転生機族の異世界記∼機族に転生したら異世界に飛ばされました∼ TSならぬTM-トランス・メカ-転生者な星船は、ヤマト世界で何を成す? 作:オーキッドとグロリア欲しい
誤字報告もありがとうございます。
「何とか間に合ったにゃ」
「相変らず母さんの開発、造修能力は出鱈目ね」
そう言うソーニャちゃんと私の目の前には、私-亜科詩-のドック区画に浮かぶエンジン部分の外装が直線的に変わった星船ストレルカが存在した。
「で、姉さんの船体はエンジン部の外装以外でどう変わったの?」
「イーラちゃん、気になるかにゃあ?気になるかにゃあ?」
「はいはい、教えて教えて」
「仕方ないにゃあ。なんと、このストレルカにはガミラス式のものより小型高出力化した波動エンジン2基の搭載に成功したにゃ。これによ「交互に使っての連続ワープやヤマト並みの波動防壁展開が可能に成ったわ!」にぁあ、私の台詞がぁ……」
「寒い茶番は良いからキチンと教えて」
「「はい」」
真面目にやれとマジトーンで話すイーラちゃんの言葉に、ソーニャちゃん共々姿勢を正して説明する事にする。
「ソーニャちゃんの言う通り、イスカンダル船の残骸やガミラスの波動エンジンに関連する先行研究のデータや地球人との協力により、
ヤマトの物には、まだまだ出力比で劣るけど、高出力化に成功した小型波動エンジンを2基搭載した事で、全ての性能で改装前のストレルカを上回るにゃ」
そもそも波動エンジンの高出力化に必要だったのは、現段階のデータで可能なシミュレーション上での構造や材料探索では無く、
実際に動く実物のエンジンを作り動かしてデータを収集してこそ初めて得られる、量子波動理論の深化と波動エンジンの制御法の洗練だったみたいで、私含めてガミラスの研究は其処の方向性から間違っていたのだ。
2205まで、ガミラスが独自技術で艦載サイズの波動砲や波動防壁を実現出来なかった理由は其処だろう。
ガミラスならイスカンダルから供与されたコアシップ、私ならガミラスから複製したデータに鹵獲ガミラス艦と、なまじシミュレーション上でも動く実物が有ったから陥った袋小路で。
これはもしかすると、ガミラスがリバースエンジニアリングで波動砲へと到らない様に、イスカンダルが仕掛けたブラックボックス化の一種かも知れないと考えてる。
まあ、何にせよ先駆者とそれ以外の追従者が持ち得るノウハウの違いという、研究開発の基本に立ち帰れた事で、これからは更なる高出力化も見込める筈だ。
しかし、これに気付いた真田さんは、やっぱり凄いにゃ。
「これら小型高出力波動エンジンと適合設計した新型の短期高出力型ベクトル機関の合計出力は、短時間なら私-亜科詩-の全力発揮を倍以上上回り、
ソーニャちゃんが言った波動エンジン固有の恩恵は当然として、更に最大出力での主砲フェイザーの連続発射や私以上の力場装甲が持てる様になったにゃ」
「へぇ、良いじゃない」
「更に朗報よ!機器の更新と見直しで、船内居住空間が今までの倍と成ったわ!これでマトモなベッドとお風呂とキッチンが置けるわよ!」
「凄いじゃない!」「イェーイ!」「「イェーイ」…はっ!……ふたりともニヤニヤしない!」
そう言って驚くイーラちゃんに対して、ソーニャちゃんと共に掛け声を上げてハイタッチを交わす。
普段はクール系なイーラちゃんが、羞恥で顔を赤らめてプルプル震えてる姿は可愛いけど、これ以上は本気で怒りそうだから弄るのはこの位にしよう。
原作の2人なら住環境を気にしたり、こういう反応はまずしなかったろうけど、私が一時保護者と成った影響からか、少しノリが良いのは本当に嬉しい事だ。
「では改めて説明すると。倉庫スペースも以前から1.5倍になって、弾薬と機材の搭載量も増やす事が出来たにゃ。
何より限定AIだけで動く大規模ダイスの開発成功で、ソーニャちゃん-ストレルカ-が今まで出来なかった多様な資機材の自己生産が可能になったにゃ」
「へぇ、じゃあ姉さんも母さんみたいに色々と作れる様になったのね」
「テンプレートに有る物とその編集だけだから、母さんレベルで自由自在に作るのは流石に無理よ。だけど普通の機族船には負けないレベルだわ」
「結局はツールだし、こればっかりは研鑽と経験を積むしか無いにゃ。それに私は、これで更に造修能力を拡張してるからにゃ」
