ハイスクールC×P~駒王の騎士乙女~   作:マルク

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なかなか話が進まなくて申し訳ございません(泣) それでも読んでくださる皆様方の為に頑張ります。


落ちる翼

 

 

 

駒王学園上空にて繰り広げられる『女王(クイーン)』同士の空中戦。雷鳴と爆音がぶつかり合い、その度に校舎の窓が破砕されていく。

 

「さすがは音に聞こえし『雷の巫女』。素晴らしい技の冴え、大したものね」

 

「お褒めの言葉ありがとうございます。ですが、あなたの炎も噂以上ですわ。『爆弾王妃(ボム・クイーン)』の異名がつくのも頷けます」

 

「その二つ名は好きではないと言ったはずだけれど、私を怒らせるという作戦かしら? 意外と小狡い真似をするのね。グレモリー家も落ちたものだわ」

 

「ご心配なく、その代わりに勝利をいただきます。フェニックス家もそんな小狡い策に嵌ったから負けたのだと言い訳になるでしょう?」

 

2人は互いに力量を称賛し合うものの、その眼光は一つの隙も見逃さないよう鋭い。『女王(クイーン)』という両陣営の最高戦力、勝った側がこのレーティングゲームを制すると言っても過言ではないだろう。

 

あの力(・・・)を使えば勝てるでしょうけど…)

 

膠着したこの戦い、それを覆す‶力”が朱乃にはある。しかし忌み嫌う男から齎されたものという事実が行使を躊躇わせる。使ってしまえば最後、自分の中で大切なものが壊れてしまう。そんな予感があった。

 

「うふふふ。先程から気になってたのだけど、例の力は使わないの?」

 

ユーベルーナの見透かしたような発言に眉を顰める。

 

「あなたは自分が思っているより遥かに注目されてるのよ? 有名人は辛いわね」

 

これ以上の戯言を許さないと朱乃の手から雷が奔る。しかし雑な攻撃が通用するような相手ではない。ユーベルーナには魔法による防御壁を張られて簡単に防がれてしまった。

 

「美しい雷…でも力不足ね。あなたの攻撃は速いけど、軽いのよ!」

 

これがお手本だと言わんばかりにユーベルーナの力が朱乃の周りを取り囲む。そして解放すると同時に発動する爆発。寸でのところで急降下して朱乃は回避したが、無傷とはいかなかった。体のあちこちから悲鳴が上がる。

 

「堕天使との混じり者! 親の脛を齧らなければ生きていく事すらできない! 主人を守る事もできない! 中途半端、それがあなたの正体よ!!」

 

「黙りなさいっ!!」

 

追撃するユーベルーナに向けて再び雷を放つ。苦し紛れの一撃と見抜かれていたのか、敵は防御壁すら張らずにトップスピードを維持したまま躱してしまう。

 

「どんなに優れた才も使わなければ意味がない。さよなら、同情だけはしてあげるわ」

 

「しまっ――!?」

 

顔を掴まれ、強烈な爆発魔法が炸裂する。駒王学園で羨望の的だった朱乃の美貌は無惨に散った。

 

 

 

『リアス・グレモリー様の「女王(クイーン)」1名、リタイア』

 

その朗報に生徒会室にいるライザーは満足げに笑う。

まだ決着はついていないが、とりあえず山場は越えた。爆音のすぐ後にアナウンスが流れた事から、仕留めたのはユーベルーナだろうか。褒美として今夜はいつも以上に可愛がってやらねばなるまい。

 

「残りは『騎士(ナイト)』、『僧侶(ビショップ)』、『兵士(ポーン)』が1人ずつか…」

 

事前情報では、僧侶(ビショップ)はつい最近悪魔になったばかりの新米で戦闘力はほぼ皆無。兵士(ポーン)は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の所有者ではあるが戦闘技術が未熟だ。となると後は騎士(ナイト)さえ取れば勝利は確定する。

 

「いや、そういえば悪魔祓い(エクソシスト)がいたな」

 

グレモリー眷属の助っ人。情報が全く無いので対策のしようがなく放置していた人間だが、それも愛妹(レイヴェル)に任せてある。末席とはいえフェニックスの名を冠する悪魔だ。人間相手に後れを取るはずがない。

