みつみねさんSS投稿倶楽部に提出した作品です。お題は「魔法少女の悪役」
魔法少女よりも仮面ライダーでは? とは言ってはいけない。

本作品は私がまだ設定しか作っていない一次創作の設定をふんだんに使っています。

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「空を飛ぶ方法」
Step1.油は水に浮く
Step2.人の体は脂っこい。とくに*****な人間は
Step3.雨を待つ
Step4.(実行中。回答は未だない)



Pteromerhanophobia

 

「が――っ」

 

 背中から落ちた。肺の中にあった空気が強制的に口から排出される。

 

「――……っ!?」

 

 酸素のために息を吸い込んだ瞬間、猛烈な吐き気を感じた。

 臭いではない。普通の空気――日常生活において無味無臭と表現される空気に情報を印加されたようで、情報の急激な増加で脳が処理できない。

 服で鼻と口を覆ったが、それらの布の匂いが処理できない。意識的に吸ってどうにか慣れようとする。

 感覚が鋭敏になっている。ふらついて壁にもたれたが、アスファルトが肌に突き刺さる感覚、地面から受ける自身の重力に対する抗力、空気が肌をなでる感覚が鬱陶しい。

 

「ふー……、ふー……、ふー………」

 

 情報を整理しよう。……といっても自分は先ほどまで事務所から近くのコンビニまでの道のりを歩いていただけだから整理するものもないのだが。

どうやら夜のあぜ道にいるようだ。服は普段使いのジーパン、スニーカー、ベストとシャツ。

 ……とても臭う。少し考えてこの臭いの元が自分の体だということに気が付いた。体臭と香水が混ざってとても不快だ。……レッスン終わりにシャワーは浴びたからジーパンからだろうか。

 腐敗臭もする。川や海の臭いを何倍もひどくしたような臭い。水辺が近いのだろうか。

 突然、何かが崩れる音がした。つづいて爆発音が何度か。

 

「ここは……!?」

 

 戦争区域にでもテレポートされたかのような音だった。しゃがんで息を殺す。

 爆発音、金属どうしがぶつかり合う音。それらが幾度か。心臓の動悸が早まっていく。

 何分経っただろうか。最後に大きな音が聞こえて。周囲は静かになった。

 

「………終わった?」

 

 鋭敏になった情報に耐えながらも三峰結華は周囲の音を探る。

 静寂、静寂、静寂。無音が重い。

 隠れていた物陰から出る。……どこか開けた場所に行きたい。

 細道を出ると海が見えた。どうやらここはどこかの埠頭らしい。

 

(たしか爆発音が聞こえていたのはあっち……だから――)

 

 その思考は爆発音とともに飛来した金属片の飛翔音で砕け散った。

 

「な、え、あ――」

 

 腰が抜ける。激しく腰を打った。

 そんな結華を囲うように人影が集まってきた。

 人影、と形容したが……人間ではない。黒い装甲に黄色やオレンジの差し色のサイバーチックなデザイン。まるでニチアサヒーローだ。

 だが違うのは明らかに民間人であるはずの結華に銃のようなものを構えてこちらにじりじりと近づくことだ。

 驚きのあまり声が出ない。

 

(襲われる――)

 

「待て」

 

 声が響く。ヒーローもどきが動かなくなる。

 声の主のほうに視線を向けた。すると――

 

「私……?」

 

 そこには、もう1人の私がいた。

 

 

 Tシャツにジャージ。それがもう1人の結華の来ている服だった。明らかに普段の結華のセンスじゃない。

 

「私………?」

 

 結華の言葉に疑問を持ったようにもう1人の結華は近づきながら疑問の声を上げる。

 

「私の顔……あなたには、三峰結華には三峰結華に見えるの?」

「えぇ、まぁ……」

「ふーん……まぁ、確かにあり得なくはないけど」

 

 もう1人の結華はニチアサヒーローに視線を向けるとソレも頭をかしげていた。

 どうやら目の前の人間が結華に見えるのは自分だけらしい。

 

「それじゃあ――」

 

 もう1人の結華が何かを言いかけた瞬間、周囲に爆発が起きた。ニチアサヒーローが吹き飛ぶ。

 結華が悲鳴を挙げて頭を抱える反面もう一人の結華は慣れているようで爆炎を無味乾燥と見ている。

 結華の視界の端にはプロペラ、耳にはスラップ音。ニュースで見たことがある。これはドローン特攻だ。

 出来た包囲網の穴からフルフェイスヘルメットをかぶった作業着の人間が炎を無視して歩く。その腹には……まるでニチアサのアイテムのようなバックル。

 

《これは……》

 

 機械合成音声。それが結華の姿を見て狼狽したような声を出した。

 もう1人の結華が話す。

 

「遅かったね。でも……悪くないタイミングだ」

《…………お前》

 

 もう1人の結華は機械音声を明らかに馬鹿にしたような声だ。

 

《なんだ、これは? 自分の体の消費期限が来たから、セクサロイドでも開発したわけ? *****をもう自分では稼げないから?》

「*****………。まさか男のマウントが分からない人間じゃないでしょ? 強姦のメカニズムを理解できないみたいだ」

《黙れよ、女王様》

 

 2人が何を言っているのか分からない。*****とは……なんだ?

