男子中学生の少年が公園で出会ったお姉さんは、ダイナー系でカスの嘘を流し込んでくるアグネスタキオンだった。
今年1年を振り返ろう、との提案に到底信じられないカスのような嘘が流し込まれる。
少年は耐えることができるか。

あなたに送る2024年の欲張りセット。

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ダウナーお姉さんはカスの嘘を流し込むアグネスタキオンで惣菜のドカ食い大好きなのあ先輩とJKドラゴンは変な間取りに住む察しの悪いロボと自害させられたFX戦士アウラのともだちFREEDOM -1.0

 

「おかしいですよ。自害は”させられた“ら自殺じゃなくて他殺じゃないですか」

 

さすがは鋭いね少年、私が見込んだだけのことはある、と公園で急に話しかけてきたお姉さんは勝手に自画自賛し始めた。

 

彼女はアグネスタキオンと名乗った。いわゆるダウナー系のお姉さんだった。

 

ことの始まりは帰宅中にいつもと違うルートで公園に入ったことだ。そこでベンチに座りながら、手の上で何かを回している彼女に声をかけられたのだ。ハンドスピナーだった。

 

「今年も色々あったろう?そこでこの1年を振り返ろうじゃないか」

 

明らかに初対面の人間とはやらない話題を振り始める。この時点でただモノではなかった。

 

そして冒頭で言及した、お姉さんの知り合いだという前世で自害させられた魔族のアウラさんの話になった。

 

「そもそも魔族ってなんなんですか?」

 

人のようで人ではない種族、人の言葉を真似て喋る魔物、と語りが入る。

 

「アレらは慎重だからね。世間では滅多に姿を見せないが、SNS上では活発に動いている」

 

少年も気をつけたまえよ、と注意を促された。そんなことを言われても困る。

 

そもそも唐突に転生した人間?の話をしないで欲しかった。転生モノに溢れた現代っ子だから素直に受け入れられたが、本来、サラッと話題に出てくる概念ではない。

 

「しかし少年の言うことにも一理ある。確かに強要される自殺は他殺だ」

 

冒頭の話に戻った。

 

「でも、どうだろう、そもそも自害は望んでやることじゃない。としたら、行為としては”した“のだとしても、必然的に“やらされた“ことになるんじゃないかい?」

 

なるほど鋭い。中学生男子を少年呼びするダウナーお姉さんに相応しい洞察力だ。

 

「そのアウラさんは悩みでもあったんですか?」

 

会話を膨らませる。先ほどの例えで言えば、社会に自害させられた的な話になるはずだ。

 

「いや、闇のゲーム的なモノに敗れて、自分で設けたルールで死んだだけだよ」

 

なんだ、ただの自爆じゃないか。

 

「今はFXで生計を立てようと日々、パソコンと睨めっこだ」

 

上がるか下がるかを賭けるのが彼女の性にとても合っているそうなんだ、と捕捉が入る。待ってほしい、それはバイナリーオプションだ。FXじゃない。

 

「とにかく変動が大きいのが好みみたいでね、彼女の専門はトルコリラだ」

 

どうであれアウラさんが再び社会に自害させられる日は近い。来世で真っ当に生きることを願うばかりだ。

 

「少年の方に気になる人はいないのかい?」

 

唐突に話題を振られる。そう言えば、この会話は今年、気になった人から入ったのだった。

 

「ほお、近所のお姉さんの頭にツノが。ふーん、それにウワサで火まで吹いたと」

 

気になる高校生のお姉さんの話をあげた。いきなり人に話して信じられる話じゃないのだけれど、アグネスタキオンさんにはバカにされない自信があった。

 

「それはドラゴンとのハーフだね。間違いないよ」

 

意外な答えが変えってきた。にわかには信じがたいが、ドラゴンの方のお姉さんは火を吹いた件で学校を休んでいるので、気になっていたのだ。どうやって接したらいいか聞いてみる。

 

「そう気にすることでもないさ。最近はツノが生えているぐらい一般的だ。翼が生えてたり、その上、頭に変な模様が浮かんでるヤツだってたくさんいる」

 

そうだろうか?まあ、ウマの耳と尻尾を持ってる人にそう言われたのだから信じるしかない。

 

