槍の勇者のすり替わり   作:紙吹雪

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初投稿です



事情説明

 

 奴隷商の店から出て、ポータルでリユート村に向かいそこで尚文達と改めて話す事にした。

 はぁ……何で私がこんな事に。

 

「それで、何でお前はフィーロに襲いかかったんだ? ロリコンか?」

「何処から説明するべきかな……」

 

 私はなるべく丁寧に私の立たされている状況について話した。

 

 最初の世界の事。

 龍刻の長針とループの事。

 元康の代わりに何故かこの世界に召喚された事。

 

 この三つをなるべく丁寧に説明した。

 最初の世界についてはweb版準拠で説明しておいた。

 ……この世界が無くなる可能性については黙っておいた。

 あまり気分の良い話じゃないだろうし。

 

「ループに別の槍の勇者、ねぇ」

「普通信じられないよね。でも……どうか、嘘だと決め付けないで欲しい」

「……ラフタリア、どう思う?」

「私は……嘘は付いていないと、思います」

「そうか……」

 

 意外と信じてくれそうだけど……下手な事を言ったらまだ疑われそうだ。

 

「未来の知識なら大体頭の中に入ってる。試しに何か聞いてみる?」

「そうだな……じゃあ、何故俺はこの国の奴等から嫌われているんだ」

「宗教上の敵だから、と言うのが一つ」

「何!?」

 

 尚文はラフタリアと顔を見合わせると、ラフタリアはこくりと頷いた。

 この目と目で通じ合ってる感じ……良いね。

 

「はい、メルロマルクの国民は三勇教という宗教を信仰しているそうです。私の住んでいた村は別の宗教でしたが……」

「宗教的、敵……じゃあ盾の勇者を信仰する国と仲が悪いとかか」

「盾の勇者を信仰しているのはシルトヴェルトって国だね。あっちは亜人至上主義国家で、メルロマルクは人間至上主義の国だよ」

「なるほどな」

「一応、あの王が盾の勇者を憎んでいるのに理由はあるけど……今は興味なさそうだね」

「別にどうでもいいな」

 

 結構重要な話なんだけどね……ゼルトブルのポータルを確保しようとしてるのはこれが理由なのに。

 

「あ、王女の方は単に性格が終わっている魂まで腐っている悪女だよ。人を陥れたり苦しめるのが趣味だからやってると思ってくれていい」

「……まあ、分かってはいたな」

 

 正体がアレだからね……ほんと、良い迷惑だ。

 しかも、普通に殺しても悪霊になって復活するんだから質が悪い。

 更には他にも居るんだから……やれやれだ。

 

「まだ信じられないかな?」

「……半信半疑と言ったところか。その元康って奴はどんな奴だったんだ?」

「さっき暴走した私まんまだね。愛の狩人を名乗って、フィーロを見たらあんな感じに抱き付こうとする」

「うわ……ヤバい奴だったんだな」

「傍から見る分には面白い人だけど、否定出来ないね……」

 

 彼の奇行エピソードとか、話してるだけで日が暮れるだろう。

 しかも本人は至って真面目にやってるのだから恐ろしい。

 

「何となくだが、お前が嘘を付いているようには俺にも見えない。だが……何かまだ隠してるんじゃないか?」

「まあ、敢えて言ってない事はあるね。言う必要性の感じない事とか」

「……」

 

 若干怪しむような顔をして、尚文は私の顔を覗き込んだ。

 ……この世界は、最初の世界の延命の為に存在している。

 その事に気付いたら……もしかしたら、彼はこの世界を最初の世界に上塗りしようとするかもしれない。

 正直、その可能性は低いと思ってるけど。

 

「そうだね……例えば、君がラフタリアを買わなかった世界線とか、他の奴隷を買った世界線の話とか、あまり聞きたくはないだろう?」

「……それはそうだな。俺が、と言うよりも主にラフタリアが」

 

 若干悲しそうな表情のラフタリア。

 ……君を買わなかったらサディナと仲良しになるのは言わないでおこう。

 私はその辺りは気遣い出来る人間である。

 どっかの愛の狩人と違って。

 

