ようこそ悪魔がいる教室へ   作:バチこりやりやしょうやぁ

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年末年始は時間があって良いですね。
今回AIに作ってもらった挿絵があります。皆さん各々の脳内イメージが崩れる可能性がありますし、物語に直接関係しないのでスルーしてもらっても大丈夫です。

誤字脱字は後日確認します


2人の明るい未来の為に

 波乱のホームルームを終え、状況の整理を終えた生徒達の中には授業中は端末の電源を切り、心を入れ替える人が多くいた。授業中の私語も格段に減り、渡海が眠らなくなった事でさらに居眠りをする人もいなくなった。

 やはり下から2番目のクラスとはいえ、Aクラスで卒業したい気持ちは皆んな同じらしい。

 

 全ての授業が終わり、放課後の時間が訪れる。この後はいつも猫田と渡海は一緒に下校し、他の生徒も遊びに行く予定を立てるのだが、今日の放課後は一味も二味も違った。

 

「お前ら教室から出るな。話がある」

 

 教室の扉を閉め、教壇に上がる生徒が1人。教室中を一望し、生徒一人一人と目を合わせる。まるで全てを見透かしているような、その人の力量を推し量っているような目だ。無視して教室から出る事はできる。だが彼の突き刺すような鋭い目線がそれを許さない。

 

「俺の名前は龍園翔。今日からお前らをAクラスに導く、このCクラスの王だ。要するに今日からお前らは俺の配下につき、どんな命令にも従ってもらうって事だ。文句があるやつは腕っぷしでかかってこい。いつでも相手してやるよ」

 

 教壇の机に座り、膝を折り、指先を床に向けたその態度は、支配を誇示する玉座の代わりだった。立たずとも見下ろしている。声を荒げずとも、支配している。

 その瞬間、教室は理解する。

 彼は“王になりたい”のではない。

 ────すでに王として振る舞っているのだと。

 突然の龍園の発言に生徒達は皆唖然とする。反論する理由は思いつく。だが、それを口にする未来が見えない。彼の存在そのものが、選択肢を削り取っていくのだ。従うか、孤立するか——その二つしか残されていない。

 仮に反論したとして、その後待っているのは不幸な未来だ。この重苦しい空気感は今朝の渡海を彷彿とさせる。

 

 しかしこれからのクラス間競争にリーダーが必要な事は生徒達も薄々感じていた。しかしこのような独裁的なやり方をするリーダーに従いたいと心から思える人間はこのクラスにはいないようだ。

 そんな中、1人の男子生徒が反撃の狼煙をあげる。

 

「おい待てよ。龍園とかいったよな?」

 

「あぁ。誰だお前」

 

「俺は石崎大地。俺はテメェみてぇな勘違い野郎が一番ムカつくんだよ。この俺にテメェごときが指図すんじゃねぇ。殺すぞ?」

 

 髪を緑に染めたヤンキーが龍園に勝負を挑んだ。彼の名前は石崎大地。猫田の分析によるとクラス内では怒らせてはいけない人として扱われている。何故なら彼は元ヤンで、自称ではあるが地元では一番の実力者だったらしい。彼は地元では人を従わせる側の人間だったからか、龍園のやり方にご立腹のようだ。

 

「ククッ、少しは威勢の良い雑魚がいるみてぇだな。こいよ石崎。一発だけ受けてやるからお前の力を俺に示してみろ」

 

「舐めやがって……後悔してもしらねぇぞ」

 

 石崎はそう言いながら拳を握りしめ、龍園に近づく。龍園も机から降りて教壇で石崎の拳を待つ。何の抵抗もない、相手の攻撃を受ける気満々な様子だ。その龍園の余裕っぷりと石崎の怒りっぷりを見た渡海は呆れてため息を吐いた。

 

「後悔?ククッ、残念だが俺の頭の辞書にそんな言葉は存在しねぇな」

 

「死ね龍園!!」

 

 石崎は一気に距離を詰めて龍園の腹に渾身の一発を叩き込んだ。パコンッと軽い音が教室に響く。一般人が受けたら痛そうな勢いのパンチだったが、龍園相手には全く効いていない様子だ。

