トレセン学園の卒業には遠くてもやることはたくさんある。主に畑の扱いだとか畑から採ったものを広める方法だとか連作障害やらそれを緩和あるいは解除する方法だとかを探したり、あと会社が本格的に指導し始めたので役員として名家の人たちから何人か雇ったり、現場の人のトップとして美食研究会の幹部陣を本格的に雇って副業してもらったり。
国をまたいで畑を広げたりいくつかの国で国家的プロジェクトになったので後は任せて別の国に広めに行ったり。
いやもう本当に、やることが多すぎる。アタシの用意した作物はその多くが蠅だの蜂だの蚊だのがいる世界で生まれたものだからこの世界だと受粉にいちいち人の手を使わないといけなかったりするし、メシマズ物質のない食物を用意するとそれをどこからか察知してやってくる野生動物や虫なんかがものすごい数になるし、本当にやらないといけないことが多すぎる。
それでもこの世界は昔に比べて多少なりともマシにはなっている。少なくとも日本とアイルランドでは。
まず、純粋な砂糖の普及が凄まじいスピードで行われた。日本は莫大な量の砂糖を工業的に生産し、格安で世界中に輸出するという形で全世界的な人道支援を行っている。そうして得られる金額も工場の運転資金と砂糖の運搬費用としてほぼ全てが使われ、ほんの僅かな黒字のうち半分がアタシの懐に入ってくる。残った半分は国が持っていく。
ちなみにほんの僅かな黒字と言ったけれど、全世界的に普及した消耗品の値段としてはほんの僅かというだけで日本の中流階級くらいの出身の人間なら人生を何回か繰り返しても到底稼ぎ出せるような金額ではない。アタシも一度の人生でここまで稼いだのは初めての経験かもしれない。
そして砂糖以外の様々な畑から野菜を収穫し、一部を家畜に与えてメシマズ物質による汚染がほぼ無い肉を作り出してそれらを調理する環境も整えた。今ではアタシの会社は世界中に支社を持ち、現地に合わせた野菜を育てて売るようになっている。日本から始まりアイルランドに渡り、イギリスからフランスへと伝ってヨーロッパに、そしてアメリカに。
そこまで広げるのにかかった時間はいったい何年だったか。日本のウマ娘が世界を席巻し、あらゆる高額賞金レースや重賞を焼け野原にしていったおかげか、十年にも満たない時間でここまで来ることができた。凱旋門賞ではある時期から日本のウマ娘以外の名前は上がらなくなり、本場であるイギリスでも日本ウマ娘かアイルランドウマ娘ばかりが掲示板に名を連ねる。夢の舞台と謳われたアメリカでも片端から日本ウマ娘が蹂躙し、数々の名ウマ娘を輩出してきた名家やら何やらが全力で対処しに来たりもしたけれど、違いはとにかく美味しいだけの食事だからね。メシマズ物質の含有量が多いものを食べてないと参加不可ってことにすれば抑えられるだろうけど、そんなことをしたらせっかく味がないように栄養だけ取り出した栄養ゼリーとかも使えなくなるから落ちるだけだし……逃れられませんなぁ。
かつての美食研究会はトレセン学園に深く深く根を張り、毎日様々な野菜を作って実験している。土の栄養状態や水はけなどから始まり、育てるものに合わせてどんな質の土を使うのが良いのか、出来上がった野菜の状態を見て記録したり再生産したり、そして美食研究会の支部としてほぼ独立した調理部門に持ち込んでより美味しくするにはどうするかといった話が日夜行われるようにもなった。
まあ、アタシというある意味答えの一つを知っているような存在がいなくなって生産部門と調理部門を一人で回すのがかなり難しくなったからだろうけど……これはこれでいい組織の作り方だと思う。やっぱり中の人に合わせて組織は変えていかないとね。
と言っても変わらないものだって確かにある。理事長は相変わらず理事長をやっているし、たづなさんも理事長秘書のまま。名家の人たちは一部代替わりをしたりもしているけどちゃんと続いているし、タマ先輩は自分の持っている株の値段がもはや恐怖の域を通り越して変な悟りを開きつつも旦那さんと一緒に仲良くやっている。アタシがトレセン学園に通っていた頃は少女と言える年齢だった理事長さんは立派な大人になっているし、たづなさんは結婚して二児の母親をやっている。どっちもヒトミミでウマ娘ではないらしいけど、アタシの会社の食材ですくすく元気に成長しているらしい。
