槍の勇者のすり替わり   作:紙吹雪

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槍直し、やる事が多い……



指示出し

 

 私はライヒノット領に戻り、皆と今後の予定について話し合う会議をした。

 色々とこの時期はやっておきたい事が多いので、私だけじゃなくて他の人達にも働いて貰わなければ。

 振り分けはある程度は決めてある。

 

「それで、どうするおつもりなのですか?」

「まず、ヴァンは……そうだね、植物を育てる場所を用意して貰えるかな」

「植物と言うと?」

「とある錬金術師が開発した特殊な植物の種があってね。使い方次第では食料事情の改善になるから確保しに行きたいんだ」

 

 勿論、バイオプラントの種の事だ。

 普通の植物の種からでも再現は出来なくもないけど、面倒だから現物を手に入れるつもりだ。

 問題の発生しないようにするのは前提として、どのくらい普及させるかどうかは未定だけどね。

 そこら辺はヴァンや商人……尚文とも相談して決めるとしよう。

 

「扱いは慎重にしないと危険物にもなるけど、リターンがかなり大きい筈だ」

「槍の勇者様がおっしゃるなら、そうしましょう」

「助かる。それで、エクレアだけど」

「私の名前はエクレールだ。もしかしてわざとか?」

「……ごめん、何故か口が滑って。えっと、エクレールには女王とコンタクトを取る為にフォープレイ方面へ向かってほしい」

 

 本編よりも早めに女王が帰還するに越した事はないだろう。

 とは言え、色々と考える必要があるんだよねぇ。

 

「うむ、承知した」

「エクレールにはシオンとテオドールを預ける。二人とも、エクレールを助けてやって欲しい」

「ああ」

「ええ、分かりました」

 

 二人はそれなりにレベリングや戦闘訓練を施してある。

 とは言えまだまだ発展途上ではあるけど……相手が悪くなければ何とかなるだろう。

 戦闘顧問はサディナが担当したけど、彼女は子供達のお世話も任せちゃってるのが少し心苦しい。

 

「よし。次の問題は……奴隷狩りかな」

「むぅ?」

 

 奴隷狩りと聞き、エクレールは片眉を上げた。

 まあ……そりゃそう言う表情にもなるか。

 

 因みにだが、奴隷狩りへの対策は最初の波が来る前から講じていた。

 と言っても見かけた奴等を私がやったとバレないように闇討ちして半殺しにしてたくらいだけど。

 正直、あんな屑共殺してやっても……と、思わなくもない。

 

 ……こう思うようになったのは私の本来の素質か、或いは元康のカースの影響か。

 あまり考えたくはない。

 ともかく、そろそろポータルで奴隷化して他国に出荷する用意が出来た。

 良い加減この国の膿を出さなければ。

 

「私とクロで片っ端から捕縛する予定だね。ある程度場所の目星は付けているから問題ない」

 

 暇を見つけてモグラことイミアちゃんの住処は既に見つけておいた。

 本来なら既に奴隷狩りの被害に遭ってる時期だけど平和だったね。

 どうやらあの数回の半殺しが多少は効いたらしい。

 それでも、まだ油断は出来ないけれど……

 

「あの、よろしいですが?」

 

 テオドールは片手を上げてそう言った。

 ふむ、質問かな?

 

「何かな?」

「奴隷狩りを捕らえるのは問題無いですが、その後はどうすれば?」

「奴隷にしてから全員ゼルトブルに連行して売り払う予定だよ」

「……転移スキルはたしか、パーティーに参加していないと送れないのでしたか。なるほど、理解しました」

 

 テオドールは細かい所に気が付くから思っていたよりも頼りになる。

 割と拾い物だったかもしれない。

 ……買ったばかりの頃は結構手のかかる子だったけど。

 槍の技能を使って鍼治療したりもしたっけ。

 

「そんで、ガエリオンは……ああ、そう言えばそろそろ行かないと間に合わないかな」

「そうなの。行かせて欲しいなの」

「うん。無いと思うけど剣の勇者を殺したりしないようにね」

「そんなのやらかすのは愛の狩人くらいなの!」

 

 たしかにループした直後に殺したりしてたけども……

 

「私はまず植物の種を確保、その後エクレールをゼルトブルに送って……運搬業者か私は?」

 

 我ながら、やる事が完全に配達員である。

 自分で決めた事とは言え、これが勇者の為すべき事か……

 ポータルは勇者しか使えないから合理的と言えばそうなんだけども。

 

「あ、チアキ様自身もそう思っていたのですね」

「意外だな」

「自覚があっただけマシなの」

「うむ……便利な力だとは思うぞ」

「たしかに便利ですねぇ」

「あらー今気付いたのー?」

「必殺配達人<ドライブ>ー?」

 

 ……あのなぁ!

 何この……何?

 言葉にできないよ、今の気持ちを。

 

「ええい、うるさい! 異論はないね!?」

 

 全員半笑いで了承してくれた。

 ……嫌われてるよりかは良しとしておこう。

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

「ふぅ……」

 

 バイオプラントの種を回収したけど、これが結構時間がかかってしまった。

 詳細な場所までは覚えてなかったからなぁ……

 ダンジョンの奥にあるのは知ってたけど、それが何処にあるかまでは知らなかったのだ。

 何だかんだ、それっぽいダンジョンを見つけるのが一番大変だった。

 まあダンジョン攻略自体は楽勝だったけど。

 

 因みに私一人で来ている。

 この程度なら別に人手が必要な訳でもないし、ね?

