槍の勇者のすり替わり   作:紙吹雪

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お義父さん!4期アニメでは俺の出番が殆どありませんでしたぞ!?
何故ですかな!?
もっと出番が欲しいですぞー!
あわよくば槍なおしのアニメ化も期待しておりますぞ!




協力要請

 

 

 メルティが乗っている馬車との距離を確認しながらいつでも飛び出せるように私は備える。

 九分九厘無いとは思うけど、尚文がメルティを庇わなかったとしても大丈夫だ。

 そのくらいの心構えをしておけば対応できるだろう。

 

 ……しかし、本当に疫病神だなマルティことビッチことヴィッチ。

 正体がアレなだけに納得はできるけど行動力が悪い方向にえげつなさ過ぎる。

 似た様な奴等が探せば割とあちこちに居るって考えると頭が痛くなるよ。

 一番頭痛がするのは多分親の女王様だろうけど。

 

 っとと、そんな事を考えていたらメルティと尚文が接触した。

 

 露骨に怪しい感じの護衛騎士達も勿論居る。

 今の私でも一瞬で制圧出来る人数なので問題はない。

 寧ろ、見られないようにする方が大変だろうね。

 ここで敵対しちゃう姿勢を見られると、クズに難癖付けられそうだ。

 

 

 

 まあ、最悪の場合は元康よろしく皆殺しにすればいいか。

 

 

 

「……はあ」

 

 相変わらず、私は私の思考が段々と分からなくなっている。

 まともな倫理観は持ち合わせているつもりなのに。

 これもカース系統の影響だったりするのだろうか。

 

 ……今は考えても仕方がない。

 目の前のやるべき事に集中しようか。

 

「どうか、父と和解して頂きたいのです」

 

 あ、まだお淑やかな雰囲気のメルティちゃんだ。

 悲しいけど今の尚文には全然響かないんだよね……

 私もどちらかと言うと口の悪いメルティちゃんの方が好みではある。

 

「断る」

「……っ!」

 

 あ、キレそうになってる。

 即答で断られてるんだから当たり前だけど。

 うーん……初対面が険悪なのはベタだけど良いものだ。

 ってそんな事考えてる場合じゃなかった。

 そろそろ来る——

 

 ややヒステリック気味に尚文へ詰め寄るメルティ王女を、騎士達は眺めていた。

 どう見ても悪意を含んだ笑みだった。

 映像を記録する水晶玉も勿論持っている。

 

 ……お、尚文が違和感に気付いた。

 これならメルティは任せても大丈夫だろう。

 私は私のやる事をやろう。

 

 そして私が知っている通りに……騎士の一人がメルティ王女に向かって剣を振り下ろした。

 それを咄嗟に尚文が盾で受ける。

 

「おのれ、盾め! 姫を人質にするとは!」

「は?」

 

 この後、尚文達が護衛騎士を追い払おうとする流れだったかな。

 その様子を撮影して、映像を加工する。

 んでもって盾の悪魔を指名手配と。

 ……盗人猛々しいな、ほんと!

 

 おっ、騎士達が逃げ出した。

 やっと私の出番だ。

 正直待ちくたびれたよ。

 

 私は隠密スキルを使用したまま適当に首元を殴って逃げる騎士達を気絶させる。

 私の存在を気付いていない騎士達は面白いくらいにバタバタと倒れて行く。

 ストレス解消になりそうなくらいだ。

 

 その間、尚文達は怪訝そうに倒れて行く騎士達を見ていた。

 

「これは一体どう言う事だ……?」

「今から説明させて貰うよ、尚文」

「千秋か……はぁ、これもお前の言う未来の知識ってやつか?」

「そうだね」

 

 私の返答がお気に召さなかったのか、尚文は頭を掻きながら不機嫌そうに叫んだ。

 

「先に言え、この馬鹿!」

「……ごめんて」

 

 だって下手に盾の勇者と関わるとこの時期はちょい面倒になりそうだし……

 

「ま、これから説明はさせてもらうから許して?」

 