ソーニャちゃんの星船としての才能は戦闘艦より寧ろ工作艦向きと見てるけど、それでも追い付かれるのは積み上げて来た物が違い過ぎるから難しいだろう。
今回のストレルカ改装も厳重なテスト含めて僅か70分弱で終わった。
これはナノ素材というナノマシン資材を基底構成材としてる柔構造船と言えども、主機関の載せ替えともなるレベルでは桁違いに早い。
全ては多数の単一陽子演算器による、従来とは桁違いに大規模な拡張演算器の賜物だ。
最初は私でも扱うには慣れがいったけど、従来から扱ってるアーキタイプである3人の助けを借りながら適応する事で、従来から私-亜科詩-に積んでる演算器と変わらない感覚での処理が可能と成った。
更に汎化した物をヤマトとストレルカに積み、地球連邦事務総局にフラグシップコンピューターとして設置済みだ。
「これは搭載した大規模ダイスの実現とも関係するんだけど、拡張演算器として大規模な単一原子演算器を搭載してるから、ソーニャちゃんが好む船体の自己転送による攻撃時に起きていた大質量物転送での構造情報消失リスクの桁を2つ下げて、
常用戦術として使えるレベルに安全な物に出来たにゃ。しかもこの数値は、転送強化浮標の事前転送が無くてこれにゃ」
「流石に距離は1光秒程度に落ちるけどね」
あ、もうそろそろ現地入りしないと不味い時間だ。
「ソーニャちゃんイーラちゃん、そろそろ現地入りして欲しいにゃ。太陽系を離れて同期できなくなるヤマトの私をよろしくにゃ。後、ホワイトバーズの子たちやヤマトの乗員と仲良くにゃ。何より……何より無事に帰って来るにゃ」
「確かに時間ね。安心して、同期して無くても母さんは母さんだし、職場の人間関係を乱すほど子供では無いわ」
「姉さんの言う通りよ、母さんは私たちを子供扱いし過ぎ」
「なら、人に指を向ける癖は直してから言うにゃ」
イーラちゃんが、ピッと人差し指を向けてそう言ってくるけど、私はその手を両手で包んでそう指摘する。
実はこの癖、私や姉のソーニャちゃん以外にはしないので、甘えみたいな行動だと分かってるから、私からの指摘を含めたイーラちゃんのルーティンの様な物なんだろうにゃ。
「もちろん、2人がもう大人だと分かってるけど心配なのにゃ。言わせて欲しいにゃ。あと、ガミラスの通信網や随伴艦隊が敷設する中継装置を利用して同期はなるべく維持するけど、流石に数的に劣勢だと繋がらなくなるのは覚悟しといてにゃ」
「随伴艦隊も最初より豪華に出来たんでしょ。大丈夫よ。じゃあ、そろそろ行くわ」
「行ってきます」
「うん。気を付けて行って来るのにゃ」
その返答を聞くと2人は手を振りながら転送で船内へと消え、僅かな後ストレルカは自己転送でヤマト艦隊との合流予定地点である坊ノ岬沖上空へと到着した。
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艦長席の横に配置された艦隊戦術統制官席では、本来はその席の主である筈の古代守副長兼艦隊戦術統制官が、着席して作業をしている真田志郎技術長の横に立ち、
その技術長は端末片手に統制官コンソールを操作しつつチェックリストを消化しながら、古代副長と雑談をしていた。
「このヤマトもそうだが、ガミラスを圧倒できる性能の船がこれだけ揃うと圧巻だな」
「ああ、確かにそうだな。古代、艦隊戦術統制官は慣れたか?」
コンソールや艦橋上部のパネルに表示されている空中待機中の88隻を数える船は、先日の演習で1000隻のガミラス艦隊の前衛部隊を僅か20隻の一斉射により、ほぼ一瞬で消滅させる活躍を見せた、その無人戦闘艦を更に改良した物だ。
これらが最初から存在すればと、今まで大勢の仲間を見送ってきた2人としては、無意味だとしても思わず考えてしまう。
「どうだろうな?シミュレーションでの成績は上がってるけど、指揮下の制御体-レギュレータ-も学習してこっちの意志を汲んでくれるから、助けられてる感覚がして技量が上がってるという実感が薄いんだよ」
艦隊指揮官の下で、同時多数の無人戦闘艦を指揮統制する為に新しく設けられた艦隊戦術統制官という役職は、優秀な艦長職経験者である古代守にとっても手探りでの挑戦と研鑽の日々だった。
