感情×1.62m/s^2   作:ORC機関

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筆が進む間に書きたくて睡眠時間を削り、仕事をしながら書いて居ます。
なんていうか寿命を燃料に命を燃やして書いてる感じがします。
エナドリをキメてヤニでブーストかけてる現状、その内身体が壊れるでしょうね。
皆様は私の様な大人にならず、健やかに生きてくださいまし。
暑い日が続きます、水分をよく摂ってご自愛くださいませ。


湿った空気と過塩素酸カリウムの星

あの後食事を終えた私達は兄さんの遺骨を墓に納めた。

何代も前からあるお墓の中には私達のご先祖様が眠っている。

若くして仲間入りを果たしてしまった事におじさん達はとても悲しんでいた。

肌を焼く日差しと湿度がジワジワと私達を焼いていた。

きっと兄さんの最後はもっと熱かったに違いない。

あの映像を見た後ではこんな暑さはまだマシだと思うことができた。

納骨を終えて家に戻ると親戚達は一人、また一人と帰って行き、私達家族と悠香先輩だけになった。

私と夏鈴はもう少しここに居たかった。

そうおばさんやおじさんに伝えると好きなだけ居なさいと嬉しそうに答えた。

父や母は仕事の都合で明日までしか居られないらしく、それ以上先まで滞在するなら電車で帰ってくるようにとの事だった。

日暮の縁側、夏鈴と悠香先輩と茜色の空を眺める。

生温い風が頬を優しく撫でて、蚊取り線香の匂いが鼻腔をくすぐる。

ありふれた夏の日みたいで何故か嫌だった。

「ねぇ、夏鈴?」

「なに?」

「兄さんと花火したの覚えてる?」

あの日もこんな感じだった。

遊び疲れた夕暮れ、二人並んでお昼寝したあの日。

兄さんはお盆で帰省してきた私達に会えるのが嬉しかったのか大量の花火を持ってきてくれた。

打ち上げ花火も買ってきてくれたっけ。

住宅街に住む私達は花火なんて滅多にできないし、花火と言ったら市営の花火大会ぐらいだった。

「懐かしいね、優にぃが打ち上げ花火買ってきてくれたんだよね」

「悠香先輩と初めて会ったのもその時じゃない?」

夏鈴が懐かしそうに笑う。

たのしかったなぁと彼女の口から溢れた。

「先輩は急に、花火するから来いって私の家に来たんですよ」

悠香先輩の視線は夕日に照らされた夏の雲に向けられている。

「楽しかった事も辛かった事も夏の最期に空へ打ち上げるんだ」

「また来年、夏が来る様にって」

打ち上げ花火に火をつける直前に兄さんはそう言った。

記憶の兄さんに習う様に口に出してみる。

大きくなってからは花火ではしゃぐ事も無くなり、気がつけば大人に近づいていた。

花火なんて最後にやったのはいつだろう。

「それだ!晴ねぇ!」

夏鈴が目を輝かせて此方に寄ってくる。

「また来年のお盆に兄さんは来るんだよ!」

「だから、優にぃを見送ろう!また来年会える様に祈って!」

悠香先輩はハッとした表情を浮かべる。

「そうでしたね、先輩は毎年そんな事を言ってましたね」

「そうだよ!やろうよ晴ねぇ!」

夏鈴の嬉しそうな声に先輩は微笑んだ。

でも近くのホームセンターまでは遠い、花火を買い込んだとしたら自転車では無理だ。

「無理だよ、ホームセンターまで遠いよ」

私の弱気な言葉に悠香先輩が自慢げに答えた。

「私が車を出します」

免許を取ったのはこの日のためだったんですねと嬉しそうに言う先輩。

「やってやりましょう、ニブチンの先輩に思い知らせてやるんです!」

やる気十分な悠香先輩の言葉に私は戸惑った。

日暮が鳴く茜色の夕涼み、私達の作戦が始まった。

 

悠香先輩の運転する軽の乗用車に揺られて私達はホームセンターにたどり着いた。

買い物客で賑わっている中、黒い服が目立つ。

変わらない日常に少しだけあの戦争の悲しみが滲んでいる。

「晴ねぇ!行くよ!」

夏鈴は待ち遠しくて堪らないように足踏みすると車から降りた私達に視線を向ける。

「夏鈴ちゃん、車に気をつけるんだよ」

悠香先輩の言葉にはーい!と返す夏鈴。

昔兄さんと夕飯の材料を買いに来た時の様だった。

自動ドアが私達を歓迎し、クーラーの効いた涼しい空気がで迎えた。

変わらない日常がそこに広がっている。

兄さんが死んでも変わらない景色に少し怒りが湧いた。

レジャーやスポーツ用品を抜けてキャンプ用品の隣を進む。

今はそんなモノを見ている場合じゃない。

苛立ちを覚えながら歩みを進める。

広いスペースで陳列された花火コーナーにたどり着いた。

お徳用花火やロケット花火が並ぶ中一際目を引く大きな花火。

「晴ねぇ、どれにする?」

夏鈴が商品を物色しながら問いかけてくる。

私は大きな花火へと歩みを進めた。

地面に置き使用する打ち上げ花火、この大きさなら空高くに上がるだろう。

兄さんにも見えるだろうか?

「晴香ちゃん、それにしますか?」

悠香先輩が側にやってしゃがみ込んだ。

私の視線の先にあった打ち上げ花火の説明書を読んでいる。

「すごい花火、結構上まで上がるみたい」

「悠香先輩」

「なに?」

私が声をかけると視線を此方に向ける。

先輩が見上げている。

「兄さんまで届きますかね?」

私の問いに彼女は小さく笑うと売り場に向き合う。

「届きますよ、きっと」

少し寂しそうな彼女の横顔、多分これは私達の問題。

ホームセンターの賑わいや、まるで流行りごとのように繰り返し放送する報道局、まるでありふれた1日の様に流れていく時間も全部おかしい訳じゃ無い。

これは私達だけの出来事、世界にとってはいつも通り。

だからこの湧き上がる怒りも苛立ちも全部私達のもの、この喪失感も悲しみも私達だけのものなんだ。

しかし、日常は続く。

また明日がやってきて繰り返す、その中に彼を埋もれさせたくなかった。

兄さんの居ない世界をありふれた日常の一つとしてしまいそうで。

それでもいつかは兄さんの居ない世界を受け入れて、慣れて、生きなくてはならない。

繰り返す日常の中で彼が居ない事を忘れて、兄さんだって分からなくなってしまいそうだ。

だからこそ、兄さんが旅立った日として鮮明に記憶に焼き付けよう。

確かに生きていた兄さんのことを、兄さんの居た世界の事を。

これはいつも通りを繰り返す世界との私個人の戦いだ。

世界との私個人の戦争だ。

私は決意にも似た感情を強く胸に抱くと大きな花火を掴んだ。

私たちの最終戦争を終わらせるために。




書いてる途中で黄色い浴槽の曲の作者が作った愛しい私たちの約束が脳裏で流れ始めた()
でも歌詞的に悠香先輩なんだよな(人物関係的に)
あと悠香君、砂漠化してる学校のなんとかモドキとシンパシー感じそう。
初期のモデルは五千円札の苗字のアイドルなのにね。()
四角い魚氏の曲はなんて言うか懐かしさを感じてリピートしてます。
音楽の影響が作品に出てしまう事が結構あるので、コイツこの曲聴いてんなぁ?(ニチャァ)みたいに楽しんで頂けると幸いです。
出来るだけわかりにくくしてるつもりなんですけどね。
コメント欄で答えブッパしてもいいのよ?(ファンと交流したい怪物)
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