この夜で君たち2人を救いたい   作:ハメット

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最近投稿ペース早めたからしばらく次話出るのは先かも


肆ノ夜 「虚構の記憶は幻か否か、それとも失った過去か」

「はぁはぁ、遅くなっちゃった」

 

 学校帰りにハルと公園で遊んでいたらすっかり夕方になってしまった。いつもなら1回家に帰ってから遊びに行くけど、今日は家に帰らずにそのまま遊んだ。本当ならもうちょっと早めに帰れたけどハルが心配だからハルを家に送ってきた。最初ハルは「ユイが遠回りになるから」と断っていたけど、私が無理矢理送って行った。

 

そんなことを考えているとようやく家に着いた。

 

「ただいま!」

「おかえり、ユイ。ちょっと心配したわよ」

 

 家に入り、靴を脱いでいるとお母さんが出迎えてくれる。そして台所からはカレーの良い匂いがしてきた。

 

「ごめんなさい、ハルと遊んでて..それより今日の夜ご飯もしかしてカレー!?」

「そうよ、久々に作りたくなってねー」 

「本当に久々だよね!はやく食べたい!」 

「まだご飯の時間じゃないでしょ、手洗ってきなさい」

「もう、お母さんのケチー」

 

 大人しく手洗い場で手を洗っていると、お父さんの部屋から喋り声が聞こえてきた。その声はいつも聞いているお父さんのものと、お兄さんの声だ。いつもこの時間なら聞こえない声が聞こえる。

私は急いでお母さんに聞いた。

 

「今日もしかしてお父さんたち早く帰ってきたの!?」

「そうみたいよ、いつものお昼の仕事なら夜くらいまで帰ってこないのにね。折角だから〇〇〇くんにも挨拶してきなさい」

 

お母さんは楽しそうに言った。

 

 お兄さんというのはお父さんのお外の仕事を手伝っている人で、よくお外のお仕事と家でのお仕事をお父さんとしている。お外の仕事が終わるといつもお父さんと一緒に部屋でまたお仕事をして、時々晩御飯を一緒に食べたりもしている。たまに絵を描いてくれることもあるのでお兄さんのことは大好きだ。

 

急いでお父さんの部屋に向かいドアを開ける。

 

「ただいまお父さん!お兄さんこんにちは!」

 

 お父さんの部屋は綺麗に整っていて、たくさんの本が置いてある。だけどここに置いてある本は私が好きな絵本じゃなくて難しい文字が書かれた本ばかりであまり触らなかった。

2人は机を挟んで椅子に座っていた、お父さんはなにかの紙を書いていて、お兄さんはフィルムカメラで撮った写真を何枚も見つめていた。

 

2人とも最初は少し驚いたようだけど、すぐに笑顔で出迎えてくれた。

 

「おかえりユイ、前から言ってるがドアはゆっくり開けてくれ」

「こんばんはユイ、お邪魔してるよ」

 

お父さんには注意されたが、会うのが楽しみだから勢いよくドアを開けることをやめることはできない。

 

「今日はなんでお仕事早く終わったの!?」

「良い発見がいっぱいあったからね、早く帰って来られたんだ」  

 

お兄さんがすぐに教えてくれた。

 

「やった!じゃあお兄さんは今日は晩御飯食べていくの?今日はカレーだよ!」

「ごめんね、今日の夜はバイトがあるから晩御飯は食べれないや」

「そっか..残念」

 

折角久々に晩御飯前におうちに来たのに..しかもお母さんのカレーなのに..

