男勝りのユキちゃんが主人公の、ラブコメ(?)です。
短いので、気軽にお読み下さい。
あたしは憤慨していた。何がなんでも憤慨していた。そのイライラを一緒に給食を食べている原ミチ子にぶつけていた
「でもさあ、」
ミチが言う。
「小林っていい男じゃん。そのまま付き合っちゃえば。」
その無責任過ぎる発言が、ますます私の頭を発火させる。
おかげで自己紹介が遅れた。私は遠藤由紀子。ミチと同じ中1だ。
件の小林と言うのが、同じクラスのたってのプレイボーイ。頭脳明晰運動神経抜群、顔も良ければ家も金持ちと来ている。おまけに、4人もとりまきがいて、T4と呼ばれている。曲芸飛行をする訳じゃないっちゅうに。
ただ、性格がねえ・・・。
ついさっき頼まれたのが、今カノと別れたいから新しい彼女の振りをしろと言う事。これが告白なら、私も考えるんだけども・・・いやいや、あんな自分勝手なんか真っ平御免!
って思っていたら、ミチが変な顔で私を見る。
「ユキ・・・」
と、いきなり手を引っ張られ、立たされれ、私は誰かに無理矢理抱きすくめられていた。首をねじ曲げて見ると、小林だ。更に首をよじると、小林の今カノが顔をくしゃくしゃにしている。
小林が言う。
「と言う訳だ。」
と同時に、ビンタの音が響いた。
自由になった私も、得意の合気道で一閃、と思った所が見事に躱され、奴は一言、
「ありがとな。」
と言い捨てた。
何なのよ!こいつわ!
徹底的に腐っている私の元に、小林のとりまきの一人(面倒なのでT1だ)が近付いて来た。
「ごめんな、あいつ、幼なじみに死なれてから、ずっとああなんだ。」
聞けば、姉と慕っていた近所のお姉さんを交通事故で亡くしてから、まともに人と付き合えなくなっているという。
それを聞いて、私はまた怒りがふつふつと湧いて来た。それがあによ。私だって愛犬を去年亡くしたわよ。それで落ち込んだけれどもいじけたりはしていない。好きな人が死んじゃったから、今いい加減に生きていい。そんな事あるもんか。
「あいつに、放課後屋上に来るように言っといて。」
私は、T1に言伝をした。
で、あっという間に放課後。ついてきてくれたミチと小林+T4が対峙している図。
「あんた、あやまんなさいよ!」
「なにが。」
「あんなふざけた態度はないでしょう。あの彼女にも失礼だし。」
「うるせいな、そんなことは俺の勝手、おまえにゃ関係ないよ。」
その台詞で私は切れた。奴の懐に回り込み、投げを一閃と思ったら、また躱された。小林、出来る。
「今度は暴力かよ。」
「そーよ、あんたみたいに死んだ人にいつまでもこだわって、生きている人をないがしろにする人にはね。」
そう言いながら思いっきり腕を振ると、当った。あいつの頬骨は痛い。
「殴らないとわかんないのよ!」
「人はいつか死ぬんだよ!」
反撃が来た。頬の痛みを何とかこらえる。
「でも人は生きて行くし、そう簡単には死なないの!」
そのままビンタの応酬は4往復続いた。奴は手加減したのだろうが、さすがに私は力尽きた。動けなくなったわたしは、捨てぜりふにこう言った。
「あんたの周りの人は、ずっと生きて行くんだよ、あんたと一緒に。その事を考えな。」
その日の帰り道、私は交通事故に逢い、病院へ収容された。
痛い、痛く無い・・・。ふわふわした感覚の中で、私は朧げな意識と共に目覚めた。
お父さん、お母さん、ミチもいる。ん、小林、何であいつがいるのよ。
私はあいつに無事な右腕を差し出す。手を握った瞬間を逃さず、合気道の技を繰り出す。あいつは見事にひっくり返った。刹那、私は再び人事不省に陥った。
結局、私が危篤だったのは半日程度だったらしい。頭も打ったが、主な負傷箇所は左腕の骨折。
退院までの一月余り、何故かあいつは頻繁に見舞いに来た。ミチは、
「殴られた女に惚れてしまう、あれだよ。」
なんて、どっかのテレビドラマみたいな事を言う。
それはそれで結構かもしれない(ミチもついでにとりまき君の一人をGETしたらしいし)。
ただ、それよりも、あたしは、あたしが死ななかった事で、人間はしぶとく生きて、でもそのおかげできちんと他人と向き合う責任があると言う事を、あいつに分かって欲しいのだ。
日差しが急に陰る。太陽が雲に入ったのだ。その横に見える、うっすらとした白い球体。
昼間の太陽の横で、白く僅かに見える月の様に、人間なんてしぶといんだもの。
ノックの音に、返事をする私。入って来るハンサムくんを好きなのか、嫌いなのか、実は私、まだ決めかねている。