テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回も最後の方はシリアス風味。
しかしやっとコウジュの課題へと辿り着きました。長かった。


『stage43:わたしはだれですか?』

 

 

 

 ベルナーゴ神殿の最奥、その場所は今まさに一触即発と言っていい緊張感に包まれていた。

 

 突如レレイの前に空間から滲み出るかの如く出現したコウジュ。両手には大振りのダガーナイフのような武器が逆手に握られており、見る者に圧を感じさせる力が秘められている。

 そのコウジュに当たる寸前で停止したハーディ。

 彼女は冷や汗を掻きながらコウジュから少し距離を取る。

 コウジュは改めて両手の刃を構え直し、これ以上来るならば斬るとでも言うように警戒姿勢を見せた。

 

『・・・・・・っと、危ないじゃない』

 

「そっちこそ、何のつもりさ」

 

 レレイの魂を塗りつぶして身体を得ようとしていると推測したコウジュからは普段の穏やかな雰囲気が形を潜めている。

 犬歯を剥き出しにし、その獣そのものの威嚇は誰もがピリピリとした圧力を感じざるを得なかった。

 それも当然だ。

 コウジュが割り込まなければ仲間の一人が永遠に外側だけの虚ろな存在に成り果ててしまったかもしれないのだから。

 

 そんなコウジュに、ハーディは拗ねるように唇を尖らせた。

 

『その子の身体をちょっと借りようとしただけじゃない。あなたと違って私には現界するための身体がないのだもの』

 

「だからって俺の仲間を殺されちゃ適わないんだけどなぁ」

 

 今にも唸り声を出しそうなコウジュ。

 よく見れば、毛先が少し黒く変わって行っている。

 

 しかし、それを見てハーディは溜息をついた。

 

『別に殺すつもりはないわよ?』

 

「・・・・・・へ?」

 

 コウジュから気の抜けた声が出る。

 そして気づけば染まっていた髪が元の色に戻っている。

 

『その子なら私を受け入れられるもの。だから選んだのよ?』

 

「・・・・・・マジで?」

 

『マジです』

 

「な、なんだよぅ……それ……」

 

 へたりとコウジュが座り込んだ。

 同時に先程までの張りつめた空気も霧散した。

 手に持っていた物騒な代物も空間に溶け込む様に消え、それを見たハーディは安堵の息を溢す。

 

「え、えっと、結局どういうこと……?」

 

「私も聞きたい」

 

 今の一幕が理解の外であったために思わず伊丹が質問した。

 重ねるようにレレイもまた口に出す。

 その場に居る他の面々……第三偵察隊にテュカ、双子龍も同じ思いなのか頷いていた。紅音に関しては今にも飛びだしそうで、碧依に抑えられていたりするが。

 

「コウジュはぁレレイがハーディに殺されると思って間に入ったのよぉ。まぁ勘違いに終わった訳だけどぉ」

 

「くわしく」

 

「さっき私が神の魂を受け入れればぁ元々入っている魂は潰れるって言ったでしょぉ? それを聞いていたからぁ、もしレレイが死んだらってコウジュは飛びだしたのよぉ。でもぉ、恐らくレレイは例外中の例外なのぉ」

 

「……つまり私は受け入れることが可能?」

 

「そういうことよぉ」

 

 皆の疑問に答えたのはロゥリィだった。

 呆れたように説明を始めるロゥリィに当事者であるレレイは自ずと声を出した。 

 

 ロゥリィは確かに、つい先程神という魂を受け入れた者はその巨大さに魂が潰されてしまうと言った。

 しかしそのすぐ後にこうも言った。

 “上手く行けば神の力を分け与えられて命を保つこともある”と。

 つまりはその例外こそがレレイなのだ。

 

 当然、ハーディはそのことについて気付いていた。加えて言えばロゥリィもだ。

 何故それに気付けたかと言えば、双方ともが魂の本質を見る力を持っているが故だ。ハーディは純粋な神であるが故にその力は数倍強いという差があれど、本質に変わりはない。

 だからこそ、レレイの資質に気づいていた。

 