 石崎のパンチを受けた龍園はまた不適な笑みを浮かべ、石崎を鋭い目で睨みつける。

 

「なっ……!き、効いて……ねぇのか!?」

 

「拍子抜けだなぁ石崎。テメェごときのパンチでこの俺が苦しむとでも思ったのか?それと一つ教えてやるよ。本当に人をぶっ倒してぇ時は、顔がぐちゃぐちゃになるまで殴るんだよ!」

 

 龍園はそう言って石崎の顔面に強烈な右フックをお見舞いした。一切手加減のない、かつ身構える隙も与えない打撃を喰らった石崎は勢いのあまり身体ごとぶっ飛ばされ、周囲の机にもたれかかるように倒れた。

 

「…………っ!?」

 

「弱いな、石崎。本当に威勢だけ良い雑魚だったな」

 

「…………っクソッ!調子……乗るな!」

 

 立ち上がろうとする石崎に追撃のキックを喰らわす龍園。腹部にしっかり入ったキックは石崎の呼吸を難しくさせる。

 

「……カッ……」

 

キャァァァ!!

 

 この惨状を見て1人の女子生徒が悲鳴を上げる。おそらく暴力の現場などを見た事がない人だったのだろう。龍園はその悲鳴を特に沈める事なく、ただ声も出せずに倒れている石崎を見下ろしていた。

 

「人を従わせるのに最適な感情は恐怖だ。恐怖を植え付ける事で主従関係は明確に示される。石崎、まだ俺に逆らう気があるか?」

 

「…………俺……は……」

 

 ハッキリと反論しない石崎。先程までの反骨精神は何処へやらといった様子だが、無理もない。目の前に自身を圧倒する存在がいると人間は本能的に何も出来なくなってしまう生き物だからだ。今朝の渡海と、渡海を非難した男子生徒も似たような構図ができていた。

 

「俺……」

 

「なんだ?」

 

「俺…………従い……ます。すみません……でした」

 

「よく言えたな。歓迎するぜ」

 

 龍園はそう言いながら最後の一発と言わんばかりに何も出来ない無抵抗な石崎の顔面を蹴り上げた。理不尽な一発だと思われるかもしれないが、これは主従関係をより明白なモノにするために必要な一発だ。

 渡海はそう解釈したが、降参した相手に追撃を喰らわす事を許さない生徒が1人、また龍園の前に立ちはだかる。

 

「hey」

 

「あ?」

 

「Don't insult us!!」

 

「────な」

 

 アジア人離れした容姿の男子生徒が自慢の剛腕から放った左フックは龍園の腹部を的確に捉え、龍園の身体ごと教室の壁際までぶっ飛ばした。

 

「──ガッッ!っ!?」

 

「We are friends. Fighting is not good.You know?」

 

「テ……メェ……」

 

 日本人でも伝わりやすい英語で話してくれるこの巨漢の男は山田アルベルト。猫田の分析によると見た目とは裏腹に優しい性格を持っている生徒で、黒人にサングラスに巨漢という、見た目自体が人種差別のようにも見えてしまう人だ。そんな優しい彼が人に拳を振るうとは誰も予想がつかなかったのか、教室は沈黙に包まれる。

 しかし龍園が立ち上がれない様子を見た渡海は鞄を背負い直し、猫田に声をかける。

 

「帰るぞ」

 

「え、いいんですか?」

 

「もう勝負はついたろ。明日からが本番といったところだしな」

 

「……?」

 

 渡海の台詞に珍しく理解が追いつかない猫田だが、そんな彼女を待たずに教室から出る渡海を追いかけて、2人は教室から出て行った。その後2人が去った教室から山田アルベルトを讃える声が聞こえてきたが、どうでも良い話だ。

 

 

 

◇◾︎●◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◾︎●◇

 

 

 

 帰り道、猫田は先程の渡海の台詞について言及する。

 

「渡海くん、明日から本番とはどういう意味ですか?」

 

「そのままの意味だ。あの場で龍園は山田に負けた。それは間違いない。だがあのまま龍園が負けて終わるとは到底思えない」

 

「そうなんですか……?」

 

