「第一波、着岸!前哨基地へ移動中!」
「投下ポイント到着、迎撃部隊を補足!」
「邀撃隊発艦、降下部隊を守るんだ!」
輸送艦のエアブロックが閉まり減圧が始まる。
手元のISW(統合宙間武装)のFCSリンク良好。
「敷島、奥山!ケツから離れるな!」
「柴井はエアロック出てすぐの甲板に取り付け、いいな?」
「はい」
「了解」
「OK」
班長の城戸さんの指示に私達は返答し身構えた。
彼は歴戦の猛者で任期の浅い私達の班長を務める。
減圧が完了しグリーンのランプが点灯。
聞こえるのは空気の供給音と自身の呼吸のみ、酷く不気味だった。
柴井が輸送艦の甲板に展開されたシールドに取り付くのを横目に城戸さんに追従する。
別班の南原先輩が携行シールドを正面に展開し前進している。
彼女が私達のボスで城戸さんの相棒だ。
「城戸君!狙い撃ちされるよ!」
無線越しに南原先輩の声が聞こえた。
「そこのコンテナに取り付く、南原も早く行け」
「無理しないで、藤野ちゃんが心配するよ」
「余計なお世話!自分の心配しとけ!」
南原先輩に中指を立てて見送ると城戸さんは輸送艦の間に放置されている貨物コンテナに取り付く。
ISW-ARを委託し射撃態勢を整えた。
私も彼に習ってISW-DMRを遮蔽に委託し構える。
戦闘外殻を閉じガンカメラを起動すした。
距離は1500m、敵哨戒艇がコチラへ近づいている。
「対艦攻撃開始、邀撃隊は注意せよ」
通信回線に報告と警告が届く、対艦戦が幕を上げる。
甲板の4連装ランチャーから誘導弾が射出された。
射出後ブースターが点火し目にも止まらぬ速さで飛んでいく。
敵艦から光の粒が放たれ瞬いた。
「誘導弾迎撃されました」
「敵艦から高熱源反応、速度からして誘導弾!」
「防空戦闘!」
甲板の防空誘導弾が射出され飛んでいく。
近接防空システムの35mmリボルバーカノンが搭載された砲塔が回転し射撃警報を鳴らす。
「敷島!ランチャーを展開しろ!」
「了解です!」
城戸さんの声が無線で届いた。
背中に背負った高出力熱光線発射機に持ち替えてFCSを切り替える。
情報が共有され戦闘外殻に目標がマークされる。
防空誘導弾で目標が一つ消えた。
輸送艦のリボルバーカノンが火を吹く、また目標が一つ減った。
「目標ロック、照射!」
引き金を引き、熱光線照射中の警報が鳴る。
「よくやった、ギリギリセーフだ!」
城戸さんが歓喜の声を上げる。
外殻を上げ、彼とハイタッチをする。
「誘導弾斉射、艦内の乗員は白兵戦用意」
「出せるだけ船外へ、敵は取り付いて来るぞ」
「南原!藤野を頼んだぞ!」
藤野さんは船の武装管制官をしている。
事あるごとに城戸さんを心配しており、よく部隊詰め所に足を運んでいた。
哨戒艇は前進し続けている。
このままでは移乗攻撃が始まってしまう。
敵の狙いは艦橋だ、そこに爆弾を仕掛けて敵船を無力化する戦法。
ISW-DMRに持ち替え戦闘に備える。
艦橋に居る仲間の命運は甲板を守る私達にかかっていた。
甲板には味方部隊が展開し始め、防護機銃に取り付いていた。
「哨戒艇より熱源体射出、足が遅いぞ!」
「敵攻撃隊だ準備しろ!」
敵の移乗攻撃隊が発艦したんだ!