 レレイは、その歳に反して様々な経験を経て、更には魔導にも深くその身を浸している。

 この世界における魔導は自分の意志で以て世界の外側から違った法則を持ち出し適応させるものだ。

 その途上で、ヒトという種から逸脱した力に触れるわけだから魂も研磨されるのは当然だ。その受け皿である(身体)が研磨されるのもまた、当然だ。

 そしてそれらが、レレイを神の受け皿として成し得るほどに成長させていた。 

 

 まぁ、そんな物をコウジュが知る訳も無いので飛び込んでしまったのが今の結末という訳である。

 

 さておき、ロゥリィの説明に『なるほど……』と呟きながら試案を始めるレレイから目線を外し、不満げにしているハーディにロゥリィが鋭い目を向けた。

 

「というかハーディ! レレイは私が先に目を付けていたのよぉ!! 宿題も出そうと決めていたんだからぁ!!」

 

『こういうのは早い者勝ちよ。まあできなかったのだけれど』

 

 未遂に終わったんだからとやかく言わないでほしいわ、と言外に態度で表しながら拗ねるようにハーディが抗議する。

 

 そんなハーディに、近づく者が居た。

 

「それは今からでも可能?」

 

 近づいたのは話題の中心となっていたレレイ本人であった。

 彼女は、今からでも依代として自分を使うのは可能かという意味でハーディに近寄ったのだ。

 

『あら、構わないのかしら』

 

「……言葉が通じないのは不便。しかし予想するにそれへの答えは可であると申し上げたい」

 

「ちょっとレレイ!?」

 

 ハーディの唇の動きから予想して大丈夫だと答えるレレイに、ロゥリィが驚愕の声を上げる。

 何せ自分が目を付けていた賢者が他神へと身を差し出そうというのだから当然だ。

 まぁロゥリィ的にはその相手がハーディだというのが気に要らない要因のほとんどを占めるが。

 だが、ロゥリィの声に反応はするもレレイの目は本気だった。

 そしてその目に宿るのは偏に“知的好奇心”だ。

 

 魔法とは、人の身に在りながら法則の外側へと干渉し事象として現実化する方法の事だ。

 神とは、人の住む次元の外より力を行使する存在だ。

 ならば人の身で神の御力に触れれば“外側”へと干渉する法則の手が掛かりになるのではないか。コウジュの様な理解できない力にも、触れることさえできればその先へ行けるのではないか。

 そう考え始めれば生来からの知識欲によって行動してしまわざるを得ないレレイであった。

 

 そんなレレイに、ロゥリィとは対照的に嬉し気な笑みをハーディが浮かべた。

 最初はちょっとした興味、しかし事ここに至っては眷属として迎え入れたいほどに関心が向いていた。

 

 ロゥリィの主たるエムロイ神とは違い、あらゆる魂を受け入れるハーディ。

 しかしその彼女にも好き嫌いは存在する。

 ぶっちゃけて言えば容姿の整った可愛らしい者が好みだが、それとは別に魂を管理するが故に魂を磨こうとする者をハーディは好む。

 だから、その理由が例え知的好奇心の為とはいえ、自分の目的のために先へ進もうとするレレイの魂はハーディにとってとても好ましい物だった。あと可愛い。

 

「もぅ……。でもハーディ、眷属にするのは許さないからねぇ」

 

『分かっていますわ』

 

 ばっちこいと言わんばかりに待機していたレレイに、ハーディが再び近寄る。

 そんなハーディに、諦めの色を表情に乗せたロゥリィが横から告げた。

 それに対してハーディはこれで大手を振って入れるからと笑みを浮かべた。

 そして、スルリとレレイの身体に溶け込むように消えて行った。

 