「お見舞いでも持って行ってあげたらいいんじゃないかい?ドラゴンの子だから、きっとアレとかが好きだよ、ほらゴボウとニンジンを炒めた、あの...」

 

きんぴらごぼう?と半信半疑で聞き返す。

 

「それだよ、それ!」

 

このお姉さんを信じていいのか、わからなくなってきた。

 

「話を切り替えよう。今年、気になった映画だとどうだい?」

 

コロコロ話題が変わる。

 

「うーん、印象に残ったのはゴジラとか...」

 

封切りは2023年だけれど、僕が見たのは2024年だった。

 

「最初にゴジラが出てきた時に、イメージする怪獣っていうよりもモンスターっぽくって驚きました」

 

素直な感想を言う。

 

「ふーん、私が最初に見たゴジラも怪獣というよりはモンスターだったけどねぇ」

(注:アグネスタキオン 1998年生、エメリッヒ版GODZILLA 1998年公開)

 

現代の感想に昔の話をされると話の腰が折れる。

 

「あっ、あと映画じゃないけれどCGのガンダムを見ました。なんか変わってて面白いなって」

 

「私が最初に見たガンダムもCGだったよ」

(注:Gセイバー 1999年放送)

 

だめだ、シリーズ物以外の話をしないと昔の話をされてしまう。と言うか、何歳なんだ、この人?

 

「ゲームっ、ゲームですけど、8番のりば、って言うのをやりました」

 

なんとか話題を絞り出す。話題が尽きた時の友達の友達ぐらい気まずい。

 

「あぁ、ゲームか、それなら話題がある」

 

ゲームプログラマーに知り合いがいるんだと話し始めた。結局、人の話じゃないか、と思うが気にしない。

 

「彼女はのあ先輩だ」

 

やけに縦に長いスマホを掲げられる。女性の画像が写っていた。

 

「ゲームプログラマーの魔族でもある。言葉巧みに同僚男性を誘惑している。誘惑ののあ、の2つ名を持つ」

 

想像以上に魔族は社会に浸透している。

 

「今年の7つの大罪のいくつかを兼任しているからね、魔族としての実力では七崩賢以上だ」

 

よくわからないが数字がついてる系の強者の集まりであることはわかる。

 

「危なくないんですか?」

 

魔族が社会に紛れている、という言葉上のイメージから感想を述べる。

 

「現代社会では社会にコミットしてくれる存在であること、以上は中身を問われていないんだよ」

 

なんだか難しい話をされた。

 

「つまり、社会に貢献してくれるなら、中身が魔族だろうとドラゴンのハーフだろうと何かを擬した人だろうと気にしていないのさ」

 

確かにプライベート保護の名目で本人の属性を隠せるようになってきている。

 

「のあ先輩のオモテ面は優秀なプログラマーだ。何せ去年まで社内SEをワンオペしてコスプレしていたらしいからね」

 

ん?それは別の人だったか、と自問自答している。だんだんこの人、適当に言ってるだけなんじゃないかと思えてきた。

 

「社会に紛れる魔族は他にもいる。彼女は暴食のモチヅキだ」

 

同じく縦長スマホに女性が掲げられる。

 

「その人、コイツ食べていい、ってセリフを言いませんか?」

 

2つ名から完全にそう言う系のキャラだ。

 

「そんな露骨なことは言わないよ。それでは人にバレてしまうだろう。ただ何かを叫んで爆買いはするそうだが」

 

どのみち危ない人じゃないか。

 

「一つ言えるのは何かしら強烈な個性を持っている人間は魔族みたいなものだと言える訳だね」

 

まとめに入ろうとしている。

 

「待ってください。この公園の間取り、何か変ですよ」

 

ここに来てからずっと気になっていたことを打ち明けた。

 

「いいですか、この公園の上から見た図を間取りとして書きますね」

 

えぇ!?、とお姉さんの方がついて来れていない。

 

「公園の真ん中を囲むようにベンチが並んでいますよね。この真ん中、こんなにスペースが要りますか?まるで何を祀っているような」

 

サッカーでもできるようにしてあるだけじゃないかい、とお姉さんは訝しんだ。

 

「いいえ、そこの看板を見て下さい。『この公園でボールを使った球技を禁じる』と書いてあります。この公園ではサッカーはできないですよ。球技を禁止している公園にしては広すぎます」

