最近ハマっているブルアカをテーマにした短編となっています。先生や生徒の設定がオリジナルと異なる為、「オリ主」「キャラ崩壊」タグをつけています。
「いや〜!買っちゃった〜!」
「買っちゃったじゃないんですよ先生!どうするんですか!?」
「あはは…」
ユウカの説教を受けつつも僕は苦笑した。実はリンちゃんに何度も土下座して買った物であり、この部屋を作る為にシャーレオフィスを改装したのだ。つまりは、「調理室」の追加である。ただの調理室ではない…油汚れの付きそうな料理も作れる部屋だ。ミノリにも頭を下げてレッドウィンター工務部に依頼をしたおかげで調理室はあっさりと完成。報酬として日当に加えて弁当を渡して帰る彼女達にはボーナスとして少し高めのプリンが2つ入った紙箱を手渡した。ミノリは「こんな贅沢が許されていいのか」と言っていたが、突貫工事の御礼という言葉と同じ部員に押される形で了承してくれた。
この時のために用意したヘソクリは空になったが、調理室実装の為には致し方ない犠牲である。
「だいたい、仕事が忙しくて使いませんよね?もっと計画的に消費をしてください」
「分かってるよ、ユウカ。だけど生徒とのコミュニケーションの為には必要経費だよ」
「調理室を作るにもここまで大掛かりにしなくても─あら、ノアからだわ。はい、どうしたの…ってまたコユキが!?全く、すぐ行くからちゃんと捕まえておいてね!じゃあまた後で…」
「大変だね…ユウカ」
「調理室はちゃんと使っているか定期的に抜き打ちで見ますからね!必要経費かどうかは私が判断しますから!」
そう言い訳しつつユウカは慌ただしく走り去っていった。誰もいなくなったタイミングでふぅとため息を吐くと…次の瞬間にはにっこりと笑っていた。この時をずっと待っていたのだ。元々料理好き…それも雑な料理が好きな僕にとって自炊できる部屋はどうしても欲しかった。それにエンジニア部が開発したどんな油汚れも弾く素材をあちこちに使っているからいくらでも汚い料理が作れるのだ。冷蔵庫に食材を入れつつ今日作りたい料理の下拵えを済ませてからオフィスへ戻り、資料を整理して少し物思いに耽る。
「(さてと…ここまで用意したならば今日はハン─)」
「先生、本日の当番に参りました」
「うわっ!?八尺様!?」
「誰が妖怪ですか!」
その時、ぬぅっという効果音が相応しいくらいの動きで今日の当番である生徒…黒川ハスミが姿を現した。相変わらず色々大きな生徒である。
当番であるからかいつもより気合の入った化粧で真剣な眼差しを送る彼女だが、仕事は既に終わらせているので暇な時間しかない。
「やぁ、ハスミ。忙しい中来てくれてありがとう」
「いえ…先生に会えるのでしたらどんなに忙しかろうと駆け付けます。ところで、昨晩お電話をした際に異音が聞こえましたが…工事でもしていたのでしょうか?」
「あぁ…そうだ!ちょうどよかった!実はシャーレオフィスに新しく部屋を作ったんだよ。見ていく?」
「はい、少し気になります」
という訳で早速調理室へハスミを招待する。大体10人は座れる椅子とテーブル、そしてガラスで隔てた大きなキッチン…彼女は興味深そうに周囲を見回し、調理道具が粗方揃っているのを確認していた事、そしてバットの中に幾つかのミンチ玉が置かれているのを見つけた。
「先生は普段ご自分で料理を作っていたのですか?」
「キヴォトスに来る前はね。少し料理をしてたんだけど…ここに来てから忙しくてね。でもようやく業務量を減らす約束も取り付けたから今後は調理する時間も用意できるよ」
「なるほど…」
「せっかくだし、この調理室で作った料理を初めて食べる生徒になってみる?」
「!!!」
初めて…その魔力にハスミは頬を赤らめた。クルッと後ろを向き何やら呟き悶えながらも彼女はすぐ咳払いして僕の方へ向き直る頃にはいつもの凛々しい顔に戻っていた。
「良いのですか?私が最初の生徒でも」
「勿論。上品な料理じゃないけどいいかな?」
「はい、先生の料理なら美味しければなんでも…っ!」
やや本音を漏らしつつも食い気味に返事するハスミ…健啖家の彼女に相応しい料理を作ろうと計画していたので早速試作品を食べさせる事に決めた。
「試作品を1つ…先に食べてみない?」
「いいのですか?」
「勿論、最初に誘ったのはハスミだからね」
「ありがとうございます…」
彼女から言質を取った事でようやく準備が始まった。まずは鉄板に油を馴染ませ温めつつ準備をする。必要なのはスライスしたバンズ、レタス1枚、スライス玉ねぎ、スライストマト、アメリカンチーズ1枚、手作りソース、そして先程作ったミンチ玉のみ。このミンチ玉は牛肉の赤身と脂身が9.5:0.5の比率、塩胡椒とナツメグを混ぜ込んで仕上げている。
「あの…ハンバーガーのように見えるのですが何故ミートボールを?」
