憑依者がいく!   作:真夜中

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12話 脅しにいく

「…………………………………………」

 

革命軍にスパイとして忍び込ませているあいつから届いた手紙には標的となっている人物の一覧が載っていた。

 

そこには俺の友人であるボルスの名も記載されていた。

 

「………………」

 

俺は載っていなかったが友人が革命軍の標的にされていると知り……少なからずショックを受けた。

 

命令に粛々と従い任務をこなしてきたボルスが標的にされるのはおかしくはない。

 

個人的には色々と文句を言いたいところだが……これはボルス個人との付き合いがないやつらが作ったものなのでしょうがないとも思う。

 

少なくともボルスは軍人として私情を挟むことなく任務をこなした。

 

そんな当たり前のことをやった結果がこれだ。

 

本人もこれは業だと受け止めるだろう。

 

ボルス以外にもクロメやドクターも標的になっている。

 

ドクターは私兵がクロメは帝具の力によって身を守ることが出来るのでそこまで心配はしてないが……というよりも殺そうとするなら帝具使いが複数いないと無理だ。

 

それこそ……ナイトレイドのような暗殺集団でないとな。

 

「……革命軍の標的となっている腐敗した貴族や文官や商人は俺の方で潰させてもらおう」

 

同時にあいつに革命軍の構成員で陛下へと害意を持っている存在を暗殺してもらう。

 

……無理はせずに確実に1人1人な。

 

それは出来るだけでよい。出来なくても名前さえわかれば……革命軍が動き出したときにそいつを俺が直接狙いに行くだけだ。

 

「陛下の評判を上げるための贄となると同時に大臣側の戦力を減らす絶好の機会だ……こればかりは感謝するぞ革命軍」

 

部下たちだけでは決して集められなかった情報もあるのだからな。

 

まずは……どこから捕縛していくか……。

 

だが……その前にあいつ専用の部下を見繕わなくてはな。

 

こっち側に戻ってきたときは諜報を任せる予定なのだ。

 

そのための準備もしておかなくてはならない。

 

大臣を相手にするのに遠慮なんてのはする必要がない。過剰でちょうどいいぐらいだと俺は思っている。

 

大臣のことだ必ず何か切り札を隠しているはずだ。

 

もっとも……俺はそれを切らせる前に潰すつもりだが、必ず潰せるとは限らない。

 

すべてが思惑通りにいくはずかないからだ。

 

「………………嫌になる行為だがやるしかないか」

 

俺は少しでも動かせる戦力を増やすために……あることを決めた。

 

それは―――記憶を失ったサヨを部下にすることだ。

 

選択肢のほとんどないサヨにとっては断れない話し。

 

ドクターが造る義足ならば生身の足と変わらない動きが出来るはずだ。

 

全身を機械化させたトビーの動きは並の人間を超越している。

 

そのことから俺はドクターが造るサヨの義足は生身の足と変わらない動きを保証すると考えた。

 

「はぁ……」

 

俺は眉間を指でほぐしながら溜め息を吐いた。

 

サヨはドクターのところで義足を本来の手足と同じように使えるように訓練されるとして……だ。

 

その事をドクターに頼まなければならない。

 

ドクター自身なら引き受けてくれるだろう。そして、その場合サヨの面倒を見ることになるのは多分トビーとなるだろう。

 

全身を機械化している彼だからこそ理解できることがあるはずだ。

 

サヨには悪いが職に関しては俺の方で決めさせてもらう。

 

すでにやらせる役割も決まっている。

 

「……本人に話をしておくか」

 

俺はサヨが入院しているドクターの研究所へと向かった。

 

 

 

 

「あら、 いらっしゃい。どうしたの今日は?」

 

「ドクターとサヨに用があってな」

 

ドクターの研究室に着いた俺は出迎えてくれたドクターと話しながら研究所内の通路を進む。

 

「何かしら?」

 

「サヨの義足を戦闘にも耐えうるものにしてほしくてな」

 

「……と言うことはあの娘を部下にするのね」

 

すぐに理解されるか。お陰で話が早く進む。

 

「ああ。記憶喪失になっているから帝都の現状は知らないだろうしな。ならば、俺の部下にして面倒を見た方がいいと思ってな」

 

本当はこんな理由ではないのだが……。

 

「わかったわ。戦闘にも耐えうるじゃなくて戦闘用にするわ」

 

「頼む。ついでに普通に動けるように訓練もつけてくれないか」

 

「それぐらいサービスしておくわ。それじゃあ、早速造り始めるから後は当人同士でお話しててね」

 

