ガンダムビルドダイバーズRe:RISE、その最終回で描かれることのなかった幕間のお話。

※pixivに上げていた小説を一部修正して投稿しています(最終話 幕間)

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ビルドダイバーズリライズ最終話の描かれなかった部分にこんなことがあったかもなぁ、などと考えて書いた話になります。


キミと話したい、数えきれないような世界の話

 GBN全部を巻き込んだアルスの侵攻から少しだけ経ったある日のこと。

 

 エルドラからの帰り道、もはやいつもの場所と化したテラスでふとカザミがつぶやく。

 

「そういやよぉ、エルドラからGBNにってのは行けないもんなのかねぇ」

「エルドラからですか? ・・・うーん、どうなんでしょう。僕らが行くのはフレディが呼んでくれるから簡単ですけど、逆にフレディがこっちに来るのは・・・僕たちが呼べば来られるんでしょうか?」

 

 カザミとパルの何の気のない会話だが、確かにそれができるかを考えたことはなかった。

 メイとしてはどちらの世界も同じ現実として地続きだが、フレディからするとGBNは遺跡から覗く全くの異世界だろう。

 

「でももしフレディがGBNに来てくれたらきっとすっごく楽しいですよね!」

「お、おう、そう!そうなんだよ!フレディ達とよ!そんな話をして、話をしたんだよな!」

 

 なぜか挙動のおかしいカザミを横目に、口元に手を当てて少し考えてみる。

 

「おそらくは、エルドラの民がGBNに来ることはかなり難しいだろう。私たちがエルドラに行くことができるのは、そもそもこの体が電子でできた情報として、GBNとエルドラをつなぐゲートを通ることができるからだ。フレディやマイヤの場合、肉体を情報として変換する術がない。アルスのGBN侵攻こそ例外的で、元が私と同じ電子情報体だ。ましてゲート自体が古代エルドラ人の作り出したものだ。今の人類にはオーバースペックもいいところだからな。クアドルンでさえ、あの遺跡のすべての機能を使いこなすことは難しいだろう。・・・まあ、フレディ達がGBNに来ることができるなら、私も歓迎したいと思っているが。」

「まーそうだよなぁ。ってかフレディがこっち来たら、誰があの遺跡操作するってことでもあんのか…。」

「もしフレディがGBNに来たら、案内したいところが山ほどありますよね!もしかしてフレディ用のMSを作ったら、フレディが動かせたりして!」

「おっ、それいいな!なんのMSにするよ?やっぱ犬をイメージしてバクゥとかか?」

「いえ、フレディなら・・・。」

 

 もしもフレディがGBNに来たら。そんな話を楽しそうにカザミもパルもしている。

 カザミの声は体格もあってか声量があってよく通る。パルも声変わり前特有の聞き取りやすい高さを持つ。その二人がワイワイとあーだこーだと話しているにもかかわらず、ビルドダイバーズの残りの一人、ヒロトはぼんやりと階段下を眺めている。

 

 エルドラをめぐる戦いの後、いや、あの告白からか。ヒロトはずいぶん変わった、と思う。

 初めのころの自分以外を信用しないことを全身で主張していたとげとげしさとも、エルドラの危機に真摯に向き合った時とも違う。星を救う重圧が変えていた部分もあったろうが、それ以外の要因による変化が大きい。

 というよりも、これが本来の気質なのかもしれない。穏やかに、少しだけ表情を変えるような感情表現をよく見せるようになった。また、ぼけーっとした顔でぼんやりと聞いているだけの時もある。

 

 しかし何だかんだで話は聞いているし、ビルドダイバーズのエース兼司令塔としての知見からの鋭い意見を振るうのだから侮れない。

 

 今日はどっちだ・・・? さりげなくヒロトの表情から考えをうかがう。これは本人には内緒だが、ヒロトがぼーっとしている時の表情から、”考えている/考えていない”を当てるゲームがビルドダイバーズおよびエルドラの住民たちの間で流行っていたりする。カザミとパルもヒロトの様子に気づいてか、穴が開きそうなほど真正面からヒロトの顔を読み解こうとしている。

 突然辺りが静かになったからか、ヒロトもようやく自分を見つめる3対の視線に気が付いたようだ。

 

