テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

ついにアニメが終わってしまいましたね。
しかしこちらはまだ続きます。


『stage39:こんな護衛で大丈夫か?』

「ようこそおいで下さいました!」

 

「ました!」

 

「……ました」

 

 特地へと訪れた各国使節団、彼らを迎えたのは白に紅に蒼とカラフルな髪色をした幼女たち3人であった。

 その姿に特使たちは笑みを浮かべる。

 にこやか、そう評すべきものだ。

 だがその内面を見ることが出来たならば、その笑顔をとてつもなく歪んだ物に感じたことだろう。

 熟練を思い起こさせる紳士も、新進気鋭の青年も、柔らかく笑みを浮かべる老婦人も、様々な人種や性別、年齢の人間がそこには居るが、一部を除いたその誰もが思うことは同じだ。

 

 ―――コウジュスフィール・フォン・アインツベルンを我が国に―――

 

 それは国から言われた命令でもある。

 そしてこういった(・・・・・)仕事を続けてきた自らにとって、その命令は命にも代えがたい代物だと誰もが思っていた。

 祖国から受けた栄誉ある命令、それも今回に限っては念を押しての重要な案件とも聞かされている。

 最悪、他の国に行くことだけでも阻止しろと言われているほどだ。

 命に代えても、そう皆が皆決心していた。

 

 そんな思いを彼らが秘めているとは露知らず、コウジュ達は案内を始める。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 各国使節を前に、アルカイックスマイルを浮かべながら俺は内心でかなり焦っていた。

 というのも、多いのだ。人が。

 俺は聖徳太子じゃないんだよ。ちょっと多すぎませんかねぇ……?

 数十人規模で来ること自体はいいのだが、皆が皆、何故か俺の方へと来る。

 正確には俺と双子龍の所、だろうか。

 俺含めた幼女3人の元に集う大人達は当然ながら俺達より背が高いので埋もれてしまう。

 慌てて護衛任務を請け負った第三偵察隊の面々が統率してくれるが、隙あらば俺達へと近寄って来る。

 どっちの為の護衛か分かったもんじゃないよ。

 

 あ、使節団には双子龍をこちらで仲良くなった新しい炎龍達だと最初に紹介した。

 目的としては、折角の機会なのでこの子達が良い子なのを知ってもらおうと思ったからだ。

 念のため二人には俺から離れない様には言ってある。狭間さんから要警戒と言われてるしね。

 

 しかし予想外の大反響だ。

 そんなに幼女が好きなのだろうか……。

 いや、中には女性も居る訳だから、ファンタジーな存在に興味津々ってとこだろうか。

 でも、少し離れたところに居るレレイさん達のところは人が少ないんだよなぁ。

 居ないわけではないのだが、レレイの所には白衣を着た人が、ロゥリィさんの所には某宗教国家の人が、テュカさんの所にはカメラマンが行っている。片手で数えられるほどだ。

 それに対して俺たちの所の数の多さよ。

 正直もう帰りたくなってきた。

 俺は簡単な英語位しか話せないから通訳の人が言ってくれるのだが、それぞれの要人が好きに話すもんだから通訳の人も同時に話すわけで、多少はチートスペック任せで何人か同時に処理できるが俺の口は一つしかないのだからちょっと位待ってほしい。

 それに、さすがに何十人も同時に聞けない。

 リリなのやメルブラみたいに分割思考(マルチタスク)があればなぁ……。

 物理的に分かれることは出来るのに、もどかしい。

 

 とはいえ、逃げ出すわけにも放り出すわけにもいかないので、俺は渋々案内をしていく。

 

 まずはアルヌス駐屯地だ。

 アルヌス駐屯地はゲートを中心にプレハブやら倉庫やらが色々設置されているので、こちら側へと地球から移ってきた場所はもう駐屯地内なわけだが、今ではそれなりに建物も増えてごちゃごちゃしてきているので案内する者が居なければすぐに迷うだろう。