「なるほど。彼らにも機族とは違っていても意志や感情が有るからな。お前の性格を掴んだのかもしれん」
真田が少し考え込んでからした、思わぬ返答に少し驚いた。
人間の機微に少し鈍感なこいつがこう言うという事は、知識としてそれを知っているのかも知れない。
「ああ、実感しているよ。制御体の彼らは表に出難いけど確かに意志が有るし、機族の子たちと同じ様に人間を想っている優しい奴らだ。そんな彼らを人間が生きる為ならと、使い捨ても視野に入れて運用を考えないといけないのは心苦しいよ」
「…古代、あの無人艦。あたご型2型無人戦闘艦の艦橋兼用脱出艇の性能は知っているか?」
「いや、あたご型の艦その物の性能は知っているが、2型の艦橋脱出艇はまだ頭に入ってないんだ。何せ、あたご型が2型へと更新されて、そのマニュアルを渡されたのが一昨日だからな」
まず全長が260メートルにまで伸びて、ヤマトと同じシリンダー式戦闘機格納庫が新設され、波動エンジン推進器ノズルが今までの外郭側面の4つから、外燃エンジンを挟んだ上下2つに大型集約化されたり、
100センチ電磁砲の可動域が更に広がって真横にも撃てる様になり、36センチ砲を含めて初速が上がっていたりと、外観からも分かる大きな変更点だけでもこれだけ有るんだ。
新型の対次元魚雷や2基存在する機関の出力向上や仕様変更、協調型艦隊戦闘システムの新機能や操作性向上改修、非常時有人操艦システムの変更、更に改良された工廠機能や電子戦関連やステルスを含めると、概要や要旨だけ見て中身には目を通せていない資料の方が多い。
「そうか、説明すると。外観でも分かるが2型では艦橋艇の後部艦橋が廃止されて推進器となっている様に、ベクトル機関とワープが可能な小型波動エンジンを搭載して、短時間ならヤマトに匹敵する出力の力場装甲を張れるんだ。
装甲自体も強固で、ヤマトの艦底最厚部の更1.2倍もの厚さで全周を覆っている。これは知っているだろうが、ヤマトに使われている装甲材より強固な物でだ。
これは従来からだが、制御体も機族戦闘機に匹敵する高出力のベクトル機関を搭載しているので、例えあたご型の艦本体が撃沈されたとしても、ヤマトが損傷して乗員に死者が出る可能性より制御体の生還率は圧倒的に高いだろう」
推進器やベクトル機関用の超重力コイルが上部に付いた位にしか考えて無かったが、真田からの指摘で考えていたよりも重防御化した事に驚きつつも、
今では少し個性の様な物を感じる制御体たちの生存性がかなり高いだろう事が知れて安心した。
しかし、同時に疑問も浮かぶ。
「そうか、それを知れて気が少し楽に成ったよ。でもこう言っては何だが、流石に強固過ぎないか?制御体の生存性を確保するだけなら大袈裟な気がするんだが……」
ヤマトの第三艦橋より容積の少し小さい程度のあたご型の艦橋をそのまま重装甲だが鈍重にもなる脱出艇とするよりも、制御体用に直立戦闘機等を組み込んだ方がもっと身軽で良いだろうという事くらい、真田の様な専門家ではない俺でも分かる。
「それはだな、2型の艦橋艇はヤマト乗員の避難艇としても考えられているんだ。居住環境を考えなければ、2隻の艦橋艇でヤマトの全乗員を収容して地球に帰還できるだけのインフラ設備と資器材が積まれている」
「あたご型全てが失われる様な、そこまでのケースも考えているのか、周到というか何と言うか……」
「それに関しては設計した彼女、アカシの銀連での逸話をホワイトバーズの子から聞いたんだが、まるで石橋を叩いて調べて鉄橋を架け直すかの様な性格とまで言われていたそうだ。
実際に彼女が開発に携わったという物を色々と調べたんだが、技術的な冒険や新技術を好んで取り入れている割には、安全性に関する冒険は徹底して避けているというのが分かる。
新技術を使う時には試験やシミュレーションを突き詰めて行い、俺なら必要以上と思えるほどネガ出しに拘っているんだ」
「へぇ、本人に理由は聞いたのか?」
「責任を取りたくないからだそうだ」
それを聞いて違和感が浮かぶ。
機族の女王や工作艦亜科詩としては勿論、ヤマトでも広い職掌を持つ彼女の働きは、責任を取りたくないという人物の行動では無いし、彼女の性格を知る限り責任を軽んじるとは思えないからだ。