 私はそう言いつつ落ちていた映像水晶を拾った。

 試しに見てみるが、画質はそこまで良くないがハッキリと尚文達の姿が映っていた。

 やれやれ、取り敢えず壊さないと。

 

 私は手に力を込める。

 すると水晶はあっさりと砕け散った。

 我ながらどんな握力だよ……

 

「まずは、場所を移そうか。私の拠点まで来て欲しい」

「……そうだな。不可抗力とは言え、こんな事件を起こした現場に長居したくない」

「メルティ王女もよろしいでしょうか?」

 

 私はメルティにそう聞いた。

 彼女は状況を把握したのか顔色を悪くしながらも頷いてくれた。

 命を狙われたんだから……仕方ない。

 

「お前、やっぱりコイツの正体知っていたのか」

「うん」

「……じゃあ、この前武器屋で会った時の会話は」

「長居は無用。さあ、早く行きましょう」

 

 私を引き気味の視線で射抜いてくる尚文を華麗にスルーして私は転移スキルの用意をする。

 まずはパーティー勧誘からしなくちゃ……

 と、私がステータス画面を弄っていたその時。

 

 微かな呻き声がした。

 

 ……こいつは尚文の方で抑えてた騎士かっ!?

 やばっ、逃げる騎士は全部倒したけど尚文の近くに居た奴まで気が回らなかった。

 もう完全に私の姿を目撃されてしまった。

 

「お、お前は槍の勇者……やはり盾の悪魔と繋がっていたか!」

 

 ああもう、計画が崩れちゃった。

 

「おい、どうした千秋?」

「尚文、ちょっとメルティ王女の目を塞いでてくれないかな?」

「は? そんな急に……はぁ、分かったよ」

 

 私は地面に倒れたままの騎士に歩いて近付いた。

 尚文は素直に私の言う事を聞いてくれた。

 メルティ王女は戸惑っている様子だけど、別に構わない。

 

 さて、と。

 

「あらら、何でそんな悲しい事言うかなぁ?」

「な、何をす——」

 

 

 

「もう殺すしかなくなっちゃったよ」

 

 

 

 私は素早く槍を騎士の胴体ど真ん中に突き刺した。

 このままでも殺せるだろうけど、そうすると死体の処理が面倒だ。

 バーストランスは音が大きいからここはアレだ。

 

「ブリューナクⅩ」

 

 悲鳴を発する隙すら与えず、私は騎士の一人を抹殺した。

 残骸の一片すら残っていない。

 一応ソウルイータースピアにするか考えたけど、流石に一介の騎士には必要ないか。

 

「もういいよ」

「お前……」

 

 ああ、流石に引かれちゃったか。

 尚文だけじゃなくラフタリアも引いてる。

 でもフィーロはいつもと同じ様子だった……それもどうなんだか。

 

「色々と聞きたい事があるのは分かるけど、話は後。早く移動しよう」

「……いいだろう。今までの恩に免じて話だけは聞いてやる」

「ありがとう」

 

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

 

「……なるほど、大体話は分かった」

 

 ポータルを使って戻ったライヒノット邸にて、私は尚文に様々な事を説明した。

 

 今起こっている事件の概要とその裏側。

 私が立てた作戦について。

 尚文達にも協力して貰えるよう、私なりにだけど誠意を尽くして話した。

 

 なお、この場にはラフタリアとメルティ王女も一緒だ。

 それとヴァンもだね。

 フィーロは他の子達と一緒に遊んでる。

 かわいいね。

 

「協力して貰える?」

「……一つだけ、気になる事がある」

「何かな?」

 

 尚文が聞いて来たのは作戦の中枢を担う箇所。

 具体的には、メルティ王女を送り届けた後の部分だ。

 

「お前、本当にメルティを守れるのか?」

「あー……」

 

 確かに、守ると言う点では尚文の右に出る者は居ないだろう。

 その点は認めざるを得ないし一生覆せない評価だね。

 今の尚文は原作のこの時点よりもかなり強い。

 強化方法の共有はやはり大きい。

 

 と言うか、待てよ?

