感想などなど、雑談感覚で気軽にどうぞ。
エアロックを抜け、再び静寂の地に飛び出した。
白銀の砂漠にドーム状の栽培プラントが見える。
「C分隊、状況は?」
「敵はプラントから外に移動中、見えるか?」
ドームからオレンジ色の宇宙服がゾロゾロとお出ましだ。
分隊長のハンドサインで我々は散開し、遮蔽を取る。
「視認した、D分隊は戦闘を開始する」
我々は車両バリケードや月面車の残骸を盾に戦闘を開始した。
引き金を引くと熱光線の照射と共に警告音が鳴る。
赤外線を検知しアラートが鳴り響く、今度は敵からの応射が始まった。
隠れてるコンクリートでできた車両バリケードの縁が赤くなる。
熱光線が掠めて熱融解しているんだ。
「古代、40mmHE!」
「はい!」
頭を下げた奥山が古代に怒鳴る。
彼女は遮蔽物の影で手を震わせながら擲弾を発射機に装填している。
「こちら柴井、射角に捉えた」
「遅えぞ」
「すまん、徒歩移動には少し遠かった」
奥山の声と同時に彼の射撃が敵兵士のヘルメットを貫いた。
ヘルメットバイザーが砕け、血飛沫と共に飛び散り輝く。
敵も狙撃手の存在に気がついたのか手榴弾を撒き始めた。
爆発と共に舞い上がった月面の砂は簡易的な煙幕を形成する。
「クソ、奴ら賢いな」
奥山の舌打ちが無線越しで聞こえた。
「古代、擲弾撃ち込んで」
「はい!」
私の言葉に彼女は擲弾を発射する。
煙幕の中で瞬いた爆発。
効果判定はできない。
「野郎ども、加勢しに来たぞ!」
里見さんのAPCが砂埃を巻き上げ到着した。
丁度我々の盾になる配置だ。
煙幕から高速で何かが飛び出した。
背後の塀が飛び散る。
「装甲車!敵の装甲車がいるぞ!」
C分隊からの報告だった。
舞い上がった砂の煙幕が止むと月面用の迷彩を施された車両が現れる。
「不味い!里見さん、退避を!」
「うおぉぉぉ!」
私が言うより先に里見さんがAPCで体当たり攻撃を行う。
体当たり攻撃は敵装甲車の側面に激突し射角を逸らした。
我々の頭上をロケット弾が掠めて行く。
「奥山!今のうちに無反動砲!」
「クソ!里見、持ち堪えろよ」
奥山は背負っていた無反動砲を遮蔽物に委託し照準を定める。
私はケースから551弾薬を取り出す。
無反動砲の薬室に装填、尾栓を閉鎖した。
「装填完了!後方注意!」
背後の隊員が蜘蛛の子を散らすように遮蔽物へ逃げて行く。
後方安全よし、奥山のヘルメットを叩いて合図する。
「里見!退避しろ!」
「やれ!奥山!」
装甲車を塀に押し付けていた里見さんが後進一杯で逃げて行く。
刹那、砂埃が舞い上がる。
足回りに直撃した551弾薬が車輪を吹き飛ばした。
「畜生!足に当たった!」
「次弾装填!古代、閃光弾で援護!」
「り、了解」
古代が閃光弾を慌てながら装填する。
C分隊が背後から接近して来ており、私は退けとハンドサインを送る。
背後に誰もいない事を確認し、尾栓を開放する。
空の薬莢は地面に捨て置き、551弾薬を取り出す。
古代の閃光弾が死にかけの装甲車に命中した。
赤いランプが点灯した。
薬室に装填、尾栓を閉じた。
「ロック アンド ロード!」
奥山のヘルメットを叩く。
「くたばれ車輪付き棺桶!」
放たれた二撃目は砲塔に直撃し弾薬に引火、爆発を起こす。
砲塔が宙を舞う。
「装甲車の撃破を確認!」
「よっしゃあ!」
無反動砲を担いだ奥山と拳をぶつけ腕を組む。
古代も万歳をして喜んでいる。
何かがおかしかった。
「おい、敵歩兵は?」
「装甲車と一緒にくたばったんじゃねぇの?」
部隊内にどよめきが広がる。
赤外線照準器の照準を検知した事を示すアラートが鳴り響く。
「まだ居るぞ!」
誰かが叫んだ、遮蔽に身を隠す奥山と棒立ちしている古代。
彼女は状況を飲み込めてないんだ。
古代のハーネスを掴み遮蔽に引き倒す、右腕に熱と激痛。
撃たれた!
刹那に二撃目が太腿に命中、倒れるように遮蔽へと身を隠す。
「奥山、撃たれた!」
「なんだって!見せてみろ」
奥山が傷口の確認をしてくれている。
「ディスプレイには右腕と左足に減圧警報」
減圧箇所を奥山に共有し探してもらう。
この太っちょのような宇宙服では自分で探すのは困難だ。
熱光線の命中箇所を奥山が見つけてくれたおかげで、応急用パッチによる処置が出来た。
しばらくすれば気圧は戻るだろう。
医療ポーチから止血帯取り出してキツく巻く、無いよりはマシだ。
「里見!負傷者一名回収できるか?」
「まかせろ」
奥山が里見さんへ要請する。
彼は私の手を握りしめた。
「敷島、離脱しろ」
「大丈夫、まだ戦えるよ」
制圧射撃を加えながら里見さんがゆっくりと近づく。
プラントの影に誰かが居る。
対戦車火器を担いだオレンジ色の宇宙服。
「対戦車兵!」
「不味いぞ!里見!」
私は奥山と共に攻撃を防ぐべく射撃する。
倒れ込んだ態勢で負傷した腕に無理を言わせ引き金を引いた。
激痛が走り、照準が定まらない。
閃光と共に砂煙が舞い上がる。
スローモーションのように見えた。
吸い込まれるように操縦席側の装甲に命中。
兵員輸送車が爆発する。
「里見さん!」
応答はない。
輸送車のハッチから宇宙服の兵士が身を乗り出し脱出する。
車外に身を出したその時、胸部を熱光線が貫通した。
里見さんが死んだ。
「クソ、古代!40mmHE!」
「はい!」
40mmの擲弾がプラント壁面へ命中し対戦車火器を誘爆させた。
その爆発でプラント内人工空気に引火、強化テクタイトのドームは内部から破裂する。
宙を舞う破片が太陽光を反射し輝いた。
味方部隊が前進し、残敵を掃討する。
これで仕事は終わりのようだ。
一気に疲労感が身体にのしかかった。
「敷島、大丈夫か?」
「あぁ?」
奥山の問いに私は答えようとした。
なんて言えばいいんだっけ?
視界が暗く狭い、夜になってきたのだろうか?
「敷島さん、しっかりしてください」
すごく疲れた、古代の声が遠い。
「なんだって?声が小さいよ」
私の答えに古代は激しく体を揺さぶってきた。
だんだん暗闇と静寂が世界を支配する。
消える視界に見えた青い星。
今、美紀は何をしているのだろうか?
もう少しでこの話は終わります。
読んでくれた皆様には改めて感謝を述べさせてください。
本当にありがとうございます。