 ちなみに案内しているのは俺ではない。

 何せ多少は自由に動く許可を得ているとはいえ、俺はあくまで部外者だ。

 そこに何があるかとか大体分かってはいても、根本的な紹介は出来やしない。

 なので今回の案内人は狭間陸将だ。

 この駐屯地のトップなのだから当然と言えば当然か。各国から請われて招いたといっても要人には変わらないしね。

 だから皆さん俺に聞かないでください。俺は護衛なんです。

 

 さておき、駐屯地内は地球から関係者以外を招くのが初めてとあっていつにない緊張感を孕んでいる。

 今回はマスコミも来ている為、気合の入りようが違う。

 といっても、訓練等に普段は手を抜いているという意味ではなく、どことなくいつもより表情が硬いというかキリっとしている。というか決め顔?

 そんな彼らを見て、使節団の人達も感嘆の息を漏らす。

 統率された動きに、洗練された流れに、生で見る迫力に思わず漏れ出たのだろう。

 ここに居る自衛隊の人達は実戦経験済みだし、余計に醸し出す雰囲気が圧力として感じられるのだろう。

 

「彼らは何をしているのですか?」

 

「ああ、彼らは―――」

 

 訓練中の自衛隊員たちを見ていると、使節の一人が通訳を通して狭間さんに質問をしていた。

 俺も目を向ければ、そこには滑走路の横に荷物を枕にして並んで寝転ぶ隊員たちが居る。

 空挺部隊の出撃待機だ。

 これは、重たい荷物を持った状態で待機すると体力を削がれるから、いつでもすぐに万全の状態で出撃できるようにらしい。

 確かに何も知らない人が見ると何をしているのか分からんだろう。俺も最初よく分からなかった。

 実際に使節団の後ろからアレは怠慢じゃないかとか聞こえるけど、普通に考えてこの状況で目立つ場所に転がりはせんでしょうよ。

 まぁ、その辺は実際に見てもらった方が早いだろう。

 

「アインツベルン特別顧問」

 

「はい、狭間さん」

 

 そんなことを思っていたら丁度狭間さんからお声が掛かった。

 すかさず返事した俺は、狭間さんの横へと出る。

 

「来い、恋ドラ!」

 

 滑走路の方に、俺は恋ドラを出現させる。人型でだ。ついでに泥から形成する部分を見られるわけにはいかないので、ちょっとした魔術(眩しいだけ)で召喚したっぽく見せる。

 続けてそれを今度は炎龍状態にし、そのまま空中へと飛び立たせる。

 人型で一度出したのはちょっとした演出だ。

 それを見て使節団から感嘆の声が出る。

 

 そして、それを見て待機していた面々が動き出す。

 戦闘機、輸送機、それぞれが目的の物に搭乗し、炎龍を追いかけて行く。

 

「でかママ!」

 

「……すごく、大きいです」

 

 恋ドラ炎龍を見て嬉しそうに声を上げる紅音と碧依。

 碧依は誰にそのネタを聞いたか後でオシエテネ?

 

 ともかく、飛んで行った炎龍とそれを追いかける空自部隊。

 所謂デモンストレーションってやつだ。

 

「今から始めますのは、対炎龍戦を想定した航空自衛隊の戦闘訓練であります」

 

 そう使節団に告げた狭間さんは、無線で“開始”と告げる。

 それを横で聞いていていた俺も、炎龍の操作を改めて始める。

 

 基地近くへと炎龍を戻し、そして戦闘開始だ。

 

 咆哮を上げつつ飛ぶ炎龍は、まるで獲物を見つけたと言わんばかりに基地を襲おうとしている。

 それを後方から戦闘機が追いかけてきた。

 そして始まるドッグファイト。

 

「Oh……」

 

 使節の一人が、開いた口をそのままに声を漏らした。

 しかし、口を開けて放心しているのは使節の全員だった。

 

