ボッチの俺が、個人VTuberとして地味に活動していたらいつのまにか人気になっていた~とある変態リスナー(義妹)が推し(俺)と付き合うまでの話~   作:わんた

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陽葵の襲撃

 授業開始まで監視していたけど下駄箱に近づく不審者はいなかった。

 

 明日には双眼鏡が来るみたいなので放課後は二階から覗いて監視しようと思ったけど、今は少し悩んでいる。普通に監視するより不審者に見えるかもしれないからだ。覗き野郎として噂が広がるかもしれない。

 

 そういったリスクを気にするのであれば、いつまで続くかわからないけど陽葵さんと一緒に監視業務をするべきだろうか。

 

 うーん。難しい。舞依さんのことで悩んでしまい、授業が始まっても内容が頭に入ってこない。

 

 淡々と時間だけが消費されていく。

 

 気がつけばチャイムが鳴っていた。

 

 休憩時間だ。次の授業が始まるまで少しだけ間があるので、軽く寝ようかと思っていたら教室の外が騒がしくなった。

 

 気になったので声がする方を向くと陽葵さんがいる。彼女は別のクラスなのだから、ここにいてよい存在ではない。嫌な予感が、って思っていたら俺の姿を見て笑顔になると手を振ってきた。

 

「ようやく見つけた! 優希くん~! ちょっとこれる?」

「っっっ!?」

 

 人目が付くところで、カースト上位の女性に呼び出されるボッチの気持ちを察して欲しい。

 

 他人の視線が集中して気まずい。汗がダラダラと垂れ流れて心臓がバクバクと鼓動している。

 

 緊張して動けないでいると陽葵さんが教室に侵入してきた。

 

 迷いなく真っ直ぐ俺の所へ向かってくると、机に手を置く。

 

「ねぇ。無視は酷いんじゃない?」

「俺に用事があると思わなかった」

 

 声を変えつつ真っ当な返事をしたつもりだったのだが、陽葵さんはさらに機嫌が悪くなる。

 

「へー。昨日はずっと一緒にいたのにそんなこと言うんだ~」

「ちょっと! それは!」

 

 誤解を生む! もっと周囲を見てくれ!

 

 クラスメイトたちがザワついているじゃないか!

 

「なにあれ。付き合ってるの?」

「まさか。ありえないでしょ」

「パシリとして使われているだけじゃないか?」

 

 俺の評価が低いのはいいけど、聞こえるほどのボリュームで言わないで欲しい。陽葵さんも声は届いているはずなんだけど、何もなかったかのように話を続けてくる。これが陽キャのスルー力かっ!

 

「そんな冷たいこと言うなら舞依――」

「わかった! ちょっと別で話そう」

 

 その名前を出されたら困る! もう周囲の目を気にしてなんていられない!

 

 勢いよく立ち上がると陽葵さんの腕を掴んで引っ張っていく。

 

「ちょ、ちょっと!?」

「うるさい。黙って」

「え、うん」

 

 強めの口調で言ったら素直に従ってくれた。

 下を向いてトボトボと歩いてくる。

 

 教室はさらに大きな騒ぎになったけど、フォローのしようがないので無視する。

 

 あとでクラスメイトに何か言われても無視しよう。

 

 

 

 廊下を歩いて、いつもランチを食べている空き教室に入ると陽葵さんから手を離した。

 

 数歩離れてから振り返って彼女を見る。

 

 下を向いたまま顔を赤くさせていた。

 

「結構……強引なんだね」

「そうさせたのは陽葵さんが原因だ」

 

 教室に入ってこなければ、こんなコトしなくて済んだんだぞ。

 

 もう少し自分の影響力というのを理解して行動して欲しい。

 

 言葉の裏にそう言った苦情を含めていたんだけど伝わっただろうか。

 

「そっか、私だから、だったんだね」

「ん? 当然だけど」

 

 何を言ってるんだ。先ほどの俺を動かす原因は陽葵さんしかいないのに。こんなことで短い休憩時間を終わらせてはいけない。

 

 さっさと話を聞きそう。

 

「それで何の用?」

「え、うん。そうだった! 監視のお仕事だけど今日も一緒、でいいよね?」

「迷惑じゃなければ」

「全然、迷惑じゃないよ! むしろお願いしたいというか……」

 

 なぜか最後の方は声が小さくなっていた。

 

 話すようになって二日目だけど、なんだか彼女らしくないと感じる。もっと勢いがある性格じゃなかったのかな。

 

「それじゃ放課後もお願いするよ。それじゃ」

 

 チャイムが鳴りそうだったので空き教室を出ようとすると、俺の前に立たれて邪魔された。

 

「どいてくれない?」

 

 返事の代わりに陽葵さんはスマホの画面を見せてくれた。画面にはQRコードが表示されている。

 

「私の連絡先。待ち合わせの時間とか調整したいから交換しよっ」

 

 舞依さんに続いて陽葵さんからもお願いされた。モテ期が来たわけじゃないのは理解しているけど、ちょっとだけ嬉しい。

 

 これから一緒に下駄箱を監視するのであれば、連絡先を交換する意味はある。連携は取れやすくなるだろう。

 

「いいよ」

 

 ポケットからスマホを取り出して連絡先を登録すると、陽葵さんの顔がアップになったアイコンが追加された。

 

 どんだけ自分が好きなんだよ。

 

『これからも、よろしくね~』

 

 陽葵さんから確認用のメッセージが来たので、OKと書かれたスタンプを送って会話を終了させた。

 

「それじゃ、また」

 

 空き教室をでて一人で廊下を歩く。しばらくしてチャイムが鳴ったので、小走りで自分のクラスに戻って席に座ると、俺をチラチラと見る人が多いことに気づいた。

 

 陽葵さんについて聞きたいのだろうけど、説明したら舞依さんのことまで言わなければならないため、黙秘するつもりだ。知りたければ本人に聞け。

 

 そんなことできれば、だけどな。

 

 カースト上位でさらに別クラスの異性に話しかけられる男なんて、それこそ同じぐらいの人気者しかいないのだ。

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