槍の勇者のすり替わり   作:紙吹雪

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初投稿です



第二王女

 

 王都に来たのは良いものの、突発的な行動なので予定はない。

 尚文が行きそうな所と言うと思い当たるのは2点。

 奴隷商と武器屋だ。

 ……冷静に考えるとどんな奴だよ尚文は。

 

「ま、多分居ないだろうけどね」

 

 念の為にってやつだ。

 とっとと回ってから外に繰り出そう。

 目的はあくまでメルティ王女の生存を確かめる事だからね。

 手掛かり無しで探すのはやや骨が折れるだろうなぁ……

 

 

 

 とか思っていたんだけど。

 

「ん? お前は……千秋か」

「尚文、戻って来てたのか……」

 

 武器屋の所に居たよ尚文。

 しかもちゃんと青髪ツインテ幼女を連れてる。

 これが歴史の修正力なのか?

 とは言えラッキーではある。

 

「お前はどうしてここに?」

 

「ヴァンからの知らせで第二王女が帰国してくると聞いてね。一応確かめておこうかと?」

 

「ヴァン……たあ、お前が厄介になっている貴族か。第二王女ねぇ……」

 

 尚文は心底嫌そうに顔を歪めている。

 彼の王族の印象は最低レベルだしこの反応は仕方ない。

 なお、この会話をメルティちゃんらしき女の子は微妙そうな表情で聞いていた。

 

「それで、街中で色々聞き回ってみようとしてここに来たって訳。この武器屋の人は尚文の知り合いだし話し易いかなと」

 

「お前もあんちゃんの知り合いか? それにしても、その槍は……」

 

 ……ここで私が槍の勇者だって言ってもいいけど。

 隠す理由はないけど、別に言う必要性も感じられないね。

 ここはこのまま黙っておこうっと。

 

「ついでに尚文とも会えたしラッキーかな。最近調子はどう?」

 

「順調過ぎてちょっと怖いくらいだ。ラフタリアとフィーロが強くなり過ぎて俺の出番がないしな」

 

「ここに来たのは武器の更新の為かい?」

 

「ラフタリアが急成長の所為か武器の方が耐えられなくなってな……」

 

 ああ……そう言う?

 

「ふふーん、フィーロは壊してないからお姉ちゃんよりもフィーロの方がえらいもんねー?」

 

「うっ……あまり否定できません」

 

 珍しくラフタリアが負けているようだ。

 頑張れメインヒロイン。

 私は応援しているぞ。

 

「そういや、あの商人連中はお前の差し金か?」

 

 アクセサリー商とかエレナの実家とか、色んな所から絡まれたんだろうなぁ……

 尚文の商才なら乗りこなすだろうと思って用意したけど、この様子なら成功したみたい。

 馬車もチラッと見たけれど、かなり捗っているように思えた。

 

「さて、何の事やら」

 

「……コネが出来たのには素直に礼を言うがな」

 

「私も勝手にした事だから、礼は要らないよ」

 

「その言葉、忘れるなよ。後で恩着せがましくしても一銭も出さんからな」

 

「へいへい」

 

 捻くれてんなぁ……

 

 さて、正直もう帰っても問題はない。

 目標は達したんだしとっとと帰ってベッドで横になりたいのは山々だけど。

 折角都合良く尚文達と合流出来たんだし、何か出来る事はないかな?

 

「さっきから気になってたんだけど、その子は誰なんだい?」

 

 そう言えば、まだメルティ王女について言及していなかったのを思い出して尋ねてみる。

 何故か知らない風を装ってしまったのは……その場のノリかな。

 今更「ここに君が嫌っている王族である第二王女が居るよ」とは言えなかったし。

 メルティも言い出すタイミングを失ってしまったので黙ったままである。

 

「こいつは王都に向かう際に拾ったんだよ」

 

「ふーん。尚文の事だから、身なりの良さそうだし護衛すればお礼の代金を請求出来るとか、そんな感じかな?」

 

「否定はしない。タダ働きは御免だからな」

 

 ふむ……ほぼアニメの流れと同じかな?

 

「そうそう、話は戻るんだけど尚文は第二王女らしき人を見かけてないかな?」

 

「いや、そんな性格の悪そうな奴は見てないが……一応聞いてやるが、第二王女ってどんな奴なんだ?」

 

「姉は似ても似つかない性格だよ。穏健派だから君ももし会ったら少しくらい話を聞いてあげてもいいんじゃないかな?」

 

 そうフォローしてみたけれど、尚文はまだ嫌そうにしているみたい。

 まあ、味覚障害が生じるくらいのトラウマ生んだ奴の身内だもんね……

 そう簡単に信じるのは難しいのだろう。

 だからそう気を落とさないでメルティちゃん。

 

「あーはいはい、気が向いたらな」

 

「そうかい。それじゃ、私はそろそろ行くよ。第二王女探しを続けないとだからね」

 

 私のその言葉にメルティは申し訳なさそうな顔をした。

 ……そうだ、ちょっと揶揄ってみよう。

 可哀想だなと思った矢先になんて悪戯心なのだろう。

 

「護衛とはぐれた、なんて噂もあったからね。もしそうだとしたら急いで保護しないといけない。大変だけど、人命には変えられないからね」

 