「他にも言いたくない事言うと絶対怒る事は色々あるね。まあ、知らぬが仏って言葉もあるじゃん?」

「……そう言う事なら、もう文句は言わない事にしよう。それで、お前はこれからどうするんだ」

 

 これからの予定、か。

 

「ええと、まずあの種を確保するでしょ? それからゼルトブルであの二人を確保して、ついでにゾウの人とパンダの人も雇用するかな。それからフォーブレイの方に女王を探しに行って、忘れずにモグラの子も保護して……」

「ああうん、未来の知識があるからなのかやりたい事が沢山あるのは分かった」

 

 まあ、全部私がやる訳ではないけどね。

 女王探しはエクレアに任せるつもりだ。

 ドラゴン……ウィンディアと親ガエリオンもできれば生かしたいし。

 

「ま、しばらく会えないけど君達なら上手くやるだろう」

「……そうかよ」

「この村の復興くらいは手伝うからさ。あ、そうだそうだ……忘れてた」

 

 私は復興作業中の二人を指差した。

 

「あの二人はテオドールとシオン。私の奴隷だよ」

「お前も奴隷を買ったのか」

「正直買う予定は無かったんだが、ラフタリアを君に買わせる為の代金として購入した。本来なら君はあのウサギの亜人を買っていたと思うよ」

「槍の勇者様?」

 

 若干怒りを纏いながらラフタリアが私を見てくるが、無視だ無視。

 尚文は顎に手を当てて少し考え込んだ。

 

「あり得なくはない話だな」

「尚文様……」

「どうせなら君の奴隷にする? 二人なら喜んで君に忠誠を従ってくれるだろうし」

 

 城での決闘騒ぎについて説明したら、二人共憤っていた。

 盾の勇者は亜人獣人の相性が良いので私よりも適任だろう。

 ……まあ、結局は近いうちに同じ村に住む事になるだろうけど。

 

「たしかに戦力は欲しいが……今の所ラフタリアで間に合っているな」

「そんなにラフタリアが好きなのかな?」

「や、槍の勇者様!」

 

 今度は顔を赤くしてラフタリアが私を見てくる。

 どうしよう、この子揶揄うの面白いぞ。

 

「別にそんなんじゃない。奴隷を買うにしても養える財力も今は無いしな」

「それもそうだね」

 

 別に照れもしない尚文を見てラフタリアは落ち込んだ様子……

 まあ、うん。

 頑張れ。

 

「ごしゅじんさまー話終わったー? フィーロお腹空いたー」

 

 今まで離れて遊んでいたフィーロが接近してきた。

 くっ、鎮まれ色欲のカース……!

 

「あ、槍の人大丈夫ー?」

「おい、また暴れるなよ?」

「……大丈夫、不意に来なければ平気みたい」

 

 ちょっと精神的にキツいけど、まあなんとかなるだろう。

 ……なるよね?

 なってくれ。

 

「そう言えば、何でフィーロを……ああ、もしかして最初の世界で俺がこいつを育てたとかか」

「まあね。ラフタリアと似た様な理由かな」

 

 本当の事……フィーロに会う事でループから解放される可能性については黙っておこう。

 

「でも、暴れた理由はなんだ?」

「この槍の本来の持ち主は元康って人だよ。その人の色欲のカースが宿っている影響か、偶に暴走してしまうみたいなんだ」

「……薄らと分かっていたが、その元康ってのは相当面倒臭い奴だな」

「否定は出来ないなぁ……」

 

 元康は傍からみる分には面白い奴で済むけど、実際に交流するとなると……なタイプだからね。

 悪い奴じゃないんだ、悪い奴じゃ。

 頭も悪くないし……って、私は誰に言い訳してるんだか。

 

「因みに、最初の世界じゃその元康があのビッチ王女に取り込まれて君を糾弾する役回りなんだ」

「そうなのか。まあ存在すら知らない奴の話をしてもな……」

「たしかに……私が何故ここに居るのか、その理由を知る為には彼に聞くのが早いと思うんだけどなぁ」

 

 あいつ、今頃何してるんだか。

 事情知ってるなら……って、ガエリオンみたいに知らない可能性もあるか。

 