 少し身じろぎをして、同じく少しだけ眉をひそめる。それなりに回数をこなしたゲームであるため、ヒロトが考え事をしていたことがメイにも分かった。ちなみに正解率はカザミ・パル・メイの順である。なお、フレディはメイとどっこいだ。リーダーを名乗るだけあってカザミは人をよく見ている。

 ともあれヒロトである。視線から解放されないことに苦笑いをしつつ、口を開いた。

 

「いや、逆のことを考えていたんだ。」

 

 エルドラからGBNの方法についてと思っていたが違ったようだ。パルも同じ考えだったようで意外な顔をしている。

 

「逆ってことはエルドラにってことですよね。確かにエルドラにたくさん人が来てくれたらGBNでなくてもすごいことができるかも!逆転の発想ですね!!」

「んー、いやパル。そうじゃねぇと思うぞ。なあ、ヒロト」

「どちらかというとカザミの方だな。・・・エルドラを見せてやりたいなと思ったんだ。」

 

 直接本人から聞かされたとはいえ、ヒロトの過去は容易に踏み込むことができない重みがある。

 私や姉さんよりも前にいた、最初のエルダイバー”イヴ”。ヒロトの口からその名が出るとき、少しだけ影が濃くなる気がする。

 口を出せない気配を察したか、ヒロトが再び苦笑いを浮かべる。

 

「いや、現実世界で俺の背中を押してくれた人がいるんだ。俺の、俺たちがつかんだものを、胸を張って自慢というか、紹介したいなって思ってた。でもエルドラに来るには制限があるし、カザミの暑苦しい配信を見てもらうので我慢するしかないなって。」

 

 いたずらっぽくカザミに視線を向けるヒロトの物言いは、会ったばかりの頃には絶対に見せなかった一面だ。歳が近いからか、ヒロトはカザミ相手にはこうした稚気を見せる。それがなんとなく気に入らない。だから話を横からかっさらうことにする。

 

「たしかヒナタ、といったか?」

 

 私が名前を知っているのが意外だったらしい。驚いて目が大きくなっている。あまり見れない表情だ。気をよくしてネタ晴らしをする。

 

「シドーマサキが目を覚ました時に、彼の姉と一緒に付き添っていたのだろう? 運営を通して連絡が来た時にそのあたりの話も私は一緒に聞いていた。」

「へぇっ! 俺たちが直接対決してる間にシドーマサキにあのねえちゃんと一緒に付いていてくれたってわけか。ってかそのヒナタちゃん?って子とはどーゆー関係だぁヒロトォ?」

「カザミお前、近いぞ…。」

 

 カザミとヒロトはやたらと距離が近くなる時がある。無理やり肩を組んでぐりぐりと頭を押し付けるカザミを、嫌そうに、でも無理に振りほどくことはしないヒロト。ふとパルと目が合う。アイコンタクト。お互いの言いたいことが瞬時に伝わった。これも仲間の証ということだろうか。

 

「俺の幼馴染で、シドーマサキのお姉さんは部活の先輩だったんだよ。全くの偶然だったけど、シドーマサキのことを知って、力になれたらってミズキさんにずっと付いていてくれたんだ。

・・・それに、俺がGBNを曲がりなりにも続けられたのも、こうしてお前たちに会ったのも、ヒナタが後押ししてくれたからなんだ。・・・ちょっといい加減離れろ!」

 

 好奇心をむき出しにして鼻息荒くヒロトに迫っていたカザミを、ヒロトが強引に引きはがす。代わりにパルの瞳が輝きを増していることには気が付いていない。おそらく遠からず同じことをパルにすることになるだろう。

 

「ったく…。ちょうどカザミに路地裏に連れ込まれた日、俺を見かねてガンダムベースへ連れ出してくれてたんだ。それからもまあ、色々と助けてもらってる。」

「ほぉー。それじゃあヒロトのGBN復帰の大恩人ってわけだな。」

「いや、恩人っていうのは大げさじゃ──」

「そうですよ! ヒロトさんがGBNに復帰するときの恩人なら、僕たちにとっても恩人みたいなものじゃないですか!!」

 

 ヒロトの恩人がビルドダイバーズの恩人になった。さすがに飛躍が過ぎるのではと思ったが、続く言葉は確かに一理あるものだった。

 

