※主人公の原作知識はチュートリアル編アナザー辺りで止まっているものとする
フレオンちゃんに乗ってから数時間程度。
私と樹は目的の街に到着した。
場所的にはライヒノット領の隣の隣くらいの位置。
……意外と近くて助かった。
「あの屋敷が目的地か!」
「ええ、そうです。それから、気になってたのですが何故このフィロリアルは空を……?」
「それは目の前にある果たさなければならない正義よりも重要な事か?」
「! たしかに、それはそうですね」
正義って言葉出しておけば意外と大丈夫……なのか?
勢いもあるだろうけど。
「潜入は任せて欲しい。これでも潜入は得意な方だ」
「そうなんですか?」
「ああ」
私はフレオンちゃんに屋敷の屋根に降り立つよう指示した。
「フレオンちゃんは……雛の状態になれる?」
「クエ!」
元気よく返事をしたフレオンちゃんの身体が光り出し、やがて小さなひよこの姿に変わった。
……この様子なら、既に人型に変身出来そうだ。
なお、この様子を樹は口をぱくぱくさせながら見ていた。
「フレオンちゃんはそのまま樹と一緒に居て。私は窓を開けてくる」
私はソウルイータースピアを使い、壁抜けして屋敷の内部に侵入する。
身バレ防止の為に目深にローブを被るのも忘れずに。
……この部屋はどうやら誰も居ないようだ。
屋根裏部屋だから当たり前かな。
それでも窓はあったので、鍵を開けて樹とフレオンちゃんを中に入れた。
「千秋さん……今のはどうやったんですか?」
「武器の技能で壁抜けが出来るようになってね」
「そんなものあったっけ……」
……何か疑問に思っているようだけど、まあいいか。
今はそんな事はどうだっていいんだ、重要な事じゃ無い。
「これから私が壁抜けを利用して1人で制圧してもいいけど……」
「何を言ってるんですか。僕も動きますよ」
まあ、そう言うよね樹なら。
「そっか。じゃ、私は基本フォローに回るとするよ」
「構いません。それでは行きましょうか」
……って、そう言えば建物の中で弓って大丈夫かな?
腐っても勇者だから大丈夫だと思おう。
最悪、私が全て解決すれば良いんだし。
「まず、人質にされると厄介だからその貴族の娘とやらを保護したいね。多分、ここに居ないなら地下室に居ると思う」
「僕も同じ意見ですね。必ず地下室に居るとは限りませんが……下に向かいましょう」
そして、樹とスニーキングミッションを開始する運びになった。
幸いにもあまり人には出会わずに地下室まで辿り着けたね。
使用人らしき人しか居ないし、これならそもそも戦闘が発生し得なかったかも。
地下室の入り口はちょっと分かり難い場所だったけど……
「……この場所は」
「うっ、酷い臭い……」
これは……私には覚えがある。
あの、リファナちゃんの居た所に雰囲気がとても良く似ている。
湧き上がって来る嫌な予感……それは、間違いなく本物だと確信出来た。
「……」
幸か不幸か、幾つもある牢屋には誰も居ない。
だけど、骨は幾つか転がっていた。
人の……いや、恐らく亜人の骨が。
「これは一体、何が……?」
「出よう、樹。ここに目的の子は居ない」
「は、はい」
……webの方でエミアって人が出て来たのを思い出した。
今ここに居ないって事は大丈夫だと思いたいけど……後で確認しておこう。
三日に一度確認するくらいじゃもう安心出来ない。
その後、私達は一階に戻り貴族の娘ことリーシア捜索に戻る。
すぐに見つかりはしたが……困った事が一つ。
「ふぇぇ!?」
「何だ貴様らは!」
半裸の貴族に薄着一枚のリーシア。
あっ、ふーん……
「……どうする、樹?」
「このまま縛り上げてしまいましょう」
「それが良い。オラッ、睡眠!」
「グハッ!?」
私はスリープランスで貴族を昏倒させた。
危ねぇ、マジで紙一重だったかもしれない。
その間に、樹は自分の使っていたフードをリーシアに被せてあげていた。
……普段からそうしていれば立派な勇者様なのに。
「大丈夫ですか、もう安心ですよ」
「あ、貴方は……?」
「此方、弓の勇者であらせられる川澄樹様でございます」
「ふぇ!?」
ここで私は樹の存在を強調しておいた。
別にカプ厨って程じゃないけど……何となく、そうした方がいい気がした。
別の世界線の樹もきっと喜んでくれるだろう。
……余計なお世話ですよ、とも言いそうな気がしたが。
この後は特筆すべき事もなく無事に事態は解決した。
弓の勇者の名声のお陰で問題が発生しない。
え、昏倒させた貴族はって?
