殺人現場より、愛をこめて   作:トリスメギストス3世

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122:文化祭⑭

 そんなわけで、ミスコンの様子を見に行くことにした。

 緑谷出久は隣を歩く霊火を上から下まで眺めて首を傾げる。

 

「出たら優勝できたと思うけどな……」

 

「出久くんって意外と私のこと好きだよね」

 

 真顔の霊火だが口の端には嬉しさを隠しきれていない。

 少女は長い髪を後ろへ流して半眼で少年を見上げた。

 

「でも拳藤一佳もチャレンジャーだよね。私なら波動先輩が出るミスコンとか回避安定だけれど」

 

「物間くんの言い方だと、拳藤さんも本人が出たいわけじゃない感じじゃない?」

 

「実際はどうだか。ミスコンでしょ? 物間の話をそのまま信じるのもなあ……」

 

 何ごとも斜めに見がちな霊火は呆れ顔だ。

 

「大体、クラスメイトが勝手にエントリーするとかあり得なくない?」

 

「え、どういうこと?」

 

「あのさあ、本当に本人の署名や同意なしにミスコンのエントリーが進んだらマズくない?」

 

 緑谷は顎に手を当て、しばらく考え込む。

 そして肖像権や個人情報保護といった問題に思い至ったのだろう。納得したように頷いた。

 

「それはそう。大問題だね」

 

「下手したら保護者のサインが必要なんじゃないかな文化祭のミスコン……」

 

 人権意識が低い遥か昔は、ミスコンやらアイドルのオーディションに本人も知らぬまま友人や親戚が勝手に応募することが本当にあったらしい。

 霊火としては信じられない価値観だ。普通にやられた側は嫌じゃないのかそれ。

 

 少女はピンと人差し指を立てる。

 

「たぶんキッカケは物間なんだろうけど、結局写真を用意して書類を書くのは拳藤じゃん。本人も絶対に『やってみたい』とは思っているはずだよ?」

 

「言われてみれば……。でも、ならどうして物間くんは『自分が勝手に拳藤さんのエントリーを出した』って言ったんだろう?」

 

「気遣いでしょ。そもそもミスコンなんて『友達に無理矢理出された』体で出場するものだし」

 

 少女は指先で軽く空をなぞりながら続ける。

 霊火も仮にミスコンに出るならば、自薦じゃなくてA組の誰かが勝手にエントリーしたことにするだろう。

 

「まあ建前みたいなものかなあ……。『自薦で野心満々の美人』より、『他薦で無自覚な美人』の方が世間的な印象がいいのは分かる?」

 

「あ、あー……。なるほど、そういうことね」

 

「そういうことよ。ミスコンに勝つという目的なら戦略的にどうしても『他薦』一択。あと落選した時に自薦だと余計に悲しいからね……」

 

 霊火はここで物間に話を戻す。

 

「ま、物間は『自分勝手にミスコンにクラスメイトをねじ込んだ身勝手な男子生徒』って汚れ役をわざと引き受けてるわけよ」

 

「あー……凄いね物間くん。それで拳藤さんを陰から応援しているわけか」

 

「拳藤の性格を考えると彼が勝手にやってるだけだとは思うけど、実際に助かってはいるはず。なんだかんだで仲間思いなんだろうなアイツ……」

 

 適当に会話を続けているうちに、いつの間にか目的地に辿り着いていた。

 ミスコンの準備室。いつもは備品室らしい教室に霊火はノックをして入室する。

 

「お邪魔しまーす」

 

「し、失礼しまーす……」

 

 教室一つ分ほどの広さの室内。

 使われなくなった長机や折り畳み椅子が壁沿いに積まれ、脚立や延長コードやスポットライトのケースが雑然と並んでいる。

 部屋の片隅にはハンガーラックが置かれ、カバーのかかったドレスや衣装が大量に吊るされていた。

 

「あ!! 殻木さんだ!!」

 

「え、『フロイライン』!?!? ねじれあの子と知り合いなの!?!?」

 

「そうだよ有弓!! あの子すっごく強いんだよ!!」

 