「だって僕がビルドダイバーズにいるのもヒロトさんを見て一緒に戦えたらって思ったからなんですよ! ずっと勇気が出なくて一人だったんですけど、思い切ってヒロトさんとカザミさんに付いていったらフレディに会えて、ビルドダイバーズが始まったんですから! ならそのヒナタさんは僕にとっても恩人みたいなものですよ!」

「…たしかにそれはあるな。俺もヒロトと組めば隠しミッション行けんじゃね、ってとこから始まったわけだしな。」

 

「いや、さすがに飛躍しすぎだろう・・・。メイからも何か言ってやってくれ。」

「そうだな。・・・私があの路地に行ったのはパルの悲鳴を聞いたからだ。つまりヒロト、お前があの場にいなければパルもいなかったし、私も行かなかった。と、いうことになるな。」

「おう、そうだな。俺たち全員がエルドラに行くきっかけを作ったのがヒロトなんだから、そのヒロトを後押ししたヒナタちゃんは俺たちの恩人でもあるよな。」

「お前ら悪乗りしてるだろ・・・。」

 

 私たちの始まりはあきれるほど他人の集まりだったわけだが、それでもフォースとしてミッションをこなして行けたのはヒロトの力が大きいことに間違いはない。一つ目との戦闘におけるヒロトの活躍はすさまじい。指揮戦術に全体のフォロー、それらをこなしつつもビルドダイバーズのエースなのだから恐れ入る。

 機体の特性をがらりと変えることのできるプラネッツシステム在りきとはいえ、いかなる状況でも十全に性能を使いこなすのは並大抵の腕ではない。

 当時を思い出したか、カザミとパルは渋い顔をしているが。

 

「初めのころの僕らって、ヒロトさんにおんぶにだっこでしたからね・・・。かなり助けられていた記憶がありますよ。・・・思い出すのは結構恥ずかしいですけど。」

「あ゛あ゛あ゛ー、思い出したくもねぇ。でも正直実際セカンドミッションというか、村の防衛戦なんかヒロトいなかったらヤバかったからな。マーズアーマーなかったら突破されてたわけだしな。」

「村に地雷敷くでしたっけ?」

「ばっ、お前それをいうなって!!」

 

 また話がずれ始めている。だがこういう付き合い方も悪くないものだ。せっかくなので乗ってみる。

 

「そういえば何度かカザミに射撃を邪魔されていたな。」

「メイ、おめーもかよ…。っていうか今思うと俺、お前に殺されかけてたんじゃねぇか! よく生きていたよ、俺!」

 

 一通りワイワイと当時を振り返る。振り返って笑える話をできるのがこんなに楽しいことだとは知らなかったな。自分を世話してくれている人たちが嬉しそうに話していた意味をようやく実感をもって体験できている。

 

「──まあとにかくだ。ヒロトの復帰ってのもそうだし、シドーマサキの姉ちゃんのフォローだってやってくれてる。俺たちにできない部分をやってくれてたってんなら、エルドラに無関係ってわけでもねぇんんだ。エルドラに来てもらったっていいんじゃねえか?」

 

 一通りじゃれあってから真面目な顔に戻ってカザミが言う。ヒロトに、というよりも私たちへの確認だろう。本格的にガンプラを嗜む人間ではないらしいから、一時的なメンバーになるかもしれない。だがそれでも、エルドラへ招くということはつまりビルドダイバーズに新しいメンバーを加えるか否か、そういう話でもある。

 

「さっきまでの話は大げさなところもありましたけど、実際に思っていることでもあります。僕はヒナタさんをビルドダイバーズの一員として迎えてもいいと思います。」

 

 カザミもパルも、そして私も一人だけでは何も足りることがないということを知っている。それを補うことができるのが、フォースであり、仲間と呼ぶものだろう。ならば私の答えは決まっている。

 

「エルドラへのゲートを通ることができるのは私たちビルドダイバーズだ。ならばビルドダイバーズとしてフォースメンバーになれるのなら、エルドラ行は問題ないだろう。・・・よし、これで全員一致だな。 カザミ!」

「おう! リーダーとしてヒロトに、ヒナタちゃんを連れて来ることを命じる! そんでビルドダイバーズ入りだ! ・・・全員これで文句ないな!?」

 

