14年ほど前に書いた短編を、古いPCより発掘したので、投稿してみました。
男勝りのユキちゃんが主人公の、ラブコメ(?)です。
短いので、気軽にお読み下さい。

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昼間の月

 あたしは憤慨していた。何がなんでも憤慨していた。そのイライラを一緒に給食を食べている原ミチ子にぶつけていた

 

 「でもさあ、」

 ミチが言う。

 「小林っていい男じゃん。そのまま付き合っちゃえば。」

 その無責任過ぎる発言が、ますます私の頭を発火させる。

 

 おかげで自己紹介が遅れた。私は遠藤由紀子。ミチと同じ中1だ。

 

 件の小林と言うのが、同じクラスのたってのプレイボーイ。頭脳明晰運動神経抜群、顔も良ければ家も金持ちと来ている。おまけに、4人もとりまきがいて、T4と呼ばれている。曲芸飛行をする訳じゃないっちゅうに。

 

 ただ、性格がねえ・・・。

 

 ついさっき頼まれたのが、今カノと別れたいから新しい彼女の振りをしろと言う事。これが告白なら、私も考えるんだけども・・・いやいや、あんな自分勝手なんか真っ平御免!

 って思っていたら、ミチが変な顔で私を見る。

 

 「ユキ・・・」

と、いきなり手を引っ張られ、立たされれ、私は誰かに無理矢理抱きすくめられていた。首をねじ曲げて見ると、小林だ。更に首をよじると、小林の今カノが顔をくしゃくしゃにしている。

 

 小林が言う。

 「と言う訳だ。」

と同時に、ビンタの音が響いた。

 

 自由になった私も、得意の合気道で一閃、と思った所が見事に躱され、奴は一言、

 「ありがとな。」

と言い捨てた。

 

 何なのよ!こいつわ!

 

 

 徹底的に腐っている私の元に、小林のとりまきの一人(面倒なのでT1だ)が近付いて来た。

 「ごめんな、あいつ、幼なじみに死なれてから、ずっとああなんだ。」

 聞けば、姉と慕っていた近所のお姉さんを交通事故で亡くしてから、まともに人と付き合えなくなっているという。

 

 それを聞いて、私はまた怒りがふつふつと湧いて来た。それがあによ。私だって愛犬を去年亡くしたわよ。それで落ち込んだけれどもいじけたりはしていない。好きな人が死んじゃったから、今いい加減に生きていい。そんな事あるもんか。

 

 「あいつに、放課後屋上に来るように言っといて。」

私は、T1に言伝をした。

 

 で、あっという間に放課後。ついてきてくれたミチと小林+T4が対峙している図。

 「あんた、あやまんなさいよ!」

 「なにが。」

 「あんなふざけた態度はないでしょう。あの彼女にも失礼だし。」

 「うるせいな、そんなことは俺の勝手、おまえにゃ関係ないよ。」

 

 その台詞で私は切れた。奴の懐に回り込み、投げを一閃と思ったら、また躱された。小林、出来る。

 

 「今度は暴力かよ。」

 「そーよ、あんたみたいに死んだ人にいつまでもこだわって、生きている人をないがしろにする人にはね。」

そう言いながら思いっきり腕を振ると、当った。あいつの頬骨は痛い。

 「殴らないとわかんないのよ!」

 

 「人はいつか死ぬんだよ!」

反撃が来た。頬の痛みを何とかこらえる。

 「でも人は生きて行くし、そう簡単には死なないの!」

 

 そのままビンタの応酬は4往復続いた。奴は手加減したのだろうが、さすがに私は力尽きた。動けなくなったわたしは、捨てぜりふにこう言った。

 「あんたの周りの人は、ずっと生きて行くんだよ、あんたと一緒に。その事を考えな。」

 

 その日の帰り道、私は交通事故に逢い、病院へ収容された。

 

 

 痛い、痛く無い・・・。ふわふわした感覚の中で、私は朧げな意識と共に目覚めた。

 お父さん、お母さん、ミチもいる。ん、小林、何であいつがいるのよ。

 

 私はあいつに無事な右腕を差し出す。手を握った瞬間を逃さず、合気道の技を繰り出す。あいつは見事にひっくり返った。刹那、私は再び人事不省に陥った。

 

 結局、私が危篤だったのは半日程度だったらしい。頭も打ったが、主な負傷箇所は左腕の骨折。

 退院までの一月余り、何故かあいつは頻繁に見舞いに来た。ミチは、

 「殴られた女に惚れてしまう、あれだよ。」

なんて、どっかのテレビドラマみたいな事を言う。

 

 それはそれで結構かもしれない(ミチもついでにとりまき君の一人をGETしたらしいし)。

 

 ただ、それよりも、あたしは、あたしが死ななかった事で、人間はしぶとく生きて、でもそのおかげできちんと他人と向き合う責任があると言う事を、あいつに分かって欲しいのだ。

 

 日差しが急に陰る。太陽が雲に入ったのだ。その横に見える、うっすらとした白い球体。

 昼間の太陽の横で、白く僅かに見える月の様に、人間なんてしぶといんだもの。

 

 ノックの音に、返事をする私。入って来るハンサムくんを好きなのか、嫌いなのか、実は私、まだ決めかねている。

 


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