 

「クククッ」

 

リアスの悔しがる顔を思い浮かべると嬉しくて仕方がなかった。しかし――

 

『ライザー・フェニックス様の「僧侶(ビショップ)」1名、リタイア』

 

突如知らされたその報せはライザーから笑顔を奪うには十分すぎるものだった。

 

 

 

「弾けろ、洋服崩壊(ドレス・ブレイク)ッ!」

 

衣服を爆散されてイザベラが動揺している隙に一誠は残りの力を左手に集中させる。イメージするのは己の愛読書『ドラゴ・ソボール』の主人公の必殺技。

 

「そしてとどめの――ドラゴン波、改めドラゴンショットォッ!!」

 

光の奔流がイザベラを飲み込む。リアスもお墨付きの威力は凄まじく、彼女を運動場の彼方まで吹き飛ばしていった。

 

『ライザー・フェニックス様の「戦車(ルーク)」1名、リタイア』

 

1対1の勝負で得た戦果に一誠は拳を高々と上げる。

洋服崩壊(ドレス・ブレイク)――発動条件が対象に触れるだけでよく、必要な魔力も少量で済むというお手軽な技だ。女性の衣服を剥ぎ取る行為に抵抗があったが、直に慣れるだろう。どうせ嫌われているのだし、相手は絶対に自分を好きにならない他人の(モノ)だ。ならば思う存分剥ぎ取って、その肢体を吟味するまでである。

 

『Reset』

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から音声が流れて、溜め込んだ力が消失する。これでまた溜め直さないといけないが多用はできない。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)がもたらす倍加の能力は早い話がドーピングだ。肉体の負荷を考えれば使えてあと2発。いや2発撃った時点で一誠の体は動けなくなるだろう。

 

「やはりただの『兵士(ポーン)』と思わない方が賢明のようだな。しかし酷い技だ…」

 

「うちのイッセーくんがスケベでごめんなさい」

 

カーラマインから非難の目が注がれるも気にならない。日頃の行いで散々女生徒に罵倒されてきた一誠にはいつもの事だ。律儀に謝罪する木場には腹立つが、今はそれどころではない。戦闘中に知らされた朱乃の敗北。ここへ敵側の『女王(クイーン)』が来るのも時間の問題だ。早く目の前の(カーラマイン)を倒そうとするが――

 

「ねー、そこの『兵士(ポーン)』くん。調子に乗ってるようだけど、ここまでだよ。私達も混ぜてもらうからね」

 

「なっ!? みんな集まってきやがった!」

 

現れたのは4人の女性。炎の海を突破したライザー眷属の残り全員がこの場に集合していた。

 

「みんな、その『兵士(ポーン)』の手には触れるな! 衣服を吹き飛ばす下劣な技を使うぞ! そして3回倍加されたらお前達でも手に負えない! 20秒以内にはカタを付けるんだ!!」

 

カーラマインからの助言に従い、獣人の少女2人が一誠に襲い掛かる。徒手空拳という戦い方からして恐らく向こうも『兵士(ポーン)』だ。残りの2人――『騎士(ナイト)』と『僧侶(ビショップ)』がカーラマインの加勢に回る。いくら木場の神器(セイクリッド・ギア)が万能型でも3対1は危険だ。

 

「そりゃ!」

 

「おりゃ!」

 

獣人少女のローキックが一誠を苦しめる。身長差がある敵には最適な戦い方だ。イザベラとのダメージも合わさって自重を支える足から力が抜けていく。足を潰されれば戦う事は疎か、躱す事もできない。

 

「く…くそっ!」

 

絶体絶命の一誠と木場、そんな2人に再びアナウンスが流れる。

 

『ライザー・フェニックス様の「僧侶(ビショップ)」1名、リタイア』

 

「え?」

 

「嘘っ?」

 

フェニックスの眷属がまた1人脱落。しかもその人物はこの場にいない『僧侶(ビショップ)』――レイヴェルだ。信じられない内容に動揺を隠せないライザー眷属達。それを好機と見た一誠は最後の力を振り絞って木場へ駆け寄る。

 

