テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回はタイトルから分かる通り(?)ハーディとの邂逅です。
ではどうぞ。


『stage42:冥府の神っていうとハデス神が思い浮かぶよね? 浮かばない?』

 

 

 

 学術都市ロンデルから神殿都市ベルナーゴへと続く道、そこを猛スピードで走るものがあった。

 幸いにも人の姿はないが、特地の人間が見れば驚きに顎が外れたかもしれない。

 しかしそんなことは関係ないと、それに乗る人物は意気揚々と()を走らせていた。

 

 

「ふんふふーん、ふーん」

 

「幼女がハイエースを運転する時代か……」

 

「え、何か言った?」

 

「何でもないよ。ああ、何でもない」

 

 鼻歌交じりに運転するコウジュに、呟きを漏らす伊丹。

 障害物も無ければ道路交通法も気にしないで運転できる平地に気分を良くしたコウジュは呟きを聞き取れなかったようだが、見る者が見れば伊丹と同じようにツッコミを入れただろう。

 しかしあまりにもご機嫌なコウジュを見てしまえば伊丹も続ける気力を無くしてしまう。

 そんな伊丹に気付きもせず、コウジュは引き続き神殿都市ベルナーゴへとハンドルを握る。

 

 その後部では、レレイ、テュカ、ロゥリィ、そして紅音と碧依の双子が座っている。

 彼女たちはそれぞれ速度制限も無い為に瞬く間に流れて行く景色を楽しんでいた。

 レレイ、テュカ、ロゥリィに関しては車に乗るのは初めてではないが、今まで乗ったものは速度を押さえられていた為に今はまた新鮮な気持ちで楽しんでいた。一番後ろの席に3人並び、姦しく話をしている。

 紅音と碧依は今まで車に乗ったことは無く、自分で飛ぶのとは違った景色の見え方に興奮冷めやらない様子だ。

 彼女たちは2列目の席でそれぞれ左右の窓から顔を覗かせ、感じる風を物ともせず声を上げはしゃいでいる。

 

「紅音に碧依、どう? これはこれですごいっしょ!」

 

「うん!」

 

「……私の方が、ずっと速い。でも、これも好き」

 

「サラマンダーより……いやなんでもないですごめんなさい」

 

 保護者としての自覚の様な物が芽生えてきたコウジュは、運転しているだけなのにややドヤ顔で双子龍へと感想を聞く。

 双子龍は母の問いに満足気に答えた。

 ただ、碧依の言葉にある意味有名なセリフを思い出して口に出したところをコウジュに睨まれる伊丹。

 普段ならネタに乗るところのコウジュも炎龍(サラマンダー)の親代わりになった所為か、守る方に走ってしまう。

 

「そ、そういえば何でこの車種なんだ?」

 

「これにした理由ですか? うーん、まぁ確かに他のを選んでもよかったんですけどねぇ……」

 

 慌てて話を変える伊丹。

 聞かれたコウジュは運転の為に前を再び見ながらどう言うか考え始めた。

 

 そもそも、何故コウジュが運転をしているのかというところからが伊丹の質問に関わってくる。

 というのも、今乗っている車は報酬として受け取ったものなのだ。

 そして何の報酬かと言えば勿論、最近コウジュがアルヌスで行っていた使節の護衛に対するものだ。

 

 使節の護衛を行ったコウジュに、各国は挙って感謝の形として様々なプレゼントを渡そうとした。

 家込みでの土地、宝石、どストレートに金を渡そうとするところもあった。

 しかしそのどれもにコウジュは興味を示せなかった。

 それも当然で土地は持ってても侵入しようとされるし、宝石は宝石剣的なものが幾つもある以上興味も無ければ中身が男なので欲しいとも思えない。お金も、有って困るものではないがPONと10万ドル(比喩表現で実際には途方もない金額)渡されても罪悪感しかなかった。

 その為コウジュは受け取り拒否した。

 唯一喜んで受け取ったのが南国の小国から渡された特産フルーツ詰め合わせ(数キロ)くらいだった。最初は一か国だけ受け取るのもと渋々返そうとしたが、送り返したところで腐ってしまうしと言われてしまえば仕方なく受け取るしかないコウジュだ。涎を拭っていたが。