 

「もしかして尚文、私が考えたよりもメルティ王女の事心配してる?」

「……いや、してない」

「してたよね?」

 

 ぷいっとそっぽを向かれてしまった。

 いやいや、これは脈アリじゃん?

 

「良かったですねメルティ王女、勇者様の血を王族に引き入れられますよ!」

「てめぇ、何言ってやがる!」

「そうよ! 誰が盾の勇者なんかと……!」

 

 もう仲良しじゃん。

 まだ二人はあまり一緒に過ごしていない筈なんだけどなぁ。

 何だかんだ相性は良いのかもしれない。

 

 ……あ、ラフタリアの顔色が悪い。

 この話題は彼女にとっては心地の良いものじゃないよね、うん。

 話題を変えなければ。

 

「話を戻すよ。私がちゃんとメルティ王女を守れるのか、だっけ。その点は大丈夫、任せて欲しい」

「ちっ、余計不安になったぞ」

「じゃ、また明日にでも私の実力を確かめて欲しい」

「……そうだな、しっかり見極めさせて貰おうか」

 

 尚文の鋭い視線が私に突き刺さる。

 うん、めっちゃ怖い。

 下手な魔物よりも余程恐ろしい気がする。

 でも内面はめっちゃ優しいんだよね……アンバランスだ。

 

「もう日も暮れてるし、今日はご飯を食べてゆっくりと休んだらどうかな?」

「歓迎致しますよ、盾の勇者様」

 

 ニコニコと笑顔を浮かべる私とヴァンを見て尚文は胡散臭そうにしている。

 ……確かに怪しいかもしれないけどさぁ。

 糸目だし。

 

「他にも尚文にはやって欲しい事とか会って欲しい人とか紹介したい人もいるから、その為の前金だとでも思ってくれる?」

「なるほど、そう言う打算か」

「少なくとも尚文にとってはその方が安心するでしょ?」

「……チッ、分かったよ」

 

 よし、言質は取ったぞ。

 尚文は約束を破るような性格じゃないからこれで一安心だ。

 ふぅ……一仕事終えたような疲労感があるね。

 

 残る当面の問題は三勇教の殲滅と他の勇者の説得かな。

 他にも問題は沢山あるけれど、これだけ片付けばしばらく安心……

 いや、そんなわけなかったわ。

 まだグラスと和解もしてなかったし。

 

 ……取り敢えず、今日のところはここまでにしておこう。

 精神的にも割と疲れたから早く休みたい。

 

「ま、紹介したい人は夕食の席で紹介するよ。そう構えずに、気楽にしていて」

 

 これでようやくサディナの晩酌を尚文に押し付けられる。

 結構負担だったからかなり助かるぜ。

 ククク……

 

「お前……何か悪い事考えてないだろうな?」

「鏡見るかい?」

「うるせぇ」

 

 悪態を吐き合うくらいの仲にはなれたかな?

 今後の事を考えると尚文の信頼を得るのは必須だ。

 まあ……普通にしていれば間違いなく信用してくれるけど。

 彼、今はワイルドだけど元が真っ当な人間だし。

 

 ワイルドって言い出したのは確か……そう言えば、ガエリオンの紹介どうしよう。

 なるべく穏当に行くように考えておいた方がいいかもしれないや。

 落ち着いた感じの方がウケは良い筈だろうし、がっつかないように注意しておこっと。

 

 ……と思ったら扉の隙間から覗いてやがるあいつ。

 フィーロはドラゴンの気配を感じたのか覗き見をするガエリオンに気が付いたようだ。

 ガエリオンはそっと離れて行く。

 

 尚文がフィーロに言われてガエリオンが居た場所を見ているが、当然既に姿はない。

 何やってんだあいつは……まあ、今この場に登場して話をややこしくしないならいいか。

 一応、尚文への想いは本物だろうし。

 オスじゃないからまだマシ……ならいいけどね。

 

 






※これでも騎士を全員皆殺しにしていた元康よりかはマシです

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