ここからは原作の前日譚から続きとして始まります。
壱ノ夜 「僕は再会、君は初会」
「どうしよう...!ハルどこに行ったんだろう...?」
ハルが居なくなった..ついさっき家まで送って行ったのに...
何回電話しても出ないし、何回も家の前で呼んだりしても出てこない。
私がハルの家に行くときは外から呼んだらすぐに顔を出してくれるのにいまは全然出てくれない!ハルのお父さんやお母さんは、引っ越しのことで数日居ないことはハルから聞いてたから居ないはず...
「探さなくちゃ...!」
私が、探さなくちゃ!
ハルはきっと外にいる。これだけ電話に出なくて家から出てこないってことは外にいるんだ!理由は分からないけど怖がりなハルが夜に出て行って1人で帰って来られるか分からない..それに私もお母さんやお父さんのような頼れる大人が今はいない!
「それにさっきみたいなお化け...」
生まれたときからこの街に住んでいるけど、あんなの初めて見た..さっき公衆電話で見た赤い帯ような手のお化けみたいなのがこの街に沢山いる。お化けなんて今まで見たことも信じたこともなかった。夜の街にはこんなお化けが歩き回ってるのか、と思った。そんな夜のこの街にハルを1人にして置けない!
そうと決まればまずはクロとチャコを連れて行こう..私1人じゃ不安だし、あの子達なら犬だから匂いでハルの場所が分かるかも!
※
今日の夜は普段住んでいる私の街をすっかり変えてしまった。
全身が白くて細い頭にヒビが入ったお化け、普通の犬より何倍も大きくて一つ目の犬のお化けとか、様々なお化けに出会った。その度に私を怒りの感情で捕まえようと追いかけてくる。なんとか看板や草むらに隠れてやり過ごしてるけど、いつも足が震えてる...
「怖い...」
私は家でもずっと1人だったけど、1人でいるのがこれほど寂しくて辛いことだと感じたのは初めてだった。捕まったらなにをされるんだろう..殺されるのかな、それよりもっと怖いことをされるのかな...
でもハルは私以上に辛い思いをしてるかも知れない、今も誰かに助けを求めて泣いてるかも知れない。そう思うと私の体は自然と動き出す。
「待っててねハル、いま助けに行くからね」
※
「クロ、チャコ大丈夫!?」
私がいつもの遊び場に着いたのはそれから少し経った頃だった。
「アン!アン!クーン」
「ワン!ワワン!」
2匹の子犬が私を嬉しそうに出迎えてくれた。
それを見ただけで私はとてもほっとして暖かい気持ちになる。
「良かった..ありがとね2人とも...」
でもここも安全かは分からない、もしかしたらまだ近くにお化け達がいるかも知れないからすぐに出発しよう。
「2人とも、一緒にハルを探して欲しいの。」
そう言ってハルから貰った刺繍の人形を取り出して2匹に見せた。
ハルが私のために作ってくれた大切な人形だ、渡されてからずっと手放したことはないけどハルの匂いがまだ残ってるはず!
「お昼に会ったこの匂いの女の子の場所、分かる?」
それを見せたとき急にチャコが走り出した!
「ワン!ワンワワン!」
「チャコわかったの!?待って!まだリード付けてないよ!」
急いでクロにリードを付けて、チャコを追いかける。
しかしチャコは私が遊び場から出たときには姿が消えていた。
「そんな...」
チャコまでいなくなっちゃった..私がリードを付けなかったせいで...
そのときクロがいきなり吠えて走り出した、私は慌ててリードを掴んで走り出す。
「ワンワン!」
「クロもわかったの!?」
いや、もしかしたらクロはチャコの匂いを見つけたのかも知れない。
もしチャコがハルの匂いを見つけたのなら、チャコの匂いを辿っていけばハルに会えるかも知れない!それに先にチャコがハルを見つけてくれればハルも安心できると思う!
「チャコ、ハルを先によろしくね..」
そうして私は少しの期待を胸に、クロのあとをついて行った
しゃりーん、しゃりーん
私は夢を見てるのかもしれない..
巨大なスクリーンから映像が流れているような夢、だけど実際にスクリーンは無くてただ大きくある映像が流れている。
その内容はユイが死んじゃう、悲しい映像。
でも私は諦めきれなくて、ユイに言いたいことがあって..それから...
分からない...なぜかそのあとの記憶がない...記憶?夢じゃないの?
自分で言ってて分からなくなってしまう。
経験したことない出来事なのに、夢ではないと思ってる自分がいる。
なんの記憶だろう、すごくもどかしい...
この映像のこと、思い出さなきゃ...
「痛ッ!」
なんとか思い出そうと頭を使うが、思い出そうとしている部分がまるで霧がかかったように見えなくて頭が痛くなる。
痛い..!本当に頭が痛い!なんで思い出そうとするだけで頭が痛むの!?
でも、それでも思い出さなきゃ、とても私にとって大切な..出来事な気がするから。
「まだ早いよ」
「え、誰?」
すると突然聞こえた声で頭の痛みが引いていく。不意に聞こえた女の子の声。ユイじゃない。
振り返るとそこには人の輪郭を持ったような白く光を放つ何かがいた。
人ではあると思う、でも姿は透けているように見えない。髪が下ろされていて、身長的に私と同じくらいの歳だと思う。分かるのはそれくらい。
「初めまして、君がハルちゃんだよね?」
「そうだけど、あなたは誰?なんでここにいるの?」
他の人がいるってことは夢じゃないのかな?
