ハイスクールC×P~駒王の騎士乙女~   作:マルク

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鳥籠

 

フェニックス家は悪魔の中でも有数の成功者だ。

 

不死という特性を持つ彼らは寿命が長く死にづらい。純血のフェニックスが流す涙は、いかなる傷もその場で癒す事ができる代物だ。それ故に希少価値が高く、財政はかなり潤っている。

 

その恩恵もあり、ライザーという男は何不自由なく暮らしていた。

 

けれどもいつからだろう。それに違和感を感じるようになったのは。

 

地位と財産を目当てに眉目秀麗の婚約者が後を絶たず、一族のものは容姿にも恵まれている。古い一族故に敵も多い。それらを撃退する為に文武を磨いてきた。

 

そんな生活を続けていく中でライザーは気づく。

 

自分が手にしているものは、全て先祖からの貰いものにすぎないと。

 

自分が家督を存続させるだけの存在にすぎず、しかもその予備(スペア)でしかない。長男と次男、彼らの身に不測の事態があった時に初めて動き出す歯車。自分という男は何者でもないのだ。

 

万が一そうで無かったとしても、ただでさえ死と縁遠いフェニックスがその数を増やしたがるのは何故だろう。考えられる理由は一つしかない。性欲(・・)に負けたからだ。

 

この世は楽園か?

 

答えは‶否“だ。

 

生きるという事そのものが苦痛の連続、‶死”という終点(ゴール)を目指す一本道だ。

生まれたら死ななくてはならない。死にたくないなら生まれてはいけない。生物の誰もが知る暗黙の了解にして絶対の摂理。

 

しかし不死のフェニックスだけがその(ことわり)から外れる事ができる。あらゆる傷を癒す涙を流す事ができる。

 

酷い話だ。

 

生物にして生物に非ず。悪魔にして悪魔に非ず。

 

フェニックスを忌み嫌うものは恐らくこの事実に気づいているのだろう。この世で懸命に生きる者を遥か高みから見物している事に。それが自由気ままに繁殖し、憐みの涙を流して私腹を肥やしていれば腹が立つのは仕方ない。

 

いつの間にかライザーは酒、女、暴力に溺れるようになった。

周囲の制止する声も聞かず、主に人間の中から眷属を作っていった。

屈強な戦士が欲しいならそれこそ身近な悪魔の中から探せば良いのに、敢えてそれをしなかった。

 

一族に対する反骨心がそうさせたのかもしれない。

 

家族がライザー個人を愛している事は解っている。眷属達が男として慕っている事は解っている。だが自身の思いを言葉にすれば彼らが傷つくのは目に見えている。だからこそ、胸の内を明かす事はできなかった。

 

ライザーはフェニックスを愛している(憎んでいる)

 

思いを知ってほしいのに知られたくない。葛藤に苦しみながらこれまで生きてきた。

 

俺は誰だ。

 

その人生の中で出会ったライザーを1人の悪魔として接してくれた紅い少女。大人の事情など知らず、分からず、2人は無邪気に遊び合った。

 

『あなたはライザーでしょ。私の大切な友達!』

 

ライザーはリアスが欲しい。

 

今になってそう思った。

 

 

 

炎の矢が敵を焼き尽くさんと屋上に降り注ぐ。当たれば問答無用で退場する攻撃をリアスは‶滅び”の魔力で受け止めた。

 

「…グッ!?」

 

触れれば消滅する絶対防壁。しかし展開し続ければそれだけ魔力を消耗する。リアスの表情が苦悶に歪む。

 

昇格(プロモーション)女王(クイーン)!!」

 

アーシアによる回復を終えた一誠が突貫する。最弱の駒とされる兵士(ポーン)の固有能力『昇格(プロモーション)』。敵陣の最深部に赴いた時『(キング)』以外の駒に変化できる。そして今一誠が選択したのは最強の駒『女王(クイーン)』。

全ての駒の特性を持つ『女王(クイーン)』によって防御力と攻撃力が大幅に強化された一誠は炎の弾幕を強引に突破し、拳をライザーの顔に叩き込む。だが、相手は炎の化身たる不死鳥(フェニックス)。粉砕した頭部はすぐさま復元してしまう。返す刀で一誠は顎を打ち上げられ、上体が浮き上がったところをリアス達の下へ蹴り飛ばされた。

 

「イッセー、攻撃の手を緩めないで! 大丈夫、ダメージは通ってるわ!」

 

消耗しているのはライザーも同じ。それどころか攻撃と回復を独力で行うのだからリアス達以上のはずだ。もし勝機があるとすれば敵のガス欠を待つしかない。

 

