仕事をバリバリしている上に年下の彼氏と同棲をはじめたので中々実家に帰省する機会のなかったバーソロミューだったが、ある夏の数日間パーシヴァルが出張に行くということで自身も休暇を取り実家に帰省することにしたバーソロミューだったが
pixivより転載

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【現パロパーバソ】ぬいぐるみのパーシー

 久しぶりに帰って来た実家は、なんとなく小さく見えた。それは自身が大学に進学する際にひとり暮らしをはじめてからも身長が伸び続けたためもあると思う。そのあと勝手に就職先を決めて勝手に好きなように働いていたから親不孝にもほどがあると、バーソロミューは自分でもそう思った。

 でも現代社会は便利なもので、電子ツールが人の心の距離を縮める。大学に進学した時点で携帯電話による通信手段はできていたし、今は親もスマートフォンのLINEなどに適応している。適応ついでに「実は私はバイなんだ。今は年下の彼氏がいる」と言ってみたらスタンプがいっぱい送られて来たのち、「で、どんな彼氏?」「画像見せて」と両親共々言われたときはさすが私を生んだ親だ、と深く頷いた(そして画像を送った)(「誠実そう過ぎて吃驚した」「え、本当に若くない? ウチの息子犯罪してる?」と言われたときはさすがに怒ったが)。

 バーソロミューがこの夏の日に帰省したのは、偏にその「年下の彼氏」が出張に行ったからだ。夏の休暇を取ろうと思っていたバーソロミューは、これを機に実家に帰省して見るのもいいかと思った。……別に、折角の夏を年下の彼氏――パーシヴァルと過ごせないことに怒ってなどいない、と己に言い聞かせるバーソロミューだった。

 兄弟姉妹は実家にいない。皆仕事だと言う。この時期に休みを取れたバーソロミューが奇跡的だったのだろう、そう思いながら母の作ってくれた手料理に舌鼓を打った。

 そして、長いこと不在の息子の部屋が物置にされていることも想定内だった。ベッドの上の荷物を空けてとりあえず寝床を確保すると、埃っぽい部屋に風を通すために窓を開いた。熱風が吹き付けて来る。暑いのは都会も田舎も今や同じだ。そう思いながら、ついでに押し入れも開けてみることにした。

 そこには懐かしい、今やセンス的にもサイズ的にも着れない服が並んでいて――ふと、1番下の床に、箱が置いてあるのが見えた。

 それを引っ張り出すと――それはぬいぐるみの居場所だった。

「へぇ、懐かしいな」

 やや埃っぽいそれらを手に取りながら思い出す。

 幼い頃、誕生日やクリスマスプレゼントになぜか犬のぬいぐるみを買い与えられることが多かった。少し長じて欲しいものをバーソロミューの口から求めるようになってからはぬいぐるみを買い与えられることはなくなった。そしてぬいぐるみに添い寝してもらうこともなくなり、押し入れに入ることとなった。

 段ボール箱の中のそれらを掴みだしていた中で、ふと、気づいた。

 段ボール箱の中の下の方から、白い塊が見えた。

 グレートピレニーズのぬいぐるみである。

「………………」

 

「あら、ぬいぐるみなんて洗ってるの」

「ちょっとね」

 浴室にて、ぬいぐるみを埃を払って丸洗いしていた息子に母が言う。随分丁寧な手つきを見て、それからぬいぐるみの形状と色を確認して――母は言った。

「あぁ、その子パーシーくんだっけ? 彼に似てるわね。持っていくつもりなの?」

「母さん」

 つい強い口調になったが、彼は否定も肯定もしなかった。

 帰省中はよく晴れた夏空で、やや大きめのそのぬいぐるみも乾ききった。

 そして結局、本当にそのぬいぐるみを持って行ったのである。ニヤニヤ笑いの両親の視線を受けながら。

 

 

 ……パーシヴァルはその夜、年上の美しい恋人との愛の巣に帰って来た。しかし漏れるのは溜息。本来パーシヴァルは休暇だったはずなのだが、急な出張が入り恋人との甘い夏の日々は過ぎ去ってしまった。

 そう思いながら鍵を開けて「ただいま」と声をかける。恋人――バーソロミューは実家に帰省すると言っていた。もう帰って来ているとLINEには連絡が来ていたが……。

「バーティ?」

 薄暗い室内。エアコンは利いている。ネクタイを緩めながら、寝室にまで顔を覗く。

 そこでは、バーソロミューがベッドに腰かけていた。隣には何か小さなものが座している。目を瞬きながらも「起きてるのかい? 電気を点けるよ」と声をかける。

 灯りの中では、バーソロミューがいた。穏やかな笑顔で。

「お帰り、パーシー。出張は楽しかったかい」

「仕事は遊びでないからね。楽しくはなかったよ。君もいなかったしね」

「そうかい。私は久しぶりに実家に帰ってみたが、実に有意義だったよ。友人とも久々に会えた」

「友人……?」

「この子さ」

 そう言って、バーソロミューは脇に置いていたそれを取り上げる。

 それは白い犬のぬいぐるみだった。ずいぶん大きい。

「グレートピレニーズのパーシーくんさ。昔は随分添い寝してくれた」

「……その名前は?」

「あぁ、実家で掘り返したときにつけた」

 そう言って、バーソロミューはぬいぐるみのパーシーを抱えて、キングサイズのベッドに寝転がる。

「あーあ、そっかぁ、楽しくもない仕事だったのかぁ。私は楽しかったけど。楽しくもないことに君を取られたのか。ふん」

 ぬいぐるみを抱えたままバーソロミューは言う。

「随分贅沢な話だ。私は今夜は犬のパーシーくんと寝ることにしよう」

 そう言って本当に布団を被ろうとしたので。

 パーシヴァルはベッドに歩み寄り、バーソロミューの頬に口づけを落とした。

 そしてぬいぐるみを取り上げる。

「あ」

「……ぬいぐるみはあなたを抱かないよ。あなたの相手は私にしておいてくれないかい」

 そう言って苦笑するパーシヴァルを見て――バーソロミューは微笑んで、彼に両手を伸ばした。

 ぬいぐるみはそっと床に置かれ――

「待て君スーツ脱いでない! 高いやつだろうそれ! 君の服は皆高いけども!」

「待ちきれない」

「気持ちはわかるがまずはスーツを脱いで来なさい。ついでにシャワーも! 話はそれから!」

 ぬいぐるみを跨いでからばたばたと走っていくパーシヴァル。そして物憂げに息を吐くバーソロミュー。

 ぬいぐるみは(やってらんねぇ)と思った。

 

 

 

 

 

End.


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