 猫田には龍園が完敗したように見えたので、渡海の言う事にまだ納得がいかない様子だ。しかし渡海の表情を見ると珍しく口角が上がっていて、龍園という男が渡海の中で大きな存在として捉えられているのが分かり、猫田も理由は分からないが龍園という男が普通ではない事が分かった。

 

「猫、今日は俺の部屋にこい」

 

「え、何かあるんですか?」

 

「話がある」

 

 突然の渡海の誘いにシリアスな思考回路など忘れ、意気揚々としてしまう猫田。渡海の前ではそういった感情は極力見せないようにしていたが、部屋に誘われるとどうしても嬉しい感情が隠しきれなくなってしまう。まるでお気に入りのおやつを与えられると分かった時の猫のようだ。

 

 その後渡海の部屋の前までやってきた猫田は渡海が鍵を開けている最中に端末を取り出し、内カメにして自身の容姿を最終チェックする。爆速でチェックを終え、渡海に緊張しているのがバレないよういつもの表情をキープしたまま部屋へと足を踏み入れた。

 

「お邪魔します……」

 

「適当なところ座って」

 

「はい」

 

 部屋の内装は健全な男子高校生の部屋とはかけ離れており、机の上には医療に関する参考書や論文が並べられていて、生活の場というよりむしろ書斎に近いようなインテリアが揃っていた。適当なところ、と言われればベッドの上か座布団が置かれている地べたのどちらかだが、猫田はこういう時欲が出てしまう女である。緊張しつつも暑いのでブレザーを脱ぎ畳み、迷わずベッドの上に腰を下ろした。

 

「相変わらず勉強熱心ですね」

 

「お前も学びたい事があったら俺の部屋にこい。家から持ってきた分含めて、心臓外科系は大体置いてあるから」

 

「ありがとうございます。それにしても……」

 

 高校生離れした医学に溢れる部屋にも注目はいくが、その中でも一際目立っていたモノがある。

 それは心臓の修理で扱う技術の練習、外科結びの跡だ。部屋の壁一面に満遍なく連なっている練習の跡は渡海の努力家な一面をよく表している。

 

「実家でもそうでしたが、相変わらず夥しい数の外科結びですね」

 

「腕のない医者は死んだほうがいいからな」

 

 渡海はそう言いながら2人分のお茶を机の上に置く。座布団の上に座り、お茶を飲んでいると猫田も立場を弁えるかのようにベッドの上から降りて座布団の上に座った。

 

「それで、お話というのは?」

 

「あー、お前何で龍園にポイント渡してるんだよ」

 

「あ」

 

 いつも寝ていて微塵も興味を持っていないと思われたが、実は内心気にかけてくれていた事に喜びを隠せない猫田。思わず口角が上がってしまう。

 

「…………何で笑ってんの?」

 

「い、いえ何でもありません。気づいてたんですね」

 

「流石にな。で、何で?」

 

「実は────」

 

 猫田は渡海に龍園から持ちかけられた契約の内容を話した。

 

「────という事なんです」

 

「なるほどな。で、お前今残高いくつだよ」

 

「35,000ポイントほどです」

 

「…………そうか」

 

 猫田なりに節約しながらポイントを使っているが、近頃の女性は私生活を過ごすだけでもお金がかかる。すでに龍園達に56,000ポイントほど搾取されているため、猫田もこの生活が続く事はもちろん望んでいない。

 

「何故俺に言わなかった?」

 

「渡海くんの迷惑になりたくなかったので」

 

「迷惑?何で」

 

「心臓外科医になるために努力してる渡海くんに余計なストレスを与えるのは……どうかと思ってました」

 

「嘘だな」

 

「………………」

 

 猫田は俯き悲しそうな表情で淡々と質問に答えていたが、渡海から突然言われた"嘘"というワードに動揺する。思わず渡海の表情を見てみるが、彼の表情は一切変わっていない。いつも通り冷酷で、相手の事をどこまでも見透かしているような目だ。

 

「猫、嘘つくの下手だな」

 

「嘘?今話した事は全て本当の事です」

 

「あぁ知ってるよ。本当の事を話している事くらい俺も分かる。だがお前のような人間が、そんな単純な契約を考え無しに交わすわけないんだよ」

 