 力強いカザミの言葉に笑みを浮かべる。パルは尻尾を振っている。

 そして3人でヒロトを待つ。

 ヒロトが飛び出しそうな言葉を抑えるように口を閉じ、そして開いた。

 

「わかった。・・・リーダー命令じゃ仕方ないからな。」

 

 この期に及んで憎まれ口をたたくヒロトに、自身がファンネルへと姿を変えたカザミがとびかかっていった。

 

 

***

 

 

 夕涼みにベランダへ出ると、すぐにヒナタが顔を覗かせた。手にはアイス。考えることは同じらしい。

 

「今日は暑かったねー。もう干からびちゃうかと思った! だからこのアイスは自分へのご褒美なのです。なーんてね。」

 

 照れ笑いを浮かべるヒナタはいつも通り朗らかで、どう話を切り出すべきか迷う。

 ひとまず返事はしておく。別にアイスを食べることくらい構わないんじゃないかと言っておく。それでも夜中に甘いものというのは女の子にとっては大変なことなんだからと冗談めかして笑っている。

 その後もヒナタの話は止まらない。なんでも今日はミズキさんと買い物に行ってきたらしい。二人でウインドウショッピングをして、ガンダムベースで甘いものを食べて。ああ、だからアイスに罪悪感があったのか。一人密かに納得する。ヒナタに限らず、女性の買い物や甘いものにかける情熱はすごいものがある。

 

(母さんもセールの時はこんな風だったな…。)

 

 口に出すことはしない。父から学ぶことは多いのだ。

 

 うれしいことを嬉しそうに、悲しい何かを悲しそうにと、余すことなく伝わる感情とくるくると変わる表情を見ているだけで楽しい。そんな風に思うのはずいぶんと久しぶりのことだった。

 

 ヒナタとはいつも一緒にいて話をしていたけれど、こんな風に気持ちを広げるように話す姿は久しぶりだ。いつからだったろうか。…考えるまでもない。あの日からだ。

 

 イヴの願いを裏切ったと、そう自分に失望してからだ。

 

 そんな自分を、ずっとヒナタは気遣ってくれていた。付かず離れず、ただそばにいてくれた。あまりにも自然だったから、ヒナタの包み込むような優しさに気が付くのがずいぶん遅れてしまった。

 

「なあ、ヒナタ。今度一緒にGBNをやらないか。」

 

 だから自然に言葉が出てきた。

 

「ヒナタが俺の背中を押してくれたこと、感謝してる。だからさ、今まで俺がGBNで、エルドラでやってきたこと、ヒナタのおかげで出来たことを、ヒナタに紹介したいんだ。」

 

 言い切ってから反応を伺う。思えばGBNに誘ったのは初めてのことだ。

 ヒナタからすれば、今になってどうしてという戸惑いもあるだろう。カフェで働き始めてガンダムの知識を増やして。それでもビルダーというわけではない日向からすれば、この誘い自体どうしたらいいか困ることでもあるだろう。

 

 ただ、それでもエルドラを一緒に見てほしいと思った。

 

「ええっと、うーん…。私を誘って大丈夫なの? その、ヒロトのお友だちとか…。ヒロトと同じチームの人しか行けないんでしょう?」

「そこはみんなで話して問題ないってことになってるから大丈夫だ。」

「どうして? だって私、全然何にもしてないよ?」

「ヒナタはそう思うかもしれないけど、俺はヒナタがしてくれたことを覚えてる。GBNを諦めないでいたことも、こうして前を向けたことも、ヒナタのおかげなんだ。」

 

 正面から改めて、なんてなんだか気恥ずかしくもある。でも本当の気持ちだ。自分のことだけでいっぱいいっぱいだったあの時期を、ずっと支えてくれたこと、感謝しているのだ。だから、この気持ちだけはまっすぐに、そのままに伝えたい。

 

「今更になったけど、ありがとう。ヒナタには、本当に感謝してる。いくら言っても足りないくらい、本当にだ。」

「え、ええぇ・・・!」

 

 感謝の気持ちを伝える方法が他に思いつかないから、頭も下げる。

 じっとそのまま頭を下げ続けていたら、髪にヒナタの手が触れた。さわさわと撫でるように、俺の伸びた髪を手櫛で梳いていく。そして両手で頬を挟み、ぐいっと持ち上げられた。

