この夜で君たち2人を救いたい   作:ハメット

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 もうちょっと作る順番決めてから上げれば良かったかな...


伍ノ夜 「その眼に映るものは・・・」

———「ハル」———

 

 

「チャコ待って!」

 

 お兄さんと空き地で別れてから私とチャコは私のお家に向かっていた。

 

 夜のこの街は普段私たちが生活している明るい街とはまるで別の世界のようになってしまった。

 

 私はいつも夜は家から出ない、夜は怖いから。学校の先生やお母さんが良く「夜は危ないからお家から出たら駄目」だと言っていたから。私はそれを信じてる、危ない人に攫われる〜とかお化けが出るから〜と言われたら全部信じてしまう。私は怖がりだから。だから今歩いている夜の街も、不気味に見えた。暗いから壁の絵が顔に見える、暗いから私1人だけこの世界に取り残されたんじゃないかと思ってしまう。

 

全部、夜の闇のせいだった。

 

「こんな時、ユイがいてくれたら良いのに...」

 

 ユイがいてくれたら、こんなに寂しくないのに..ユイがいてくれたら、あの右手で私をどこまでも連れて行ってくれるのに...でも今はユイはいない、それどころかユイになにかあったのかもしれないのだ。

 

私は前を元気良く走る子犬を見た。

 

 ユイが飼ってる2匹の犬の1匹のチャコ、今日のお昼頃に初めて会ったけど普段は元気だが勝手に歩き回ることは決してないとユイは言っていた。

 

————だけどチャコは今その遊び場を飛び出して私と一緒に夜の道を歩いてる。誰だって予想外のことは分からない、でも最後にユイと会った私が変なことに巻き込まれてる。もしかしたら私だけじゃなくてユイにもなにか起こってるのかもしれない。そうじゃないと送って貰ったはずの私が家から離れた空き地前の道路で倒れてる訳がない。

 

 だから少しでも早くユイの家に行ってユイが大丈夫か確かめたかった。でも最初に行くのは私の家だ。一応家でユイに電話出来るし、もしもユイが無事なら今日だけチャコを預かって明日遊び場にチャコを送りに行くことにしている。

 

「ヴヴゥゥゥ」

 

「え?」

 

 すると前から威嚇するような声が聞こえた。その声の主はチャコだ。チャコは道の先を睨むようにしながら唸り声を上げている。

 

「チャコどうしたの?」

 

私もチャコの視線を追うように前を見る。すると...

 

「あっ...」

 

「ア゛ア゛ぁ あ゛ァ゛ア゛」

 

 少し先の街灯の下に居たのは全身が真っ白に染まったような気味の悪い赤ちゃんと、同じように真っ白でとても人には見えないくらい細い体の頭にヒビが入ったようなこの世の者とは思えないような存在だった。

 明らかに生きた人間には見えない、まるで生気を感じるような見た目じゃない。これって...

 

「お化け?」

 

 生まれて初めて視たはずのお化け、今まで見たこともなかったのにこの世にいると信じていたお化け。そんな存在を今目の前にして出た言葉は...

 

「な、なんだ...」だった。

 

てっきりもっと危ない別の『ナニカ』かと思った。

 

 幸いチャコがいち早く気づいてくれたおかげでお化けはこっちに気づいていない、だから今来た道を引き返して遠回りすることにした。さっきお兄さんが言ってた言葉の意味が少しわかった気がするな、チャコに感謝しないと。

 

「チャコ!こっちから行こう」

 

そう声を低くして言うとチャコは大人しく着いてきた。やっぱりチャコは賢い。

 

そして道を引き返した所でようやく自分の違和感に気づいた。

 

「あれ?」

 

「私、お化け怖いんじゃなかったっけ...」

 

 私はお化けが苦手なんだよね...?初めてお化けを見たはずなのに...初めに出た感想が『なんだ』だなんて...いまお化けに出会った時は確かに怖かった、心の底から怖かった、なのに何故か体はすぐに動いたし、驚くほど落ち着いてた...

