ハイスクールC×P~駒王の騎士乙女~   作:マルク

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連休中になんとかもう1話できました。少し短めですが、楽しんでいただければ幸いです。


反撃開始

 

空襲の如く降り注ぐ‶炎の雨"。ヒルダと一誠はそれを四方八方に動き周ってそれを回避する。

 

「うあっちち!? ちくしょう、これじゃあ丸焦げになっちまう!」

 

「耐えろ、兵藤! こんな大技、長続きしない!」

 

約1分後、雨がようやく止んだと思った2人の前には‶炎の海”が広がっていた。燃やすものなど何も無い運動場でこの惨状にレイヴェルの火力に驚愕する。

 

「上手く避けたようですわね。でも無駄ですわ。周りをよく御覧なさい」

 

言われるがまま周囲を見渡すと炎の海が壁となり、運動場の真ん中で死闘を演じる木場と分断されていた。これでは木場は勝利しても新校舎しか逃げ場がない。まだ敵戦力が校舎内に控えている状況でこれは不味い。

 

「お生憎さま、道が無ければ作るまでだ。海波斬!!」

 

ヒルダが振るう剣が空気を切り裂き、空と空の間に溝を作ってモーゼの如く炎の海を両断する。

 

「木場、戦いながらで良い! こっち側に移動しろ!!」

 

「チッ、させるか!!」

 

出口で待ち構えようとするイザベラだが、その行く手を一誠が阻む。

 

「おおっと。そいつはこっちのセリフだ。あんたの相手は俺だ」

 

「面白い。神すら屠ると言われる赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力、試させてもらおう!」

 

一誠とイザベラが戦闘を始める中、ヒルダも自身の相手を認識する。

 

「では、キミの相手は私だな。ああ因みに言っておくが、さっきの技はあまり使わない方が身の為だぞ」

 

「あら、もう怖気づいてしまいましたの? まだまだ全力ではなくってよ」

 

自信満々にふんぞり返るレイヴェル。だが、次の言葉に彼女は凍り付く事となる。

 

「いや、そうではなく。その……スカートで飛び上がったりしたから、さっきパンツが丸見えだったぞ」

 

「ッ!? な、な、な…」

 

思わぬ発言にレイヴェルの顔が強張り、思わずスカートを手で押さえる。そして顔をやかんの如く赤面させていった。

 

「しかしピンクね。貴族だから紫あたりを想像していたが、意外と可愛いのを履いているじゃないか」

 

そこは年齢相応という事かと1人納得しているヒルダの頬を炎の矢が掠める。レイヴェルは怒りに肩を震わせながら先程より巨大で赤々とした炎を掌に出現させた。

 

「…ふふふっ、あはははは!! 初めてですわ。私をこんなにコケにしたおバカさんは。 殺しは厳禁のレーティングゲームですが、怒りがおさまりません! その鎧の下の肌をこんがり焼いて、兜はトロフィーとして部屋に飾って差し上げますわ!!」

 

「親切心で教えてやったんだからキレないで欲しいんだが…。やれやれだ」

 

飛ぶ炎弾と煌く剣閃。運動場での戦いは苛烈極まるものとなった。

 

 

 

ヒルダの声は木場の耳に届いていた。だが目の前の女剣士(カーラマイン)の実力が許してくれない。特に剣が纏う炎が厄介だ。生物の本能で炎に気を取られてしまい、どうしても斬撃の注意が疎かになる。

 

(たしかフェニックスの眷属は炎と風の生命を司る、だったっけ。あれは眷属全員が炎と風を操る力を得たって意味か)

 

しかもその能力に甘える事無く、自己研鑽していた事が一撃一撃から伝わってくる。間違いなく強敵だ。果てしない剣戟の末、炎の剣の威力に耐え切れずに木場の剣が叩き折られてしまう。

 

光喰剣(ホーリー・イレイザー)か。残念だが私に貴様の神器(セイクリッド・ギア)は通用しない」

 

「残念。僕の神器(セイクリッド・ギア)はこれで全てではないんだ」

 

カーラマインが勝ち誇るものの、木場は余裕の表情を崩さない。折れた刀身に手を当てて力を開放する。光と共に現れたのは新たな剣。凍気を放つ氷雪の剣だ。

 

「凍えよ! 炎凍剣(フレイム・デリート)、この剣の前ではいかなる炎も消え失せる!!」

 

炎凍剣(フレイム・デリート)がカーラマインの炎を消して、逆にその剣を粉砕する。

複数の神器(セイクリッド・ギア)所有者かと疑う彼女の言葉を木場は否定した。

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』! 僕は任意に魔剣を作りだせる! これが僕の神器(セイクリッド・ギア)だ!!」

 

開戦当初から一振りの剣を携えていたのは、敵に誤認させる為、自身があらゆる局面に対応できる万能型の戦士という事実を隠す為だ。

 