……そう、そう言えば子供。子供の話もする必要があるよね。
何から話すか迷うところではあるんだけど、とりあえずは……アタシ、パパになりました。ママじゃなくてパパね? 相手はマーベラス。
なにが起きたか不思議に思うかもしれないけど、アタシが所属している日本神話圏において神様の性別がどっちであれ、そして孕ませる対象の性別がどうであれ妊娠させられるっていうのは神様としての一般的な権能の中に入っててですね。
で、アタシって結構お酒が好きなんですよ。ちゃんと成人するまで飲まないようにしてたんだけど、我慢してた時期が長くてちょっとハメを外しちゃった結果がこれ。みんなはお酒には気をつけようね? いや、ほんとにさ。
流石に責任とか色々脳裏によぎったね。実際責任自体は取るって話になったしアタシもそうするつもりだったんだけど、マーベラスがそれを望まなかったから流れた。結局アタシとマーベラスの関係はなぜか変わらず、ただお互いの間に子供がいる友人関係とかいうちょっと現代日本じゃあなかなか聞くことのない関係に。なんでかなー?
ともかく、アタシの周りではかなり食事がまともになってきている。海の魚はまだ難しいけど川魚なら養殖がうまくいってそれなりに食べられるようになってきたし、食べられる食材も少しずつ増えてきている。アタシの会社を騙ってろくでもないものを売っていたところもあったけど、そういうところはちょっと神罰覿面させてもらった。某聖四文字なら塩の柱になるところだけど、アタシの場合はメシマズ物質の柱になってる。
そういうこともあって一時期酷かった詐欺はなりを潜めた。まあある時期から詐欺を働いてお金を騙し取ろうとした瞬間に実働している人も立案者もその上にいた誰かさんたちもまとめて命のないメシマズ物質の結晶になっちゃったんだから、片端からそうしていけばやらなくなるよね。なおしばらくするとまたやろうとする人は出る模様。
そんなわけで、この絶対に存在にしてはならない世界もすでに過去の話となりかけている。きっとこれからもっと美味しいものが増えていき、ウマ娘もヒトミミもアタシの知る一般的な身長に近づいていくことだろうと思っている。いつになるかはわからないけどね。
まあ、一応神様になったわけだし……いつかアタシが必要なくなる時まではのんびり待たせてもらいますかね。なぁに、長い時間を過ごすのには慣れてるし───
「あなたと一緒なら、きっと退屈はしないから」
『それに関しちゃ同意する』
アタシは昨日と変わらず、朝のコーヒーを飲み干した。
さあ、今日も一日頑張りますかね。
Q.時間飛んだね?
A.飛ばしました。正直、ここから先は時間軸を並べるのが面倒だったので短編集みたいになると思います。
Q.どんなの書く予定?
A.バナハヤヒデさんをビワワで釣ったり、シンボリルドルフの個人的なリンゴ園を建てたり、影薄ガチ陰ぶーちゃんをお肉で釣って三冠取らせたり?
Q.ところで神話間競争ってどうなったの?
A.どういう結果に終わっても問題にしかならないなと思って描写なし。ただし、最新神格ナイスネイチャさんは年一くらいで楽しんでいるそうです。
次の作品は……?
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ヒロアカ寝たいだけ
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ヒロアカ非寝たいだけ
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ブルアカ非寝たいだけ
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ウマ娘旧作
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なんか適当に