するとお父さんがお兄さんに呆れたように言う。

 

「まーたお前調査の日にバイト入れたのか、いい加減休むことを知ったらどうだ?」

「働かないとアパート代諸々払えないんですから仕方ないじゃないですか」

「私が払ってやると言ってるじゃないか」

「いつまでも先生の世話になってばかりはいられませんからね、先生に返す分のお金も必要だし...」

「要らないと言ってるだろうに..お前そんなに忙しくしてて高校のテストの点数毎回トップだから怖いんだよなー」

「成績良くないとバイトできませんからね」

「それにしたって限度があるだろ!?」

 

 私はお父さんのベッドに座りながら2人の会話を聞いていた。2人は私が産まれるより前からの仲だとは聞いていた。実際2人は冗談混じりな会話をしていて側から見ていれば結構楽しそうだ。

 

すると話は変わってお仕事の話になったみたいだった。

 

「それより〇〇〇、今回の調査で良い仮説が浮かんだぞ」

「へー、どんなんですか?」

「霊の実態についてのことだ、あの世の者がこの世の者に危害を加える現象にはあの世の者の『この世に対する念や想い』が関係しているって前に話したよな?」

「そうですね、その時の結論は『あの世の者の念や想いが強いほどこの世に入りやすくなる』になったんでしたっけ」  

「だがな、今回の調査で前回の結論が大きく変わるんだ。今回の議題は『人が死に近づいたとき、死者が視えるようになる現象について』だ。そして調査の目的は[人は第6感を使用することであの世が視えるようになるのかどうか]というのを調べた。

例えば事故や怪我をする際、全てがスローモーションに見えるときあるだろ?あれは人が死に近づいたときに起こる第6感が起こしているという説がある。今回はそんな死に直面したときだけ発動する第6感が、死の間際の人に死者を視せていたのか。はたまた第6感は関係無く、本当に死に近づいた人間には霊が視えるのか調査した」

「ジェットコースターやドッキリなどの恐怖体験で全く死の危険がないのに本人が死を感じたら起きるのかも調査しましたね」

 

そしてお父さんは一拍置いて続けた。

 

「そうだ。結果から言うと第6感は関係なかった。寿命の近い老人や事故で死の間際の人や病気で死にそうな若者にもこの現象が起きていることがわかった。対して一時的に死に近づいた人にはこの現象は起きていなかった。つまり死期が近い人間にだけ現れるということだ。そして話は変わり、[あの世は死者の世界、この世は生者の世界にあり、あの世に踏み入れた生者はあの世と深い繋がりを結んでしまう]って話も覚えてるな?これらを踏まえて前回の結論を変えるなら..」

 

お父さんはお兄さんは目の見て真剣な表情をしている。お兄さんの方もさっきと打って変わって真面目な顔だ。話の内容がさっぱりな私はよく分からないけど部屋の空気から少し緊張してきた。

 

そしてついにお父さんが口を開いた。

 

「『生者はあの世に踏み入れたり、死に最も近づいたときに死者に近づくため、“死者として”あの世に干渉できるようになる。一方死者はこの世に対する念や想いが強ければ強いほど生者に近づくため、“生者として”この世に干渉できるようになる』だ」

「理由としては?」

「まずあの世とこの世のルールだ、この2つの世界は普段私たちが見ている世界であり重なっている。つまり2つの世界が、1つの世界のように交わっているということだ。この2つの世界は普段はそれぞれ干渉できないようになっているが特定の条件を満たすともう1つの世界に干渉できるようになる。

この特定の条件というのが結論で話したルールであり、これを満たすと片方の世界に干渉できるという推察だ。だから条件を満たした生者には霊が視えていたし、普段なら生者に触れられもしない霊が生者に触れられるようになる説明もつく」

「なるほど..」

 

お兄さんはしばらく黙っていた、少し考えたあと返事を出した。

 

「理には叶っているけど、あくまで生者目線での調査結果でしか出せていない推論なので考察の域を出ないってのが僕の意見ですね..1つでも死者側の実例があれば確実性はあがるんですが...」

「そこは仕方ないな、幾ら私たちに霊が視えたって霊と会話できるわけじゃあるまいし、他の人に霊が視えないのであれば実例を示しようがないからな..まあ本には面白い考察として出せるからいいけどな。でも今回もお前の“力”を消す方法は見つからなかったな」

「ですね、“これ”を消すにはまだ時間がかかりそうですね」

 

そしてお兄さんは遠い目をしてそう言った。

 

ようやく話の区切りがついたようだ、そこで私はようやく言葉を口に出した。

 

「ぜんっぜんわかんない!」

 

生者?とかあの世?とかなに言ってるのかさっぱりだった。唯一わかったのはお化けの話をしてるってことぐらいだ。私はテレビでしかお化けを見たことないけどそんなに難しい話をするほどのものなの?