防護機銃の銃撃が曳光弾の線をを描く、敵の位置を知らせていた。
装甲が施された上陸船が船へと急接近し停止する。
「武装制限解除、やっちまえ!」
城戸さんの命令に各々が撃鉄を落とす。
ライフル弾の雷管を撃鉄が叩き火薬が爆発する。
薬室に振動が伝わり、それが銃を伝い私の体に届いた。
くぐもった発砲音が宇宙服に響いている。
携行シールドを装備した兵士を先頭に敵部隊が展開していく。
制圧射撃を行うが、私の装備しているDMRの弾倉が空になる。
リリースボタンを押し銃をひねるように動かして空の弾倉を弾き出す。
宙を流れていく弾倉を引っ掴み雑納へ押し込む。
新しい弾倉を取り出すが前後が逆になってしまっていた。
一旦宙に置いて回転させる。
正しい向きで掴み取り、銃へ装着した。
「モタモタすんな敷島!奴さんはまだ仰山お越しだ!」
他の会話も混ざり無線が混線している中、城戸さんの声を頑張って聞き取る。
ボルトを引いて外殻を下ろし、照準を定める。
くぐもった発砲音が響いた。
「柴井!中央の上陸船みえるか?」
「奴の機銃を黙らせられないか?」
「あー、見えた」
無線越しにくぐもった発砲音とボルトの操作音。
四方へ弾を撒いていた機銃が沈黙する。
「目標沈黙」
「よくやった!ビールを奢るぞ!」
城戸さんは親指を立てるハンドサインを柴井に向けた。
柴井のヘッドライトが点滅しメッセージを送っている。
「あ、り、が、と、う」
ヘッドセンサーで信号を読み取り文章化された原稿が出て来る。
それを私が音読する。
「ありがとうですって」
「よし、敷島おかわりを要請しろ」
「了解」
右腕のキーボードで文章を入力し送信する。
ヘッドライトが点滅し送信が行われた。
信号受信、はいよろこんで。
赤い曳光弾が飛んでいく。
彼のAMR(対物ライフル)の攻撃だ。
携行シールドを展開する敵を貫通し殺害していく。
敵の配置が崩れてきた。
「奥山、AT5で敵の上陸船に挨拶しろ」
「了解」
奥山の使い捨てロケット弾が火を吹いた。
操縦席に命中し、船内空気に引火して爆炎を上げる。
「よし、奥山ナイスだ、俺らは南原の姉貴を加勢するぞ」
城戸さんが指を刺す、私達の母艦上だ。
貨物を蹴って彼が移動を始めた。
我々も後に続く。
慣性で移動する間、弾倉を交換を行う。
先頭の城戸さんはソレノイド・アンカーを巧みに使って移動している。
残弾はまだ大丈夫そうだ。
味方部隊は甲板上で敵と交戦している、私は外殻を下ろして引き金を引く。
敵のヘッドバイザーを貫通し赤黒い液体が飛び散る。
続けて射撃、仕留めた脇に隠れている敵の胴体部を複数貫通。
命中箇所から酸素が吹き出し煙を上げ、もがき苦しむようにバタバタと手足を動かし宙を舞うとそのままピタリと動かなくなった。
脇の奥山が空のAT5を敵に投げつけ、素早くARを射撃する。
遮蔽物から身を出して銃を構えた敵にAT5が直撃。
のけ反って生まれた隙を奥山の射撃が襲う。
宙返りの様に吹き飛ばされ、被弾箇所から白い煙を上げて回っている。
私は足を前に持っていき姿勢を変えてスラスターを吹かす。
減速しながら甲板に着地した。
「よし、取り付いたな」
南原先輩の傍で城戸さんは遮蔽物に身を隠し弾倉を交換している。
「敷島くん!ほら、隠れて!」
南原先輩が手招きしている。
右前方に展開された防御シールドに飛び込んだ。
一足先に取り付いている奥山と合流する。
「敷島、今の見たか?」
「ナイスシュートだったよ奥山」
「お前もヘッドに1発からのダブルキル、お見事」
拳をぶつけてハイタッチをする。
正直イカれてきていると思う。