 しかしそれを各国が知ると今度は当たり前のように食物を大量に送ろうとした。

 しかも量は各国がそれぞれトン単位で送ろうとしたのだから堪ったものではない。

 そこでやっと日本のトップが重い腰を上げた。

 そして言われたのが、「各国割り勘で何か買って貰うから欲しい物ない?」である。

 言い回しは勿論もっと丁寧なものであったが、直訳すればそんなところだ。

 そこでコウジュが欲しいなと思ったのが車だった。

 実はコウジュ、免許持ちであるのだ。無駄にMTも乗れる方で。

 ただ、今まで欲しいとは思いつつも特に必要にも思わなかったので買うことは無かった。

 それを思い出して、コウジュは告げた。

 そうすると来るは来るは各国各車種のパンフレットやプレゼンの為の各社人員。

 それを連日聞いたコウジュが唯一欲しいと思った物、それがトヨタ・ハイエースだったのだ。

 そして受け取ったのがつい先日。

 色々カスタムされたマイカーを何処で乗ろうかと画策していたところへ丁度長距離での車移動という事で今に至るのだ。

 

 そこまでの流れを少し黄昏た雰囲気でコウジュは伊丹へと告げた。

 

「結局何でこれにしたのか言われてない件について。というかそこまでは知ってる」

 

「あの無駄に疲れるけど各社の人には何の罪も無くて結局何も言えずに聞くに徹してた時間について誰かに愚痴りたくて」

 

「まぁ分からんでもないけど」

 

「あ、そんで何でこれにしたのかって理由ですけど、ぶっちゃけ高級車は乗るのに気を遣うし、スポーツカーとかは自分で走った方が早いしってことでこれにしたんですよ。わいわいがやがやしながら遠出なら興味あったし。……乗ってくれる人あまり思いつかないけど」

 

「涙拭けよ」

 

 そんなこんなでコウジュが駆るハイエースは神殿都市ベルナーゴへと向かっていく。

 

 ちなみに、残る第三偵察隊の面々はハイエースの後ろを2台のHMVで着いて来ている。

 無駄に魔力強化までして突っ走るハイエースの速度に着いていくので精いっぱいだが、コウジュのチートで燃料は気にしなくていいのと、最近コウジュが色々貯め込んでいるのを知っていたので何も言えない面々であった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「へぇ、ここがベルナーゴか。初詣みたいだな」

 

「ですね。まぁ神に詣でるって意味では同じっすけど」

 

 速度制限も道路標識も無い場所を突っ走るのは中々快感で名残惜しかったが、ついに俺達は神殿都市ベルナーゴへと到着した。

 ベルナーゴ手前で車から降り、愛車とかはアイテムボックス(手に持てる物なら入る)に突っ込んで都市内へと入る。そして宿を取った後に神殿へと続く道を歩いている途中で先輩から出た感想が先のそれであった。

 

 宿の前からしばらく歩けば、神殿まではまだ距離があるというのに参拝客は所狭しと居る。

 そして参拝客目当てなのであろう出店も道の端を埋めるように並んでいた。

 どの店も声を張り上げ、お祭り騒ぎと言って良いような喧噪だ。

 というかそこかしこからおいしそうな匂いがしてきて辛いです。はい。

 とはいえ今は先に神殿へ行く方が優先だ。

 終わるまで我慢である。

 

「そんなに行きたいならぁ行けば良いのにぃ」

 

「……そんなに分かりやすい?」

 

「えぇ。腹を空かせた獅子の様よぉ」

 

「我慢してるのにひどいっすロゥリィ」

 

 食べ物を売っている店を見るたびについつい目で追ってしまっているのがばれたのか、ロゥリィが笑みを浮かべながらそう言ってくる。

 俺もつい口を尖らせながら答えるが、ロゥリィは微笑むばかりだ。

 実際に用事さえなければすぐにでもあれこれ腹に収めたい衝動に駆られているのは事実なので、これ以上何か言ったところで負けは揺るがない。

 やはり亀の甲より歳のこ……いやなんでもないですはい。

 

 一先ず意識を反らすために、俺は食べ物以外の露店にも目を向ける。

 すると目に入るのはやはり日本における縁日の出店と大差ない物ばかりだ。

 どんな意味があるのか、ベルナーゴ神殿の意匠が刻まれた名状し難い形の置物やレリーフ。他にも出土したそのままっぽい何かの宝石や鉱物。見れば怪しげな光を放っている原石っぽいのもある。

 

「ハーディは冥府の神であり、地下が領土。そのため採掘された鉱物などもハーディの齎したものと考えられている。鉱山のある町は例外なくハーディを崇めているほど」

 

「なるほど、そういうことね」

 

 頭を捻っている俺を見てレレイが説明してくれた。

 さすがレレぺディアさんやでぇ。

 でもそうなるとアルペジオさんを連れてくれば良かったかな?