ドクターはそう言うとサヨの入院している部屋をスタスタと通り過ぎていった。

 

「……入るぞ」

 

俺は部屋の扉をノックしてからそう言うと、扉を開けて部屋の中へと入った。

 

「……えっと……何か?」

 

義足に慣れるためか立ち上がり歩いていたサヨが困惑した様子で伺ってきた。しかもその声からはあまり覇気をを感じない。

 

「ああ、今後についてな」

 

「私の今後ですか?」

 

「そうだ。普段の生活については俺の知り合いに頼んでいるので問題はないが……職に関しては俺が勝手に決めさせてもらった」

 

「えっ……でも、私は記憶喪失なんですよ? そんな私がお役にたてるんでしょうか……」

 

そう言いつつ俯くサヨに俺は言う。

 

「気にすることはない。わからなければ教えてやる。俺がどんな立場にいるかドクターから聞いているか?」

 

「はい、聞いてます。将軍っていう偉い立場にいる人だと」

 

かなりわかりやすい説明をされているな。

 

色々とはしょられているが全く教えられていないよりはいいか。

 

「そうだ。だから、ある程度融通を利かせることも可能だ。その……職は軍人だ。つまりは……俺の部下として雇うということだ」

 

「それって……大丈夫なんですか?」

 

「問題ない。見た感じ……記憶を失う前のサヨは何かしらの武芸をたしなんでいたはすだ。その証拠に手のひらの皮が厚くなり、マメの潰れた痕すらある」

 

サヨはじっと自分の手のひらを見つめる。

 

「……本当にいいんですか?」

 

「ああ」

 

「……お世話になります」

 

決心がついたのか頭を下げてサヨはそう言った。

 

「まずはドクターのところで問題なく動けるようになるのが先だ」

 

「はい。頑張ります!」

 

急に声に元気が出てきている。何故だ? と疑問に思ったが……1つの仮説が思い立った。

 

それは記憶喪失により何をするべきなのかの目標がなかったから覇気を感じなかったのであって、今はやることが出たので気力が湧いてきたのではないかということだ。

 

「そうか……」

 

俺の都合のいいようにことが運んだのに素直に喜べない。

 

内心で自嘲しながらサヨにこれからのことを軽く説明してから俺は部屋を出た。

 

 

 

 

革命軍の標的が記載されている手紙を見ながら俺は捕縛しやすそうなのをピックアップしていく。

 

ピックアップされたのは近いうちに捕縛する対象になるだろう。

 

ちゃんと何故、革命軍の標的となったのかその理由も記載されていたからだ。

 

「将軍……帝都警備隊の隊長が賄賂を受け取っているとの情報が手に入りましたがどうしますか?」

 

資料を作っていた手を休めて報告してきた部下へと返答する。

 

「裏はとれているか?」

 

「…………いえ」

 

裏がとれていないなら捕まえることは出来ない。

 

「なら早急に裏をとれ。裏がとれ次第捕まえにゆくぞ」

 

「は!」

 

敬礼をすると部下は駆け足で去っていった。

 

俺はそれを見送ると……革命軍の標的になっている大臣の親族であるイヲカルを使って連座制で大臣を処刑出来るかを考える。

 

「……………………無理だな」

 

大臣以外を連座制を用いて排除することは容易いが肝心の大臣は無理だ。陛下の大臣への信頼が大きいのとこれまでの功績がある。

 

今は無理だが……いつか必ず……。

 

そのための準備を怠るわけにはいかない。

 

「…………有効に使わないとな」

 

革命軍の標的となっている貴族や文官、悪徳商人のリストがあるのだから。

 

 

 

 

「お疲れ様です! 」

 

ビシッと敬礼をする帝都警備隊隊員。

 

俺は今、視察と言う名目で帝都警備隊の詰所に来ている。

 

「そちらもな。……帝都の様子は?」

 

「は! スラムの方でスリが数件あったぐらいです」

 

「わかった。隊長は何処へ?」

 

警備隊の詰所には警備隊隊長であるオーガの姿がなかった。

 

「隊長は現在、見回りに出かけております」

 

「……そうか。帝具使いの隊員は?」

 

「セリューでしたら、隊長と同じように見回りに出かけております」

 

「いないか……ならしょうがないか」

 

一応、帝具の性能を見ておきたかったのだが……いないのであればしょうがない。

 

これからやろうとしていることに協力してもらおうと思っていたのだが……。

 

またの機会でいいだろう。

 

今すぐにと言うわけではない。いつ決行するかも未定なのだから。

 