 それを横目で見て、俺は思わずニヤリとする。

 ふと見れば狭間さんも俺に向かってばれない様にウィンクしてくれている。

 

 って、あ。

 よそ見してる間にちょっと機銃が掠った。

 思わず二の腕の辺りをポリポリと掻いてしまう。

 いつまにか炎龍状態の防御力が上がっていたのか、今では機銃が当たろうと多少痒い程度のダメージだ。

 何かレベルが上がるような事をしたわけではないのに不思議なもんだが、長年このチートボディで過ごすうちに俺は悟った。

 便利ならそれで良い。

 まぁ、強度が上がったというよりは馴染んだっての方が正確な気もするが、所詮感覚だしね。

 

 そして暫くの後、空中戦闘のデモンストレーションは終了して出撃した面々が帰ってくる。

 恋ドラ炎龍も遅れて後ろから滑走路に着地させる。

 

 これで炎龍がどれほどの脅威か多少は目に焼き付いただろう。

 あの巨体で、あの防御力で、あの機動力。

 今回はミサイル系は流石に使っちゃいないが、そう簡単に炎龍を落とせはしないと理解してくれたはずだ。

 示威行為ともとれるが、余計なちょっかいを物理的に出されるよりはマシだろう。

 

「アインツベルン特別顧問、ありがとう」

 

「分かりました」

 

 その言葉と共に、恋ドラ炎龍を消す。勿論ピカッとやりながら。

 

「次、私もやりたい!」

 

「……負けねぇです」

 

「まぁ、また今度な」

 

 残念そうな顔しないでくれよ罪悪感湧いちゃうから。

 とりあえず俺は二人の頭を撫でて慰める。

 すると機嫌が直ったのか、ニコニコとしながら俺にもっと撫でてほしいと手に頭を寄せてくる。

 よしよし仕方ない子だ。もっと撫でてやろう。

 するとさらに笑みを深める二人。

 思わず俺もニマニマとしてしまう。

 やっぱりこの子達かわええわぁ……。

 

 ってこらそこのマスコミ。撮るんじゃない!

 そっちの人も微笑ましいものを見る様な目で見ないで!?

 

「さて、次に行きましょう」

 

 そんな俺を見なかったことにして歩を進める狭間さん。

 う、裏切り者め……。

 まぁいいさ。デモンストレーションは他にも用意してある。

 そっちのインパクトで今のを無かったことにしてやろう。

 お楽しみはこれからなんだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「っるぁあああ!!!」

 

「はぁっ!!」

 

 ガン、ギン、と甲高い金属音がその場に響く。

 

「ははは!!」

 

「ふふ!!」

 

 両刃剣と戦斧、その刃が何度と交わり火花を散らす。

 

 それらを振るうのは銀髪の幼女と黒髪の少女だ。

 コウジュとロゥリィ、その二人が刃を交えている。

 コウジュが持つのはキャリガインルゥカ、ロゥリィが持つのは神鉄を使って作られたいつものハルバート。

 そのどちらもが壊れる様子もなく、互いの主の力のままに振るわれていく。

 

 コウジュが持つ両刃剣は名前の通りに両端に刃があり、主に連撃を主眼に置いている。

 対するロゥリィが持つハルバートはそれそのものがかなりの重量を誇り、それを操るロゥリィの力もあってその一撃もまた重い。

 だが、それぞれの戦い方の特徴など知ったことかと、速く、重く、一撃でも多く振るっていく。

 

 コウジュが仕掛ける。

 刃を振り下ろすと見せかけて、ロゥリィの刃に自身の刃が触れた瞬間にワザと力を抜き、当たると同時にルゥカを逆回転させて返しの刃で斬り掛かる。

 それに対してロゥリィは受けるために下から振り上げようとしていたハルバートを一度離し、返しの刃が斧との間を抜けた瞬間に再びハルバートを掴む。

 続けてロゥリィはお返しとばかりに斧を横に一閃させる。

 コウジュはそれを胸が地に着くほどに身を沈めて避ければ、そのまま両刃剣を持つ手とは逆の手を地について軸にし、足払いを掛ける。

 それが見えたロゥリィは、飛び上ると同時にハルバートの石突を地に突き刺した。

 コウジュはそこへ蹴りを入れる形になり、ガンと鈍い音を立ててしまう。

 だがコウジュは涙目になりながらもそのまま無理矢理に足を振り抜き、ハルバートごとロゥリィを蹴り飛ばす。

 