 フラッとレレイの身体が傾き意識を失う。

 そんなレレイを、再起動したは良いがまた失態を繰り返さない様にと黙って成り行きを見ていたコウジュが慌てて立ち上がり支える。

 

「おぅ……?」

 

 コウジュが、支えたレレイを見て首を傾げた。

 それもその筈で、支えたレレイの髪が地に着くほどに長くなっていたのだ。

 元々のレレイは精々肩に掛かるか掛からないか程度の長さしかなかった。

 しかしそれが、今では数倍の長さだ。

 コウジュはひょっとして、と考え始める。

 考えられるとすれば、当然ハーディがレレイの中へと入ったから。

 同時に、女の髪というのは古来より力が宿るものとされてきた。

 つまりハーディがレレイの中に入り、その力の大きさで溢れ出た幾らかが髪へと流れ込み影響を与えているのではないか。力の流れやすい髪へと神の力が流れ込み、それでも足りない分を補うために髪そのものを長くするという結果になったのではないか。

 そう、コウジュは考えた。

 世の何%かの人達が喉から手が出るほどに欲しい結果である。

 

 さておき、コウジュが考えたそれは正解であった。

 

 神を宿したレレイ。

 その瞳が、開かれる。

 そしてコウジュから身体を離してしっかりと自身の足で立ち上がり、普段のレレイからは考えられない程に蠱惑的な笑みを浮かべ、神聖な雰囲気を溢れさせながら皆を見た。

 

 

「初めまして皆さん。私がハーディです」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「んんっ!!!!!!! 良いわこれ!! さいっこう!!!!!」

 

「そうっすか……。ありがとうございます」

 

「はぁん、これも良いわね。蕩けてしまいそう!!」

 

「そうですね……」

 

 目の前で嬌声にも似た声を上げながら舌鼓を打つのは誰であろう冥府の神ハーディだ。

 しかしその姿は髪は長くなってはいるがレレイのもの。

 正直何とも言えない気分です。知り合いがこんな声を上げているのを間近で見るなんてのはさ。

 ってこらそこの先輩顔を赤くするな。

 あ、ちなみにハーディ本人(本神?)から呼び捨てでよろしくと言われている。

 ロゥリィもそうだけど、神様はフレンドリーな方ばっかりだねぇ。

 まぁ肩ひじ張らずに居られるってのはありがたいけど。

 

 それはそうと、何故ハーディが嬌声じみた声を上げているのかというと、ハーディは今とある料理を食べているからだ。

 え、料理を食べて嬌声をあげるのかって? 美味しいものを食べたらつい出てしまうのはよくある事じゃないのか?(錯乱

 まぁでも仕方ないのだ。

 今ハーディが食べているのは何を隠そう、アーチャーが作った料理なのだ。それも特に気合いを入れて作ったシリーズ。

 実は、前に深縹色の肌をした竜人さん……ジゼルさんを保護したことがあったが、あの人がこのハーディさんの使徒であったらしく、その時の報告を受けてずっと食べてみたかったそうなのだ。

 なので俺の秘蔵の料理たち(アイテムボックス内にて保管中。数に限りあり)を出すことになってしまった。

 最初はマイルーム内で俺自身で作ろうと思ったのだが、ハーディ曰く他神の領域には入れないとのこと。よくわからないが。

 とはいえ無理強いする訳にも行かないので結局は神殿内でという事になった。

 しかしそうなると俺自身の作り置きも無いので、秘蔵のアーチャー料理を出すことになってしまった。一番良いのをお願いと言われてしまい、つい出した俺も俺なんだけどさ。

 

 そんなこんなで、良い声を出しながら舌鼓を打つハーディ(見た目はあくまでもロングなレレイ)を、皆で眺めている状態だ。

 皆、と言っても来た時の全員が居る訳じゃない。

 第三偵察隊の面々は先輩を残して皆が神殿外の探索に出ている。

 双子龍はこのまま居ても暇だろうしと第三偵察隊と共に着いていってもらった。

 なので今居るのは先輩、俺、ロゥリィ、テュカ、レレイ(中にハーディ)だけとなっている。

 