 どうやら拳藤は不在のようだった。

 波動ねじれとその友達らしい3年生の注目が入室した霊火たちに向く。

 

 霊火は緑谷にこっそり耳打ちした。

 

「アレは多分ガチの他薦」

 

「僕もそう思う……」

 

「あのベリーショートの先輩があの手この手で波動先輩をエントリーさせたんだろうな……」

 

 美しすぎて近寄りがたい天然美人と、コミュ力抜群の同性のお付きという典型的なコンビだ。

 正直これだけで霊火にとってはまあまあ警戒対象でもある。なにしろこれまでの女子社会においてこの手の属性持ちと上手くいった試しがないからだ。

 

 霊火は一瞬で猫かぶりモードに切り替えてにっこり笑顔で対応する。

 

「わーお久しぶりです波動先輩!! すっごく綺麗ですね!!」

 

「でしょうねえ聞いて殻木さん!! 有弓がね、もう3時間も衣装を選び続けてるの!!」

 

「そりゃご愁傷様です……」

 

 ガチ同情が出てしまった。

 そんな波動ねじれの衣装は、ホルターネックに深めのVネックが特徴の変則的なフィッシュテールドレスだ。

 実は足の付け根近くまでカットされたミニスカートでもあり、それが目線以上の高さでふわりと浮いているため緑谷が完全に目のやり場に困っている。

 というか無防備すぎていろんな意味で大変危うい。霊火は早くもこの部屋に来たことを後悔し始めていた。

 

 波動ねじれはふよふよとこちらに飛んできて霊火を上から眺めた。

 

「ん~……殻木さんも着てみる? あと霊火ちゃんって呼んでいい?」

 

「霊火ちゃん呼びでも構いませんけれどドレスは遠慮しておきます」

 

「そっか、霊火ちゃんだとブカブカになっちゃうもんね!!!! もっと小さなサイズじゃないと!!!」

 

「ん……あ~……。ん〜……?」

 

 何の予備動作も無しに霊火の背後の空間が真っ黒に裂けた。

 そこからゴツイ灰皿を持った"霧の大腕"がぬらりと出現し、緑谷が慌てて実行者に飛びつく羽目になる。

 

「ねえどう思う出久くん? これもしかして喧嘩売られてる?」

 

「霊火さん!! 大丈夫!! 波動先輩も悪口を言ったつもりはないと思うよ!!!!」

 

「そう? ならいいけれど」

 

 あっさりと真っ黒な裂け目が閉じ、殺意の腕は綺麗に霧散した。

 特に抵抗することもなく緑谷に後ろから抱き抱えられる小動物霊火に、波動ねじれのお付きっぽいベリーショートの先輩が申し訳なさそうに声を掛けてくる。

 

「ごめんね一年生。ねじれのアレは本当に天然なの」

 

「天然でも言っていいことと悪いことがあると思うんですけれど……」

 

「マジでごめん。私が謝る。そりゃ怒ってもおかしくないけど悪意はないの」

 

 ちなみに肝心の波動ねじれは目を見開いたまま硬直していた。

 ……おそらく彼女は悪意のない発言で人間関係を壊してきたタイプの人間だ。なんかのトラウマでも踏んだかもしれない。

 

「すまない殻木さん!! 波動さんは少し……こう……悪意は無いんだ……そういう配慮に欠けたところが……」

 

 天喰環まで加勢してきた。

 彼は先ほどまで壁際で気配を消していたが、トラブルの発生とともに飛び出してきた形だ。

 とはいえ彼は彼で波動ねじれ全肯定サイドの一人らしい。霊火が攻撃の予備動作を見せた瞬間に、一瞬だけ霊火を排除しようとしていたぐらいだし。

 

 霊火は緑谷に背後から抱えられたまま、頬を膨らませてパタパタと足を動かした。

 

「まあ天然ならいいとします。お騒がせして大変失礼しました」

 

「いやいやいやごめんね殻木さん。分かってくれてありがとう本当に」

 

「あと出久くんは私を降ろしてくれない? ちょっと恥ずかしいんだけど」

 