 さらに申し訳なさそうにしているメルティが可愛い。

 うん、溺愛したくなる気持ちは分からないでもない。

 

「別にそいつが野垂れ死のうが俺には関係ないがな」

 

「なんですって……! っ、おほん」

 

 尚文の言葉に耐えられなかったのか、彼女は急に怒り出した。

 尚文は不思議そうにしている。

 

「何でお前が怒って……ん、待てよ? 護衛とはぐれた……」

 

 あ、やべ。

 ……退散するか。

 

「それじゃ、次に会うのは波になるのかな。バイバイ尚文」

 

「あ、ああ」

 

 尚文に怒られる前に私はとっととその場から退散した。

 店の外に出てささっとポータルスキル。

 ふぅ、危なかったぜ。

 

 

 

 さっくり帰還っと。

 このお屋敷も見慣れたので自分の家だと思えるくらいには愛着が湧いて来た。

 

 さて、これで波までは比較的のんびり過ごせるようになった。

 勿論戦闘訓練とかは行うつもりだけど、それ以外の時間は寝て過ごすつもりだ。

 なんだかんだ、今まで働き詰めだったから仕方ないのだ。

 そう、これは仕方ない事……

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさいチアキ様。今度は剣の勇者が訪ねて参りましたよ」

 

「あー、聞こえない聞こえない! そんなの知らない!」

 

 ウッソだろお前。

 マジかよ……

 

「……居ないって言っておいて欲しい」

 

「そう伝えておきました。貴女が留守の間に尋ねて来たので」

 

 やったぜ。

 しかし……何故錬までここに?

 一体何の用があって……

 

「何か勇者同士でしか出来ない話があったようですが、不在を伝えた際は残念そうにしておいででした」

 

「……そう、なんだ」

 

 私と話したい事でもあったのか?

 それにしても錬とは特に関わりは持ってない……

 いや、クロちゃんが居たね、うん。

 

「敵意とかは無かったんだよね?」

 

「ええ。気が立っている様子ではありませんでしたよ。ただ、何か考え込んでいたような気はしますが」

 

 考え事ねぇ……

 錬がそんな事するかなぁ。

 うん、分からん。

 

「波で会った時にでも聞いてみるよ」

 

「それがよろしいでしょう」

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

 そんなこんなで、もう波が来る一時間前になった。

 しっかり休めたのでコンディションは万全である。

 

 連れて行くメンバーはサディナとクロちゃん、それにフレオンちゃんもだ。

 約束したからね……樹と話す機会を設けると。

 うん、努力はしよう。

 

 ルナちゃんはお留守番。

 きっと主にキールの面倒を見てくれるだろう。

 

「これは面倒を見てるとは言わねーよ! わんわん!」

 

「キール君、可愛い」

 

「おれはかわいくねー!」

 

 普段とまるで変わらない光景だ。

 この平穏を守る為に私は戦うんだ……!

 

 

 

 などと意気込んでみたものの……実は結構気が重たかったりする。

 だってこの波にはあの人が登場するんだから。

 説得出来るかどうかは完全に未知数……

 一応交渉するシーンを脳内でシミュレートしてみたけど、成功確率は低い気がする。

 

 あっちも何だかんだ覚悟決めてるんだよね。

 その覚悟は完全に無駄な物なのがまた悲しい。

 最悪、暴力と言うカードを切らないといけなくなるかもしれない。

 

 他にも樹とフレオンちゃんの件とか錬の件とかもあるし……

 後、尚文の逃避行とか女王の帰還も考えなくてはならない。

 エクレール達が仕事してくれたら助かるが、あまり期待はし過ぎない程度にしよう。

 

 ……色々考えなきゃいけない事が多過ぎて頭が痛いね。

 波そのものは楽勝なのが救いかな。

 想定外の事が起こらなければ、だけど。

 

「サディナ、準備はいい?」

 

「ええ、勿論よ」

 

 ……育児疲れとか気にしたかったけど、本当に平気そうだ。

 戦闘顧問もやって貰ってるから体力あるかなぁとか疑っててごめん。

 ほんと、呑兵衛以外に欠点が見当たらないねこの人。

 

「クロちゃんとフレオンちゃんも行けるかな?」

 

「大丈夫だよー」

 

「準備はできてます! ところで、樹さんと話せるのはいつですか?」

 

「……波が終わったら、だよ」

 

「そうですか! たのしみです!」

 

 私の言葉にフレオンは嬉しそうにしている。

 こんな子を止めるなんて、私にはできないよ。

 と言う訳で、すまないが懺悔の用意をしておいてくれ樹。

 

 ……波自体よりも今後の諸々に悩むのは、若干周囲から不謹慎に見られそうだ。

 一応気を付けておこう。

 想定外のアクシデント……例えばタクトが出待ちしているとか、そう言う可能性もある訳だし。

 足を掬われるのはノーセンキューだ。

 

「それじゃ、行こうか」

 

 色々と考えながらも、それを面にはださないよう私は同行メンバーにそう告げた。

 時刻は丁度波の起こる時間。

 ……精々、問題が起こらないように努めようか。

 

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