「ふぅ、お腹いっぱいだわ」

 

「満足したぁ?」

 

「ええ、器になってくれた子に申し訳ない位に食べてしまったわ」

 

「ならぁ早く出て行きなさいよぉ」

 

「まだ物足りないから嫌よ」

 

 ハーディに対してロゥリィが冷たい。

 いやまぁ普通に異性が好きなロゥリィに対して詰め寄っているらしいハーディを邪険にしてしまうのは分からんでもないが、そこまで徹底していると可哀そうな気もする。

 

「まぁ良いわ。伴侶でも居れば肉欲に関しても楽しむのだけど、どうやら居ないみたいだし。ロゥリィも相手をして――――」

 

「ぜぇぇったいにぃ嫌!」

 

「―――くれないみたいだし、諦めるわ。だから本題に入りましょうか」

 

 食事を食べ終わり、一息ついたハーディが改まってそんなことを言い始めた。

 少しだけロゥリィにまた絡みに行ったがすげなくされて結局話を進めることにしたようだ。

 しかしついに来たか。

 久しぶりの現界だから先に色々したいと言われて付き合っていたが、とりあえず料理を食べて満足してくれたようで良かった。アチャ男さんありがとう。

 

 さておき、俺達は呼ばれたから来たわけだが、何故呼ばれたのか未だ知りはしない。

 正確には呼ばれたのは伊丹先輩だが、ただ何かを伝えるのならば呼び出す必要は無い。

 しかし呼び出したという事は伝言のような一方的なものではなく、相互的な会話が目的という事だろう。

 それが、やっとわかるわけだ。

 

「あなた達に言いたかったことは二つ。まず一つ目だけど、それの為にはアルヌスにある門について話さなければならないわ」

 

 酒杯を傾けながら、ハーディはそう始めた。

 

「そもそも、アルヌスにある門には世界と世界を繋げる機能は無いの。世界というのはあなた達の知らない次元で移動を常にしていて、蠢き、形を変え、その道中には世界同士が接触することもある。その時接触した世界同士で小さな穴が発生する。それを繋ぎ留めておくのがあの門なの。言ってみれば岸と岸を繋ぐ橋の様な物ね。船と船を繋ぎとめる楔の方が分かりやすいかしら」

 

 そうだったのか……。

 あれ、でもそうなるとまずくない?

 動いている物同士を繋ぎ止め続けるということは本来流動するものがしないわけで、つまり停滞だ。

 マグロじゃないが、世界というものが動き続けなければならない物だった場合、それはかなり致命的なんじゃ……。

 

「そう、あなたが考えている通り本来ならば動き続けている筈の世界を繋ぎ止め続けるというのはとても危険なことよ。だから私はあの門を壊そうとしたこともあった。けど諸事情により失敗したから、どうしようか考えていたのよ」

 

 やっぱ心を読めてるだろ、これ。

 そう思い、顔を手で隠すが微笑まれるだけだった。

 

 それにしてもやはりまずい状況か。

 失敗したというのが気になるけど、神でも全てが思いのままという訳ではないということだろう。まぁ思い通りになるならそもそも俺がここに居る訳無いんだが。

 しかし、この流れで行くとハーディの言いたかったことというの一つは門を壊してほしいということだろうか?

