かもしれない
9話で「シルの回復を優先する」を選択したルート
9話から分岐になるので、見たい方のルートを読んでください
暗い、暗い、部屋の中。そこにあるのは、黒色のみ。上も下も右も左もない。唯の黒い世界。そこに、一つの人影が浮き出てくる。
(あなたは……だれ?)
シルは、その人影に語りかけようとするも、声は出ない。でも、心の中で語りかけた言葉に、その人影は反応を示した気がした。姿も形も分からないソレは、ゆらゆらと蠢くのみ。一見なんの反応もしてないように見えるのに、シルには何故か反応したことが理解できた。
―――繝っ繧そ繧き繝上イ繝翫チ―――
(……え?)
理解のできない言葉に首を傾げるシルはもう一度聞こうとするも、その人影はフェードアウトするようにその姿を消していく。
人影が完全に消えると、シルの目の前は再び黒一色となる。そのまま、意識までもがフェードアウトするように薄れていった。
――
セリカを救出した日、その夜。既に日は変わり、時刻は4時を迎えようとしていた。
あれから気を失ったセリカは車まで運び、ついでにカタカタヘルメット団が使用していた戦車の部品もいくつか回収してアビドスに戻った。
戦車の部品を回収した理由は、カタカタヘルメット団がどうして改造した戦車を使っていたのか、どうしてその部品を手に入れられたのかを調べるためである。
破壊された戦車の部品を現地で簡単に調べてみると、その部品は現在では製造が中止されている違法なものだということが判明した。唯の不良であれば、普通の戦車を手に入れることですら難しい。その理由は、単純にお金がかかるから。ブラックマーケットや廃墟等に住み着いているような不良では戦車一台手に入れるのでさえかなり難易度が高い。それが改造された戦車であれば尚更のこと。違法な部品なんか、通常売りに出されていることなんてないので、手に入れられるとしたらブラックマーケットしかない。それも、製造中止されているようなものであれば、当然その分値も張る。その上ブラックマーケットで売られているものが適正価格であることも稀なこと、そんなものを唯の不良が何台も手に入れられる筈がないのだ。となれば、残された可能性は裏に誰かがいる可能性、つまり誰かに雇われているという可能性くらいだろう。もし、そうであれば執拗にアビドスを襲撃していたことも、それが可能なほどに物資を所持していたことにも納得がいく。そのため、この戦車の入手ルートを調べ上げれば、その繋がりから裏に潜む人物まで特定することができるかもしれない。そのために一部の部品を持ち帰ることにしたのだ。
アビドスに戻ってからはそれぞれのことを始めた。ノノミとホシノはシルとセリカの様子を見て、アヤネと先生は持ち帰った部品について調べ、シロコは武器やドローンのメンテナンス。それぞれがそれぞれのことをしながらも、全員がそのままアビドスに泊まることとなった。
きっかけはホシノとシル。治療の甲斐もあり、セリカは夜になればある程度動けるレベルには回復した。しかし、シルはずっと眠っていた。朝に比べれば熱は下がってきているものの、まだ完全に下がっている訳ではなく、ここまで一度も目覚めていない。これに関しては、現状病気という感じではないので、熱が下がるまで様子を見てみるということになった。その間、シルをまたホシノの家まで連れて帰るというのはシルの身体に負担になってしまう可能性がある。そこを考慮し、シルはこのままアビドスの保健室に寝かせ、ホシノは泊まり込みで看病をすることにした。ついでにセリカも一日安静ということでそのまま同じように保健室に寝かされ、他のみんなも泊まることになり、今に至る。
皆がそれぞれ眠りにつく中、ホシノはこの時間に目が覚めた。それは、いつもの習慣故か、シルのことが心配だからこそあまり寝付けなかった故かはわからない。ただ、このまま二度寝しようという気にはならなかった。
ホシノは顔を上げ、眠っているシルに目を向ける。その眠っている表情に今朝のような苦痛の色はない。それを感じ取ったホシノはほっと一息つく。
目も冴えてしまい、これからどうしようかとホシノは悩む。
ふと目に入る黒い箱。シルの首に常に下げられているその箱は現在は今朝のような光は収まっており、いつもの唯の黒い箱に戻っていた。
空いた時間で箱を調べてみるのもよかったが、それよりもシルの回復を一番に考えた。もし、箱を調べたことで何かが起こってしまった場合にシルにどんな影響があるか分からない。今までの反応から考えれば下手に調べて何もないとも限らない。調べるのであればそれはいつでもできることであるし、そもそもホシノのようなこういう分野の素人ではなく専門家を探す方が賢明なのかもしれない。
「早く元気になってね……」
ホシノは、優しくシルの頬に手を当ててそう囁やきかけた。
時刻は7時を過ぎた。
対策委員会はいつものように教室に集まり、会議を始めた。その会議は散々なものであったが。