 緑谷は慌てて霊火を解放した。

 嘘のように矛を収め、完全にいつものテンションに戻ってしまった霊火はきょとんと首を傾げて聞く。

 

「で、今は衣装決めなんですか?」

 

「あ!!!! えっと……えっと殻木さんだよね? 殻木さんはねじれにどんな衣装が合うと思う? セクシー系? 可愛い系?」

 

 ショートカット先輩は何事もなかったかのように元の話題に乗ってきた。

 ド天然美人先輩と違ってこちらは空気読みの才能がある。霊火が出した誘導に綺麗に乗ってきた。

 

「波導先輩は可愛い系のほうが無難じゃないですか? セクシー系の衣装って胸とか脚だけを"見られる"ことなく全身で"魅せる"技術が必須でしょう? 何かと厳密な計算と結構な慣れありきで難しい路線だと思いますけれど、あの天然先輩にその辺の小技はあるので?」

 

「だよね!!!! ねじれは可愛い系だよね!!!!」

 

「あ、これアドバイスじゃなくて同意を求められてるだけのやつだ」

 

 このショートカットの先輩、こちらの意見などなんにも求めていなかった。

 とにかく可愛い系でねじれを着飾らせて行きたいらしい。その方針は霊火も賛成なのだがここで問題が一つ。

 

「でも波動先輩、去年は可愛い系で準グランプリなんですよね? 確かサポート科の―――」

 

「絢爛埼……!!! 派手さだけで―――」

 

「おお怖。落ち着いて先輩」

 

 とんでもない事を口走りかけた先輩の脇腹を親指で押して発言をキャンセルしながら、小柄な少女はジト目で続ける。

 

 この手のプロデュースは得意だ。

 ミスコンに勝ちたいというなら相応の努力や方針が必要。好みに殉じて負けるのも悪くは無いのかもしれないが、霊火はそれを良しとしない。

 

 やるからには勝ちたい。

 応援するなら全力で。

 殻木霊火の基本的な生真面目さが疼く。

 

「なら勝つためにセクシー系の要素も出さないと。去年と同じ事をしたら去年と同じ理由で負けちゃいます」

 

「ねじれには可愛い系が似合う……」

 

「いやあのスタイルで肌を出さないのはシンプルに勿体ないですって」

 

 霊火には逆立ちしても取れない手段だ。

 ぶっちゃけ霊火は自分のスタイルをとても気に入っているし、仮に神様とやらに背を高くして胸を大きくしてやると言われても全然断るのだが、それはそれとして波動ねじれのような体型を羨む心もちゃんとある。

 

 そんなわけで小柄ちゃんは肩を竦めた。

 

「波動先輩の強みはあの天真爛漫な性格と、健康的でダイナミックな生命力のはず。やはり出来る限り肌を出してそこをアピールするべきと考えます」

 

「……ねじれは高貴なお姫様――」

 

「そういう深窓の令嬢系は私の領分ですし。悪いことは言わないので私の方針に従って下さい……」

 

 緑谷出久、完全に置いてけぼりだった。

 なんだかんだでお洒落が大好きな霊火は、有弓とともにハンガーラックの森へと吸い込まれていく。

 コーディネーター二人は段々と早口になり始めた。

 

「でも、ねじれは可愛い系だよ!! 見てあの無防備な感じ!! 男を弄ぶような歴戦の女って感じは無いって!!!」

 

「それぐらい見たら分かります!! というかどれだけ可愛い系に拘りがあるんですか有弓先輩は……。じゃあ可愛いシルエットに色やラインで華やかさを出すのが正解なんじゃないです?」

 

「具体的にどうする? 胸元? 脚? どっちを出すの?」

 

「別にどっちも出しましょうよ。ミニスカートだってVネックだって必ずしもセクシーには直結しないから……」

 

 やることがない緑谷出久と天喰環は顔を見合わせた。

 

 ―――――――――

 

 黒髪に赤い瞳。

 抜けるような白い肌に制服に羽織るジャケットが似合う、とても知的で表情豊かな少女。

 今は、何故かメタルフレームの丸メガネをかけていた。

 