そして今必要とされる力は火を打ち消す氷。カーラマインが愛剣を捨てて予備の短剣に持ち変えるが遅すぎる。

 

「この勝負、僕の勝ちだ!!」

 

騎士特有の超スピードに乗せた斬撃がカーラマインを捉え、斬り伏せた。

 

 

 

『ライザー・フェニックス様の「騎士」1名リタイア』

 

戦場に流れるアナウンスにレイヴェルは歯軋りする。悪魔祓い(エクソシスト)によって炎の海は一部を削られてしまい、その唯一の入口も敵の『騎士(ナイト)』が無数の魔剣を剣山のように生やして塞がれた。炎を飛び越えようとしても、未だ『雷の巫女』は健在だ。彼女に狙い撃ちされると一気に殲滅される。敵を閉じ込める為に作ったのに、これでは立場が逆だ。残りのフェニックス眷属が中に入るには旧校舎から回り込む必要がある。イザベラも赤龍帝の『兵士(ポーン)』に粘られており、助けは期待できないだろう。あれほど意気揚々と出撃しておいてなんて様だ。これでは兄になんて言われるか分からない。

 

(ええい、ちょこまかと!)

 

先程から炎を放っているが、悪魔祓い(エクソシスト)は重装備に拘わらず器用に躱す。それどころか消えそうになる炎の海に新たな火種を送り込み、火を絶やさないように動いていた。手を休めれば真空刃が飛んできてダメージを与えにくるので、それもできない。あとレイヴェルに残された手段は――

 

「うあぁああああ!!」

 

接近戦しかなかった。敵の得意分野に自ら飛び込まないといけない事態は屈辱でしかない。だが、もうこれしかなかった。貴族令嬢が鎧騎士に向かって拳を振り上げる様はさぞ滑稽だろう。レイヴェルの渾身の拳は虚しく空を切る。

 

「かかりましたわね!」

 

今までの悪魔祓い(エクソシスト)の言動から意地の悪い性格と分析し、ギリギリまで自分を引き付けてから躱すだろうと予測した。狙いは的中、擦れ違いざまに炎の翼を出して力の限り悪魔祓い(エクソシスト)を殴り飛ばした。

 

「ぐふっ!?」

 

くぐもった声で吹き飛ぶ怨敵に多少は溜飲が下がるものの、すぐに違和感に気づく。レイヴェルが視線を下げると腹部を深々と斬り裂かれていた。あの一瞬の反撃を見逃さず、敵の剣がこの身を捉えていたのだ。フェニックスでなければ今ので決まっていたかもしれない。すぐに炎が傷口を繋ぎ、負傷を治癒する。

 

「残念でしたわね。ご存じの通り、私はフェニックス。不死の生き物です。恨むなら、か弱い人間に生まれた己の運命を恨みなさい」

 

「……くくくっ、あはははっ! 面白い事を言うじゃないか」

 

地面に倒れたままで悪魔祓い(エクソシスト)が笑う。兜に覆われた無機質な貌から笑い声が上がる、その様相は悪魔のレイヴェルから見ても不気味だった。まるで感情の無いロボットが人間の様に振る舞う姿に悪寒を感じざるを得ない。

 

「不死なのに生き物(・・・)? 生きてるだって? 最近の悪魔は…冗談(ジョーク)が上手いな」

 

そう言うと悪魔祓い(エクソシスト)は立ち上がり、剣を正眼に構える。するとレイヴェルの体を圧し潰すかのような圧迫感が襲う。空気が重く、息苦しい。まるで立ったまま深海の底へと引き摺り込まれたようだ。

 

「私の剣術は基本的に『地』、『海』、『空』の3つを軸としている。因みに、お前の炎を斬ったのは『海』に該当する技だ」

 

これは殺気なのだろうか。父や兄が滅多に見せ無い怒気に似ているようで違う。向こうが炎ならこれは刀剣だ。触れれば斬られる。研ぎ澄まされた不可視の刃がレイヴェルに向けられていた。

 

「お前は自分を不死と言った。だが『空』の技なら、そんなお前も即死(・・)させる事ができる。そういう連中用の技だからな」

 

クククと悪魔祓い(エクソシスト)が妖しく嗤う。レイヴェルが誇りとするフェニックスを滑稽だと言わんばかりに。

 

「『空』の技は最高奥義とされている。残念だが、未熟故に私は使えない。まぁ、今回はゲームなので使う気も無いんだがな。では、どうするか…」

 

今までレイヴェルを襲っていた圧迫感が消えたかと思ったら、今度は異様な静けさに気づく。その様はまるで波紋の1つも無い湖面の如し。

 

「さぁ、ぜひ味わってくれ! 私が独自に編み出した、アバン流刀殺法第4(・・)の技を!!」

 

不死を斬る、そう意思の篭った眼光と剣がレイヴェルの心を射抜いていた。

 

 

 

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