「………………」

 

「────猫、お前はどこまで気づいていた?この学校のシステムに」

 

 先程から悲しい表情を続けていた猫田だが、渡海からハッキリとそう言われたので、いつも通りの無表情に戻し、渡海の目を見てハッキリと言う。

 

「私は嘘をついていませんよ渡海くん。私はあなたより賢くありません。あなたの方がずっと先の未来を見据えている」

 

「………………」

 

「渡海くんの言う通り、龍園君の提案は確かに単純でくだらないモノでした。だからこそ、私はいつも通り渡海くんの事を想って利用させていただこうと思ったんです」

 

「利用……?」

 

「はいっ」

 

 猫田は包み隠さず話す覚悟ができたのか、気の抜けた笑顔で渡海に言った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「この学校には至る所に監視カメラがあって、ポイントで買えるモノも充実してます。無料品コーナー、学食堂にいる生徒たちの食べているもの、それが分かりやすくグループごとに食べている物の値段が分かれていること、それらでポイントの変動については察しがついてました」

 

 そして猫田は打ち明けた。A〜Dクラスを観察し、明らかにレベル分けでクラス分けが行われていると分かった事、初日のSシステムの説明で、ポイントで買えないモノはない、事の本当の意味を理解していた事。

 

「龍園君から提案を受けた時、私は敢えてその提案に乗ろうと思いました。ポイントを搾取され続ければ真鍋さんの欲も相まって虐めのレベルは上がっていきます。そうなれば渡海くんも私の事を気にかけるようになりますよね」

 

「まぁ多少な」

 

「過度な虐めに発展したその時、渡海くんは私を助けてくれると思いました。そしてただ助けるだけで終わらないのが渡海くんです。その後ポイントをきっちり返してもらって、その上渡海くんなら1000万以上のポイントを要求するだろうなと考えました。ポイントで買えないモノはない。もしかしたら進学先での待遇処置なども買えるのではないかなと思うと、やはり虐めに乗っかって渡海くんに助けてもらうのが最善の策だと思ったんです」

 

 猫田は笑顔で淡々と語る。まるで自分の胸の内を全て晒してもどうでもいいと思っていそうなほどに正直に語り続ける。その様子を渡海は無表情で見ていた。

 

「全ては渡海くんに助けてもらう為、助けてもらった後、私たちが望む未来が手に入るなら、酷い扱いを受けても私は構わないと考えました。単純な話ですよ」

 

「そうだな。確かに単純な話だ。要するに、虐めに乗っかれば俺がお前を助けて、ついでにポイントも多く獲得して約束された未来も買えると思ったんだな」

 

「そうです」

 

「まぁ実際のところマジで買えるらしいが」

 

 Aクラスでの卒業が条件という就職、進学率100%の特権は坂上先生の口ぶりからして購入可能のようだ。

 

「もう全部言っちゃったので、渡海くんは私の事を助けようなんて思えませんよね。自分から悲劇のヒロインになりに行って相手を陥れようとした人の事なんて、助けたくありませんよね」

 

「それは違うぞ猫」

 

「え?」

 

 渡海は立ち上がってそう言った。そのまま机に向かう椅子に座り、昨晩自分で練習していた外科結びの跡を手に取りながら言う。

 

「確かに俺は今腹が立ってる」

 

「…………そうなんですか」

 

「計画だったとはいえ、お前がポイントを搾取されていたのは事実だ。それに、この調子だと龍園か山田がこのクラスのリーダーになって、仕舞いにはAクラスに上がらないまま卒業するだろうな」

 

「…………まさか渡海くん」

 

 渡海は壁にかけてある外科結びの跡を見る。自身が重ねてきた努力の証、それは決して医者としての能力だけではない。父を失った時に感じた、喪失感。それを二度と経験しないため大切な人を守る力にも焦点を当ててきた。

 

「龍園と山田を潰す。猫は黙ってみてろ」

 

「────はいっ」

 

今朝本気を出すと誓った渡海だが、ここまで真剣な表情の渡海は中々見れない。猫田は彼がこれから成す事への期待に胸を膨らませ、笑顔で返事をした。

 

 

 

 

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