 

だとして何だって言うんだい、という反応が返る。

 

「これは僕の推測になるんですが、この公園は元々、古代人の祭祀場だったんじゃないでしょうか」

 

見てください、と言って近くの砂を拾い上げる。

 

「このところどころ混じっている紫色の粒。これ、毒です」

 

「!?、じゃあこの平穏な公園が、かつては生贄を捧げる凄惨な処刑場だったってことかい?」

 

頷きを返しつつ、畳み掛けるように続けた。

 

「それに、さっきの看板の文章、何か変じゃありませんでした?ボールを使わない球技だったら良いって言ってるんですよ」

 

歴史上、ボールを使わない球技をしていた文明と言えば...と答えを促す。

 

「古代マヤ文明、生贄の頭を使ったサッカー!?」

 

「えぇ、ここで同種の儀式が行われていた可能性があります」

 

流石に男子中学生を少年と呼ぶお姉さんは察しがいい。

 

「それだけじゃないんです。この公園、入り口に鳥居が立っていますよね」

 

あぁ、でもそれは珍しいにしてもそこそこあるだろう、と返ってくる。その通りだ。

 

「えぇ、でもそれは鳥居が一つしかなかったら、です。この公園は三方の出口それぞれに鳥居が立っているんです」

 

間取り図をさしながら出口を三つ叩く。鳥居は現世と神代の空間を分ける門だ、入ったら同じところから出なくてはならない。つまり複数あってはならないのだ。

 

「三門鳥居だ、この公園自体が巨大な三門鳥居になっている!」

 

「そう!」

 

公園に入った時から感じていた疑問が解決する。そもそもこの公園は通学路に急に現れていた、その時点で怪しむべきだったのだ。8番のりばをやっていて、なぜその時点で引き返さなかったのか。

 

「そうだとしたら大事なのは出る門です。ここが三門鳥居の中だとしたら、一つは死に、一つは黄泉に、一つは不死につながっていることになります」

 

悔やんでも仕方がないので、現状を冷静に分析する。

 

「参ったな、どの門から入ったなんて覚えていないぞ」

 

くっと言葉に詰まる。確かにそうだ。この公園は中心を対称に均等に作られているので、どこから入ったか分かりづらい。

 

 

 

 

無情に時間だけが流れる。

 

 

 

 

「ここを起点に色々な世界が混じってしまったんですよ。だから魔族やドラゴンのハーフなんて不思議な存在が入り込んでしまった」

 

苦し紛れに氷解した疑問を口にする。

 

「確かに、ドカ食い気絶する女性がこの世にいるなんて、とは思っていたんだ」

 

お姉さんの中で同僚男性を誘惑する27歳女性はまだセーフだったようだ。

 

「色欲か食欲か、せめて間を取って欲しいですよね」

 

中学生ならぬ感想を口にした瞬間、はっ、と何かを思いつく。

 

「---------間、だ。間ですよお姉さん。この公園にあって三門鳥居にはないものがあるじゃないですか」

 

「---------------------------どうやら、気がついたようだな」

 

—————-—— !? ————————-

 

「宗像先生!」「宗像教授?」

 

ぬっと存在感のある海坊主のような黒ずくめの男が現れる。宗像 伝奇(むなかた ただくす)、説明不要の東亜文化大学、民俗学教授であった。

 

どうしてこんなところに、と問いかける。

 

「わしも出雲地方の野山を調査中に山肌が偶然崩れてな。そこに現れた洞窟に入ったところ、この公園にたどり着いた」

 

応答を手で制し言葉を続ける。

 

「いや、そんなことよりも少年が気がついた違いこそが重要だ」

 

なぜこの公園には間があって、三門鳥居には間がないと思った?と聞き返される。

 

「三門鳥居には3本の柱しかないからです。鳥居がそれぞれ柱を共有しているので、鳥居の間(あいだ)がありません。でもこの公園の鳥居は3つ離れているので、それぞれに間があります」

 

先生が頷きを返した。それは正解を示している。私の授業を受けているサルのような学生たちよりも聡明だなと評価された。

 

「最初に少年が言った通り、鳥居がそれぞれ死と黄泉と不死に繋がっているとしよう。しかし、どれを選んだとて元には戻れないことに違いはない」

 