 今回は調査ではなく単純な訪問という事もあってロンデル内には寄らずにそのまま来ちゃったからなぁ。

 この鉱物の量を知れば来たくなったことだろう。

 まぁそれは次の機会でいいか。車ならそれほどロンデルから遠い訳でもなし。

 

「あ、この行列に並べばいいのかな?」

 

「別に構わないわぁ。こっちには招待状があるものぉ」

 

「こいつはサークル参加証か何かか」

 

 テュカが神殿へと続く列の最後尾に並ぼうとするがロゥリィは並ぶ必要は無いと、列の横をするりするりと抜けて行く。

 その感覚が先輩の渇望する祭典の様式みたいだと思ったのか呟きながら後に続いた。

 でも確かに似てるかもしれない。

 もう遥か昔の事のように思うが、とある魔女嫁さんの所為でサークル参加側で祭典に参加することも屡々。

 その時の感覚に確かに似ている。

 と、そこまで考えた所で恥かしい思い出も掘り返された。

 壁際とかシャッターのとことかで売り子させられたこともあるが、普通なら喜ばしいのに黒歴史化したのは何故だ……。

 

 俺は首を振り、慌てて着いていく。

 気づけば第三偵察隊も含め、既にほとんどが神殿の方へと歩いて行っていた。

 残ってるのは心配気にこちらを見る紅音と碧依くらいのものだ。

 護衛の心配は要らないけど、ちょっと寂しいです。

 

 そしてもう暫く歩き、漸く神殿へと辿り着く。

 入り口の所では混雑を統制する神官さんらしき人が何人も居る。

 “らしき”と言ったのは、その人たち皆が白のゴスロリ服を着ているからだ。

 そういえば以前に行き倒れっぽくて保護したジゼルさんも白ゴスロリだったわけだが、どうやらハーディ神の所の亜神だったようだ。

 亜神とは聞いていたがなんか慌てて帰ったから聞けてなかったんだよね。

 でも白ゴスか。

 可愛いけど、体格的に合わない人も同じようなのを着ていてゴスロリだけどロリじゃないというか、いやまぁ可愛いし綺麗なんだけど、コスプレ感が半端ない。

 男の人は……いや、これ以上の話は危険だ。

 

 さておき、その内の一人が駆け寄ってきて並ぶように伝えてくる。

 しかしロゥリィの言ったように招待状があるので先輩が取り出してそれを見せた。

 その瞬間、神殿内に雷が落ちる。いや比喩表現だが。

 ともかくそれ位に神殿内に衝撃が走った。

 そして次の瞬間には見える範囲の全ての神官さん達が俺達の前で整列し、そのままひれ伏した。

 どうやらサークル参加証ではなく黄門様の印籠クラスだったようだ。

 それが面白いと感じたのか、やけにキリッと決め顔で先輩が招待状を掲げようとするがロゥリィがハルバートの柄でコンと叩いた。

 ざまぁ。

 俺が内心でそう思ったのがばれたのか、先輩は頭を摩りながら俺の方へと恨みがましい目を向けてくるが自業自得なのでスルーする。

 

 そんなことをしていると、列の中から一人が進み出て案内しますと先導してくれた。

 俺達はそれに続いて奥へと進む。

 

 奥へ奥へと、進むにつれて下へと降りて行く。

 どうもベルナーゴ神殿は地下へと延びるように出来ているようだ。

 地下が領域だって話だし、それに準えているのだろう。

 そしてそのまま白ゴス神官さん先導の元進めば、一般の参拝客が入れる所よりもさらに奥、まるで洞窟の様な場所を通り進んでいく。

 気づけばロゥリィが先輩の服の端をチョンと摘まんで不安気に着いて行っていた。

 何それ羨ましい。

 いや、摘ままれる方が羨ましいって意味だ。

 美少女にこんな風に頼られるとか男冥利に尽きるというものだろう。今は幼女だけど。

 

 それから歩くこと数分、開けた場所へと俺達は出た。

 

 そこは、まさしく神殿であった。

 地下に突如現れた巨大な空間。そこには幾つもの柱があり、天井を支えている。

 奥の方へと目をやれば、そこには祭壇があった。

 そしてその前にはやはり白ゴスの人が居て、俺達を待っていたかのように厳かにこちらへと振り返り告げる。

 

「来訪者方、主上ハーディがご降臨される。各々最上の流儀で最上の敬意を」

 

 司祭ってやつなのだろうか、その人がそんなこと言ってきたわけだが、敬意ってどうやればいいのさ?

