槍の勇者のすり替わり   作:紙吹雪

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前書きって何書けばいいの?(今更)




行動を起こす

 

 王城にて波の報奨金を貰い受ける。

 尚文に手切れ金だと言い渡したイベントを横目で観戦して。

 若干不快だったけど、王様ことクズの過去に免じて見ないフリをした。

 

 さて、王城から出て……これから何をしようかなってところだ。

 取り敢えず、尚文に話しかけるのは控えよう。

 流石に王城の近くは不味い気がする。

 

 まだファイアフラッシャーの魔法は使えないので……

 そろそろ三勇教も私を疑う頃合いだったし、そんな状態で盾の勇者と接触するのはよろしくない。

 しかも、こんな堂々とね。

 

「……この後はメルティ王女と一緒に逃避行するんだったかな」

 

 私はどう動くべきだろうか。

 そもそも逃避行させないように私が送り届けた方が良いかも。

 エクレールの働き次第では女王の帰還は早くなるだろうし。

 

 ううん、正確な見通しはできないから予定が立て辛いな……

 どうしたものか。

 

 一先ず帰ってから考えようかな。

 そう思ってポータルスキルを人気の無い路地で使おうとしたその時。

 ふと、人の気配がした。

 微かにだけれど今の私には感じ取れる。

 

「……」

 

 気配のした方を向くと、そこにいたのは……影だ。

 メルロマルクの暗部であり王族や教会にもいる隠密部隊。

 此方をじっと見ているけど、敵意は感じられないね。

 

「……何かご用かな?」

「流石は槍の勇者様。本気の隠密を看破るとはお見事、でごじゃる」

 

 お前かよ!

 うん、ほぼ確実に敵じゃないね。

 

「女王様のご帰還を促す為エクレール殿を遣わせてくれた事、女王様より感謝の言葉を送らせて頂きたい」

「お、もう会えたの?」

「うむ。運が良かったのでおじゃる」

 

 ぶっちゃけもうちょいかかると思ってた。

 これはもう勝ち確モード突入かな?

 女王の帰還で大抵の問題は解決するからね。

 

「それで、後どれくらい掛かるのかな?」

「数日程と言ったところでごじゃる」

「……なるほどね」

 

 それなら尚文をメルティと逃避行させなくて済むね。

 でも、それだと大きなフィロリアル様ことフィトリアに出会えないか。

 まあ多分別の機会があるのでそれはまあ良しとしよう。

 何なら私が先に接触しておくのもアリかも。

 確かシルトヴェルト方面に行くと早く会いに行けるんだっけ?

 

 ついでに三勇教とも戦わずに済む。

 だが、逆に言えば捕える事もできないか。

 それとビッチの処断も。

 

「できればこの際に三勇教を一網打尽にしたいけど……いや」

 

 確保しておいた白虎兄妹が居るから……ふむ。

 やはり、ここはメルティ王女を助ける方針で行くべきだろう。

 そうと決まれば早速動こう。

 

「何か思い付いた顔でごじゃるな、槍の勇者様」

「ああ、少し伝えたい事がある。私が遠距離を一瞬にして移動できるのはもう把握してるよね?」

「勿論」

「だったらこの際少し付いて来てくれるかな? ライヒノット領まで」

「ふむ……承知、でごじゃる」

 

 少々考えた様子だけど、早めに了承してくれた。

 それにしても癖強いなその語尾……変な語尾ザウルス。

 

 と、そんな一幕を挟んで私はヴァンの屋敷へと影を伴い帰還した。

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

「ただいま〜」

「あ、ねえちゃんおかえり!」

 

 出迎えはキールだった。

 珍しくルナちゃんと一緒に居ない。

 因みに影は隠密している。

 気付けるのは私以外だとサディナくらいだろう。

 

「キールくんも元気そうで何よりだけど、ルナちゃんはどうしたの?」

「うっ……ルナちゃんは……」

 

 キョロキョロと挙動不審になるキールくん。

 ……逃げたんだな。

 

「おーい、ルナちゃーん! 帰ったよ〜!」

「ちょ、ねえちゃん!?」

 

 それなら呼んであげようと大声で叫んだけれど、ルナちゃんはやって来ない。

 ……まさか、居なくなったとかないよな?

 キールが言い淀んでたのは逃げたからじゃないのかも。

 

「ルナちゃんはどうしてるの?」

「呼ばれたから行ってくる、って……他のフィロリアルもそうなんだ」

「呼ばれたって……誰に?」

「全然わかんねー」

 

 ……っとと、そうだ。

 魔物紋と言う便利な存在を忘れかけてた。

 試しに使うと大分距離が離れた場所に居るのが分かった。

 これは……シルトヴェルト方面か。

 

「……一足遅かったなの」

「あ、ガエリオン。どうしたの、そんな不満そうに」

 

 何処となく機嫌が良くなさそうなガエリオンが私に近寄って来る。

 どうして……って、まさか?

 

「もしかしてフィロリアルクイーン?」

「当たりなの。フィロリアルの使いを寄越したなの」

「……それ、いつの話?」

「お前が王城に向かった直後なの」

 

 酷い行き違いを見た。

 ウッソだろお前……まあ、いいか。

 

「それなら心配はないね。ところで、いつ帰ってくるか分かる?」

「知るわけねーなの。その辺あいつらは何も考えてねーなの」

「否定できないね。それが可愛いところでもあるけど」

「……フィロリアル好きは槍の勇者の影響かもしれないなの」

 

 そんな事ないよ……ないよね?