おかしいな..自分のことが分からないなんて..私が私じゃないみたい...

 

だけどすぐにそんな考えは振り払った。

 

 ううん、今はそんなこと気にしてる場合じゃない!きっと私はお化けが大丈夫なんだよ、だから怖くないんだ。

きっと気のせい、私が自分が思っていた以上に強かったんだろうと、私は思った。

 

————そう自分に都合の良いように考えながら、私はチャコとお家に向かった。

 

 

 

 

 さっきの道から引き返して少し歩いていると、また前を歩いていたチャコが止まった。

 

「チャコ?今度はどうしたの?」

 

「ワン!ワワン!」

 

「チャコ!?」

 

 今度は嬉しそうな鳴き声をあげながらチャコは前の曲がり角まで走って行った。私は急いでチャコの後を追って道を曲がった、すると・・・

 

「え?」

 

 そこにいたのはなんと道の奥を走っていくユイの後ろ姿だった。私の1番大切な人、私が1番側にいて欲しい人。姿も走り方もユイだ。

 

「ユイ?ユイ!待って!」

 

 声は届いてるはず、でもユイは走るのをやめない。聞こえなかったのかな?とにかくユイを追いかけないと!急いでチャコと一緒に追いかけるがユイの方が足が速いので中々追いつけない。

 

「ユイ!待って行かないで!私だよ!ハルだよ!」

 

 もう一度前を走るユイに声を掛けるが、それでもユイは止まらない。なんで止まってくれないの?なんで私を置いていくの?様々な疑問が出てくるがユイがそれに答えてくれることはなかった。

 

 

しばらくユイを追いかけているとユイは一軒の家の前で止まった。

 

「はぁ...はぁ...」

 

 やっぱりユイは速い..昔からユイは運動が得意だ。でも私は運動が苦手だからすぐに疲れてしまう。もう心臓が痛い。

 少し落ち着いて前を向くとやっとユイを近くで見ることが出来た。だけど・・・

 

「ユイ..?」

 

 前にいるユイは白黒だった。色が一切無い、モノクロのユイだった。

すると白黒のユイは焦ったような表情で止まった家のインターホンを鳴らすような動作をした。

 

そこで私は初めて今いる場所に気づいた。

 

「ここ、私の家?」

 

 ユイを無我夢中で追いかけていたらいつの間にか自分の家に帰ってきていた。どうやらこの白黒のユイは私の家に来ていたみたいだ。

 

 ユイはインターホンを鳴らして少し待ったあと、声をあげるような挙動をしたり家をしばらく眺めていた。

 

「もしかして、私を待ってる?」

 

 家の前で待っているユイはその間ずっと焦った表情をしていたが、私が出ないのかだんだん顔が険しくなっていた。

 

 このユイは幻?ユイが焦ってるのは私になにかあったこと知ったからなのかな..?ユイがいつも私の家に来る時はいつも家の前から私を呼ぶのが普通だ。でもこのユイはインターホンを使ってる、ということは大きな声が出せないのかも。夜ならあまり声は出せないし、なにか問題があってもおかしくない。

 もしかしたらこのユイはついさっきまでここにいたユイなのかもしれない。

 

「ユイ、私を探してくれてるの?」

 

ユイは答えない、やはり聞こえていないのだろう。ユイはずっと変わらない、いつだって私を助けてくれる。

 

やっぱりユイは優しいな...

でもなんでユイの幻が出てくるんだろう?

 

するとユイがいきなり頭を抱えた、とても悩んでるみたいだ。

 

「大丈夫?ユイ無理しないで!」

 

 いくらユイだって夜は怖いはず、それでもユイは私を心配してくれてる。私はそんなユイにいつも申し訳なかった。

 そしてしばらく頭を抱えていたユイは静かに顔を上げた。その顔は覚悟を決めた表情をしていた。

 

 するとユイは私の方に走ってくる、だけど私は見えていない。そのまま白黒のユイは私とすれ違おうとした。そのとき私はユイとすれ違う瞬間、確かに聞いた。ユイの言葉を...