 周りを見れば片膝を付いて頭を垂れたり、先輩は45度だったかの敬礼をしていた。

 迷った俺は双子龍と共に膝を付いてテュカ達のまねをした。

 

 すると、天井の方から光が降ってきて、それが空中で漂った後に集まり像を結ぶ。

 まるでホログラムの様だとも思ったが、象った美しい女性の姿は向こうが透けてはいるがそこに在るのだと分かる存在感を感じる。

 銀髪に翠瞳の20代くらいの女性の姿だ。

 美しい、そう告げるしかない神々しさがそこにはある。

 その女性が俺達の方へと順番に目をやり、そして微笑む。

 とりあえずすぐ横の先輩が見惚れて話が進まないので軽く頭をはたく。

 再起動した先輩は、少し頭を振った後、今度は難しい顔をし始めた。

 その顔を見てか、女性……ハーディ神は悲しげな表情をした後、ロゥリィの元へと空中を滑るようにして移動し、そして訴えかける。

 

『整形じゃないって伝えてよロゥリィ!!』

 

 しかしロゥリィはガン無視だ。

 というか何がどうなってそんな訴えが出てきたんだ?

 それに何だか声の聞こえ方がなんか不思議な感じだ。

 聴覚で聞くのではなく頭の中に直接響くようなそんな感じ。

 あ、でも神様なんだからそれも当然か?

 

 そんな風に頭を捻っていると、俺に気付いたハーディ神は目を輝かせて俺の元へと浮遊して来て口を開いた。

 

『予想はしていたけどあなたも聞こえるのね。ならあなたから彼に整形じゃないって伝えてくれないかしら?』

 

「え、いや自分で言えば良いような?」

 

『私の声が聞こえているのは現状ではロゥリィにあなた位のものよ。託宣として伝えることは出来るけど今はしてないし、』

 

「マジですか……」

 

 どうやら神様の声は普通聞こえないらしい。

 そして何故聞こえるかを考えれば、まぁ俺にも神性があるからだろう。

 

 そのことに頬を引き攣らせていると、幾つもの視線を感じる。

 見れば、ほとんどの者がこちらを驚いた眼で見ていた。

 ロゥリィはやっぱりと言いたげにニヤリと笑っているが、その他の皆は驚きに目を見開いているほどだ。

 

「お前、ハーディが何を言ってるのか分かるのか?」

 

「えと、整形じゃないって伝えてほしいって」

 

「……マジで聞こえるのかよ。って、これは失礼しました。心を読むことが可能なんですね」

 

『ええそうよ』

 

 驚いていた先輩だが、逸早く再起動した先輩が聞いてきた。

 それについて答えると、何やら失礼なことを考えていた様で謝りだした先輩。

 たぶんだけど、前にロゥリィが神になったら姿形は思いのままって言っていたのを思い出したのだろう。そして神々しさすら感じるほどの美貌に疑問を持ったんだと思う。何やってんだこの人。

 しかしそれに嫌な顔はせずに、むしろ誤解が解けてほっとしたといった感じに柔らかく微笑むハーディ神。

 ふむ、エミリアに化けていた中間管理職の神様みたいに、この神様も中々に親しみやすそう神様っぽい?

 そういうフリをされていたら分からんけど、少なくとも高慢とかじゃないし良かった良かった。

 

 ってか、心の声聞こえるの? エミリア女神さまもそうだったけど、神様はやっぱり心の声が聞こえて当然なんだろうか……。 

 あ、そういえば俺って一応異世界の人間だし、ひょっとしてチートやら何やら知られるとまずかったりするのだろうか……。

 

『ふふ、安心すると良いわ。あなたの中は覗けないから』

 

 おおー……お? でも何でまた?

 

『流石に同族は覗けないわ。例え成り立てでもね』

 

 なるほど……。

 あれ、でもなんで今は会話が成立しているのだろうか?