 あって欲しくはないな、うん。

 

「多分、フィトリアは私達勇者とも会いたがってるんだよね」

「きっとその内また遣いを寄越すなの」

「だろうねぇ……いっそ、尚文も誘いたいな」

 

 その方が手間も省ける。

 となると、フィトリアにはもう少しの間だけ待って貰う事になるが……

 ま、そんなに長期間待たせるわけじゃないし構わないか。

 

 この日は日課になっている魔法の勉強と夕食後の戦闘訓練をこなして夜になった。

 キールを始めとした子供達はとっくに寝ている時間帯だね。

 サディナは楽しそうにお酒を飲んでるけど、一緒に飲む相手が居なくてちょっと寂しい。

 ……早く尚文を紹介しよう。

 

 私が付き合ってもいいけど私の酔い耐性は多分元康と同等か少し低い程度なので……

 

 って、サディナの事は今はいいんだ。

 ヴァンと影、私の三人で小さな会議を開いて貰った。

 今後の予定の擦り合わせと準備の為だ。

 

「ヴァン、こちらの紹介は必要かな?」

「構いませんよ。女王様お付きの影の方でしょう」

「その通りでごじゃる」

 

 話が早い。

 

「それじゃ、今後の予定について話し合おうか」

 

 私は考えていた計画をなるべく詳細に説明した。

 素人考えの部分もあるだろうけど、指摘されたらその都度訂正すればいい。

 説明を静かに聞いていた二人は私が説明を終えると深く考え込むような表情になった。

 

 ……まあ、当然だよね。

 メルティ王女の殺人未遂とか盾の勇者の指名手配とか、完全に未来の話をしちゃってるし。

 スッと信じられる方がおかしい。

 

「……槍の勇者様の話は確かにあり得る事ではありますね」

「うむ、仮にこの場に女王様が居たとしても同じ意見を抱く筈でごじゃる」

「信じてくれなくても、予定通りに私は今話した通りに行動するけどね」

 

 ぶっちゃけると伝えておくだけでこの場は構わない。

 ヴァンは味方なので邪魔はして来ないし、影も敵対する理由はない。

 私の考えたプランは女王側の協力がなくてもどうにかなる。

 なので、正直信じて貰えなくても問題はない。

 

「今この場で信じて貰うよりも、実際に事件が起こるのを見てくれた方が納得が行くよね? つまるところ、私が今貴女に求めているのは協力の了承じゃなくて今話した内容を女王様に伝える事なんだよね。無理してこの場で判断する必要はないから大丈夫」

「……ふむ、承知した」

 

 ごじゃる付けなくても話できたんだ……

 

「だから、私は近い内に盾の勇者と合流する。メルティ王女の身は必ず守るから安心して欲しい」

「女王様がメルティ王女に望んでおられるのは経験を得る事なのでは?」

「あ、それは大丈夫だよ。ならべく苦労はさせてあげるから」

「であるならば問題はありませんね」

 

 にっこり笑顔で結構怖い事をおっしゃる……

 やはり細目は只者じゃない。

 

「そう言う事だから、女王の帰還できる時は私に伝えて欲しいんだ。そこまでは頼めるかな?」

「無論。でごじゃる」

 

 わざわざ付けなくてもいいのに……

 まあ、別に良いけど。

 

「じゃ、今日はここまで。ポータルで送ろうか?」

「いや、結構でごじゃる」

 

 そう言って影はこの場から去った……

 と思ったけど、去ってない。

 あれ、もしかして屋敷の屋根裏部屋に居る気がするんだけど?

 

「うーん、明日の朝食はもう一人分多めに用意させましょう」

「私はともかくヴァンは何で察したんだよ……」

「ふふ、秘密です」

 

 食えない男だな、全く……

 

 なお翌朝、フィロリアル達は無事に戻っていた。

 全員頭にアホ毛が付いている。

 案の定私にも来て欲しいと言っていた事を伝えられた。

 私はそれにもう少しだけ待って欲しいと返してその日は就寝した。

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

 翌日、私はシルトヴェルト方面に向かっていた。

 理由は勿論尚文と合流する為だ。

 その道中でメルティ王女と再会して事件が発生するんだけど……

 ちょっと時間がかかってしまった。

 

 行き先は武器屋のあの人にも確認を取ったから間違いない。

 私が強化方法を教えた影響で思っていたよりもフィーロの足が早いかも。

 まあでも何とか見つける事はできた。

 

 ……そこそこ近い位置にメルティ王女が乗ってると思しき馬車も見えたけど。

 地味に物凄く焦った。

 あと十分遅かったら色々とお釈迦じゃねーかこの野郎!

 くっ、やっぱり私の作戦はガバガバだ……

 

 しゃーなし、切り替えて行こう。

 ここは尚文と接触するよりも襲い来る騎士達を一人も逃さない事を優先しよう。

 私が盾の勇者の味方だと知られないようにするべきだ。

 三勇教は勘付いているだろうけど、クズは微妙に分からない。

 

 で、メルティ王女の馬車も気にしながら尚文達の近くで隠密中なわけだけど……

 

「っ!」

「どうした、ラフタリア?」

「い、いえ……誰かに見られているような気がして」

「うぅ……フィーロも同じかもー」

 

 バレそう(焦り)。

 

 変に気付かれたら事情を説明するのに時間がかかる。

 多分、そうなるとメルティとの接触に間に合わない。

 なのでここは私が頑張ってどうにかするしかないけど……

 

 頑張るも何も隠密スキルは既に全開なので私に出来る事はこれ以上特にない。

 

 ……頼む、気にしないでくれ!

 呑気であれ尚文!

 オタクだった頃のお前を思い出すんだ!(?)

 

「ううん、気の所為じゃないか?」

「そうでしょうか……」

「フィーロお腹空いたー」

 

 よぉし、セーフだ!

 どうやら祈りは通じたようだ。

 

 






お腹空いてるフィーロたんかわいいですぞぉぉぉぉぉぉぉ!!

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