「さすがにやるわねぇ。力だと流石に負けるわぁ」

 

「そりゃこっちのセリフっすよ。あのタイミングで避けるんですもん。まじ痛い……」

 

 飛ばされたロゥリィは華麗に着地し、そして軽口を言う。

 それに対し、脛を撫でながら涙目のコウジュ。

 

 しかしそれもすぐに終わり、互いに一呼吸を入れて再び武器を構える。

 

「は、ハハハ、楽しくなってきたっすねぇ」

 

「ええ、ええ! こうでなくちゃぁねぇ!!」

 

 

 

 そして――――、

 

 

 

「はいはい、ストップストップ! そこまで!!」

 

 伊丹に止められた。

 

「「……」」

 

 コウジュとロゥリィの二人は良い所で止められたため伊丹にジト目を向ける。

 それに対して伊丹は俺が悪いのか!?と声を上げるも、すぐに思い直し、改めて口を開く。

「二人とも熱くなりすぎだっての。模擬戦だよ模擬戦。も・ぎ・せ・ん! 何をガチでやり合ってるんだよ」

 

「「楽しかったから」」

 

「はいはいバーサーカーコンビはとりあえず武器を仕舞え」

 

 はぁ、と伊丹が溜息をつく。

 だがそれも仕方ない。

 伊丹が後方に目をやれば、唖然愕然と使節団の方々が声も出せずに固まっていた。というかちょっと顔が引きつっていた。

 目の前で人知を超えた戦いが起こったのだから当然だろう。

 炎龍を仮想的として戦闘機を用いたドッグファイトは些か距離が離れていた為に現実感が薄れていた。 

 だが、目の前でたった今行われていた模擬戦は二人のテンションが高くなるあまりに最後の方は命のやり取りをしているかのような迫力があった。実際には互いが互いを死なないと知っているのもあって模擬戦を繰り返す内にギリギリのラインが一般人よりかなり低く設定されてしまっているので間違いではない。

 それを見てしまった使節団の心中はヤムチャ視点も良い所であった。

 見慣れてしまったアルヌス駐屯地の面々はまたやってるよ程度で済んでいるし、双子龍に至っては拳をブンブン振り回しながら応援していたくらいなのだが、些か刺激が強すぎたようだ。

 

「えー、これがこの世界における亜神ロゥリィ・マーキュリーと特別顧問のサーヴァントバーサーカーの戦闘能力であります。彼女たちは両方の世界でもトップクラスの戦闘力を有しています。しかし、この世界には彼女たちを凌ぐ存在が―――」

 

 茫然自失となっている使節団が狭間の説明にハッと自分を取り戻す。

 そしてその説明に再び顔を引き攣らせる。まだこれ以上が居るのか、と。

 しかしそれは事実なのだから仕方がない。

 この特地は“神”が実際に存在し、“ヒト”の営みのすぐ傍で活動する世界なのだ。

 亜神も確かに人知を超えた存在と言えよう。

 だが、当然ながら神はそれ以上だ。

 

 その説明を受け、使節団のうちのほとんどが心を折られた。

 これ(・・)を上手く丸め込んで祖国に連れて帰るとか無理だろう、と。

 心を折られなかったのは地球でも大きな発言力を持っている国の使節くらいだ。

 だが、その使節も上手く話を付けることを第二目標とし、作戦の変更を考え始めていた。

 

 ―――対象の一部を持って帰る―――

 