宗像先生は不死など必要でないと言い切った。僕もそうだ。しかし、それではここには迷い込んでしまった時点で引き返すことが出来ないことになる。

 

「3つのどれも選ばない、のだとしたら、正解は間を行くことだ」

 

自分の思いつきに自信がつく。そうだ間こそが行くべき道だ。

 

「でも、そうだとしてどの間を選べば....」

 

決断を下したとして選択肢が3つなのは変わりがなかった。3つの鳥居の間には3つの行き先があるのだ。

 

「私は不死を選びたいところだがね」

 

お姉さんが冗談のように言った。それでも良いのかもしれない。

 

「いや、アグネスタキオン君。キミは私たちがどこに行くべきか知っているはずだ」

 

それはコッチだな、と宗像教授が指を指した。

 

「ああ、本当に敵わないね。その通りだよ」

 

早く行きたまえ、と手をシッシと動かす。

 

「コッチだな。行こう、少年。ただ、絶対に振り返ってはならない」

 

お姉さんに背を向けて宗像先生は歩き出した。

 

「さあ行きたまえ少年。でも絶対に振り返ってはならないよ、本当に、絶対に、だ」

 

背筋が凍る。背を向けたお姉さんの方向からタダならぬ気配がしたからだ。蛇に睨まれたカエル、という言葉を身をもって知る。

 

先生と共に公園の茂みに向かって歩みを進める。なぜ、お姉さんを置いていくのか、なぜ先生は進むべき方向を知っているのか、何もかもわからないまま茂みが深くなっていった。まるで野山のように。

 

「あそこは場所そのものが『間』だ。現世と神代のはざまにあるとも言える。そして、それは『魔』であって『真』とも言えるのかもしれない」

 

宗像先生が僕に向けて話を始めた。

 

「そして、彼女の立派な耳と尻尾を見たろう。彼女もまた『馬』なのだ」

 

そんな、と思わず声が出る。どうであれ楽しく会話をした印象から害のある存在であったと思えないのだ。

 

「いや、理解の及ばぬモノ全てが敵であるわけではない。彼女は少年に帰る道を促していた。おそらく存在としては善だったのだろう」

 

もう振り返っても大丈夫だろう、と先生が深呼吸をしながら言った。

 

振り返ってみる。そこはもう野山になっていて、その先に公園があるとは到底思えない場所に来ていた。

 

「さて、まずはここがどこからか調べないとな」

 

宗像先生が切り出す。

 

「出雲地方の山の中ですね」

 

スマホを見ながら答えた。GPSの正しい使い方だ。

 

現代っ子には敵わないな、と先生が笑いだしたので、一気に緊張が解けた。

 

「でも先生、なんで帰る方向がわかったんですか?」

 

少なくとも選択肢が3つあったはずだ。

 

「それは簡単だ。『間』は漢字でなんと書く?」

 

門の中に日...、あっ、太陽だ。あの公園は謎の空間だったけど確かに太陽はあった。その方向に進んできたんだ。

 

京都まで送って行こう少年、と先生が提案してくれた。でも、なんで京都に?

 

「馴染みのお祓い師がいる。わしは気になどせんが、一応、受けておいたほうが安心だろう」

 

続けざまに話を続ける。

 

「それに、もう今年も終わる。せっかく年末の西日本まで来たのだから、今年の漢字ぐらい拝んで帰ってもいいだろう」

 

肩の力を抜いて、先生が言った。

 

「まっ、わしらの今年の漢字は『間』で決まりだがな」

 

ハハハ、と笑い声が出雲の山中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少年はもう帰ったろうな」

 

アグネスタキオンは佇みながら想いを馳せた。

 

この空間には寿命がある。それが大体1年だ。だから1年の間のさまざまな思念ここに流れついて現実を改変する。

 

そして、1年でここは綺麗さっぱり消え去って、次の新しい年が始まるのだ。

 

「でもその前に...、いるんだろうロボット君。のぞきは感心しないよ」

 

「気づかなければ助かったのに・・・」

 

子供騙しのようなロボットが茂みから現れた。

 

「消え去る前に何もかも私の研究の糧になってもらうよ」

 

今年、最後の戦いが始まる!

 

 





来年もいい一年になってほしいですね。

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