 

「どうしようか考えていた……ということはもう案があるという事ですよね? ひょっとして俺を呼んだのは―――」

 

「いいえ、あなたには門をそのままにしていた場合世界がどうなるかを見てもらいたいの。それが一つ目よ。その上でどうするかは任せます。これはこの世界もそうだけど、あなたの世界にも影響がある事なの。そうね……、例えば最近、地鳴りが多いと思わないかしら?」

 

 ハーディの言い回しに疑問を持った先輩が問いかける。

 しかし思っていたのとは違ったようだ。

 そしてハーディが言うには、地鳴りがその影響の一端であるという。

 確かに以前、帝都で居る際に大きな地震があった。

 それ以降もあれほどではないがこちらでは地震が起こっている。

 日本に関しては地震大国の為、増えているのかは分からないが、ハーディがいう事を信じるならばきっと増えているのだろう。

 ただ、ハーディの“言いたいこと”は影響を見る(・・)こと。

 つまり目に見えた何かも起こっているという事だろう。

 

「本来ならば世界は接触したところでしばらくすれば離れるようになっている。けど、今は繋ぎ止め続けている。例えば繋ぎ止め合った船が、それでも互いに違う方向へ進もうとするようなものね。だから今はそれぞれの船体が悲鳴を上げ始めている。そして楔があり続ける限りギシギシと船体は悲鳴を上げ続け、仕舞いには壊れてしまうわ」

 

「ならやっぱり早く門を壊した方が良いんじゃ?」

 

「それがそうでもないのよ。今回繋がったあなた達の世界、それによってこの世界には新たな活気が生まれている。それ自体はこの世界の停滞を崩し、先へと進ませるために必要なものなの。それに今更はいそうですかとあなた達は門を閉じられなくなったのではないかしら?」

 

 そう言いながら俺達を順に見るハーディ。

 確かにそうだ。

 門を越えて出会った人達と、はいそうですかとさよなら出来るはずもない。

 でも、ハーディが言うようにそのままにした場合はこの世界もそうだけど地球側も世界が崩壊してしまう可能性があるらしいのだから、門をそのままという訳にも行かないだろう。

 

「確かに今更門を壊せと言われても難しい部分があります。しかし、あなたが言うようにそのままにも出来ないのでしょう? ならばどうすれば?」

 

 俺と同じように思ったのだろう先輩が再度質問する。

 その問いに、ハーディは微笑みを見せる。

 

「この身体は私が宿ったことで力を得た。その結果行えるようになった聖術でどうするかをあなた達が指し示せば良い。私はそれに任せることにしました」

 

「任せると言われても……」

 

「心配することないじゃない。あなた達にはその子が居るのだもの」

 

 苦笑しながら言う先輩にそう返しながらハーディはこちらへと目線を向けてきた。

 って、俺?

 それに合わせて皆も俺を見る。

 止めてよ。照れるやん。

 

「後輩……コウジュが何か? 確かに強かったり不思議な力を持ってたりはしますけど……」

 

 皆して俺をしばらく見てから、先輩は俺がどう関わるのかをさっさと聞くことにしたようだ。

 しかし、それに対するハーディの答えは爆弾と言って良い物だった。

 

 

 

「この子、あなた達の世界の神ではないの? 私はそう思っていたのだけれど」

 

「は?」

 

 

 先輩の間の抜けた声がやけに響いた。

 そんな先輩を無視して、ハーディはこちらへと目をやり話を続けた。

 

「あなたまさか言っていないの? 自身が神だって」

 

「……いや言えないですって普通」

 

 私が神だ……とでも言えって?

 普通無理でしょ。常識的に考えて。

 常識に反した存在なんですけどね……。

 

「えと、後輩様? 神様ってまじで?」

 

 俺が神性を持つと聞き突然敬称を付け始めた先輩にちょっともやっとしつつ、俺は返す。いやちょっとだけですけどね。

 

「確かに神性は持つけど、俺はまだ見習いなんすよ。だから言う必要無いかなって」

 

 ついブスッとした言い方になった俺に苦笑する先輩。

 付き合いが長いから何に不機嫌になったか気づいたのだろう。

 後で何か奢ってもらうからな。

 そんな俺達を微笑ましそうに見つつ、ハーディは続ける。

 

「そう、それよ。それが二つ目に私が言いたかったことになるのだけれど、それを解決すれば色々と話は早いわ」

 