「うーんまだ何も言えないけど、君の味方だってことは言えるよ」
「え?どういうこと?」
意味が分からない、でもはっきり自分が誰かを言ってくれないってことはあまり信用は出来ないかも知れない...それになんで会ったことのない私の名前を知ってるんだろう...
私は目の前に女の子に警戒の眼差しを向ける。
それで察したのか、目の前の女の子はイタズラっぽく言った。
「あまり納得がいってない感じだね?」
「だってあなたは自分が誰か言ってくれないし..何故か分からないけど私の名前も知ってる、信用なんて出来ないよ」
「まあそうだよね〜、自分の夢に突然現れてしかも名前まで知ってる相手をそう簡単に信じちゃったら危ないもんね..どうしたもんかなぁ」
女の子は悩んでるみたいだ、でも女の子が言うにはここは私の夢の中らしい..
確認の為に改めて聞いてみることにした。
「ここは、私の夢の中なの?」
聞くと女の子はすぐに答えてくれた。
「そうだよー、ここは君の夢でいま現実の君は寝てるよ。」
なんとなく私もわかってた、自分の夢なのだから1番私が理解出来てるはず。でもそうなると疑問に思うことが幾つかある。
「てことはあなたも私の夢なの?」
ここが夢なら目の前の女の子は誰なんだろう...?夢の知らない女の子が私より『私のこと』を知ってるのはおかしいはず...
するの目の前の女の子は私からの質問責めで何かを思いついたように私を見た。
「そうだ!私がハルちゃんの質問に答えられるものは答えるから、それで私を信じてくれるって感じでどう?!」
なんで女の子はそんなに信じて欲しいんだろう..でも私も聞きたいことが沢山あったから願ってもないことだ。
「わかった、それで信じるよ」
「ありがとう!助かるよ!」
女の子はとても嘘のように聞こえない声で嬉しそうに言った。
「じゃあ私がハルちゃんの夢かどうかだっけ..答えるなら私はハルちゃんの夢ではないよ」
「夢じゃないのに私の夢の中にいる?夢に入ることが出来るの?」
夢ではないならこの子は本当にだれなんだろう、それに夢にはいるなんてちょっと普通じゃない。
「それはちょっと言えないかな..言ったら君には全てを話さないと行けなくなるからね...」
すると光の女の子は寂しそうに言った、顔は見えないけど何故か私はそれを聞いて切なくなる。
「じゃあ最後にするから聞かせて、あなたの名前は?」
まだ聞きたいことはあるけど、あまり聞かないほうがいいのかも知れない。それに私自身もあまり踏み込んではいけない気がするから。
この質問は予想外だったみたいで、少し女の子は悩んでいた。
「あまり答えられなくてごめんね..それにしても名前かぁ..言って良いのかなぁ...」
「あの、別に無理に答えなくても良いからね?」
あくまで興味本位であって必要な質問じゃないし、名前を言うだけでこんなに悩むってことはそれなりの事情があるのかな?
私の反応を見て女の子は謙遜しながら、
「遠慮しなくていいよ..でもこれくらいは答えてあげないと信用も出来ないよね」
そして女の子は改まって答える。
「私はヒトミ、よろしくね!」
そう言った、それを聞いて私も改めて自己紹介する。
「私はハル、よろしくねヒトミ」
そう言って2人で笑った。
そのとき
しゃりーん、しゃりーん...
鈴の音が聞こえた。
「時間だね、もうそろそろ現実のハルちゃんは起きたほうがいい」
ヒトミが私を見ながらそう言った。
私は少し寂しくなった..
「また、ヒトミと会えるかな?次は現実で...」
「...」
ヒトミは黙っていた。表情は見えない、でもその沈黙はとても長く感じた。
「会えるよ、きっとね...」
その瞬間ヒトミは、少し寂しく笑った気がした。
そのどこかで見たことがあるような、誰かに似た表情を私は確かに見た。
そして世界は暗転した..
「会わない方が、いいんだけどね...」
※
「ん..ここは...?」
目覚めると私はたまにユイと遊びに来ていた空き地のベンチで横になっていた。
え?なんで?私はユイに家まで送って貰って家に入ったはず...
てっきり私は家で帰ってすぐに寝たと思っていたけど違ったみたい...それに私には緑のコートが毛布代わりとして掛けてある。一体誰が掛けてくれたんだろう...
家に帰ったときに出ていたそらの夕陽はとっくに沈んでいて夜になっていた。
「帰らなくちゃ...!」
夜は外に出てはいけないと学校の先生やお母さんとお父さんから散々言われていたのに...
そう思いながら急いで立ち上がって空き地を出ようとしたとき、後ろから声が聞こえた。
「待って、いまの時間に懐中電灯もなしに出歩くのは危険だよ」
そうして私は振り向いた、そこには革の鞄と手入れが行き届いてるであろう古そうなカメラを肩から下げた高校生くらいのお兄さんと小さなポメラニアンの子犬が立っていた。
「目が覚めたみたいで良かった..はじめまして、で良いかな?」
「ワン!ワン!」
今回の夜: 螟マ牙喧縺ゅj
やっと第一話です。
正直ここまで書くつもりはなかったんですが、一度熱が入ると中々やめられなくて睡眠時間を削ってまで書いてました...