 それが次の作戦だ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 やべぇやべぇ、思わず白熱してしまった。

 ロゥリィさんとの模擬戦はブレーキがかかり辛いのもあってついつい力が入ってしまう。

 それに実際楽しいのだ。

 サーヴァントを相手している時みたいに、身体能力では上回っていても技術で覆されてしまうあの感覚。そしてそれを理解し、吸収し、自身の力となっていくのを感じるあの瞬間がこの上なく楽しい。

 いやこんな言い方してたらマジで戦闘狂(バーサーカー)みたいだけど、実際そうなのだから仕方がない。

 どんな技術でも、自身の腕が上がっていく感覚が分かるというのは楽しい物なのだ。

 

 さておき、使節団のアルヌス駐屯地紹介もそろそろ終わりだ。

 次は駐屯地を出てアルヌスの町の中を案内する手筈になっている。

 こっちの案内はテュカ・レレイ・ロゥリィの3人娘が中心になって請け負うことになっている。狭間陸将は駐屯地を離れる訳には行かないのでここでお別れである。

 そして俺は引き続き護衛だ。

 ただ、先程の模擬戦の御陰で無理に近寄ってくる人が減ったのは嬉しいような悲しいような。

 まぁその御陰で双子龍の所へ行く人数も減ったし良いとしておこう。

 

 そんなことを考えているうちに、テュカさん達率いる使節団はアルヌスへと到着した。

 駐屯地からHMV等に乗り合わせて移動したのだが、元々距離もそれほど離れていないためにあっという間だ。

 到着順に皆が降り、そしてテュカさん達の後ろに並ぶ。

 遠足みたいだと思ったのは内緒だ。遠足というには年季の入った人ばかりだが。

 

 かくして到着したアルヌス、当然そこには特地の現地民が多く存在し、種族も多種多様なため訪れた人々に感嘆の声を上げさせる。

 人間しかいない地球人からすれば文字通りのファンタジーな光景だ。

 そして特にここでは種族間の諍いもほぼ起こらない為、皆が皆仲睦まじい。

 

「ようこそアルヌスへ!」

 

 テュカさんが笑みを浮かべながらそう言い、案内を開始する。

 

 先程までと違い、案内する内容は特に尖ったものではなくありふれたものばかりとこちらでは相成った。

 そもそもがこちらは元々ただの小さな町だ。

 町と言っても地球の様な規模ではなく、地球からすれば村と言われても仕方ない大きさなのである。

 だが、アルヌス駐屯地が最初に親交を深めた特地の町というのもあり、所々に地球産の物品が目に入る。

 

 それを見て、使節の面々がそれぞれ近くに居る接待係(ホスト)に質問していく。

 当然俺にも 質問は来た。

 こっちなら、特に難しい物も無いのですらすらと説明していく。

 双子龍もここの店は美味しいとか、ここのおじさんはおやつをくれるなど、微笑ましく付け足していく。

 その様子につい俺も微笑ましくなってしまう。

 かわええ……。

 

 暫くの間、そんな感じで案内は続いた。

 しかしこちらはやはり元々がただの町なのもあって、案内はすぐに終了した。

 後は締めを残すのみとなった。

 

 締めを担当するのは、アルヌス食堂だ。

 俺がちょっとの間バイトをしていた例の場所である。

 時刻は少し遅いお昼時。

 案内の為に歩いたりもしてるし、使節の人達もお腹はいい感じに空いていることだろう。

 

「デリラ居るー?」

 

「はいよー。準備は出来てるよ」

 

 テュカを先頭に、事前に打ち合わせしていたように食堂内へと入っていく。

 今日のこの時間は施設の為に貸し切りすることになっており、中はもてなす準備を終えている。

 各国使節を所定の席へと案内し、俺達は端へと避ける。

 お腹空いていはいるが、案内役なので今は我慢だ。

 グーッと鳴りそうになるが、我慢である。

 

