自分を転生した世界の主人公だと思ってたら本物がいた×2   作:rikka

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第12話:ダンジョン最大の謎は――

「どうだい、クオン君。入口付近に敵はいるかい?」

「……いや、探査魔法には引っかからない。驚いたな、この洞窟……というか横穴は、恐ろしいほどに深いようだ。あれだけの数のウォードッグが中に入っていったというのも頷ける」

 

 ユートは横穴を発見次第、その地形を記録して一度撤退。

 戦力となるクオン達と共に再度ここに来ていた。

 護衛役の学生たちは残してきた。あの大軍相手では戦力には数えられない。

 万が一の統率役としてエリス教官も村に残っている。

 

(クソゥ、戦闘というアピールタイムに彼女を連れて来れないとは!!)

 

 無論、一応は非戦闘員であるイサカもである。

 

(カッコいい所を見せたかったのに後方待機! 当たり前だけどさぁ! 当たり前……あれ!? という事は基本的に前線職の子にしか僕の剣を見せられない!?)

 

 当たり前だ。

 

「ユート、前衛を頼む」

「だろうな。任せろ、狭い中でも十分剣は振れるし、念のために短剣も持ってきている」

 

 現在のメンバーの中でもっとも前衛に適している男は、装備を閉所に適した物に切り替えていた。

 

「ならば僕は後衛かな?」

「いや、間に入ってくれ。後衛は自分が勤めよう」

「おや? 君がかい?」

「ウォードッグが洞窟を縄張りにすることはままある事だけど、こうして自分達で掘り進めたとなるとかなり知能が高い可能性がある。奇襲に備えるならば僕が最後尾の方がいい」

 

 一方で最もチームプレイに適しているのはクオンだった。

 全員の装備や身に付けている防具、衣類までもを魔術強化した上で薄い結界を一人一人包むように張っている。

 不用意に群れを興奮させないように魔力をギリギリまで抑えているために、村のように強力な物ではないが、それでも防御の補助には十分すぎる強度の結界だった。

 

「安心してくれニーカ君、もし万が一退路を塞がれようとも、切り拓いて見せるさ」

「ハハハ、君達二人の実力に不安を覚えたことはないよ。よろしく頼む。さて――」

 

 いつものライフルではなくピストルを腰に下げたニーカは、ランタンに火を灯して暗闇を照らし出す用意をする。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 洞窟はひたすらに真っすぐで、そして思った以上に広かった。

 

「……犬が掘り進めた洞窟なんざ期待しちゃいなかったが、こりゃ歩きにくいな」

 

 そして思った以上に凸凹だった。

 凸凹な上に坂だらけだった。

 数メートル下がったかと思いきや、今度はやや急な上り坂と滅茶苦茶だったのだ。

 

「適当に掘り進んでいたら洞窟になった……ということかな?」

「何とも言えないな。そもそも、そんなに延々と掘り進めるような生態だったかどうか……」

 

 所々に魔物の糞が転がっている。

 間違いなく、ここをあの群れの塒である証拠だった。

 かなり長く住んでいるのだろう。

 足を進めれば進める程に糞が転がっており、奥に行けば行くほど完全に乾ききった物が転がっていたりする。

 

 クオンが時折横穴そのものを魔術で補強したり、入り口から一定距離ごとに風を奥へと送り込むための魔法陣を天井に打ち込んでいるのは、この洞窟が極めて不安定な物であるからだ。

 

 万が一に備えて、打てる手は打っておく。

 主人公を目指す者に、油断は許されない。

 

 多分。

 

「というか、一時間くらい歩いてあの群れの尻尾すら見えないのが怖すぎるぜ。どんだけ広いんだコレ」

 

 足を進めていく途中、地上部から伸びた木の根などが見られるが、そのどれもが食いちぎられている。

 

「さてね。ただ、これだけ歩いて持ち帰って食い散らかした獲物の骨の類すら見えないってのはちょっと怖いな」

「……朝方にユート君が調べた死体は、どれも胃袋はほぼ空っぽだったね」

「ああ。ついでに言えば毛で誤魔化されていたとはいえ、ドイツもコイツもかなり痩せていた」

「……飢えからの襲撃か……」

「間違いない。さっきから糞はあちこちに転がっているけど、糞そのものだけで動物の毛や骨が混ざっていない。さきほどから見えている木の根が齧られている所を見ると……」

「掘り進めて見つかった根を食べていたのか。なんでそんな状況なのにあれだけの群れが――っと、」

 

 ユートの足が、カランと何か固い物を蹴り飛ばした。

 素早くニーカがランタンを更に前へと突き出し、それを照らす。

 

「……小剣。片刃か、あまりこっちじゃ見ない型だな」

「山岳警備隊の標準装備だよ。……やはり全滅していたか」

「報せが遅れたとして、どれくらいの遅延で異常事態と判断してくれるかな?」

「……山岳警備隊は基地と基地の間の村々を見て回りながら警備する。片方の基地は、到着が遅れている事には気付いているだろうが……」

「遅れていること自体は珍しくない?」

「まぁ、ね。一週間以上伸びているのだから異常事態は察しているだろうけど、魔物の大量発生よりは負傷による遭難を疑って捜索隊を出そうとしている頃合いじゃないかな」

 

 洞窟の道は徐々に広がり、上下にも余裕ができ始めて来た。

 おかげでランタンの灯りが淡く広がり、ますます見えてくるようになる。

 

「入口付近に比べて踏み固められている」

「……掘って広げたというより、どこか違う洞穴から入ってそのまま掘り抜いたのか」

「そうして掘り抜いて出来た新たな出入口が、僕達の入ってきた所か」

 

 このような如何にもダンジョンめいた場所など、早々ある物ではない。

 時折魔物が雨風を凌げる洞窟に居座り、結果としてそれっぽい物になった地形は確かにあるし、クオンもユートも受注したクエストの中で攻略したことがある。

 

 が、ここまで深い巣穴など経験したことがなかった。

 

「これが人の手に寄るモノならば中々に僕が楽しめそうな展開になりかねないんだがねぇ……。クオン君ユート君、この洞窟を制圧してなにか悪だくみをしてみないかい? 騎馬警察の権限で手伝えることがあるならなんでもするさっ!」

「ここぞという時に最悪の裏切りかましてくる奴抱えてンな事できるか」

「ハハ……。ユートに同じくさ」

 

 そうして進む事更に三十分。

 驚くことにまだまだ先のある洞窟を進んでいくと、遂に変化が訪れた。

 

 これまで雑な一本道だった所が、初めて普通の道となったのだ。

 

「ニーカ、てめぇ知ってて言ったわけじゃねぇよな?」

「もちろんだとも。……本当にこういう事が出てきて、僕も驚いているさ」

 

 明らかに木材などでキチンと天井や壁を支えるように整備された、普通の大きな――トンネルのような場所に出てしまったのだった。

 

「……ユート、剣を構えろ」

「言われなくても分かってるよ」

 

 

「来るぞっ」

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