存在してはならなかった世界   作:真暇 日間

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絶対に存在してはならない世界106.5

 

 日本・中央トレセン学園 美食研究会。そこはメシマズ蔓延るこの世界の美食の出発点にして最先端。それまで重ねられてきた食事という苦痛を解放し、良きものへと変えていくその場所で、数人の少女が集まっていた。

 

「ネイチャが外国の大きなレースに日本のウマ娘として初めて勝利したという話が広まっているな」

「ああ、うん、まあそうだよね、っていう返事以外にどうすればいいのかわからないくらいには予想通りだよね」

「出走が決まった時からもう優勝記念パーティの予定立ててたもんね……」

「マーベラス☆未来予知!ネイチャはこれから凱旋門賞を勝って帰国すると思ったらお土産みたいな感じでアイルランドの王女様を一人連れ帰ってくるよ!」

「……想定はしてない内容だったけど、言われると納得できちゃうのがやだなぁ……絶対変な感じに脳焼いたりして結構な覚悟決めて付いてくるヤツじゃん」

「予想に難くないな」

 

 ネイチャの分身が用意したちょっとした鍋(オグリとライスがお腹いっぱい食べても十分満足してしかも余る量)をつつきながらアスリート兼女子、そして農家のようなちょっとした愚痴を繰り広げる少女たち。いつの間にか酒も入っていないのにその話の内容は少々センシティブな物に至り、何をどういう道を辿ったのか少女たちはネイチャのどこに惹かれたのかを赤裸々に暴露することになっていた。酒も入っていないのに。

 

「ネイチャは───凄く良い匂いがするんだ」

「わかる」

「わかる☆」

「わかる」

「当時は私にその匂いについて表現するための語彙が無かったから大枠で『良い匂い』という表現をするしかなかったが、今ならもう少し詳しく表現できる。ネイチャの匂いはほんのり甘く、そしてどこかで嗅いだことがある匂いなんだ」

「超わかる」

「凄くわかる☆」

「とってもわかる」

「どうしても知りたくなって直接聞いてみたんだが、食べてきた物が良いものだからよくない匂いが入っていないだけでこれがネイチャの唯の体臭だというんだ。正直に言うが、当時の私はまだメシマズ抜きをされていなかったから自分の匂いがどれだけひどいものかというのを認識していなかったからな……メシマズ抜きしてもらってから他の人の匂いを嗅いだらもう本当に鼻が原形を無くして溶け落ちるかと思うほどに臭かったぞ」

「わかる。ネイチャって基本的に優しいけどメシマズ抜きしてもらってから嗅いだ臭いに我慢してもらってたってだけで心の広さゴビ砂漠より広いよねって思ってた」

「銀河系全部纏めたより広いと思う」

「そこまで広くなるともうどのくらい大きいかわからなくなっちゃうくらい広いよね……」

「それに私はタマを助けてももらった。ネイチャの優しい所にとても救われている」

「確かにネイチャは優しいよね……たまにちょっと人の心が無いこともあるけど」

「は?」★ ★

「だって皐月賞でボクが骨折した時に『ちょっと早いけど手間が省けた』って言ったんだよ!? 確かにカイチョーを超えるって言ったのはボクだけどさ? 必要ならなんでもするって言ったけどさぁ!? 並ぶだけなら勝ち続けるだけでいいけど超えるとなるとドラマが必要って言い分も理解できなくはないけどさ!? 骨折してなかったらダービー勝った頃に一回折って診断書貰ってから奇跡の復活劇みたいにするつもりだったとか言われたんだよ!?」

「……冗談、ではないのか?」

「一番冗談であってほしかったのはボクですけどぉ!?」

「変な扉開きかけたのにね★」

「───全力で目を反らしてる所を無理矢理見せつけようとしないでくれないかな?」

 

「えっちょっと待って今の反応だと脚を折られることに興奮する癖が若干あるように聞こえるんd」

「ライス、ほらこれを食べるんだライス。ちゃんと味だけに集中するんだぞ」

「もぐもぐ……」

 

「いや、流石に脚を折られて興奮はしないかな……あの後無茶な走りしたからって怒られてお仕置きもされたし」

「言ってなかったけど洗濯はアタシがしたよ☆」

「待ってつまりあれ見られてたってこと!?」

「本番中と身体の方の処理はネイチャがしてたからそこはノータッチだから安心してね。ベッドとシーツはアタシが整えたってだけ☆」

「それでもちょっと尊厳的に結構なダメージなんだけどね!?」

「でもネイチャに誘われたらついてくでしょ?」

「……ノーコメントで」

「わぁ雄弁☆」

 

「もぐもぐ……えっと」

「気にしてはいけない。私もここにきて少し学んだんだ。こういうのに首を突っ込むと厄介なことになるんだ……ほら、追加のワンタンだ。食べよう」

「……もぐもぐ」

 

「でもまあ強いだけじゃあ会長さんみたいになれないっていうのはよくわかるよね。ネイチャはそうならないように動いているみたいだけど、そうじゃなくてもなれないだろうし」

「まあ、そうだね。ネイチャ曰く、カイチョーはジャパンカップでカツラギエースに負けたからこそ皇帝として崇められるようになったんだってさ。もしもずっと負けないままなら皇帝じゃなくて暴君って呼ばれてたって」

「負けることは嫌いだけど、一度負けたからこそ得られた物が結構大切だったって話かな?」

「そう、なのかな?」

「わからないけどね☆」

「わからないのね……」

 

「おやさいおいしい」

「よーしそのまま今聞いたことは忘れてしまうんだ。美味しい鍋を食べた、それだけでいいじゃないか」

「おいしい」

「そうだな、美味しいな」

 

「……あ!いつの間にか鍋の中身が綺麗に入れ替わってる!?」

「何度か食べ切っては新しい具材を入れてを繰り返されてるね……お出汁が凄いのが匂いだけでわかる」

「話は終わったか? 終わったな? では話を戻さないようにしつつお腹いっぱい食べるといい」

「きのこおいしい」

「そう、ライスシャワーのようにな」

 

 たっぷりの出汁で煮込まれたおかゆのようになりかけているライスシャワーの幸せそうな顔を一瞥し、ちょっとセンシティブ度が一気に増して人には聞かせられないような話を打ち切ることに成功したオグリ。ささっと二人の器に新しい鍋の中身を取り分けて、自分もやっと箸をつける。

 

 少しずつ少なくなっていった鍋の汁に水を足し、また具材も追加していく。恐らくこの鍋の残りは最終的に炊きたてのご飯が入っておじやになるのだろうなと考えながら、ウマ娘用の十升炊きの炊飯器に視線を向ける。

 ……足りなくなった場合の事は考えないようにして、何故かこの面子で鍋奉行のようなことをやっていたオグリは自分用に取り分けた器の中身を空にして、もう一度鍋に手を付けた。

 

 




Q.何がしたいわけ?
A.日本でも平和に時間が流れてますよ、と。

Q.ネイチャさんちょっとそれは大問題では……?
A.ネイチャが経験した中でテイオーの脚が折れなかったのは自分が担当した時とよくわからない超優秀トレーナー(アプリトレ)が担当した時しかなかったのでどうせ今回も折れるんだろうなと思っていました。

Q.美味しい、って言葉、やっと出てきましたね。
A.意識的に使わないようにしてきましたが、そろそろこの面子の中では普通に使われ始めててもいいかなと思って解禁しました。

次の作品は……?

  • ヒロアカ寝たいだけ
  • ヒロアカ非寝たいだけ
  • ブルアカ非寝たいだけ
  • ウマ娘旧作
  • なんか適当に
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