、一旦双子龍の元から離れて、慌てて残りの準備をする。

 準備と言っても片付け等の簡単なものだが、放置するわけにもいかない。

 

 そんなコウジュを後目に、伊丹は先程言いそうになった言葉を反芻する。

 『あ、ひょっとして一条マツリの所為じゃ……?』、そう言いそうになって慌てて話題を変えたのだ。

 ただ、本人から強く釘を刺されているのも思いだしてなんとか踏み止まった伊丹。

 潰されるのは誰だって嫌なのだ。

 

 そんなことを考えていると、携帯電話が鳴った。 

 伊丹は考えるのを止めて、携帯電話を取り出して通話ボタンを押す。

 お客さんが来たことを告げる電話だろう。

 そう思い、伊丹は部屋を出た所までそのまま移動した。

 

 その伊丹を見ながら準備も終わり、後は行くだけとなったコウジュは双子龍たちの所まで戻ってきた。

 

「ママ、今から仕事?」

 

「……居なくなる?」

 

 そんなコウジュへと、紅音と碧依は寂しげな瞳で話しかける。

 その様子にコウジュはウッ…と躊躇うが、時間も無いし仕方ないと首肯した。

 

「そうなんだよ。今からお客さんをお迎えして守らないといけないんだ。だから大人しく―――」

 

「私もやる!」

 

「……同じく」

 

 コウジュが言いきる前に元気よく手を上げながら言う双子龍。

 それに対しコウジュは表情を渋くする。

 

「ごめん、でも今回は流石に一緒に居てやれないんだ。ただ闘ったり捕まえたりするわけじゃなくて、ある程度おもてなしをしないとだからさ」

 

「駄目……?」

 

「……邪魔、なの?」

 

「うっ……」

 

 双子龍が再び涙目になりたじろぐコウジュ。

 そんなコウジュを助けたのは通話が終わって戻ってきた伊丹だった。

 

「後輩、その子たちを正式に炎龍だと周知するためにも来て大丈夫だってさ。今ついでに聞いておいた」

 

「やた。喜べ二人とも! 先輩が行っても大丈夫なようにしてくれたぞ!」

 

「「おじちゃんありがとう」」

 

「お、おじ……。そんな老けてるかな俺って……」

 

 無邪気な笑いとともに礼を言われている筈なのにダメージを負った伊丹。

 彼もまた、ナイーブな年ごろという訳だ。

 そんな彼は、そのままフラフラと部屋の外へと移動し始めた。

 

 そんな伊丹に苦笑するコウジュ。

 分からないでもないなと、思った。

 そして暫くして、そういえばとコウジュは双子龍に向かって口を開いた。

 

「二人とも、今から会う人達に絶対怪我とかさせないようにな。失礼なことが無いように気を付けるんだ」

 

「はいママ!」

 

「分かった、です」

 

「うん、良い子たちだ」

 

 元気よく返事する二人にうんうんと笑みを浮かべ頭を撫でるコウジュ。

 その姿からは母性を感じさせられた。

 

「あ、まぁ無いとは思うけど、危険が迫った場合は多少力を使っても良いからね」

 

「うん!」

 

「……了解」

 

「さて、そいでは行こうか一緒に」

 

 そうしてコウジュは双子龍を伴って、部屋を出た。

 まるで親子で散歩に行く家族の様に、その足取りは軽いものだ。

 

 ただ、コウジュは気づいていなかった。

 今から来るのはお客さんではあるがある意味敵でも在るのだと。

 そんな中へ双子龍なんて存在を連れて行けばどうなるか……。

 

 こうして始まった使節団の歓迎。

 一体どうなるかは、神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに伊丹は、未だに『まだおっさんじゃないやい』とぶつくさ言いながらコウジュの後をついていった。




いかがだったでしょうか?

今回は布石と次話へのつなぎ回ですね。
色々あやふやだった空間移動に関するちょっと込み入ったお話等も入っておりましたが、今後使う部分ですので頭の端にでも置いておいていただけたらと思います。

さて、今回双子龍が出てきた訳なんですが、双子龍が着ている物について以前に『ググってみたのですが可愛い衣装ですね』と感想を頂いたことがありました。
まじでかわいいです! 良かったらググってみてください! ミヤビカタってやつです。
とはいえスマホとかだと調べにくいと思うので、まだ途中ですが描いてみました。
それを活動報告で乗せてみるので良かったら見てやて下さい。
イメージを少しでもしやすくなればと思います。


それでは、また次回もよろしくお願いします!

P.S.
感想返しがまたちょっと貯まっちゃいました…orz
折を見て随時返していきますね。

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