 個人的には波動ねじれに負けないくらい可愛いと思っている友人が、若干疲労した様子で戻ってきた。

 

「はーいお疲れ様。待たせてごめんね、出久くん」

 

「お疲れ霊火さん。波動先輩とも仲直りできたようで良かったよ」

 

「アレで波動先輩のパフォーマンスが落ちたりしたら後味悪いじゃん? 話してみたら意外と繊細なところもある人だし」

 

 ヘアスプレーと化粧品が香る女の戦場。ミスコン備品室を出た緑谷出久はほっと一息ついた。

 服選びが止まらない三年生たちを尻目に、霊火はきっかり十分で選択を切り上げてくれた。

 普通に三時間ぐらい待たされるかと思った緑谷は内心ホッとしながら、置いてきてしまった同志の安否を案じる。

 

「天喰先輩は大丈夫かなあ……」

 

「あの人は波動先輩を見てるだけで大満足でしょ。あり得ないぐらい無防備だし見てて楽しいと思うよ」

 

 緑谷出久はノーコメントを貫いた。

 何を言ってもトラップを踏む気がする。

 霊火にからかわれるのは決して嫌いではないが、あえて踏み込むほどの度胸はない。

 

「で、出久くんから見た波動先輩はどうだった?」

 

「えっ!? あっ、えっーと……き……綺麗だと思うよ?」

 

「へえ。具体的にはどこが?」

 

 配慮も何もあったものじゃなかった。

 自分の顔がどんどん熱くなっていくのを少女はとても楽しそうに眺めている。

 緑谷は、すでに詰んでしまったように見えるこの状況を、切り抜ける方法を必死に模索する。

 

「……その……波動先輩は、お顔も……プロロプ、プロポプ……」

 

「プロポーション」

 

「――が……えっと、レベルが高くて……綺麗だと思いました」

 

「やらし〜」

 

「ねえこれどう答えるのが正解だったの!?」

 

 いたずらっぽく笑う少女は実に楽しそうに小さく首を傾げた。

 それだけで信じられないほど愛らしいのだから美人は得だ。

 基本的に見た目でアドバンテージを稼いだことのない緑谷出久にとっては、自分の容姿に自信があるという状態自体が想像もできない。

 

 少女は軽く言う。

 

「で、どうしよっか」

 

「へ?」

 

「これからの予定。A組のみんなでやるリハーサルまではまだ時間あるけどどうする?」

 

 地味に難易度の高い質問が来た。

 思わず周囲を見回すが、今日はあくまで準備日だ。

 屋台はあっても買い食いができるわけでもないし、周囲は皆忙しくどこか殺気立っている。

 

 唐突なエスコートの要求にフリーズする少年を見かねて助け船が出た。

 

「模擬戦にでも付き合ってあげようか? 全然やるよ?」

 

「……せっかくだから、霊火さんと一緒にお話しして回りたいな」

 

 彼女はまず、びっくりしたように目を見開いた。

 そして少しだけ顔を伏せ、そのままこつんと身を寄せてくる。

 

「っと……。どうしたの、霊火さん?」

 

「ううん。別に? 私はそれでいいけれど、出久くんは本当にいいの?」

 

「うん。霊火さんと一緒が一番楽しいよ」

 

 何故か不自然に長い沈黙があった。

 彼女はどうしてか大きく深呼吸して、メガネのレンズ越しに恨みがましくこちらを見上げてくる。

 

 ほんの僅かな一瞬。

 少女の目の奥に、ドロリと粘つく何かが宿る。

 

「…………………私にも我慢の限界って奴があるからね?」

 

「ごめん霊火さん何が悪かったか教えてくれない!?」

 

「猫って肉食獣だよって話。まあ別に不機嫌なわけじゃないよ」

 

 よく見れば口元は笑っているし、どこか嬉しそうでもある。

 ……霊火は意外とわかりやすいが、前提として女の子という生き物自体がそもそも難解すぎると緑谷は思う。

 

「……あ、そう言えばなんで霊火さんはメガネをかけてるの?」

 

「あ、逃げた」

 

「いやなんでなのかなって気になって!!」

 