 

『私が探さなくちゃ...!』

 

 なぜ突然声が聞こえるようになったのか、なぜユイの幻のようなものが見えるのか、そのときの私には考える余裕がなかった。その言葉を聞いて私は居ても立っても居られずユイを追いかける。

 

“違うよユイ!私はここにいるよ!”

 

 ユイにそう言いたかった、例えそれが幻でも言わせて欲しかった。そうしないと、私はユイに謝れない。心配かけたこと、私のために危ない夜にユイを1人にさせたこと。

 

 ユイは私を探して今もこの街を歩いてる。お化けが沢山いるこの街でユイは“また”1人なんだ。

 

「追いかけないと!」

 

 お家なんかに帰ってる場合じゃない!いまこのユイを追いかけないとユイに会えない!

 

ユイは走って門を出ると来た道とは反対の左の道に曲がった。すぐに私も見失わないように左に曲がる。だが...

 

「嘘......」

 

そこにあったのは、走るユイの背中じゃなかった。そこに“いた”のは...

 

「ひっ...」

 

 そこにいたのはしましま模様で芋虫のような見た目に体から生えた触手で大きな袋を3つ持った、1つ目を閉じたお化けだった。

 

「あ..あ...」

 

さっき感じていたお化けへの耐性だとか、そんなものは目の前にいる存在には一切通じない。ただ無表情に、ただ無感情に私を見ている。

 

私は思わず後退りする。他のお化けとは違い、感情が分からないからなにをしてくるのか分からない、それがなにより怖い。

 

「痛ッ!」

 

 後退りしていると足が震えていたせいで躓いて尻もちをついてしまう。そのときに私はポケットからなにかを落としたことに気づかなかった。お化けはお構い無しにどんどん近づいてくる、もう逃げることも出来なくなった...

 

「ワン!ワンワンワン!ヴゥゥ!」

「チャコ・・・」

 

すると家の門から飛び出したチャコが私の前に立った。その小さい背中で一生懸命に私を守ろうとしている。

 

 お化けは前に飛び込んできたチャコをじっと見た。その間もチャコは威嚇するように吠え続けていた。でもお化けは怯むようすもなく小さな子犬を見つめている。するとお化けはなかなか退かないチャコに痺れを切らしたのか触手を伸ばして来ていた、だがチャコも逃げるようすもない。

 

チャコが危ない、チャコを助けないと..!

 

「やめて!」

 

 すると私は震えていた足が勝手に動いたようにチャコの前に出ていた。チャコの勇気に元気づけられたからなのか、チャコに何かあったらユイが悲しむからなのか、それは自分でも分からない。ただチャコを守りたい、それだけだった。

 

「この子はやめて!私にして!お願い...」

 

お化けに言葉が通じるかなんて知らない、でもお化けは再び動きを止める。

 

「チャコ逃げて!」

 

 チャコは一瞬迷っていたが、すぐに家の門に入って行った。

 

 

良かった、これでユイは悲しまないよね・・・

 

 

----「青年」----

 

 

 足が重い、体が重い...一歩一歩踏み出すのが前より遥かにキツい。思った以上に体にガタが来ているみたいだ。

 

少し前まではこんなんじゃなかったのにな...

 

そして僕はなんとなく、せめて気分だけでも変えようという思いで空を見た、だが...

 

「・・・ッ!」

 

あぁ.. “どうしてだろう”...

 

 この霞みがかった眼では空に浮かぶ星すら夜の闇に消えてしまう、遂には希望の星『アストラ』さえ、僕の眼から消えてしまった...

 

「諦めない..諦めるかよ...」

 

 絶対に諦めない、歩くことをやめない。例え希望が潰えようと、僕が挫ける訳にはいかない!

 

そして僕は呟く。

 

「ad astra per aspera」

 

絶対に、絶対に...

掴んでみせる、幸せな未来を...

 

 

今日の夜: 莉翫?縺イ縺薙m螟牙喧縺ェ縺




今回で本編の序章はここで終わりです。次は本編に繋がるまでの前章をちょっと出していこうと思います。
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