「木場! お前の神器(セイクリッド・ギア)を発動させろっ!!」

 

「…っ!? 分かった!」

 

今から見せるは合宿で手にした赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の第2の力。

 

『Transfer』

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』!」

 

地面一帯を魔剣の剣山が埋め尽くし、ライザー眷属達を串刺しにしていった。これぞ『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア ギフト)』――他者に力を分譲し強化させる能力だ。一誠では不可能な多方向への攻撃も、この力ならば対処できる。

 

『ライザー・フェニックス様の「騎士(ナイト)」2名、「僧侶(ビショップ)」1名、「兵士(ポーン)」2名、リタイア』

 

一気に敵勢力の大半を倒した事で一誠と木場は軽く拳を合わせて喜びを分かち合う。この調子で残りを倒そうと活き込んでいた2人の下にヒルダが合流した。

 

「兵藤、木場よくやった」

 

「ヒルダ先輩もすごいですよ。あの女の子ってフェニックスなんでしょ。どうやって倒したんですか?」

 

「たしかに。この短時間はちょっとあり得ないね…」

 

素直に称賛する一誠と訝しむ木場。疑問を投げかけられるヒルダから返事は無い。突如彼女は猛スピードで一誠達に近づき、そのまま2人を両脇に抱えて大きく飛び退いた。

 

「せん…っ!?」

 

「グッ!?」

 

ヒルダの奇行に驚く間もなく、凄まじい風と音が一誠達を襲う。漸く息ができるようになって周囲を見渡すと、さっきまで立っていた場所にクレーターができており、その上空には敵の『女王(クイーン)』ユーベルーナが3人を見下ろしていた。

 

「誇り高きフェニックスの者が不意打ちとはご挨拶だな! 主人が聞いたらお叱りを受けるんじゃないか!?」

 

「結構よ。王の怒りを鎮めるのも眷属の務め。喜んで受けるわ」

 

ヒルダの挑発にユーベルーナが応える。一見冷静に見えるその佇まいも、声色から発せられる感情は明らかに怒気だ。一誠にはそれが何時爆発するか分からない不発弾の様に見えた。

 

「お仲間がやられてお怒りのようだけど、次はあなたが相手になってくれるのかな?」

 

「あまりいい気にならないで頂戴、グレモリーの『騎士(ナイト)』。あなた達の健闘ぶりには感服するけど、それもお終い。あれを見てみなさい」

 

言われるがまま彼女の指し示す方向を見ると、校舎の屋上にてリアスとライザーが対峙していた。

 

「あなた達の敗因は半端に強くなったところ。特にレイヴェル様を倒したのは不味かったわね。あの方を本気にさせてしまった。私達眷属の手で終わらせられなかった事を申し訳なく思うわ」

 

ユーベルーナの白々しい態度に怒りが湧くが、相手をしていられない。いくら眷属を倒しても(キング)を倒さなければ勝利にはならないのだ。

 

「兵藤、お前はリアスとアーシアの加勢に向かえ」

 

「えっ!? お、俺がですか?」

 

「イッセーくん、あの女は絶対に僕達の間合いには近づかない。遠距離攻撃に徹するはずだ。あの爆発魔法を躱せるとしたら高速移動ができる『騎士(ナイト)』の僕か、実戦経験が豊富なヒルダ先輩だ。キミにはキミにしかできない事があるだろう?」

 

木場の言い分は解る。しかし、朱乃を倒した強敵を前に2人を残す事に一誠は踏み切れない。それ以前に――

 

なんで自分が? なんで弱い自分がそんな大役をという気持ちが胸中に渦を巻く。

 

「…絶体絶命の女性を救う、そんな好感度が爆上がりな機会を逃す気か? お前らしくもない。男ならば、行け!!」

 

「兵藤一誠! 行って参ります!!」

 

不安を見抜いたヒルダから檄が飛ぶ。それに背中を蹴り飛ばされたかのように一誠は校舎に向かって駆け出していた。やってしまったという感はある。だが己の足取りは驚くほど軽い。体はボロボロの筈なのに不思議だ。これが後悔しない選択の力なのだろうか。

 

親友がどうして彼女に惹かれたのか解ったような気がした。

 

 

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