 

《じゃあコレはなんだ? なんで三峰が現像されてる?》

「*****を利用してホールを作って強引に呼び出した。ワームホールを用いた*****の突破は聞いたことがあるでしょう? それに私の縁を利用して強引に奪った」

《………何のために?》

「大量のエネルギーが必要なの。私1人で稼ぐのは無理。だからもう1人の私を呼び出した」

《もう1人の私?》

 

 機械音声はまるで笑っているように声を震わせていた。馬鹿にしたようにヘルメットの前で馬鹿にしたようにテレビを叩く。

 

《お前じゃない、だろ?》

「でも三峰結華は私のことを三峰結華と捉えているよ?」

《……………情けないねぇ。ミヤビシンにボコボコにされて*****はボロボロ。結果、机上の空路に縋り付いて再起を図る?》

「分かってるでしょ。*****を守って、あなたたちを潰すためだよ」

《*****を守りたいんだったら*****をつぶせよ。大した価値観だ、サクヤヒメ?》

 

 何を言っているのか分からない。まるで誰かが強引に音を塗りつぶしたように単語が聞こえない。

 機械音声があきらめたように肩をすくめながらモバイルバッテリーのようなものを構えて――大きな、まるでおもちゃのように色付けされたベルトのバックルに挿入した。

 

《あきらめの悪いばぁさんだ。神話の時代は終わったんだよ。つぶされろ時代遅れ》

《Idol》

《変身》

《Cry out》

 

 瞬間、様々なパーツがヘルメット人間の周囲を舞い、張り付く。最後にカーキーのジャケットを纏った。

 

《They can not identify TRUE or FALSE》

「………!?」

 

 その初めて見る光景に思わず結華は驚愕した。ニチアサヒーローの変身を生で見れるとは……。似たようなものをどっかのエンタメ会社が開発していたが……。

 そのヘルメットの姿を見てもう1人の三峰も決心したように左腕を露出させ何らかの装置を見せる。

 

「残念だねぇ。せっかくあなたが大好きな三峰結華のサインが得られる瞬間だったのに」

《Fact・GEAR》

 

 ガントレットから音が流れる。エレキギター主体の旋律。間違いない、何度も踊ってきたバベルシティ・グレイズによく似ている。

 

「変身」

《Dirty for……This phrase reignite your soul and keep the world.》

 

もう1人の結華が一瞬にしてその服装を変えた。細部が異なり、黒紳士傘も携えているがあれは……

 

「シンフォニック・スチーム……」

 

 結華の答え合わせをするかのようにもう1人の結華の周囲に蒸気が噴き出た。

 

 

「三峰結華を確保しろ」

《三峰結華を保護しろ》

 

 そう言うと2人は互いに窮迫し、刀と蝙蝠傘がぶつかり合う。金属がぶつかり合う硬質な音が響き渡る。

 

「今のうちに……――っ!」

 

 後ろを振り返ると結華を囲っていたニチアサヒーローが彼女に向って手を伸ばしていた。身構える暇もなく、爆発音。ニチアサヒーローが吹き飛ばされる。

 

「な……に。なに、何、何!?」

 

 周囲を見渡すと動かすとマルチカムの装甲とヘルメットで覆われた何かがこちらに手招きをしている。その手には銃。先ほどの発砲音の主のようだ。

 逡巡する。果たしてニチアサヒーローとマルチカム兵士。どちらが信用できるのか……?

 周囲を見渡す。ニチアサヒーローがマルチカムに銃を向けて発砲。マルチカムが大きな棍棒をニチアサヒーローに向けて振り回す。どうやら同じ姿の双方が複数いるらしい。

 

(………どちらも信用できない)

 

 結華の常識の中では銃は人間に向けるモノではない。それをいとも容易く、まるで映画のように発砲する双方のことを信用できなかった。

 周囲の人間の動きを見て結華は安全だと思われる場所に向かって走り出した。

 ここにはアンティーカのみんなも、283のみんなもいない。ここでは――

 背後から迫りくる人間に結華は直前まで気づかなかった。

 結華の左からぬ、と黒い腕が伸びた。

 

「しま――」

《かく――……っ!》

 

 その手が彼女の腕をつかむ前にニチアサヒーローはマルチカムの戦槌によって吹き飛ばされた。

 

(まずい……これは……!)