「させると思うか?」

 

翼から放たれた無数の炎の矢が一誠を狙い撃ちにする。いくら昇格(プロモーション)したとはいえ、あの集中砲火を受ければ無事ではすまない。そう判断したリアスは一誠の前に入り込み消滅の盾で守る。攻撃の要である一誠を失えば勝ち目がなくなるからだ。しかし、その代償は高かった。

 

「キャアアアアア!?」

 

「アーシアッ!?」

 

リアスの素早い行動に間に合わず、数歩距離が離れていたアーシアにもう片方の翼が放つ炎の矢が襲う。

 

『リアス・グレモリー様の「僧侶(ビショップ)」1名、リタイア』

 

アナウンスと共にアーシアの体が光の粒子と化して消失した。

 

「これでもう復活はできない。終わりだな」

 

「…まだよ。まだ終わってないわ」

 

勝利を確信するライザーに対し、リアスは負けじとと言い返すが正直言って状況は悪い。一誠の昇格(プロモーション)は長時間維持できない。回復係のアーシアは退場(リタイア)。リアスの残存魔力も防御に徹してもライザーより先に力尽きるだろう。手が足りないのだ。もし勝機があるとすればそれは――

 

突如見えざる何かが屋上の扉が吹き飛ばし、威力そのままにライザーの翼を切り落とした。

 

「なにっ!?」

 

奇襲に対応できなかったライザーの体が地に堕ちる。

それと同時によく見知った顔がリアスと一誠の前に現れた。

 

「2人とも、すまない! 待たせた!」

 

「アーシアちゃんは、間に合わなかったか…」

 

ユーベルーナを倒したヒルダと木場が屋上に到着する。これでこの場に生き残ってる者全員が揃う事となった。

 

「今度は私から言わせてもらうわ。王手(チェックメイト)よ、ライザー。投了(リザイン)しなさい」

 

リアス側は残存戦力4人、ライザー側は1人。並みの敵ならもう決着はついている。だがライザーという男は並みではなかった。

 

「ユーベルーナ達を倒してきたか…。褒めてやる。ほんの少しだけな。だがいくら眷属を倒そうが、俺という王が健在な限り全て無意味だ!」

 

「あなた…」

 

ライザーは強い。宣言通り、彼こそがフェニックス陣営の最高戦力なのはリアスも認めている。彼に比べればユーベルーナ達など前座でしかないだろう。しかしその言葉の意味を分かっているのだろうか。

 

「私はね、王は必ずしも強くある必要はないって思ってるわ。だって王が強ければ、眷属達は何の為にいるの? 王ができない事を皆にしてもらって、王は彼らが満足いく働きができるよう整える。そうやって周りから支えられているものよ。自分さえ強ければ良いだなんて、それこそ誰も必要としていないのと変わりないじゃない」

 

王を名乗るだけなら子どもでもできる。しかしそんな人物についていくかどうかは他者が決める事だ。共に未来を歩んでいきたい。そう信じさせ、夢を見させる事ができるかが王の責務とリアスは考えている。臣下は疎か民すらいない身で王を名乗るようなものだ。そのような者に王たる資格は無い。

 

「甘いな。人の上に立つからこそ、誰よりも力を持たないといけないんだ。その強さに眷属は憧れ、畏れを抱き、崇めるのさ。それこそ、()のようにな…」

 

その言葉にヒルダの肩が僅かに反応する。

 

「ゲームは続行だ! 丁度いい! 眷属諸共キミを倒して、逆らってはならない者がいる事を教えてやる!!」

 

「っ!? ライザー!」

 

「リアスもういいだろう。向こうは戦る気だ。最後までな…。情けをかけられるぐらいなら、誇り高い敗北がお望みらしい」

 

リアスは尚も止めようとするが、感情を押し殺したような抑揚のない声で制される。

 

悪魔祓い(エクソシスト)。人間の分際で悪魔同士の問題にまだ入り込むつもりか?」

 

「リアスは『駒王町』の管理者だ。私の住んでる町だし、彼女の人柄を個人的に気に入っているんだ。私にも戦う資格はあると思うが?」

 

「ふん、まぁいい。お前には妹の礼をしてやらねばと思っていたところだ。見せてやろう、真の不死鳥(フェニックス)の羽ばたきを!!」

 

 

リアスとライザーのレーティングゲームは最終局面を迎えるのだった。

 

 




個人的にライザーに必要だったのはハーレムとかじゃなくて心許せる友人だったんじゃないかなとか思ってます。
一誠にとっての松田と元浜みたいな存在がリアスだけだったんじゃないかな。
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