ボッチの俺が、個人VTuberとして地味に活動していたらいつのまにか人気になっていた~とある変態リスナー(義妹)が推し(俺)と付き合うまでの話~   作:わんた

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次のコラボ相手

 最後のコラボ配信以降、メーベルさんの炎上は終焉に向かった。

 

 数日経った今は誰も話題にしていない。他にも炎上ネタなんて沢山あるから、そっちの方に飛びついているのだろう。

 

 鬱屈とした気持ちをわすれるぐらい楽しめるなら相手は誰でもいい。

 

 結局、そういうことなんだろうなと思う。

 

 メーベルさんとはたまに裏で通話するぐらいの仲にはなっていて、隠れ視聴者だった女性VTuberたちとも交流が始まっている。同接数は相変わらず二桁前半だけど順調に交流の輪は広がっていて、新しいコラボ配信の企画も進んでいて大きな一歩を踏み出せているという実感があった。

 

 配信活動は順風満帆だ。

 

 これでリアルもよければ何も言うことはないんだけど、どうやら世の中はバランスを取るように出来ているらしい。

 

 俺は陽葵さんに体育館裏へ呼び出されてしまった。

 

 

「話がしたいってことだけど……何を知りたいの?」

 

 スマホを片手に持って俺を見ている陽葵さんに聞いた。

 

 告白される雰囲気ではなさそうなので内緒話でもしたいんだろうとは予想している。

 

「ダラダラと前置きを言うのは嫌いだからストレートに聞くよ」

「……うん」

 

 好意的ではない言い方をされて心臓がバクバクしている。

 緊張していていうまく呼吸ができない。

 

「優希くんって銀河聖夜でしょ」

 

 確信しているようで迷いは一切感じない。

 

 言い逃れは難しそうだけど、だからと言ってすぐに白状するつもりはなかった。

 

「どうしてそう思うの?」

「その声だよ。配信とはだいぶ違うけど、聞いたらわかるんだよね」

 

 俺の声変技術はナレーターをしている父親から直接教わった。素人が見分けられるほど甘いものじゃない。

 

 他にも何か確信するような情報があって聖夜との繋がりに気づいたはず。

 

「それはすごい言いがかりだね。似ている声なんて世の中に溢れているよ」

「まーそう答えるよね。やっぱり認めてくれないかぁ」

 

 陽葵は持っていたスマホの画面を俺に見せてくる。

 

 メーベルさんとのコラボ配信の動画だった。

 

 再生ボタンがタップされると地声ではなく、学校で出している方の声が聞こえてくる。

 

「私は音楽をやっててさー。音の編集が得意なんだよね。少し調整しただけで本人と同じ声になったんだよね」

「そんなことすれば、誰だって俺の声になるよ」

「しゃべり方や歌のクセも同じだけど?」

「だから何って感じ」

「ふーん。まだ認めないんだ」

 

 当然だ。VTuberにとって身バレは避けなければいけない。

 

 決定的な証拠が出ているわけじゃないのに、はいそうですなんて言えないのだ。

 

「ねぇ。スマホ見せて」

「やだ」

「ロック画面だけで良いからさ」

「断るよ。何かするつもりでしょ」

「バレたか~。仕方がないなぁ」

 

 陽葵さんは、またスマホを操作してから耳につける。

 

「誰と話す――」

 

 ポケットから俺のスマホが震えた。

 

 取り出してみると画面に、今度コラボをするニューイさんの名前が表示されている。

 

 視線を陽葵さんに戻す。

 

 満面の笑顔だった。

 

「もしかして陽葵さんがニューイさん?」

「妹がね。アカウントは問題が起きないように家族間で共有しているんだ」

 

 終わった。誤魔化しようがない。

 

 顔を上げて空を見る。分厚い雲に覆われていて俺の気持ちを表現しているようだった。

 

「通話にでてよ」

「やめておく」

 

 終了ボタンを押して通話を拒否してから、陽葵さんを見る。

 

「なんで気づいたの?」

 

 地声は特徴的だから、普段は個性を消している。音楽編集が得意だからって理由じゃ納得いかない。

 

 最初に感じた通り、他に何か決定的な証拠があったはずなんだ。

 

「この前、舞依と三人でお店は入ったでしょ?」

 

 メーベルさんが炎上した日のことだ。

 

 もう一週間以上前の話だけど今も鮮明に覚えている。

 

「私がトイレに行ったとき、優希くんがスマホを操作しててSNSのアカウントが見えたんだよね」

 

 あの時かっ!!

 

 アイコンかアカウント名を見られたのかもしれない。

 

 だからこれほどの確信をもっていたのか。ようやく納得できたのと同時に自分の愚かさを呪いたくなる。

 

 俺の不注意によるものだから、陽葵さんを責める気にもならない。

 

「俺が聖夜だとわかってどうしたいの?」

「妹のコラボ相手が本当に優希くんだったのか最終確認したかっただけだよ。言いふらすことはしないから安心して」

「ニューイさんが近づいたのは陽葵さんの命令じゃないんだ」

「私はそこまで嫌な女じゃないって! ずっと前から妹が聖夜くんを気に入ってたから知っていただけだよ。他意はないんだから」

 

 もしかしたら陽葵さんが嘘を言っている可能性はあるけど、今までニューイさんとやりとりした内容を振り返ると違和感はなかった。

 

 なぜならニューイさんは、メーベルさんとコラボ配信すると言ったときに「気をつけてね」って注意してくれた方だから。

 

「他にも舞依が優希くんのことを気に入っているっぽいから、私は友達として接しているけど異性としては興味ないよ、ってちゃんと話し合ったし、意外と義理堅いんだよ」

 

 三回目のコラボ配信の内容を決めているとき、陽葵さんから『舞依としっかりと話し合ったから安心して。今度は二人っきりで、もう少し深い会話がしたいな』といったテキストがきた。無視して返信しなかったけど、深い話しってことは、今回のことだったんだ。ようやく繋がった。

 

「ま、今後はわからないけどね!」

 

 バシッと肩を叩かれてしまった。義理堅い女はどこに行ったんだよ!

 

「それでいいの?」

「友情が愛情に変わることなんて珍しくないよ。気にしたら生きていけないって!」

 

 これが経験人数豊富な女性の考え方なのか?

 理解できないけど、そう言った人なんだなと割り切ることにした。

 

「舞依さんは俺に気があるわけじゃなく、優しいだけだから。その点だけ勘違いしないように」

 

 家族だからとは言えないので、言い訳を口にしながら肩に乗っていた手を外す。

 

「そうかもしれないし、違うかもしれない。さっきも言ったけど人の心なんてコロコロ変わるものだよ。今がそうだからって未来も同じだってことにはならない」

 

 少し影のある言い方だったので気になったけど、すぐに陽葵さんは元に戻る。

 

「ってことで、よろしく~~!」

 

 笑顔を向けて一度だけ手を振ってから去って行く。

 

 彼女は出会ってからずっと振り回されっぱなしだったけど、それはそれで楽しいなと感じている自分もいる。

 

 舞依さんとの新生活も刺激的だし、高校生活はリアルも忙しくなりそうだ。




完結となります。
不慣れな現実恋愛を最後まで読んでもらい感謝しております。
ありがとうございました。
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