「それはおかしくないか?彼女の公開されている経歴だと、銀連では工作艦としてかなりの責任を負っていた筈だし、この世界に来てからも大きく動いているのは、責任を取りたくないというのと矛盾してるだろ」
「ああ、だから本人に聞いてみたんだ。責任は取りたくないけど私が放置して喪われるよりマシだから、責任を取る事態が起きない様に全力を尽くしてるのにゃ。だそうだ。彼女には色々と先が見えてしまうんだろう」
「にゃってお前。しかし、見えてしまうか……、事態の先が予測できる能力が有るのも大変なんだな。真田、お前も頭が良いんだから気を付けろよ」
真田の語尾に艦橋内の何人かが突然むせ出し、俺も危なかったが気を取り直して友人に対して忠告を行う。
要らない心配なら良いが、こいつも見えてしまう側だろうからだ。
「自分で言っては何だが、彼女ほどの共感性は俺に無いから心配するな」
「ははっ、自分でそう言うのはお前らしいな。まあ、それならそれで良さ」
それがコイツなりの自虐的なジョークと分かったので、お互いに軽く笑い合う。
「よし、全システムチェック完了。そして、そろそろ発進予定時刻だ」
「いよいよか。イスカンダルの女王様を上手く説得して、地球を元の青い星に戻せると良いが……」
「そうだな」
そう言って、古代と真田は艦橋の窓から見える海が干上がり赤茶けた大地を見た。
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「ストレルカが予告座標に転送されて来ました!艦長、ストレルカがドッキング許可を求めています」
「うむ。通信、ストレルカに許可すると伝えてくれ」
予定通りか、どうやらストレルカに波動エンジンを搭載するという、大規模な改装は順調に終わった様だ。
しかし、アカシさんの仕事量とその処理量には驚かされてばかりだ。
今軌道上で探査活動での母艦を主目的として建造が始められた全長16キロの星船叢雲や、地下都市の工廠設備としての大規模拡張、当初だけで2万隻の艦隊整備計画の全てを同時平行して行っている。
ガミラスから得られた情報から分かる、ガミラスやガトランティスが相手だとすると些か過剰な戦力整備とも思えるが、彼女には何が見ているのだろうか?
……いや、分からない儘に悩んでも仕方がない。出航したら本人に聞いてみよう。
今は、このヤマトの指揮官としての職責に集中すべき時だ。
「副長、各艦、各部の状況はどうなっている?」
これに関して、指揮官帽の思考リンクを介してチェックリストは全て共有されているのだが、冗長性を確保する為に敢えて口頭でも報告を求める。
「はっ!全艦、物資の積み込みは全て完了。波動砲とワープシステム以外の本艦含めた構成艦隊全てで、航海、兵装、推進システムの全負荷テストを全て完了。残る大気圏内で可能な物はヤマトの船底ドッキングシステムの実働テスト、ストレルカと乗員の収容だけです」
古代の言葉と脳裏に浮かぶリストを照合して、全て差異が無い事を確かめた。
これに艦長として承認の電子署名を行うと、本当の意味で全てのリストが消化された事となる。
「ストレルカのドッキング収容を確認、更にストレルカ乗員2名の乗艦も確認。賓客を含めて、予定者全ての乗艦を確認しました」
船務長である森君の報告により、リストは全て消化できた事になる。
ならば後は進むだけだ。
「よろしい。通信、ヤマト以下、第一任務部隊構成全艦は、予定通り発進すると司令部に通告しろ」
そして一拍の間、艦長席から艦橋内に居る人員の様子を観察する。
どうやら極度に弛緩や緊張してる者も居ない様で、アカシさんを交えた乗員選定と訓練の見直しは十全に機能した事が分かった。
「司令部より返信!ヤマト艦隊及び人員の無事の航海を祈念しつつ、帰還を待つとの事です!」「うむ」
それから僅かな間、艦橋の向こう側に広がる赤茶けた地球の大地を改めて目に焼き付けて、この船の艦長として号令を発する。
「ヤマトはこれより坊ノ岬沖仮設空中ドッグから発進の後、大気圏を離脱、月軌道を越えて木星へのワープテストを実施する。重力クランプ解除、抜錨……目標イスカンダル、ヤマト発進!」
本話で第一章完結です。
取り敢えず、ひとまずの区切りを迎えられて安心してます。
これも皆さま方のお陰です。
続きの時期は未定ですが、少しづつ書きたいと思います。
本当にありがとうございました。