でも、こうでもしないと恐怖でおかしくなってしまいそうだった。
奥山が右側面から顔を出して射撃する。
私も左側面から銃撃を行う。
敵の数は少なくなっており、終わりが見えてきた。
城戸さんが前進の合図を出す、私は奥山と遮蔽物から飛び出した。
宙に浮く味方の遺体を後ろへ押し除け前進する。
左前方の前進する味方がのけ反った。
視線を前に戻す、顔を出した敵に発砲しバイザーを砕く。
奥山が遮蔽に取り付いた。
顔を抑えて飛び上がった奴に目もくれず私は進む。
立ち止まれば次は私の番だ。
前を進んでいた味方が白い煙を上げて宙を回る。
遮蔽に取り付いて側面から顔を出す、敵の横を取った。
外殻を下ろす暇はない、バイザーに投影された照準で射撃を行う。
横っ腹を突かれた敵は遅れて反撃を開始する。
注意がこちらに向いた。
味方部隊が飛び出して来る。
射撃の隙を見て反撃を行う、被弾した敵が回転して宙を舞う。
南原先輩が慣性の勢いのまま蹴りをお見舞いし、銃弾を叩き込んだ。
城戸さんはソレノイド・アンカーを使い敵を引き寄せ銃撃し遺体を甲板に叩きつけた。
「奥山、敷島よくやった」
「これも城戸君の教育の賜物だね」
城戸さんが満足そうに言うと南原先輩が笑う。
城戸さんから褒められて嬉しかった。
「南原!」
城戸さんが南原先輩を突き飛ばす。
彼の苦しそうな声と共に体から白い煙が噴き出てバタバタと宙でもがく。
奥山が標的を指差して発砲する。
奥の遮蔽に敵が隠れている、背中の生命維持が露出していた。
外殻を下ろして射撃する。
背中の生命維持装置が破損し暴れる様に手足をばたつかせて宙に浮く。
それを見て顔を出した敵2名の頭部に正確に弾を叩き込む。
味方が遮蔽物を確認して親指を立てるハンドサインを出す。
終わったようだ。
「嘘、嘘、うそ!」
「城戸君!返事して!」
取り乱した南原先輩の声が耳に叩きつけた。
城戸さんの身体を揺すり声をかけていた、力無く彼の身体が揺れている。
「ダメ、減圧が止まらない!」
「どうしよう!どうしよう!」
必死に吹き出る煙を応急用パッチで塞いでいる。
「南原先輩、残念ですが…」
奥山が声を振り絞る、ディスプレイに表示された彼のステータスに私は声を出せずにいた。
「私、藤野ちゃんに頼まれたのに…私…守れなかった!」
「ごめん、ごめんね…私がしっかりしていれば…」
南原先輩が彼の遺体を抱きしめる。
南原先輩の相棒であり、歴戦の猛者であった彼が死んだ。
任期の浅い私達を気にかけて面倒を見てくれた彼との別れは突然だった。
そうだ、地獄の第一次オクソラ・クレーター事件だ。
この後、藤野さんが南原先輩に泣き喚いて縋りついて…藤野さんが自殺して…思い詰めた先輩も後を追ってしまった…
私達は第三波降下部隊に転属となり、地獄の地上戦に投入されて戦う事になる。
先輩も同期も後輩もみんなバタバタ死んでいったんだ。
そうして事件が終わって、月面基地での生活がはじまって、地獄で一緒だった里見さんと、新しくできたかわいい後輩の古代が来て…オクソラ・ヒルで里見さんも死んじゃって…古代がなんか言ってて…あれ?私って今どうなったんだっけ?
「敷島、歯ぁ食いしばれ!」
里見さんが目の前に現れて拳を振り下ろす。
「敷島君は退勤!早く帰った帰った!」
「そうだ敷島、ゆっくりしていけ」
里見さんの後ろで城戸さんと南原先輩が笑っている。
「美紀ちゃんに謝りに行け!」
里見さんの拳が私に命中し強い衝撃が体を突き抜けた。
次回は美紀ちゃんメインの予定。
完全空気と化してて少し申し訳ない気がしている。
誤字脱字あったら教えてください。
追記 存在しない人員が居た為修正しました。