そう焦る必要もない。焦ってそれが原因で足下を掬われるとなった方が問題だ。

 

隙は見せず、相手の隙を突くように動かなくては意味がない。

 

「では……隊長であるオーガが戻ってくるまで待たせてもらおう」

 

俺はそう言うと近くにあった椅子に腰を下ろす。

 

警備隊隊員たちは緊張した様子で事務仕事を始めた。

 

自分たちのことを容易くクビに出来る立場の人間がいるからか張りつめた空気が詰所内に充満する。

 

ピリピリとした空気の中で必死に仕事をする警備隊隊員を眺めるていること数十分。

 

「戻ったぞ……って何だ? このピリピリとした空気は……」

 

詰所の中に入ってきたオーガがピリピリとした空気に驚きつつ、そうなっている原因を探すように中を見渡す。

 

そして、俺と目があった。

 

「し、将軍……ッ!?」

 

驚きに目を向くとすぐに直立すると、敬礼するをオーガ。

 

「少し……話があるのだが、いいか?」

 

「は、はい」

 

 

 

 

警備隊の詰所にある客間に通され、そこで俺とオーガは一対一でテーブルを挟んでソファーに座った。

 

「それで……話とは?」

 

「忠告をしておこうと思ってな」

 

「忠告……ですか」

 

何を言われるのか予想がついているのか冷や汗がオーガの額に浮いている。

 

「……ああ、そうだ。オーガ……お前は革命軍の標的の1人になってるぞ」

 

「……標的に? まさか……」

 

「本当だぞ。……隊長の権限を使って好き放題やっているようじゃないか? 冤罪に賄賂となあ」

 

軽く殺気を込めながらオーガに冷たい視線を向ける。

 

顔を青ざめさせオーガはガタガタとその身体を震わせた。

 

「……今はまだ証拠が揃ってないからお前を捕縛することは出来ないが……な」

 

比嘉の実力差を知りながらもオーガは俺に斬りかかるかそれともおとなしくしているか迷っているように見える。

 

そこで、俺はオーガにあることを言う。

 

「もし、お前が賄賂を渡してきた奴と冤罪の犠牲者、見逃した罪人のリストをこと細かく記した資料を提出するなら可能な限り減刑するがどうする?」

 

「…………………………それは本当か?」

 

うつむき数十秒ほど考え込んでいたオーガがそんなことを言った。

 

「本当だ。ただし……3日で用意出来ないのであれば……どうなるかわかるな」

 

「……わかった」

 

苦虫を噛み潰したような顔をするオーガ。

 

どう転ぼうとオーガはもう殺されるか捕まるかの2択しか残っていない。

 

仮にこの会話をオーガが風潮しても誰も信じない。むしろ、捕まりそうになったからあることないことをでっち上げて評判を落とそうとしているとしか思われないだろう。

 

「ではな、オーガ……ちゃんと仕上げておけよ」

 

俺はソファーから立ち上がりつつそう言うと客間から出ていった。

 

そして、客間の扉を閉めてから少しするとダンッ! と何かを強く叩いた音が聞こえた。おそらく、テーブルに拳を叩きつけたのだろう。

 

俺にぶつけられない怒りが代わりにテーブルにぶつけられたただそれだけのことだ。

 

オーガが真面目で誠実な人間であったならこんなことにはならなかったのだが……それは所詮もしものこと。

 

想像の域を出ないものでしかない。

 

……減刑するとは言ったが確実に減刑してもしなくても結果は変わらないだろうと俺は見ている。

 

革命軍の標的となっていたぐらいだ。かなりの罪状があるはずだ。

 

まあ、これで少しはやることが少なくなった。

 

その分、首斬りザンクやチャンプの捜索に力を注げる。

 

チャンプの件を片付けられればランも政界に行くための力をつけることに集中出来るだろう。

 

すでにチョウリ様という教師を得ているのだから、大臣や革命軍のことが終わり次第……退役だな。

 

そうなったら……ランの代わりになるような副官を探さなければならないか。

 

…………あまり、先のことを考えて目の前のことを見過ごして足を掬われるとなったら目も当てられない。

 

陛下の治める帝国のために清濁併せ飲む必要がある!

 

たとえ、それが原因で……大臣を排斥したあとに帝国での居場所を無くしても。

 

いつの日か報いを受けることになるだろうが……それでも構わない。

 

どのようなことだろうが俺はすでに人を殺しているのだから。戦争だから犯罪者だから、そんなの関係ない。……1度でも人を殺せば最後まで人殺しであることには変わらないのだ。

 

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