 クロちゃんとサディナはやる気があったようだけど……

 代わりに訓練に精を出して欲しいと頼んでおいた。

 

 さて、次は奴隷狩り対策だ。

 イミアとその一族を守らないと、だ。

 そうすると尚文との関わりが無くなるかもだけど……

 流石にだからと言って奴隷になるのを放っておくのは良くないと思う。

 定期的にあの奴隷商の所に通って確認してるから、まだ大丈夫な筈。

 

 ガエリオンは既にウィンディアと父親のドラゴンが棲む巣穴へと飛び去った。

 錬があのドラゴンを倒す前に巣から離れて貰う。

 これで親殺しの責任を感じる錬やウィンディアに酷い事言い放つ錬は見ずに済むだろう。

 

 ……あれ、そうなるとウィンディアとの接点が。

 ま、別にいいか。

 恨むなよ、最初の世界の錬。

 エクレールとの関係はちょい努力してみるから。

 

 んで、そのエクレールの出発は明日の予定だ。

 シルトヴェルトまでは私が同行するけど、ポータルのお陰で自由度は割と高い。

 国境も難無く突破出来る筈。

 馬車を通してからポータルで合流すれば良いし。

 私単体ならポータルを取るのは容易いからね。

 

 そうそう、勿論新しく買ったフィロリアルであるルナちゃんの育成も並行してやってるよ。

 キメラの肉を食べさせたから、きっと銀髪の天使に……あっ。

 

「そう言えば……」

 

 フレオンちゃんはどうしよう?

 回収してもいいけどちょっと面倒かも。

 詳しい場所は分からないけど、決して不可能ではない。

 ……うん、ついでにやっておこう。

 最悪樹とクズにけしかける選択肢を増やすと言う意味でも育てておきたい。

 

 んで、現状で一番問題なのは。

 

「錬と樹の説得……かな」

 

 これはもう本編通りで良いんじゃないかな……と、半ば諦めている。

 放置した癖にとか考えなくもないが、ひたすらに面倒だよ。

 もうフレオンちゃんとクロちゃんを宛てがうのが手っ取り早い気がする。

 まあ、それは最終手段だから一応他の手も考えてはみるけど。

 

「まあ現状は放置しよう。それで、次にやるべき事は……」

 

 今待機している誰かをイミア達の護衛に回すか。

 これから奴隷狩りに遭う確率だって高いから放っておきたくはない。

 とは言っても今フリーな人居たっけ……?

 まあいいか、一旦ライヒノット領に戻ろう。

 

「ポータルスピア!」

 

 転移スキルを使用して……ガラリと景色が変わる。

 既に見慣れたライヒノット領だけど、一点だけ異物が目に入った。

 馬車だ。それも、結構高そうな。

 しかも、どっかで見た事ある女が乗っていたのだ……

 

「へぇ……噂には聞いていたけど、本当に一瞬で移動する事が出来るのね」

「客人かな、名前を聞いても?」

 

 私の予想が正しければ、こいつは……

 

 

「エレナよ。貴女の仲間になりに来たわ」

 

 

 当たってたぁ……このタイミングで来るのね。

 

 

 

 

 怠け豚ことエレナ。

 普段はひたすら怠惰だが、商売関連には強く利用できる相手ではある。

 母方の家が商人な影響だったかな。

 元康はまあ、女=豚なのでかなり嫌っていたが。

 ……存在をほぼ忘れてかけてたのは秘密だ。

 だって今までコンタクトされなかったし。

 

「……取り敢えず、話は屋敷の中で聞くよ」

 

 エレナを屋敷に招き入れて話を聞いた。

 因みにヴァンも同席してくれた。

 

 話はまあまあ大体予想通り。

 

 家に居ると商売の手伝いをさせられる。

 勇者の仲間をしろと言うが私以外の勇者は全員嫌で。

 出来れば私が、と思っていたが居場所が掴めず。

 最近やっと私がここを根城にしているのを把握したんだそうだ。

 

「……うん、まあ仲間にするのはいいよ」

「そう? なら、これからよろしくお願いね」

「なら、まず初仕事としてこれを売り出すのを手伝って貰おうかな」

 

 私はエレナにバイオプラントの種を見せる。

 これがとのような代物なのかを説明すると、案の定彼女は食い付いて来た。

 うん、金に対する嗅覚が凄まじい。

 

 これは尚文に渡して商売の種にしよう。

 あいつなら何とかしてくれるだろう。

 細く長い金の流れを作れば活動資金にそこまで困らないだろう。

 具体的な価格設定は詳しい人達に丸投げしてしまえ。

 

 他にも、エレナの実家と話を通して商人のネットワークを融通してくれる運びになった。

 多分その内アクセサリー商が尚文の事を気に入る時期でしょ。

 ついでに尚文に間接的にサポート出来てお得だ。

 

「ふぅん……貴女、盾の勇者を気にかけてるの?」

「女王が帰還した時が楽しみだね」

 

 含み笑いをしながらそう返しておいた。

 エレナはそれだけでどう言う意味なのかを納得してくれたようだ。

 この人、扱いが分かっていると頼もしいかも。

 

「盾の勇者には商才がある。彼を援助すれば金回りは素晴らしく潤うと思うよ」

「それは実際に見てから判断するわ」

「話は終わりましたか。では、滞在者が増えると皆に連絡しておきましょう」

 

 いつも細かい所をありがとうございます、ヴァンさん。

 

 こうして、私達一行にまた一人仲間が追加されたのだった。

 一応私達の側に付くメリットを提示し続ければ裏切りはしないでしょ。

 それが中々大変だったりするんだけど、マルティ王女よりかは断然マシだしね。

 って、流石に比べる対象が悪過ぎるかそれは。

 アレより極悪度が高いとなると、もう……ね?

 





槍直しアニメ化しないかなぁ……
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