するとお父さんは笑いながら言う。

 

「はは!ユイにはまだ早いだろうなぁ、小学1年生のユイがこの話を理解するにはあと10年は必要だな!」

「ごめんね、ユイ。うっかりユイを仲間外れにしちゃったみたいだね」

 

お父さんはおかしそうに笑ってる、なんかバカにされた気分。お兄さんは申し訳無さそうにしている、お父さんはそういうところを見習ってほしい。

 

「お父さんたちはいつも難しいお話ばっかりするんだもん、もっと私でも分かるようなお話してよ」

「うーん..ユイにも分かる話かぁ..そうだなぁ...あっそうだユイ、お話じゃないけどこれあげるよ」

 

そう言ってお兄さんは後ろに置いてある、鞄を漁り始めた。そして鞄からなにかを取り出して私の手に置いた。それは手のひらと同じ大きさで、明るい赤色のウサギと薄い青色のウサギの人形だった。

 

「わぁ可愛い!お兄さんいいの!?」

「いいよ、ユイとハルちゃんのためにお土産で買ったものだからね。ユイはウサギと赤色が好きだからこれ見たときビビっときてね」

「ありがとうお兄さん!覚えててくれたんだ、ハルは青が好きだから青のウサギをあげようかな」

「気に入ってくれて良かったよ。先生が不安になるようなこと言うせいで心配したよ」

「だってお前賢い癖にセンス渋いから気になるんだよ。高校生の癖に革鞄とか見たことねぇし、趣味は散歩だし。高校生とは思えないセンスだろ」

 

お父さんたちがまた話し始めてしまったけど、私はウサギに見惚れていた。学校で飼っているウサギが可愛い過ぎてそこからずっと動物だとウサギが1番好きだった。ウサギが大好きだからハルとお揃いで買ってもらったウサギのバッグをいつも持ち歩いていた。

そこでお母さんが私たちを呼んだ。

 

「みんなー、ご飯できたよ」

「わかった、今行くー」

「じゃあ僕もこの辺で失礼しますね、バイトもそろそろ行かなくちゃ」

「わかったけどさ、やっぱり次からバイト減らしとけ。私たちといる時は無理してなさそうに見えるけど時々油断してるのか疲れが顔に出てる。次の調査も最初は私だけでやっとくから休め」

「...」

 

お兄さんはしばらく黙っていた、いやちょっと違う。なにか言いたいけどなにも言えないような顔をしている。少し不安なことがあるように見えた。だけど少し悩んだあと、口を開いた。

 

「じゃあお言葉に甘えて、そうさせてもらいますよ。じゃあ今度こそ失礼します、ユイまたね」

「またねお兄さん!ウサギさんありがとう!」

 

最後にお兄さんは少し笑って玄関から出て行った。ちょうどその時お母さんがリビングから出てきた。

 

「あれ、〇〇〇くんは?もしかして帰っちゃった?」

「バイトがあるからってウチを出て行ったよ、一緒にカレー食べたかったな」

「せっかく〇〇〇くんの分も作ったのに..最近忙しそうね」

「仕方ないさ、あいつは無理と我慢しか知らない奴だからな。まあしばらく休めって言っといたし、次はちゃんと母さんの飯を食わせてやろう」

 