普通に王都に連行された……ように見せかけて。
どうせ内部も腐ってるんだろうから、簡単に釈放されるだろう。
なのでついでに奴隷落ちさせる事にした。
後でさらって奴隷商の所へ連れて行こう。
事態が収束し、夜になった頃に樹の仲間達は到着した。
……ううん、燻製含めて屑しかいない奴等なのが残念極まりない。
なんで樹の周りは腐ってる奴ばかりなんだ。
何か言われる前に私はクローキングランスを使ってそっとその場から退いた。
突然居なくなった私を探してキョロキョロする樹達。
あ、勿論フレオンちゃんも一緒だ。
「何処に行ったのだ、樹様を攫ったあの不届者は!」
「……仕方ありません。千秋を懲らしめるのはもう少し後にしましょう」
出来れば諦めて欲しかった……ま、いいか。
それにしても、今日は無駄に疲れた……
しかし、今日はこれで終わりではなかった。
「ちあきさん! あの人と会話したいのですが!」
「まだ早い」
「何でですか?」
「……」
フレオンちゃん……君が本気を出すと樹がぶっ壊れるんだ。
だから辞めて欲しいとは言える訳がなく。
「樹の正義には濁りがある。それは理解しているね?」
「はい! でも、今日のいつきさんを見て正義の心を持っているのを強く感じました!」
「正義について語り合うには……少し時期が悪いんだ。もうほんの少しだけ待って欲しい。具体的には……」
私は次の波が来るまでの時間帯を考えながらこう言った。
「十日後。それまでは待って欲しい。後、私も着いて行ってもいい?」
「うう、仕方ないですね……」
「ごめんね、苦労をかけて」
一先ず説得には成功したようだ……
もういっそぶっ壊してしまった方が早い気がするけど、流石に辞めておこう。
加減すれば元の人格を維持したまま真っ当な樹に出来ないかな?
難しいけど試してみるかな……結果は何となく見えてるけど。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「……と、言う事があったんだ」
「そうですか。弓の勇者様にも困ったものですね」
「再び来訪して来ないから、しばらくは大丈夫だと思うけどね」
今私はヴァンとお茶している。
穏やかな時間だけど、そろそろ波がやって来る時期だ。
いつまでものんびりしては居られない。
「キール君……可愛い」
「ちょ、はなせよルナちゃん!」
「あー……平和だ。こんな時間が、いつまでも続けばいいのに」
「全然平和じゃねー! 助けてくれねーちゃん!」
視界の隅で人間姿のルナちゃんにキール君が抱きしめられているが、気にしない。
ルナちゃんが存在する以上、これは日常の象徴の光景だろう。
寧ろ安心するのが正しい心を持っていると言えるだろう。
「随分のんびりしているのね」
「いや、君には負けるけど」
「これでも最近は働いているのだけれど?」
そう言って私の隣に座ったのはエレナだ。
怠け豚と呼ばれてる人にのんびりしてるって言われてしまった。
誠に遺憾である。
「帰って来たと言う事は、盾の勇者に接触出来たんだね」
「ええ。商人としてはかなり信用出来る相手と言った所かしら」
「向こうも似たような事考えてると思うよ」
「あっそう。ともかく、しばらくは実家からも文句は言わせないしゆっくり出来るわ」
バイオプラントは無事に尚文の手に渡ったらしい。
そう言えば、今尚文達はどうしてるかな?
「尚文は元気そうだった?」
「そうね。まあ、寧ろ彼よりも神鳥の方が元気だったかしら」
「そっか。今後の予定とか聞いてた?」
「装備を一新したいとかぼやいてたのは聞いたわね」
ふーん……
「ま、しばらくは君もゆっくりしてていいよ」
「そうさせて貰うわ」
「……二人とも、程々にお願いします」
苦笑しながらヴァンがそう言ったけど、私だって偶には休みたいのだ。
今は特にする事はない筈だし。
「女王様が帰って来るまではまだかかりますが……そう言えば、メルティ王女がお帰りになるとお聞きしましたが」
「へー……」
婚約者、もといメルティ=メルロマルク。
彼女が尚文達と接触して……
……ん?
尚文、たしかアニメだとラフタリアの呪いを解く為に王都に戻るんだったよね。
もしそうならメルティと遭遇しない可能性があるかもしれない。
web版だとたしか初遭遇はもっと後だった筈。
いやいや、まさかね?
仮にも第二王女よ?
それがそんな些細な食い違いで野垂れ死するとか……
……絶対にあり得ないとは言い切れないような、そうでもないような。
うーん……一応、確認しておくかな。
「ちょっと用事を思い出したから、ちょっと出掛けて来るよ」
ガエリオンの活躍で病は蔓延していない。
このままだとメルティ王女がその辺で野垂れ死ぬと言う可能性が微レ存である。
流石にそれは無いと思うが、絶対に無いとも言い切れない……
「行ってらっしゃい、チアキ様」
ニコニコと笑みを浮かべるヴァンが憎たらしい。
エレナに至っては一瞥すらしない。
……こんにゃろうめ。
「ポータルスピア!」
一先ず王都の近くある適当なポータルに飛んだ。
そこから適当に周辺を探し回ってみよう。
予定とは違う行動だし、そう簡単に会える訳はないけど……
ま、一応行ってみるだけならタダだもんね。