 

『あなた……、顔に出やすいってよく言われない?』

 

「何でわかったし」

 

 表情が読み取られない様にと思わず顔を手で隠す。

 その仕草が面白かったのか、クスクスとハーディ神は微笑む。

 

「えっと、結局何がどうなってるんだ……?」

 

 俺とハーディの間で行われていた無音の会話に先輩がついそう零す。

 すまねっす。そう言えば聞こえてないんだったっけか。

 

 とりあえず通訳役でもするかな、なんて考えていると、ハーディ神は何かを思いついたように周りへと目をやった。

 すると次の瞬間雪崩込むようにして端の方に居た女性神官たちが一斉に出てきて傅いた。

 

「何これ」

 

「自分の身体を使ってくださいってアピールよぉ。主神をその身に降ろすというのは神官にとって最高の栄誉なのぉ」

 

「あ、神降ろしってやつか」

 

 あまりに異様な光景に呟くと、ロゥリィが苦笑しながら説明してくれる。

 しかし次に告げられた言葉に思わず頬が引きつった。

 

「まぁ、神なんて言う巨大な魂魄をその身に降ろせばぁ大抵の精神が圧迫されて死んじゃうから自殺に等しいんだけどねぇ」

 

「駄目じゃん」

 

 同じく頬を引き攣らせていた先輩がそう零す。

 俺には分からん世界だが、それで幸せなら良い……のか? 良いんだろうね。目の前の神官さん達はせがむ様に目をハーディ神へと向けているのだから。

 

 「それでもいいと考えるのが神官なのよぉ。上手く行けば神の力を分け与えられて命を保つこともあるわぁ。まぁほとんど無いけどぉ。でもぉそれでも信仰に生きる者にとっては最高の栄誉なのよぉ」

 

 やっぱほぼ死んじゃうらしい。

 

 ちなみに死んだ結果チートを貰った奴がここに居ますよー、なんて……。

 そんなことを考えて、頭を振る。

 今まで何度も考えた問答だ。

 死んでチートか、そのまま生きるか、選べるとしたらどちらが良かったのか。

 まぁ今となっては選ぶことは出来ない。死んだ結果得られたモノも多いから。

 とはいえ生前の家族や知り合いに未練が無いかと聞かれれば否と答えるけどさ。

 

 俺がそんなことを考えていると、ハーディ神は思った人材が見つけられなかったのか、神官たちから残念そうに目線を外した。神官さん達が泣きそうなんですが……。

 そしてハーディ神はというと、そのまま目線をずらしていき、その瞳がレレイの所で止まった。

 ハーディ神が嬉しそうに微笑み、レレイへと近づいていく。

 

 それに俺は嫌な予感が一気に脳裏を走る。

 

 待て、ちょっと待て。

 さっきロゥリィが神を下ろした者のほとんどが精神を圧迫されて死ぬと言ってなかったか?

 上手く行けば神の力を分け与えられるが、それもほとんど無いって。

 

 そう考えている間にも、ゆっくりとハーディ神はレレイへと近づいていた。

 

「あ、こら待ちなさい!!」

 

 慌てるようにロゥリィが叫ぶ。

 つまりは、そういう事なのだろう。

 

 しかしハーディ神は、止まらない。

 

 その進む姿がやけにゆっくりと感じる。まるで走馬灯のように。

 だがそれを見ている訳には行かない。

 ほとんどの確率でレレイが死ぬかもしれないという事実がそこに在る。

 ハーディ神がどういうつもりかは分からない。

 

 だけど――――――!!!!!!!!

 

 

 

「ツミキリ・ヒョウリぃぃっ!!!!!」

 

 

 咄嗟に俺は、両手に武器を取り出すと同時に地を思い切り蹴り、目の前の空間を斬りつけるようにして飛び込んだ。

 

 




いかがだったでしょうか?

さぁツミキリ・ヒョウリを手に飛び込んだコウジュ選手。間に合うのでしょうか。というかどうするのでしょうか!!
まぁ続きは次話ですが……。

あ、そういえば話中にてベルナーゴの男性神官について軽く出ていますが、原作において男性神官についての言明は無かった気がするので若干捏造です。そもそも男性神官居ないかもですし。何せ主審が同性好きですから……。
もし原作内でその辺りの事が書かれていて見逃しているだけなら教えていただけると幸いです。

さて、今回はあまりネタも少なくシリアスっぽい終わり方ですが、次話でどうなったか、ついでにもうちょいシリアスっぽい(あくまでもぽい)感じも続き、コウジュのこの世界での本当の課題について触れるつもりです。
それかよって感じも出るかもしれませんが、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!!

それはまたお会いしましょう!!



P.S.
双子龍の色塗り終わりました。
このちょい足しするだけでも時間かかるのにイラストレーターさん達はどうやって素敵な絵を描き上げるのだろうか……。
さておき、当SSのオリキャラに当たる双子龍のイメージです。
これでイメージの補強になるでしょうか……?


【挿絵表示】

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