その議題は『借金を早く返済するための案』。その結果出てきた案を挙げていけば、セリカからは『ゲルマニウムブレスレットを使っての金運上昇』、尚どう見てもマルチ商法の手口だった。シロコからは『銀行を襲う』、当然却下……なのだが、シロコは予想以上にしっかりと計画を立てていた。ホシノは『他校のスクールバスをジャックしてアビドスに無理矢理入学させる』、最初に生徒の数が少ないから生徒を増やせばその分得られるお金も増えるなんて説明していたのには説得力もあったのに、どうしてそんな方向に行ったのか。最後のノノミは『スクールアイドル』、アニメのようにそう都合良く出来るとは思えないが、今までの案に比べればまだマシだった。結果、アヤネが伝統的なちゃぶ台返しを披露し、その原因達/アヤネを除いた4人/が宥めることとなってしまった。
ちなみにシルは未だに眠っている。丸一日以上眠っているというのも心配であるが、熱は下がり、荒くなっていた息遣いやその苦しそうな表情も今ではすっかりとなくなっていた。現状はこのまま目覚めてくれることを祈るのが最善だった。
会議が終わり、アビドス対策委員会はシルを先生に預け柴関ラーメンで昼食にすることにした。
アヤネを宥めながらも柴関ラーメンで昼食を食べていると、新たな客がやってきた。
四人組の来客だったが、なんとその四人で一杯のラーメンを食べるというのだ。それには注文を受けたセリカも驚いていた。しかし、そこは大将の気の利かせもあり、一杯分の値段で四人が満腹になれるほどの量を出したのだ。これには四人も驚きと感動を隠せなかった。
そこから、ノノミがその四人に声をかけ、アビドス対策委員会とその四人の会話は弾み、いつの間にか仲良くなっていた。
だが、その夕方、その四人が大勢の傭兵を連れてアビドスを襲撃しにきたのだ。
「誰かと思えばあんた達だったのね!! ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、恩知らず!」
「あっはは、その件はありがと〜♪ でも、これも任務だからね〜」
「うん、公私の区別はしっかりつけないと」
セリカの言葉に気まずそうにする便利屋68の社長のアルだったが、カヨコとムツキがそれを返す。どうやら、誰かからの依頼を受けてアビドスを襲撃しに来たようだった。
ホシノは、どうしてもこの襲撃がカタカタヘルメット団の件と無関係とは思えなかった。
誰かからの依頼でのアビドス襲撃という共通点、そしてこのタイミング。カタカタヘルメット団では無理だと判断して別の所に依頼をしたのかと。ただ、その先のことは考える余裕はなかった。既に、相手は戦闘態勢に入っているのだ。考え事なんてしていると、何が起こるかわからない。ホシノはすぐに戦闘態勢に切り替える。そこからすぐに戦闘が始まるも、アビドスの猛攻により傭兵は次々と倒されていった。
「死んでください死んでください死んでくだ……ぅぁ……!」
ハルカのショットガンの乱射がホシノを襲うも、ホシノはそれを一蹴し、猛攻でその守りを崩していく。
ホシノは、前回と変わらず攻めの姿勢だった。その理由は当然、アビドスの保健室にはシルが眠っているからだった。だからこそ、アビドスを奪わせるつもりも、中に入れることさえも許すつもりはなかった。
ホシノとセリカがハルカとカヨコとムツキを抑え、ノノミが傭兵を一掃、リーダーであるアルはシロコが応戦することとなった。この人数的な不利要素は、先生の指揮が穴を埋めた。
「アビドスは、絶対に渡さない!」
「くっ、この……!」
シロコはその素早さを活かしアルを翻弄しながら戦う。しかし、アルもその武器がスナイパーライフルであるにも拘らず、シロコの動きに対応し、上手く避けていた。柴関ラーメンでの出来事を考えれば、予想以上に実力はあるようだった。
反撃とばかりにアルはそのスナイパーライフルをシロコに向けて発砲する。シロコは即座に避けるも、その着弾点を中心に大きな爆発が起きる。シロコもそこまでは予想できてなかったのかそのまま爆風に吹き飛ばされた。シロコは地面を数回転がり、そのままの勢いで上手く受け身を取るが、アルは次の攻撃の準備をしていた。
「これでチェックメイトよ……っていたぁぁ!!??」
「アル様!?」
アルの銃口がシロコに向いたその瞬間、一発の銃弾がアルのこめかみに命中した。
唐突な介入に誰もが驚愕する。そして、その人物を見て更に驚くこととなる。
銀髪の混じった長い黒髪に小さな身体、紫色の瞳、輝く星形のピン。
「みんな、おまたせ!」
夢星シルだった。
この話の本当のタイトルは「夢の目覚め」
うん、普通ですね
普通に原作通り進んでシルちゃんも目覚めてハッピーラッキーチャッピーって感じです
この先も原作通りに都合良く進んでくれればいいですね
ともかく、正解ルートおめでとうございます
↓11話
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