 

「ありがとうって言うなら、目を見て言って。」

「あ、ああ。そうだよな。えと、ありがとう。」

「はい、どういたしまして!」

 

 ヒナタがにっこりと笑う。名前の通り、心温まるような優しいほほえみだ。

 

「それで、どうかな? ヒナタがシドーマサキに付いててくれたことはみんな知ってる。俺たちが戦っている間、ミズキさんに付いていてくれてた。それは俺達にはできなかったことで、足りなかったことだ。それに──。」

「それに?」

 

 みんなが言ってくれていた言葉が頭をよぎる。自分をGBNに復帰させてくれたことが全てのきっかけになったのだということ。・・・やはり過大な評価だと、そう思う。だから代わりに心の内を明かす。

 

「俺たちのことを知って、応援してくれた。一緒に戦ってくれた。ヒナタの祈りに確かに力をもらったんだ。だから、ヒナタに、見て欲しいんだ。俺たちが守ったもの、俺が、頑張った結果をさ。」

 

 柔らかなとび色の瞳に自分が映っている。・・・じっとこちらを見て、そしてふわりと笑った。

 その時、すべてお見通しなのだろうなと、ふと思った。

 イヴを失って自分をなくしていたこれまでも、一緒にエルドラを救うために頑張ったことも。

 自分を信じて受け止めてくれていたのがヒナタだ。

 きっと、自分なんかよりもよほど”誰かのために頑張れる”ヒナタなんだろう。きっとこの先もずっとだ。

 だからヒナタと並び立てる自分でありたい。"誰かのために頑張れる"、そんな自分でありたい。それは決して外すことのない信念だろう。

 

「そっか。・・・うん、じゃあGBNにお邪魔しましょうかね!」

 

 真剣な表情に愛嬌が戻ってくる。自分の思いをすべて差し出したお願いが無事に通ったことに安堵する。だがヒナタの思考と表情はそんなヒロトを置き去りにするほどに速い。

 

「あ! もしかしてこれってつまりオンラインミーティングってコト!? ねぇヒロト! GBNって登録するときにアバターっていうのを作らなきゃいけないんだよね?? じゃあどんな風にしよう? どんなのがいいかな!? そうだ、ベアッガイの手入れしておかなきゃ!!」

 

 とたんにはしゃぎまわるヒナタに自然と笑みがこぼれた。自分の好きなあの世界を、ヒナタにも好きになって欲しい。そう願う。きっとそんな願いなんて必要ないくらい、ヒナタはあの世界を好きになってくれるんだろうなと思いながら。

 でも少しでも楽しんでもらえるように努力は必要だ。初心者には優しくしなくちゃならない。カザミからの受け売りだが、まあ事実だろう。GBNとエルドラのエスコートプランを考えておかねば。

 などと思いながら、アバターならいつも通りで大丈夫だと答えたら、つねられた。なぜだ?

 

 

 

***

 

 

 

 お休みと挨拶を交わしてから部屋に戻り明かりをつける。

 机の上のコアガンダムⅡを手に取り、写真立ての前に立つ。

 

 こまめに手入れをしているからその写真には埃の一つもない。けれど、ハンカチを取り出して丁寧に拭き上げる。

 コアガンダムとこの写真だけがイヴの残したすべてだと思っていた。

 

 ひたすらに面影を探して、足踏みをし続けていた。でも無理やり連れ込まれたなんの代わり映えのない路上から、エルドラからGBNすべてを巻き込む大きな戦いを経て、ようやく君のいる世界を見つけることができた。

 星を救うだなんて、どんな大きな回り道だろうか。──でも、俺がそう話をしたらきっと君は笑ってくれると思う。

 

 いつか、君にもう一度会えたなら。

 話したいことが、きっと語りつくせないほどあるんだ。

 新しくなったコアガンダムと新たなアーマーのこと。一緒に作り上げたコアガンダムが、プラネットシステムがどれだけ助けになったのか。

 今なお増えているという、88人の君の妹たちのこと。

 みんなの願いにあふれる、君が望んだ世界のこと。

 

 

 ──そして、”誰かのために”俺がどんなに頑張ってきたかっていうこと。

 

終わり




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