「今日はスマッシュバーガーを作ろうと思ってね」
「スマッシュバーガー?」
「まぁ見れば分かるよ」
鉄板の下準備が終わると僕はミンチ玉を鉄板に置くと専用のスマッシャーで押し潰した。驚くハスミの前で僕はしばらくミンチ玉だった肉を押し付けてから別に用意したヘラでひっくり返す。
「あっ…なるほど、パティだったのですね」
「そうそう。キヴォトスの外にあるアメリカって国で食べられてるハンバーガーの1つだよ。ミンチ玉を押し広げてパティにすると旨みが閉じ込められるらしいんだ」
そして再びひっくり返すとアメリカンチーズを上に乗せて、その隙にバンズの上半分を軽く焼いて水分を抜く。少し焼き目がついたらバンズを回収してソースを塗り、玉ねぎ、トマト、レタスの順に盛りつけ、チーズが溶けてきたタイミングでバンズの下半分に乗せてから挟んで出来上がり。
「お待たせ、これがスマッシュバーガーだよ」
出来上がったやや品のないハンバーガーを包み紙と一緒に受け取ったハスミは不思議そうに観察していた。そりゃそうだろう…トリニティではハンバーガー屋さんが少ないし、あっても分厚かったり高かったり映え重視だったりでファストフードにしては手が届きにくい価格であったりするからだ。
「う…薄い…」
「まぁスマッシュしてるからね。トリニティのお嬢様のお口に合えば嬉しいけど」
「い…いただきます」
ハスミはそういうと大きな口でパクリとスマッシュバーガーに食らいついた。そのままもぐもぐと咀嚼して呑み込んで…彼女は静かに目を閉じていた。だが、その翼は力強く羽ばたいて興奮しており顔に出していない気持ちが早くも漏れ出していた。
「ふぅ…」
「ど…どうだった?」
彼女はそれに応える事なく次の一口で更にスマッシュバーガーを食べ、咀嚼すると最後に一息に呑み込んで咀嚼…僕は慌てて水の入ったプラスチックコップを手渡すとゴクゴクと口の中の物を胃に流し込み、口を拭いてから改めて大きく息を吐いた。
「ど…どうでした…?」
「これほどまでにシンプルで薄いパティなのに肉の味が強く主張して…非常に美味でした。食材はどこで?」
「どこにでもある普通のスーパーだよ」
「なんと…!安価な素材でここまで美味しいバーガーが出来るなんて…!」
感動に打ち震えるハスミが次に気になるのはやはりソースだった。ハンバーガーの味の決め手は肉とソースだ。このソースに秘密があると踏んだのだろう。
「差し支えなければ…このソースの作り方を教えていただいても?」
「んー…秘密♡」
「そうですか…」
「なんてね、教えてあげるよ。でも一回しか言わないからね?」
「はい!」
「マヨネーズ50g・ピクルス10g、マスタード5g・パプリカパウダー小さじ1/2・オニオンパウダー小さじ1/2・ガーリックパウダー小さじ1/2が僕のやり方かな。アレンジしたかったらハチミツとか混ぜてもいいかもね」
そう話すとハスミは猛スピードでメモにレシピを記録すると再度眺めて満足そうに頷いた。
「ありがとうございます。家宝にします」
「そこまでしてなくても…」
苦笑しながらも大事そうにメモを鞄に入れた彼女だったが、その視線はまだ飢えていた。これでは足りないと言いたいが口には出せないといった様子…すぐに次のミートボールを鉄板に乗せると彼女の顔が輝いて見えた。
「いいのですか?」
「遠慮しなくていいよ。せっかくだし2枚重ねちゃおう」
「ありがとうございます!」
「遠慮せずに食べるんだよ?」
嬉しそうに微笑む彼女はすぐに咳払いをして鉄板で焼ける肉の匂いに涎を垂らしそうになって待っていた。2枚作ったパティにトドメと言わんばかりにアメリカンチーズを1枚ずつトッピング…ゾクゾクしながらその様子を眺める彼女は遂に出来上がったダブルスマッシュバーガーを受け取った。言葉も品性もかなぐり捨てるように手袋を投げ捨て、欲望のままにはしたなく大口を開けて捕食する。ジュワッと滲み出る肉の脂と旨味に頬を綻ばせながらどんどんバーガーを食べ進めていき…4口目で綺麗に完食した。名残惜しそうに指についた脂までしゃぶって平らげたハスミは至福の表情を浮かべ、すぐに僕の視線を思い出し赤面した。
「手拭きをどうぞ」
「ありがとうございます」
すぐに手拭きで手の汚れを落として、返却する彼女は腹八分目ですっかり満足したといった面持ちで僕に笑みを浮かべた。この笑顔を見られただけで最初の生徒がハスミで本当に良かったと素直に思えた。
ホクホクする彼女にデザートの手作りアイスクリームまで食べさせてから家に帰すのだった…
余談だが、ハスミはトリニティまで戻る道中、カロリー消費をしないといけないと思い歩けなくなるギリギリまで徒歩で帰ったのだとか。
YouTubeで観たスマッシュバーガーの動画が実に美味しそうだったので衝動のまま書きました。記載のレシピはフリー素材とします。