「ともかく、話はこのくらいだ。預言者よろしく君のこれからの行動を言い当ててもいいけど」

「……試しに言ってみろ。この後、最初の世界の俺は何をするんだ?」

「おや、気になるかな?」

「正直、この国からとっとと脱出したい所だ。お前の知識だとそうして良いのか気になる」

 

 ああ……そう言う。

 

「行く場所によるね。盾の勇者を信奉しているシルトヴェルトって国に行くと、メルロマルクと戦争が起きる」

「戦争、ですか……」

「おまけに国から大量の女を宛てがわれそうになるね」

「うえ……種馬扱いかよ」

「しかも、国境は国王がいる限り簡単には通れないだろうね。転移スキルがあれば話は別だけど」

「転移スキル? そんなものがあるのか」

 

 そう言えば砂をまだ渡していなかったね。

 私は砂の入った袋を取り出して尚文に差し出した。

 

「これ、渡しておくね。これを武器に吸わせたら転移スキルを入手出来るから」

「……礼は言わんぞ」

 

 素直じゃないなぁ……やれやれ。

 

「出て来たな。レベルはまだ足りんが、その内行けるだろう。と言うか、そんな物があるならすぐにリファナって子を助けに行けたんじゃないか?」

「……ポータルで行ける場所一覧が空欄になってた」

「そうか……嫌な事聞いたな」

 

 別に気にして……ごめん、少しだけ気にしてる。

 それでもステータスは既に最強クラスだったから文句を言う資格がないんだ。

 

「それじゃ、私達はこの辺で失礼するよ」

 

 話したい事は大体話し終えた筈だ。

 

「……色々と助かった。いつか礼はする」

「おっと、一つしなくちゃならないアドバイスがあったっけ」

 

 私はカースについての危険性を尚文にそのまま伝えた。

 色欲……と言うか元康のカースだったから被害は少なめで済んだのだ。

 憤怒なんかデメリットだらけでしょ。

 

「……と、言う訳だから憤怒の盾は使用を控えてね。まあ、強化法をちゃんと実践していれば使う機会もないだろうけど」

「分かった。頭に入れておく」

「私に用があったらライヒノット領を拠点にしてるから、そこを訪ねてね。それじゃ」

 

 私は手を振りながら、テオドールとシオンに声をかけて転移で帰ろうとした。

 しかし、一つ思い出したね……クロちゃんも忘れちゃ駄目だよ。

 そう思って魔物紋で確認しようとしたんだけど。

 

「んー?」

「だれー?」

 

 ……いつの間にかフィーロとクロちゃんがエンカウントしていた。

 

「……黒いフィロリアル?」

「ごめんごめん。この子はウチの子でクロちゃんだよ」

「あ、ちあだー」

 

 私の姿を見つけると、クロはシュタタッと駆け付けてくれた。

 その際に天使の姿に変身して尚文達を驚かせたね。

 まあ、魔物が人になるのはフィーロで経験済みだからかそこまで驚いていないけど。

 

「クロ、錬はどうしたんだ?」

「えっとねーしばらく一緒に遊んだら疲れたからかえれーって」

「ああ、乗り物酔いね……」

 

 今度お詫びに何か持って行こうかな……

 ま、別に良いか。

 

「おい、そいつもフィロリアルなのか?」

「あ、絶対障壁<イージス>だー」

「横の人はイージスの相棒で隠蔽狸<インビジブルラクーン>だよ」

「ちょっと、何ですかその呼び名は!?」

「ラフタリア、そう反応するな……こう言うタイプはだな」

 

 尚文はラフタリアに何やらレクチャーをしているようだ。

 ……まあ、尚文はある程度合わせられるんだよね。

 私もそれなりに合わせられてるけども。

 

「それじゃ、今度こそじゃあね。バイバーイ」

 

 私は手を振りながらテオドールとシオンの元へ行き、ライヒノット領へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……正直、まだループが終わらない事にホッとしている自分が居た。

 今、こうして愛の狩人の代わりに槍の勇者として動いている理由も知らないのに。

 

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