(この人、強いっ!?)
体育館にて接敵した塔城小猫はフェニックス眷属の実力の高さに驚く。今対峙している中華服を着た少女は自分と同じ
「ふっ!」
タイミングを見計らって小猫は敵の蹴り上げた足を掴み取り、カウンターで顔面に拳を叩き込む。一撃の重さならこちらも負けてない。リーチのある敵への対処なら合宿で既に経験済みだ。そのまま体当たりして組み付き関節を極める。
「これでフィニッシュです」
悔しそうに呻く敵に一息つき、同行していた一誠の様子を見る。
彼が戦っているのは
「よ~し、こっちもフィニッシュといこうか」
すると思っていたより善戦していたようで、一誠はミラの武器を破壊し無力化していた。双子姉妹も上手くやり過ごして尻餅をついている。しかし、まだ彼女達の戦意は失われていない。何か決定打が必要だった。どうしたものかと考えていると、一誠は不気味な笑みを浮かべて技を発動させる。
「くらえ、俺の新必殺技。
その掛け声と共に彼女達の衣服が弾け飛ぶ。悲鳴を上げて羞恥心で蹲る姿を見て、戦闘続行は無理だなと小猫は判断した。傷1つつけずに無力化したところは評価できても、同性としては
「……見損ないました」
「最っ低……」
組み伏せた
「仕方ないだろ、弱いんだからさ!? それに手加減したっつーの。素っ裸はかわいそうだから、パンツだけは残しておいたんだ」
言われてよく見ると確かに下だけは無事だ。破れた上を隠す為に最低でも片腕を使わないといけないので、双子姉妹は武器のチェーンソーを振るう事はできないだろう。けれども――
「大方、自分の魔力量じゃあ全員を裸にすることはできないって思ったんでしょう?
絶対零度の視線を送りながら一誠に忠告する。負けられないとはいえ、レーティングゲームをストリップ会場にされては堪らない。リアスにも体裁というものがある。彼女の為にも釘を刺さねばならなかった。というより、身内に性犯罪者がいるのが小猫自身嫌だ。
睨む小猫と怯える一誠の通信機にリアスから通信が入る。
『朱乃の準備が整ったわ! 例の作戦通りにお願いね!』
それを聞くと小猫はすぐさま拘束を解き、敵を置いて一誠と共に体育館から走り去った。建物の外に出た瞬間――巨大な雷光が体育館に降り注ぐ。
「
小猫が振り返ると体育館は跡形もなく消し飛び、地面に巨大なクレーターが出来ていた。上空にいる朱乃が2人の無事を確認し、ひらひらと手を振る。
『ライザー・フェニックス様の「
学園内にグレイフィアの声が淡々と響く。
今回のゲームにおいて体育館は重要拠点ということはリアスも気づいていた。故に彼女はここを捨てた。小猫達にライザー眷属を引きつかせて、体育館ごと強烈な一撃を叩き込む。たとえ敵を倒しきれなくても、倒壊する瓦礫が進軍を邪魔するだろう。乱暴なやり方だがその甲斐はあった。誰一人脱落せずに敵16人中4人を倒したのは大きい。
「やったね、小猫ちゃん」
「……触れないでください」
喜びを分かち合おうと一誠が小猫の肩を叩こうとしたが、回避する。
「ハハハ、大丈夫だよ。味方には使わないから」
「……それでも最低な技です」
女の子に好かれたいと言っておきながら、何故嫌われるような事をするのか理解できない。言動から木場祐斗に対抗意識を持っているようだが、これでは元も子もないだろうに。溜息をついて次の作戦に移ろうとしたが、一瞬とはいえ気を抜いたのがいけなかった。
突然爆音が上がり、同時に小猫の体が宙に舞う。
受け身も取れずに地面に叩きつけられ、制服もボロボロで体からは煙が上がっている。驚愕の表情で駆け寄る一誠の姿がゆっくりに見える。その彼の後方に魔術師のような姿の女悪魔が空に浮かんでいた。
「
艶のある声が聞こえ、一誠も新手の存在に気づく。
(まずい、止めないと…)
『
「大丈夫、私がいます。だから後は任せてください、小猫ちゃん」
戦闘不能判定を避ける為に意識を保とうとする小猫に対し、いつの間にか地上に降りていた朱乃が声を掛ける。幼子を寝かしつけるような優しい声に体の痛みが和らぐ。
「…朱乃先輩…イッセー先輩……。もっとお役に立ちたかったのに…すみません…」
そうして小猫の意識は暗闇の中へと落ちていった。
◇
『リアス・グレモリー様の「
医療施設に強制転送された小猫を見送り、一誠は彼女の敵討ちしようと臨戦態勢を整えるが朱乃が止める。
「イッセーくん。祐斗のもとへ向かいなさい。ここは私が引き受けます」
なおも食い下がろうとしたが、朱乃は普段からは想像できないほど厳しい目つきで嗜めた。
「あなたにはあなたの仕事があるでしょう? ここは私の仕事です」
見るとユーベルーナも一誠を一瞥もしない。その意識はリアス側の最高戦力『
一誠が辿り着いたのは新校舎裏にある運動場。リアスの見立てでは機動力のある『
『ライザー・フェニックス様の「
その報告に心の中でガッツポーズを取る。こちらもまだまだ負けていない。しかし誰が倒したのだろう。