 キスされてからだろうか。

 緑谷出久は最近、霊火について考えることが増えた。

 いくら考えても彼女は恩人であり、先生であり、守るべき対象でもあった。

 

 ただ一緒にいたら楽しくて、ドキドキして、彼女のためならどんな事でも頑張れるというだけで―――。

 

「んー、可愛い?」

 

「へっ!? う、うん!! 凄く綺麗だよ!! 霊火さんが元々持つ知的な一面が更に強調されて全体で柔らかい印象になって―――」

 

―――――――――

 

 職員室。

 ヒーロースーツ姿のミッドナイトは、デスクに肘をつき窓の外を眺めていた。

 文化祭準備日。徐々に飾り付けが進んでいく校舎を目にしながら、青春をこよなく愛する女性教師は、ふと口を開く。

 

「ねえ……男女の友情って成立すると思う?」

 

 職員室の隅。

 同僚の相澤消太は一度その問いを聞かなかったことにしようとする。しかし、職員室に残っているのが自分と彼女の二人きりだと気づいてしまった。

 

 彼はわずかに天を仰ぎ、手元の書類に視線を戻すと生真面目に答える。

 

「……しなくはないんじゃないですか」

 

「じゃあ片方が明らかに恋心を持っている場合は?」

 

「それはもう前提条件からして成立していないでしょう」

 

 どうやら、何だかんだで話に乗ってくれそうだ。

 ミッドナイトはくすりと笑い、肘をついたままさらに体を傾けた。

 

「昨日の夜、敵迎撃演習のときに殻木さんと話したのよ」

 

「俺は生徒のゴシップには乗りません」

 

「あの二人の関係を把握することは、健全な学級運営において必要なことよ」

 

 相澤はようやく顔を上げて半眼で彼女を見た。

 

「……だからといってここで話していいとは限らないでしょう」

 

「あら、じゃあ一般論として聞いてくれる?」

 

「それなら業務には関係ない話です」

 

「男子高校生って、好意を寄せてくる可愛い異性を純度100%の“友達”として見られるもの? もちろん異性を好きになるという前提での話だけど」

 

「…………」

 

 相澤消太は沈黙を選んだ。

 その沈黙が、かえって雄弁に語ってしまっている。

 

 普通は無理だ。

 未熟な男子高校生が異性の友人に対して“友人として振る舞う”ことは可能でも、友人としてしか見ていないというのは流石に不自然だ。

 

 その沈黙から的確に相澤の同意を読み取った香山睡は、深く頷いて話を続ける。

 

「実は逆は全然あり得るのよねえ。私たち女性は、男の子を恋愛枠とか友達枠とかにハッキリ振り分けがちというか……」

 

「……まあ、未熟な未成年だと特にそういう性別の側面があることは否定しません」

 

「だから、友達だと思ってた異性に告白されて困るってどちらかと言えば女性特有のイベントなのよね。男性の場合は、本命がいるとかじゃなければ付き合っちゃえばいいし」

 

 二人は、同じ生徒の顔を思い浮かべていた。

 相澤は書類に目を落としたまま、思考の底へ沈む。

 

「……まあ、例外はいるでしょう。友情だけで異性の友達を作る男もいないわけじゃない」

 

「そこが私の疑問なのよね。だって緑谷くんは殻木さんのことをいつも目で追っているもの。誰も気づいていないかもしれないけど、たまに視線がやけに熱っぽいし」

 

 相澤消太はできるだけ丁寧に一般論でまとめようとしていた。

 その努力をミッドナイトが粉々にした。特大のため息をついて机に突っ伏すA組担任をよそに、十八禁ヒーローは断言した。

 

「だって無理よ。可愛くて健気で一直線。とても儚くて思わず守ってあげたくなるような献身的な女の子なんだもの」

 

「……その話に俺は付き合いませんよ」

 

「あんなふうにアプローチされたらどんな男だって絆されるわ。まあ緑谷くんは、自分がとっくに恋に落ちたことにまだ気づいていないみたいね」

 

 

 

 

 

 




おや……?

ミッナイ先生、後輩にダル絡みの図


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