昔々あるところに勇者と魔王がいました。
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皇歴235年 空泣
誰か、これを見てるかな。見てたら嬉しいな。という事で、少し書いてみようと思う。まさか自分でこんなのを残すことになるとは思わなかったので所々拙いのは許して欲しい。多分、誰が添削してくれるでしょ。
失礼。そもそも誰だって話だよな。一応、王様してます。と言っても俺の代で作った国とかではなく。親の後継。だから父君と比べると力もない。何なら一部の魔法とかだと部下よりも弱かったりする。
自分で書いててあれだけど、悲しくなってくるな...
じゃぁ何も無いかっていうとそういうわけでも無い。父君が国を大きくしようとしたのであれば、俺は国を豊かにしようとした。
部下の子供の子守りとか、喧嘩の仲裁とか、城下町の飲み屋に行ったりした。いい民に恵まれたと思う。時折、民との距離が近すぎると苦言を呈されたこともあるけど、近すぎるのか...?それは折角だしこれを読んでいる君が決めてくれ。
なんじせよ色々やりたいことやった王様ライフだけど、一つだけまだやれていない事がある。そしてそれが俺の一番のやりたいこと。人間とか魔族とかそれ以外とか、そんなモノが関係無い世界。こんなこと言ったら夢物語だって言われるだろうけど。
いつの日か、今が笑い話になるような世界を作りたい。
ただ、それは簡単な事じゃない。人間と魔物は既にお互いを殺しすぎた。絶望的なまでに恨みあっている。
どちらかがやめたとしても一方的な虐殺が始まってしまう。それを耐えろというのは無理だ。もし、無抵抗でいることができたとして俺は王として大好きな民が殺戮されることを認可出来ない。ではどうするのか。
結論から言うと、俺はこの世界の仕組みに目をつけた。
この世界には、勇者と魔王という存在がいる。それを利用することにした。
勇者と魔王はそれぞれ人間と魔物を率いて戦争をする。当然、いつかどちらかが死ぬが、少しするとどこかに生れ落ちる。そして、民を率いて戦争を始める。こういうシステムになっている。勇者と魔王は過去の書物を見る限り、常に一対。3代前が相打ちになったそうだが、その場合は少しして勇者と魔王が生まれた。
ではどうするのか。俺は、勇者と手を組む事にした。勇者が冒険に出た瞬間、部下に内緒で会いに行った。運のいい事に、彼女も同じように今に疑問を持っていた。そしてそのまま二人で逃げた。
まぁ、初めて会った時、仕方がないとはいえ武器を振り回して襲ってきた時は正直びっくりしたけど。
こんなの書いているなら呼んでください。ということで、どうも勇者です。本当は、この横にいる魔王を倒したほうがいいんだろうけど、今一緒にいます。初めて会ったときに突然付き合ってくれと言われたのでびっくりしましたけど、私としてもこれ以上人間が死ぬところを見たくないので、大方賛成でした。
今魔王にお願いだから書かないでくれって言われています。でも書きます。初めて会ったとき、突然告白されました。見た瞬間に魔王だというのはわかったので、驚きましたし、そんなこと言われたことがなかったので恥ずかしかったです。
でも、理にはかなっていたので合意しました。
勇者と魔王、双方がいるから戦争が起こる。相打ちになっても時間がたてば復活する。それならば、仲良くなってしまおうというわけです。
確かに私たちが死ななければ次の勇者も魔王も生まれません。それに、主力を失っている以上。戦争もそう簡単には始められないはずです。
なんでこれを書いているのかはわかりませんが、彼曰くこんな世界があったんだなって酒のつまみにでもしてほしいそうです。なるんですかね、私はならない気もしますが。
ともかく、現在計画は順調です。昨日は一緒にお風呂に入りました。彼はずっとこっちを見ませんでしたが、最後にはこっちを見てくれました。私も恥ずかしいですが、仲良くするというのはこういうことだと思っています。
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笑いながら人間が酒を置き、横に座った女に話しかけている。すでにかなり時間がたっているようで、テーブルには空になったジョッキが散乱している。
「にしても、これは何だよ。魔王と勇者の日記らしいけど、初々しすぎるだろ。この酒砂糖入ってないよな」
やれやれと言いたげに手を振った女が、もう一度酒を口に運び、何かを思い出したかのように意地悪そうに笑う。
「初々しいことは否定しないわ。そうね、例えるなら貴方が初めてサキュバスの風俗行った時くらいじゃない?」
男は余裕たっぷりに笑うとジョッキの酒を飲み干す。
「おー、いうねぇ。そういうあんたも初恋の人間と結構甘々だったって話をお友達からきいたけどなぁ」
「あーあ、ライン超えたわ。表出なさいよ」
来い、と言って女が服を引っ張り、やってやるよと男が後に続く。それを慌てて、カウンターから出てきた筋骨隆々の四つの腕を持ったマスターが止める。
「あんたら、次やったらどうするんだっけか」
首と腕を鳴らすマスターに小さくすいませんと言って二人は席に戻る。
「カイリの兄貴、でもこいつ男の触れちゃいけないところ触れたんすよ」
急に下っ端のような口調でカイリと呼ばれた男の腕をさする男。
「でももくそもあるか。やるなら宿屋のベットの上でやんな。あんたらが付き合ってることくらい、この店の奴ならだれでも知ってる」
酒ではないとわかるくらい赤くなった二人を見て、店内で笑いが起こる。店を見回せば、木でできた体を持つものや、体を石で構成した女性。人型のオオカミとその腕に抱き着いている人間の女など様々な種族が各々の時間を楽しんでいた。
翌日、彼らが酒のつまみにした魔王と勇者の日記が年代からしてどうやら実話らしいことが分かり、学会が大盛り上がりしたり、この日記が後々文庫本になって魔族と人間のラブストーリーとして世の中に大量に売り出されたりしたが、それはまた別の話。