(
熟考する一誠の腕を何者かが掴んだ。
「っ!? なんだお前か」
何者かの正体は先程敵の
仲間と無事に合流できた事に安堵する。よく見ると木場は怪我らしい怪我もしていない。普段はキザッたらしい態度が気に入らない奴だが、味方になると頼もしく感じる。
「今の状況はどうなってる?」
「ここを見回っていた
「こっちは作戦通り
これは
「今残っている敵は運動場と部室棟に『
「厳重だな…」
「体育館を消し飛ばしたんだ。こちらに兵も集中するよ」
今のところ状況は五分五分、まだ油断はできない。合宿で鍛えられたとはいえ、実戦が醸し出す独特の空気に一誠は息が詰まりそうになる。
「緊張しているのかい?」
「あったり前だ! 戦闘ド素人の俺がいきなり本番なんだぞ!」
はぐれ悪魔やら堕天使と戦った経験を持つ一誠だが、まだ転生して3ヶ月も経っていない。そんな自分が世界的に有名なフェニックスという伝説の生物と戦っているのが今でも信じられなかった。
図星を突かれて激昂するが、それに対して木場は自分の手を見せる。その手は震えていた。
「無理もないよ、僕だってこれさ。レーティングゲームという大舞台は僕も初めてだからね。悪魔同士の本気の戦い…僕にとってもこのゲームは今後の全てに繋がる重要なものだ。僕は歓喜とともに恐怖も感じている。僕はこの手の震えを忘れたくない。この緊張も張り詰めた空気も全て感じ取って自分の糧にする」
それは学園で王子と女子に讃えられていたものではない。主人の誇りと名誉を守り抜かんとする戦士の顔をしていた。
「お互いに強くなろう。イッセーくん」
「ああ」
自分だけでなく他者の心を昂らせる木場の新たな一面を知り、一誠の心に闘志の炎が灯る。少なくともリアスの為に戦うと決めた男同士、負けていられない。
再び戦場に意識を戻すと、1人の甲冑を着た女剣士が運動場のど真ん中で仁王立ちしていた。
「私はライザー様に使える『
狙い撃ちされようと構わんと言わんばかりの堂々とした立ち振る舞い。見た目通りの武人肌の気質なのだろう。素人の一誠からしても愚かと感じる行動でも、木場の琴線には触れたようだ。
「名乗られてしまったら、『騎士』として、剣士として、隠れているわけにもいかないか」
今まで隠れていた物陰から姿を現し、木場は腰に下げていた剣を抜刀する。勇ましく名乗りを上げて決闘を申し込んだカーラマイン、そしてそれに応じた木場祐斗。剣を扱う2人にしか分からない糸のようなものが一誠には見えた気がした。
「僕はリアス・グレモリーの眷属、『
「俺は『
「リアス・グレモリーの眷属悪魔におまえたちの様な戦士いてうれしく思うぞ! 私はそういうバカが大好きだ!」
互いの『
「『
「よくぞ言った! リアス・グレモリーの『
カーラマインの炎の剣と木場の
決着がつくまで見守るしかないと思っていた一誠だが――
「ヒマそうだな」
「まったく泥臭くてたまりませんわ。剣の事しか頭にないんですもの」
現れた敵は2人。
顔の半分を仮面で覆った女性と貴族らしくドレスを纏った少女。
「残りの
体格だけで判断すれば仮面の成人女性の方が
「あら、私はあなたのお相手はしませんわよ。イザベラ、お相手してさしあげたら?」
「ということで、彼女は観戦するだけだ。私が相手をしよう」
「は? どういうことだ? 大事なゲームなのに!?」
憤慨する一誠の疑問を解消する為に
「あの方は特別だ。彼女の名はレイヴェル・フェニックス。ライザー様の実の妹君だ」
「はぁああああ!? 妹を眷属にするとかアリかよ!」
「ライザー様曰く、『妹をハーレムに入れることは世間的にも意義がある。ほら、近親相姦っての? 憧れたり羨ましがる者は多いじゃん? まぁ、俺は妹萌えじゃないからカタチとしての眷属悪魔ってことで』だそうだ」
律儀に教えてくれるも一誠には怒りと嫉妬しか湧いてこない。
「あの鳥は本当の変態でバカだったのか! 俺も欲し、アイタッ!?」
「馬鹿な事を言っているんじゃない」
怨嗟の声をあげる一誠だが、突如頭に強い衝撃を受けて強引に中断させられてしまう。声の主の方向に視線を向けると、全身鎧に身を包んだ騎士が立っていた。
「リアスの指示で来てみれば、何をしている」
「ひ…ヒルダ先輩!?」
思いもよらない援軍の登場に一誠は喜びを隠せない。
「あなたが助っ人の
「レトロなものに心魅かれる
皮肉を華麗に躱してヒルダが逆に挑発し返す。レイヴェルはこめかみに青筋が立てて、背中に炎の翼を生やす。感情に呼応しているのか炎の熱が上昇し、周囲の気温が上がっていく。
「……良いでしょう。私も参戦しますわ。特にそこの人間…フェニックスの炎を味わった事を仲間に自慢なさい!!」
紅蓮の翼から放たれた無数の羽が炎の矢と化し一誠達を襲う。機関銃の一斉射ような轟音を合図に戦闘が開始された。
10話を超えたので長編に変更しました。どこまで書けるかなぁ。