 

 正面にはマルチカムの兵士。後ろには戦闘。戦闘はすでに彼女の周囲で発生している。

 ………逃げられない。

 

 

「なりふり構わないって顔してる」

 

 カーキーが放ったスラグ弾を蝙蝠傘でしのいだもう1人の結華が言う。

 

「その銃、違法改造品のソードオフでしょ。他の人のはぎりぎり基準内の監査から切り抜けられるものなのに」

《未届けの*****も構成員のサブマシンガンもだろ》

 

 機械音声とともにカーキーが刃引きされた刀がもう1人の結華の体を打った。人体から出るとは思えない金属硬質な音が響き渡る。数発打ってなんの効果もないことを認めたのかバックステップ。

 

《………?》

「さて、何ででしょう?」

 

 ゴシック調の黒い衣装を見せびらかすようにもう1人の結華は腕を広げる。

 

《分かるよ。……分かっていようがどうだろうが、腐った性根を叩ければいい》

「その腐った性根を見分けられなかったのは誰なのやら」

 

 その言葉とともにカーキーがバックルに、もう1人の結華がガンドレットに手をのば――しかけた時、怒号が響いた。

 

《……おいおい、まさか》

「――あいつら」

 

 爆発音、明らかに大きく逃げ出した三峰結華を巻き込んだのだろうと予想するのは簡単だった。

 

「――っ!」

 

 瞬間、もう1人の結華が走る。少し遅れてカーキーが駆けようとした瞬間

 

 

周囲が吹き飛び爆発した。ゴロゴロと結華は転がる。

 

「いつ、つ、つ、つ、つ……」

 

 痛みを抑えながら周囲を見渡す。どうやらニチアサヒーローは結華のことを忘れマルチカムを攻撃することに躍起になり、マルチカムは攻めあぐねているといった混戦状態だった。

 ――このままではいけない。でも、私に何ができる?

 

《AGONY opinion》

《PROVIDENCE Judgement》

 

 2種類の音声が発せられた。よくある必殺技だ。周囲にいるただの人間である結華には余波だけで

 

(あ、これマズい。死んじゃう)

 

 身をこわばらせる暇もなく――

 

《IDLING opinion》

《Rusted TWIST》

 

 2つの必殺技が周囲にいたマルチカムを、ニチアサヒーローたちを薙ぎ払った。まるで結華を守るために。

 

「………っ!」

「あのねぇ……」

 

 とん、とん。石突でアスファルトを突きながらもう1人の結華が歩いてこちらにやって来た。そういえば最近モノクルつけてないなぁ、と場違いなことを考えてしまう。

 

「私が命じたのは、三峰結華を確保すること。――戦闘に巻き込んで殺すことじゃない。

確保、事故死……確保、事故死――同じ、言葉に、聞こえた、かな?」

《い、いえ……》

《よせ》

 

 狼狽するニチアサヒーローたちを庇うようにカーキーは責め立てる彼女の後ろから声をかけた。

 

《こいつらは真っ当な教育も受けてないしネットで倫理を学べると勘違いしている、落伍者だ。エサは過剰に要求する癖に躾けをしようとするとキャンキャン吠える、ペット以上に惨めな獣だ。優しくしてやらなきゃ、かわいそうじゃないか》

「でも私にとっては重要なファンだよ?」

《だまりな、アシナガ女王》

 

 くるくると蝙蝠傘を回しながらもう1人の結華にも、機械音声で軽口を返すカーキーにも先ほどまでに戦っていた雰囲気はない。

 

「そっちも躾け、したほうが良いんじゃないの」

《当然、民間人のことを忘れていた始末書は書いてもらう》

「《さて》」

 

 もう1人の結華が傘の先端を、カーキーがどこからともなく取り出した銃を瞬時に向ける。

 

「こっちにはその銃というあなた方の暗部がある」

《こっちにはエンタメの味方であるあなた方が民間人を攻撃しようとしたものがある》

「裁量権は唯一の部外者に任せるのが一番じゃない?」

《なるほど、いい判断だ》

 

 そういうと両者は先端を結華に向けた。

 

「ひ――っ」

 

 体が強張り、動けない。そんな様子を見てもう1人の結華が笑った。

 

「付き合ってもらうよ、もう1人の私。……この世界の真実を知って、私の未来を決めるのはあなたよ」

 

 その口は引き裂いた布の切れ間のよう。

その目は空虚で、何もない。

 何もない――すべてを失った三峰結華がそこにいた。

 




Q.続きある?
A.そこにないので無いですね。

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