 そう言ってお父さんとお母さんはリビングに入って行った、私はもらった2つのウサギを握りしめたまま玄関の扉を見ていた。

お兄さんにはなかなか会えない訳じゃないけど次いつ会えるかは知らないのでいつもお兄さんが出て行ったあとは少し寂しくなる。

 

また会いたいな、次はいつ会えるのかな、楽しみだな。でもまた会える、そう信じて私もリビングへ向かった。

 

 

 

——「ユイ」——

 

 

「お兄さん..」

 

無意識に出ていたのはその言葉だった。

 

 私は前を進むクロのあとをついて行きながらさっき出会ったお兄さんのことを考えてた。お兄さんに出会ってから感じるこの頭のモヤモヤがどうしても気になったからだ。頭に巻き付く霧を払うようにずっとお兄さんのことを思い出そうとした。そしたら最初は『見覚えのあるような人』だったお兄さんのことは、『私と私の家族とも仲良くしていたお兄さん』になっていて、お兄さんとの記憶が次々に頭に浮かんできていた。不思議なことに一度思い出すと今はこんなに沢山記憶を思い出せる。お兄さんと会ったときはなにも思い出せなかったのに・・・。でもその記憶の中のお兄さんは今さっきあったお兄さんと一緒だったけど、さっきのお兄さんは私と会ったことがないって言ってた。

 

 どうして?私の記憶(思い出)には今まで私に優しくしてくれて、家族やハルとも仲が良かったお兄さんがいる。でもお兄さんは私を覚えていないって言ってた。もしお兄さんが嘘を吐いてるとしてもなんで嘘なんか吐くんだろう..それとも私の知らない記憶(思い出)なの?全部嘘の思い出なの?私がお兄さんのことを忘れていたようにお兄さんも私のことを忘れちゃったのかな...

 

ただでさえさっき教えてもらった話だけでも混乱してるのにこれじゃあなにも分からない・・・

 

「どうしたらいいんだろ...」

 

今日の夜は変だ..お化けは出るし、良く分からないお兄さんに出会うし、ハルはいなくなっちゃうし...

 

「ハル、ハル..?あ、そうだ!ハルにお兄さんのこと知ってるか聞けばいいんだ!」

 

 そうだった、思い出の中でハルとお兄さんは知り合いっぽい感じだった!ハルに聞けばお兄さんのことも分かるはず!やっぱりハルを見つけることが1番大事なことだ。急いでハルを見つけなきゃ。どうしてこんな時間に外にいるのか、お兄さんについてなにか知ってるのか、聞きたいことが沢山ある。

 

だから私は進まなきゃ行けない、ハルを見つける理由が増えたから。するとクロが止まった。

 

「ワンワン!ワン!」

「え、クロ?ここって..」

 

なんとそこはハルの家だった、いつのまにか戻ってきてしまった。もしかしてハルは戻ってきたのかもしれないと思い、試しにインターホンを押してみたがやっぱり誰も出ない。

 

「クロ、もしかして間違えちゃったの?」

 

ちょっとガッカリしながらクロに聞いた、するとクロはとても心外そうに私を見つめてハルの家の入り口を見た。困った、クロの鼻を頼りにしていたから次の目的地が分からなくなった。

 

するとクロは入り口を出て左の道を少し歩いて行くと何かを咥えて戻ってきた。それを地面に置くと元気よく鳴いた。

 

「ワン!」

「これ..」

 

私は嫌な予感がした、想像するのが怖い。それを見た瞬間、夕方の遊び場での帰り際の光景とついさっき助けてくれたお兄さんの言葉を思い出していた。

 

『コトワリ様を追い払うには頭と手足があるものをコトワリ様に渡すこと、これをするとコトワリ様はいなくなってくれる、分かったかい?』

 

クロが持ってきたものは、夕方クロがハルに渡した人形の手と足だった。

 

 

 

今日の夜: セ螟『化』縺『り』




今回は珍しく少年目線がないですね。
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