感情×1.62m/s^2   作:ORC機関

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ども、今回は難産でした。
筆が止まった地獄を煙草で誤魔化して書きました。


終点

「いいか野郎ども!」

里見さんの声が回線に響いた。

揺れる兵員輸送車の中は緊張に包まれており、各々がその時を待っている。

「兵員輸送車は正面ゲートから侵入し格納庫入り口まで突っ走る」

私は光線銃の最終点検を行う。

バッテリーパックの残量は満タン、収束筒劣化はなし、AFS(自動フォーカスシステム)動作正常。

照準システムはデスプレイにリンクされている。

「停車後に即降車し展開しろ」

兵員室の防弾ガラス製窓から外を伺えば不整地から舗装された路面に変わり、敵主力戦車の残骸脇を通り抜ける。

終点が近づいていた。

「RWSで時間は稼ぐ、その間に全力で展開しろ!いいか?足を止めるなよ!」

車内に衝撃音と振動が伝わった。

金網フェンスを突き破ったんだ。

「こちら二号車!攻撃を受けてる!ヤツらは管理棟に陣取ってる!」

「格納庫側へ退避し裏口へ回り込む!一号車の健闘を祈る!」

二号車は管理棟側へ取りつく予定だったが、攻撃が激しいため格納庫側の運搬路から裏手に回り込むようだ。

「降車準備!」

分隊長が声を上げ、車内の緊張は最大になる。

「俺たちはどこの所属だ!」

里見さんが怒鳴った。

「月面機動師団!」

皆口をそろえて返答する。

「敵陣一番乗りで殴りこむのは誰だ!」

「俺たち月面機動師団!」

私たちは恐怖でおかしくならないように叫んだ。

「敵が一番恐れているのは!」

「俺たち月面機動師団!」

激しい揺れとRWSの駆動音、時間だ!

「俺たちはなんだ!」

「正しい攻撃にて敵を撃滅し、新天地を守る者!新世界の守護者なり!」

ブレーキがかかり揺れが激しくなった。

この先は地獄だろう。

兵員輸送車が完全停止し、降車ランプの青色が点灯した。

後部ハッチが下がりスロープが形成される。

「野郎ども!仕事の時間だ!行ってこい!」

里見さんの一言に皆駆け出した。

「お世話になりました!」

降車の際の挨拶は叫び声のように張り上げて言っていく。

車外に飛び出した私は格納庫の壁に走り出す。

敵の使用している赤外線照準器をセンサーが絶えず検知しアラートが鳴り響いている。

管理棟の窓に機関銃が配置され弾幕を形成している。

「古代!閃光弾!」

「は、はい!」

奥山の怒鳴り声に古代が準備する。

発射機を展開し、元折れ式の発射機に震える手で弾薬を装填した。

「あくしろや!」

「はい!」

何とか装填した古代が発射機を構える。

弾幕は途切れる様子はない。

「柴井、弾薬を焼け」

「合点!」

奥山の指示に柴井が答え、狙撃銃を構えた。

その時、弾幕が途切れた。

銃身の過熱による保護装置が作動したんだ。

「行け!古代!」

「はい!」

彼女は遮蔽から身を出すと閃光弾を発射した。

機関銃の目の前で炸裂し閃光を発する。

照準システムが再起動中の赤ランプが点灯した。

「柴井!」

「わかってる」

柴井の放った熱光線が機関銃の側面に取り付けられた弾薬箱に命中する。

金属のケースを熱光線が融解させ弾薬の火薬に誘爆させた。

機関銃は連続爆発を起こし、動かなくなった。

誘爆した弾薬で操作オペレーターは無事ではないだろう。

少なくとも機関銃は損傷している為、防衛線に穴が生じた。

「前進!」

分隊長の声に移動を開始する。

一班が遮蔽からエアブロックの入り口に走り出す。

私たちはそれを援護すべく窓へ射撃を開始する。

光線銃を構え引き金を引く。

照準システムが目標との距離を瞬時に割り出しその情報でAFSを動作させ、収束筒を調節する。

警告音と共に発振された熱光線が収束筒を通り出力され目標を焼く。

窓には敵が見えないが絶えず攻撃を続け釘付けにした。

「こちら一班!取りついた!」

「二班前進しろ!」

私たちの番だ。

恐怖心が足元にまとわりついていた。

「撃ち方始め!絶えず制圧しろ!」

三班が射撃を開始し、この機を逃さず飛び出した。

私の前を古代が転びそうになりながら前を走る。

柴井は姿勢を低くしたまま素早く駆け抜け、奥山はもう向こうの遮蔽物に取りついていた。

「奴ら、顔出さねぇな」

やっと遮蔽に取りついた私はバッテリーパックを交換する。

残量はギリギリのためパックを足元へ落とし端へ蹴り寄せた。

「敷島、どう思う?」

奥山が私に問いかける。

確かに迎撃は機関銃による射撃のみで無力化後は目立った反撃は無し。

水際で防ぐならもっと激しい攻撃を行うはずだ。

となると決戦は基地内?

むしろ誘い込まれてるようにも感じる。

「水際で防ぐならもっと激しく攻撃してるはず」

私の答えに奥山が唸った。

現に管理棟の窓や崩れた外壁の穴に敵の姿は見えない。

「となると基地内近接戦に持ち込もうとしている?」

「あり得るよ」

奥山のはじき出した答えに私は同意した。

「古代、40mmHEは何発ある?」

奥山の問いに古代が弾薬ポーチを確認する。

「4発あります」

古代は指で4を作り答える。

柴井は地に伏せ、遮蔽物の隅から狙撃銃を構えている。

「柴井、近接戦用の武器は持ってきてる?」

私の問いに柴井が否定のハンドサインを示す。

「ここで顔出したのを仕留めるよ」

二脚の付いたライフルを調整し始める。

「奥山、分隊長殿は?」

「C分隊と連絡とってる、向こうは裏口の貨物庫側から侵入してるらしい」

奥山は光線銃のバッテリーパックを交換し管理棟を伺った。

「D分隊各員へ、格納庫より侵入し管理棟を攻略する」

分隊長から指令が伝達された。

「貨物室側から侵入したC分隊と挟撃し敵を掃討する」

私は最後の装備確認を行う。

収束筒の摩耗を確認、問題なし。

バッテリー、AFS正常。

月面使用に合わせて威力が調整されたハンドグレネードはポーチに4つ入っていた。

狭い視界で入り組んだ近距離戦闘は致死率が格段に上がる。

敵も退路がないため必死で抵抗して来るだろう。

「各員の健闘を祈る」

分隊長の一班がエアロックへ侵入する。

「古代、後ろから離れないでね」

私は古代のヘルメットを軽く叩いた。

「はい」

彼女は立ち上がると光線銃を構えた。

奥山を先頭に隊列を組み待機する。

目指すは管理棟、敵の数は不明。

柴井はサムズアップして見せた。

彼の見送りを背に我々は地獄へ歩みを進めた。




もうそろこの話は終わります。
同じ世界の作品をもう一つ上げる予定です。
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