 言いながら、俺をジッと見るハーディ。

 しかし暫くして首を横に振り、何かを諦めたように溜息を一つ吐いて再び話し始めた。

 

「やはりだめね。この距離ならいけるかと思ったのだけれど、あなたの本質を見れない。大きなものがあるのは分かるのに、それを知れないだなんて不愉快だわ」

 

「……ひどいっす」

 

「別にひどくは無いわ本当の事だもの。だってあなたが神として不完全なのは自身の中心が定まっていないからであり、それが故に私には余計にあなたが分からない。正直に言えば気持ち悪い存在だわ。

神は皆、己の中に根幹とする方向性がある。そしてそれに沿って力を使い、信仰を得、神としての存在が確定し、更に存在を高めていく。なのにあなたは強大な力もあり、信仰も得ているのに中核が無い。あなたの中には混沌とした何かが渦巻くばかりで形が無いの。いえ、私に見えないのはそれだけでは無いのでしょう。でもそれなら余計に、力の方向性が無いのに魂の在り方を司る私が見えないのは不思議で仕方がない。

ほら、やっぱり気持ち悪い」

 

 世間話でもするようにそんなことを言うハーディに、俺は何も言えなかった。

 他の皆も同じなのか、誰もが口を開くことは出来ない。

 

「あなたは何? 何になりたいの? どうしたいの? 何故居るの? どうにもあなたは歪だわ。柱も何もないのに大神殿がそこに在るかのよう。あなたと共に入っている(・・・・・・・)のは何なのかしらね」

 

 そこまで言って、ハーディは一度酒杯を再び取り唇を濡らした。

 

「まあでも、あなたが方向性を決めなくとも先程の事を考えればあなた達でどうにか出来るでしょう。頑張ってくださいな」

 

 言いたいことを言いきったのだろう、ハーディは酒杯に酒をつぎ足し、そちらを楽しみ始めた。

 けど、俺にはそれを気にしている余裕は無かった。

 最後の方は、ハーディの言葉も頭に入って来辛かったくらいだ。

 

 俺は、神になれと言われて目指していた。

 ただ、それだけだった。

 力を使うのは何度もしているし慣れたものだ。それがあるから色々と出来たし、大切な人を救えた。

 けど、神を目指すというのは本当に言われたからというそれだけの理由だった。

 なら何をする? どんな神を目指す?

 そんなこと、言われても分からない。

 気持ち悪いと言われても、どうすることもできない。

 

 

 

 このままじゃ、駄目なのかな……?

 

 

 




いかがだったでしょうか?

ハーディからのきついお言葉を受けたコウジュ。
けど、実際客観的に見たら今のコウジュは日本でも特地でも歪に過ぎる存在ですよね。転生者だってのもありますが。

そんなわけで、コウジュ自身の在り方をどうするかっていうのがこの世界での課題ですね。
何度も今までに出てきましたが、今はまだ無色の力の塊でしかありません。変なのも付属してはいますが。
けど、実際に神様って何かしら司る物が絶対にありますよね。日本でも八百万信仰がありますが、それも全て○○の神様という風に何かを司るからこそその存在を表しているように思えます。
じゃあコウジュは何?というわけです。
さぁ、コウジュは一体何を司るようになるんでしょうね。

答えに関しては次話とかですぐ出るわけではありませんが、読んでいただいている皆様の想像や妄想を掻き立てられていたら良いなと思います。

ではでは、また次回!!!



P.S.

皆さま!! 初ファンアートを頂きました!!
描いて下さったのは、ぬこねこさまです。本当にありがとうございます。
かなり嬉しいです!!!


【挿絵表示】


それにしても可愛いすぎませんかこの子達!
特にこの紅音のがおーがツボです。
いやぁそれにしてもろりましぃ。
でも可愛いは正義。正義ですよ(真理
こんな子たちに囲まれて生活したいですね。
全てを敵に回しても勝てそうです(錯乱

改めまして、描いて下さったぬこねこ様、本当にありがとうございます!!!

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