 食堂のメイドさん達が使節たちを持て成すのを見ながら居ると、クイクイと袖を引かれる。 目を向ければ双子龍がお腹を押さえながらこちらを見ている。

 しまった、この子達まで付き合わせてしまう訳に行かないじゃないか。

 

「紅音と碧依は食べてきて良いよ」

 

「ママは?」

 

「ははうえは食べない、です?」

 

「うーん、食べたいけど俺はまだ仕事中だから我慢なんだよ。だから俺の分も二人で食べてくると良い。お金は持ってるよな?」

 

「うん!」

 

「……無駄遣いはさせないです」

 

「しないもんね! 碧依みたいに変な物買わないし!」

 

「変な物じゃ、ないですし」

 

「……あはは、まぁ仲良くな」

 

 二人の頭をポンポンとやってそのまま送り出す。

 仲は良いと思うんだが、割と喧嘩する二人に苦笑する。

 

「お母さんも大変だな」

 

『お父さんが甲斐性無しですから』

 

「……ほんとごめんてその冗談は心に響くから勘弁してください」

 

『仕方ないっすねぇ。まぁお母さんも悪くないかなって最近思うようになってきてるし、許してあげるっすよ』

 

「あの子たち見てるとそう思うのも仕方ないな、うん」

 

 隣に並んでいた先輩から軽口が飛んできたのでこちらも念話で言い返すと結構なダメージを受けたようだ。

 以前に双子龍が俺の事をお母さんと呼ぶのを聞いた自衛隊員の誰かが先輩の事をお父さんと言い始めたのだが、離婚して嫁さんに逃げられたと思っている先輩からすればその辺の話がダメージとなってしまうようだ。

 ナイーブなお年頃なのだ。

 

「とりあえず、今の所は何事も無くいけてるな」

 

『ですねぇ。でもまぁ問題はここからっすよ。帝国にも入らないとですから』

 

「だよなぁ……」

 

 そんな風に俺と先輩は壁際で、使節の方々の食事風景を見ながら護衛をする。

 私語は慎むべきなんだろうが、これだけガヤガヤしてたら多少は良いでしょう。

 お腹空いてる状態で他人が食べている所を見ているだけという拷問の最中なのだから許してほしい。

 それにかなり小声だし、俺は念話で返しているからまず気付かれないだろう。

 

 そしてまた暫くの時間が経ち、全員が食べ終わり食後の一服といったところか、使節団の方々はそれぞれ談笑しながら休んでいる。

 そしてここが終わればいよいよ帝国に移動するという予定だ。

 護衛としての仕事が特に大事になってくるのは恐らくその帝国入りしてからだ。

 反講和派がどう出てくるか、バックアップは大勢居るが、油断をして良い訳じゃない。

 だから、俺はよし、と気合を入れる。

 

 だが、順調に思えたこの仕事も、帝国へと行く前に問題が起こってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママの悪口を言うな!!!!」

 

 その言葉と同時、ドンと身体に響くほどの音が辺りに轟いた。

 

 俺は、すぐに走り出す。

 だってその声は、紅音の物なのだから。

 

 いやな、予感がした。

 

 

 




いかがだったでしょうか?

虎……というか龍の尾を踏んだのは一体誰なんでしょうね。
次回! 制裁編!
というのは冗談ですが、何かが起こるのは確実ですよね。
さぁ次回が楽しみだなぁ(白目

さてさて、前書きでも書きましたがアニメが終わってしまいました。
あの引きからするに、二期(今回のは分割2クール目ってやつになるそうなので)は無さそうですよね。
残念。ハーディとか蟲獣を見たかったです。

まぁその分こちらで活躍してもらいましょう! 出来るかはさておき!!

気付けば100話も目前。
思ったより長くなってますが、今後もよろしくおねがいします!!



P.S.
PSO2スクラッチは再び4月1日から発売!
仕事帰りにいつものセブンイレブンに行くんだ!!

欲しいものが手に入るまでに何円かかりますかね……(死んだ目

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